「ね……姉さん……っ!!」
シドが目を向けると、姉であるクレアがタオルを体に纏わせながらも近づいてくる。
「私と一緒に行きましょうって約束したわよね?なのに___え?誰なのよ!そいつは!」
だが途中で、人影に気が付いたクレアは足を止めて、大声を出しながらシドの隣にくっついている少女の顔を確認する。
片田舎の貴族カゲノー男爵家の令嬢。シドの姉
。カゲノー家は魔力で体を強化して戦う騎士を代々輩出してきた家系で、クレア自身それなりの才能を持っている。
そんな彼女だが家族愛が強く、何かとシドに対して構っては事あるごとに心配したり、引っ張りまわしたりしている。
クレアにとってシドはたった一人の大事な兄弟。
そしてそんな彼女からして弟の偽恋人であるアレクシアに対しては弟の心を弄んだという認識。そんな人物が目の前にいればどうなるのかは明らかだ。
アレクシアは少年の姉を見て、口を開く。
「貴方はもしかして、シドの姉の.....「クレアよ!クレア・カゲノー!」そ、そうだわ!思い出した!クレアさんね、初めまして、私はミドガル王国第二王女、アレクシアです、よ「よろしくないわ」.....弟さんのシドとは恋人「はぁ??」.....ゴホン__恋人としてお付き合いさせてもらってます」
アレクシアが挨拶をしようとするが、クレアが言葉を合間、合間に入れる___その度に、アレクシアの挨拶は中断して、彼女の頬は引き付く。
だが仮にも王女、微笑みながらも最後まで言い切った。クレアは不機嫌な顔を隠すこともなく、きつくアレクシアに当たる。
男爵家子女が王族に取る態度とは思えない程冷淡な対応をしているが、弟の心を弄ぶような人には当然だと信じてる。
アレクシアは途中何度も額に青筋を浮かべ、頬が引くつきながらも我慢した。____せざるをえなかった。
仮にも相手は恋人の姉、つまり身内だ。身内との関係はいいに越したことはないのだ。例えどんなに傍若無人でも。
「こ.....こ.....こ.....恋人ぉぉぉおおおお!?」
心底驚いた表情で、目を見開き、口を開けるクレア、___それに対して、してやったりと顔をにやつきながら、僅かに勝ち誇りの微笑みを浮かべ、愉悦に浸るアレクシア。
「誰が!?」「シドが」____「誰の!?」「私の」
しかし信じられないのか、少女は耳に届いたであろう言葉を再び確認する、そしてその度にアレクシアは律儀に返答する。
「これからよろしくお願いしますね、クレア義姉さま」
いやらしく笑顔で攻撃するアレクシア。
「義姉とか言うなぁ!?いくら何でも気が早過ぎなのよ!!王女様には常識って物がないのかしら!?」
「あら……つまり私達の中仲を認めてはくれてはいるということですね?」
まんまと引っ掛かるクレアに対して揚げ足取りをする王女、汚い____汚いが恋と戦争は、本気でやるのがミドガル流である。まるで前世のイギリスじゃん.....とシドは思った。
「ハ.....だ、誰もそんな事は言ってないでしょ!自惚れるのにもいい加減にしなさいよ!」
クレアは怒り心頭で、大きな声で少女に言った。それはまるで大切な物が取られない様にする赤ん坊のように。
「可愛い可愛い私の弟が、パッと何処の野良猫に盗まれ___ゴホン、王族に取られたたまるもんですか!」
クレアは気合いを入れて、望むがふと忘れていた事を思い出す。
「何でお、う、じょ、様がこんな所にいるのかしら?」
キツイ眼で睨み付けながら言葉を投げかけるクレア。それにアレクシアは実直にポツリと呟く。
「恋人ですので」
はぐらかされたと感じたクレアは怒りを表す。
「答えになってないわよ!」
「何か問題でもありますか?」
それにたいして冷静に返すアレクシア、優位に立っているせいか、余裕があるようだ。
クレアは深呼吸して怒りを納める
「いえ、別に?ただシドが貴方に好意を寄せたとも思えないし、そもそも話した事すら殆どないでしょ?どうせ王族故に決められた婚約者が嫌だから、当て馬目当てで付き合ってるだけでしょ?違うかしら?」
ギクリ
アレクシアはクレアに言い当てられて内心冷や汗をかく。実際にシドからの罰ゲームの告白を受けた時、男爵家である為に仮に付き合ったとしても王族と男爵家では結婚せずに済む。
そしてモブであるシドはアレクシアから見て制御しやすそうに見えたからだ。少女にとってゼノンは姉のように天才と名高い剣の実力を持っており、名声もある。
その上で裏表がない性格___つまりアレクシアは不信感を抱いた訳だ。
当然そんな人と付き合いたい訳でもないので、告白してきた中で御しやすく愚痴もこぼしやすいシドを代わりしたというわけだ。
「それに王女様ともあろう方がわざわざシドみたいに何の変哲もない奴に惹かれるとも思えないし。貴方達は本当に恋人なの?王女様くらい高貴な方なら別にシドじゃなくっても選り取り見取りでなのにね」
少年の姉は、不信感を漂わせて詰問をする。
仮にも王族だというのに、高圧的な態度で聞かれたアレクシアは言葉が出なかった。
「…………………………」
沈黙がお互いの間を結ぶ。クレアは是が非でもここで明らかしてやると意気込み、アレクシアを観察する。
彼女の腕は堅く交差し、顔には厳しい表情が浮かんでいた。まるで鉄のように固い腕が、自分の感情を押し隠すかのように見えた。
クレアの眉間には深いしわが寄り、目はキリッとした緊張で輝いていた。
彼女は相手に対して、その堅いポーズと鋭い目線で語りかけた。
言葉は冷静でありながらも、力強いものだった。少女は相手に対して、その堅いポーズと鋭い目線で語りかけた。
「貴方が思っている以上に私にとってシドは.....シドは大切な家族なのよ!それを弄ばないで頂戴!」
その言葉は一切の曖昧さを許さず、まるで相手に対して圧倒的な力を見せつけるかのようだった
。組まれた腕がますます固くなり、クレアの目からは熱い情熱が滲み出ていた。
相手はその圧倒的な雰囲気にしばし言葉を失い、クレアの言葉に集中せざるを得なかった。
彼女の言動はまるで戦いの前哨戦のようであり、その場に立ち会う者たちは少女の決意と強靭な精神を感じ取った。
「そう...ですか.....シドは.....貴方にとって大事な家族なんですね。ふふ、弟思いのいい姉御さんね。」
呆然とアレクシアは思いを喉に震わせる。自分と違いクレアは仲睦まじい関係で、羨ましい感情を心に響せる。
私もそんな関係になる事ができただろうかと過去の記憶を思い出す。
が,そんな事はどうでもいいと直ぐに見切りを付けて、アレクシア顔を上げる。
相手がここまで向き合っているのだ、自分もそれに答えなければならない。
「そ、そうかしら.....えへへ、立派な姉なんて誉められると照れるわね」
「そこまでは言ってません!」
チベットスナギツネのような顔をした、アレクシア。この姉、話を聞かないところとかシドに似ているわねなんて頭に浮かんだ。
少女はしばし黙り込んだ後、深いため息をついた。その後、彼女の瞳が一瞬だけ強く輝き、そして慎重に言葉を紡ぎ出した。
「そうね.....真剣に貴方が臨むというなら私もそれに答えないわけにはいかないわね」
彼女の声は穏やかでありながら、確かな覚悟を感じさせるものだった。
その瞬間、クレアの表情も変わった。従来の明るさが一掃され、曇りの立つ空のように慎重で複雑な表情が広がった。
「確かに最初は私はゼノンの当て馬としてシドと付き合っていました…」 少女は言葉を切り、しばしの沈黙の後、勇気を込めた微笑みを浮かべた。
「でも、彼と付き合っていく時もそう━━━━私に愚痴も言わず付き合ってくれました。それに彼は私の剣を好きだと言ってくれて嬉しかった、自分の剣が嫌いになってた時に唯一彼は私に好きだと言ってくれたんです。だからゼノンがいなくなってから私はシドとと共にありたいと。どんな試練が待ち受けていようとも。私はそう思ったんです」
彼女の言葉は堅く、同時に温かみに包まれていた。真剣な誓いが空気に満ち、その瞬間、彼女は試練に身を投じる覚悟を固めたのだった。
「へぇ.....そこまで覚悟を決めて━━━━でも、口でなら何とも言えるわ。実際に貴方が何処まで本気なのか私には分からない。私は貴方と違って王族でもなんでもないのだから。」
クレアはアレクシアの宣言を受けて、口を澱ませる。彼女の言葉には複雑な感情が交錯していた。一方で驚きと戸惑いがにじみ出ており、もう一方では自分の立場を思い知らされるような気持ちが漂っていた。アレクシアの言葉がクレアを戸惑わせ、自分の感情と向き合わせることになった。シドがゼノンの当て馬として始まった関係から、どんどん変化していく中で、知らないうちにクレア自身が取り残されてしまったような気がした。
彼女はしばらく黙っていたが、やがて自分の心情を整理し、力強く答えた。
「だからね、アレクシア。私はシドの姉として、あなたがどれだけ本気でシドと共にいたいと思っているか、感じ取れる様に証明して頂戴。私たちは家族だもの。その家族を私から貰い受けたいなら実力を証明してみなさい」
アレクシアはしばらくの沈黙の後、力強く頷いた。彼女の目にも覚悟が宿り、クレアの手に自分の手を重ねるように差し伸べた。クレアもまた、真剣な表情でアレクシアの手をしっかりと握り返した。
その握手は、お互いの意志と絆が交わる瞬間だった。彼女たちは言葉以上の約束をし、未来に立ち向かっていく強い決意を示していた。
「ええ、いずれ必ず証明してみせるわ───どんなに困難でも、」 アレクシアは微笑みながら言葉を重ね、握手を通して相手に対する敬意と絶対の信頼を示した。
二人の手が握りしめられた瞬間、彼女たちはお互いを認め合う仲間として、認識したのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
(何でこうなったの???普通そこは「私の弟は絶対渡さないわ!」で終わるものじゃなかったっけ?)
シドを置いてけぼりにしたまま、クレアとアレクシアの話し合いは極めて穏便に終わったのだった。本来ならば、家族愛の強いクレアがぽっと出のお邪魔虫を許容するはずもなく、終わるはずだ。しかし──そうはならなかった。何の因果関係なのか、はたまた運命のいたずらか。クレアもアレクシアも真剣にぶつかった結果がこれだ。
「姉さんもてっきり王女様を嫌ってるのかと思ってたのになぁ~」
小さい声で、僕は声を出す。目の前では本人抜きで話が進み続けてしまい、最後にはお互いを認め合う友情逞しい結果に終わってしまった。
こうなると最早障害と呼べる物がないのだ。困った、非常に困った。姉さん公認で来られると僕のモブ道が崩れてしまう!これじゃ陰の実力者じゃなくて、ただの主人公だよ!
シドは焦った、これから起きる未来予想を頭に浮かんでしまったからだ。故にそっと気配を消して逃げた。
「シ~~~~~~~~ド~~~~~、何処に行こうというのかしら?」
だがクレアの目は彼を逃すまいと、見ていた。
陰実6巻読みました 新キャラでて面白かったです。
次はいつ出るんだろ
陰実のアプリ見てるとオバマスがやりたかった事ってこれじゃない?ってふと思う
Cルートどうするか迷ったのでアンケートにします
Cルート編は誰がいい?
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7陰ルート
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ナンバーズルート
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王族ルート(ローズorアイリス)