「絶対に、逃がさないわ」
意地悪な微笑みでシドを監視するアレクシア。
「ま、今日くらいは仕方ないから最初は譲ってあげるわアレクシア。その代わりある程度、時間が経ったら私に譲りなさいよね」
クレアは後ろ姿で、桶を右手に持って立ち上がり。身体を洗う為に離れていく。
「……はぁ」
僕はため息をついた。ここで全力ダッシュで逃げる事も出来るけど、その場合は服が着る事が出来ないので裸で逃げ回る事になる。当然のことながら、そんな状態で見つかったりでもすれば変質者扱いされる訳だ。僕は陰の実力者になりたいが変質者には流石になるのはごめんだ。それにもし逃げきれても後が怖い。故に決断した。
(このまま流れに任せよう)
「何よ。そんなに不満なのかしら?……こんなに可愛い美人が折角背中を流して上げるのに」
アレクシアは少し不安な表情を一瞬表に出す、しかし直ぐにそれを奥深くへと押しやり何時ものアレクシアスタイルに戻る。何時ものアレクシアとは違い自信満々な態度は鳴りを潜めていた。
「いーや?そうじゃないよ?そうじゃないけど.....なんか最近の君の様子がおかしいと思ってさ」
それを目ざとく感じ取った少年は驚いた。こう言う時、アレクシアなら仮に僕が嫌がっても我儘を押し付けてくると思ったからだ。何かとデートと称して愚痴を聴いてあげたり。はたまたは何かと買い物を代行してあげたり、夜が遅くなる時もあったほど付き合わされる事もあった。流石にその時は頭に来たけどね。
「そうかしら?・・・・・・・・いえ・・そうね、そのとうりだわ」
いつもの爽やかな顔を俯かせて、視線を空に向けて仰ぐアレクシア。悩みを抱えているように見える様子だ。
「私って貴方の事何にも知らないと思ってね」
深刻な顔をして、自身の言葉を投げかける。
「そうだっけ?」
シドが確認を込めて聞く。
「そうよ」
アレクシアがそれに答える。
「それがどうしたの?別に普通だと思うけど・・・・そんなに付き合いは長くないだしさ」
なぜそれが悩みになるのか分からないと、彼は顔を傾ける。
「そうね・・・・確かに私達の付き合いはそんなに長くないわ・・・でも、彼女が彼氏の事を何も知らないのは問題だと思わない?」
アレクシアは真面目に現状について問題視しているようだ、実際に彼女はシドを振り回す事はあってもシドの事を聞いたことは殆ど無かった。故に思った。口では、彼女とは言うものの.....私は本当は違うんじゃないのかなって。
「うーん、まぁそれはそうかもしれないけど」
「でしょ?」
「でも、別にいいんじゃないかな?気づけたのならそれは一歩進んだ証だよ、何事も努力するのが大切なんだしさ」
「フフ・・・珍しいわねポチがそんな事いうなんてね・・・ありがとう」
珍しいシドの励ましに、笑みを浮かべてお礼を告げるアレクシア。
曇り空が晴れた様に、背伸びすると胸のタオルが湯船に入る。後ろ向きに体勢を崩してリラックスする。今のアレクシアは素肌を露にして、体を無防備に晒す。
綺麗にお手入れされた美しい体をまるで見せ付けるかの如く。彼女はシドにくっつく。
「貴方といると不思議と落ち着くのよね……何故かしら……」
「さぁ?僕には分からないかな」
二人睦まじく身体を合わせるカップルのように、アレクシアは背中に寄り添う。シドの背中に胸を当てて、首元を抱きしめる。そして耳元で囁く。
「あの……当たってるんだけど……」
「あててんのよ」
「ここ……風呂場だよ?」
「だからどうしたのよ?」
「姉さんに見られたら大変な事になると思うよ?」
「大丈夫よ」
「…………………………」
アレクシアは問題がないというが、先ほどの貸切といい、偽装彼氏から偽装を取って本当に付き合う事といい、何かと企んでいる。
故にシドは疑問に思った次は何を考えてるのかと。
「それで?今度は何を企んでいるの、王女様」
「王女様って言わないで」
「ぐ・・・・分かった、分かったから辞めてくれ」
「次はないわ」
軽い気持ちで揶揄われた彼女はシドの首を腕で引き締め上げる。シドはそれに参ったと手を挙げて降参のポーズを示した。アレクシアはそれにたいして少し不快感が残ったので、低い声で声に出す。
「話がそれたわね、えっとそれでね、・・・・・・・チョットだけ・・その・・大事な話があるのよ」
緊張した顔を見せるアレクシア。シドの様子をチラチラと伺う彼女は口を開いたり閉じたりを繰り返した。不安が首をもたげたのか、口を開いたのはそれからしばらくしてからだった。
「私はアイリスお姉さまが創設した紅の騎士団に入れさせてもらったのよね」
「へーそうなんだ」
「そうなのよ、それで私はここの大司教様、少し黒い噂がある人でその監査もあるの」
「黒い噂?」
「気になるかしら?知りたいのなら紅の騎士団に入りなさい」
「やめとく」
「卒業したら必ず入りなさい」
「やめとく」
「なら入団届は代筆しておくわ」
「やめろ」
「2つに一つよ選びなさい」
「僕は強くないから足手纏いになると思うよ」
「問題ないわ鍛えてあげるから」
「はいかYESしか選択肢が何でないんだよ・・・・」
「ちなみにクレアさんも入るわよ」
そこで会話が途切れた。
僕らはまた少しの沈黙の中を過ごした。居心地はそれほど悪くはなかった。
視界の端でアレクシアが動いた。身体を傾けて長い脚が湯船に浮かび、波紋が何度も広がった。
「もしかしたら舐め回すように見られるんじゃないかと予想したんだけど、外れたわね」
アレクシアは具体的に何を、とは言わなかった。 見ていたらどうなるか分かるならしないよね。
「大した自信だね」
「私ほど完璧に美しいと欲望垂れ流しの視線に毎日曝されて大変なのよ」
その割にオープンである。 自分から見せつけてまでいる。
「温泉ではあまり人を見ないようにしてるんだ。お互い気持ちよく入るためにね」
「いい心がけね」
「だから僕のエクスカリバーをチラチラ見るのはやめてくれないか」
「プッ」
アレクシアは嗤った。心底馬鹿にしたように。
「それがエクスカリバーですって。ミミズの間違いじゃない」
「君がミミズだと思うのならそれでいいさ。僕はミミズでもエクスカリバーでもどちらでもいいんだ。ただ一つ、忠告しておこう」
僕は立ち上がった。ザバァッ、と湯船に波紋が広がった。
「物事を表面だけ見て判断してはいけない。君がミミズだと思ったものは、もしかしたらまだ鞘に入っているだけなのかもしれないんだ」
そしてフルオープンで振り返って湯船から出る。
「ど、どういう意味よ……」
頬を薄紅色に染めたアレクシアが言う。
「鞘から抜かれし聖剣は、白き刃を解き放ち、混沌の園へと旅立つだろう……」
僕は意味深にそう言って、濡れタオルを勢いよく股の間に通しお尻でペチンと鳴らした。
おっさんが温泉から出るときよくやるコレが僕は好きだ。理由はない。出る時にこれをやらないと温泉に入った気がしないんだ。僕はペチン、ペチン、と計三度鳴らして脱衣所へと入った。
そして僕が着替え終わるころ、湯船の方からペチン、ペチン、と音がした。
「あんた何してんの?」
「い、いや何でもないわよ.....」
何処かの少女が真似したのを見られて、怪訝そうな顔をされた王女がいたとかなんとか。
僕はアレクシアから漸く離れる事が出来た。その後クレア姉さんと別れて僕は学園へと帰った。
アレクシア王女誘拐事件が無事に解決して、それから数日が経過する、季節は夏へと差し掛かり始めた。
夕方、授業が終わった僕は選抜大会のキャンセルを頼みにいった。
「失礼しました」
僕は礼をして学生課から出る。
「で、どうだったよ?」
外で待っていたヒョロとジャガが寄ってくる。
「トーナメントの組み合わせが決まってるから無理だってさ」
僕は溜め息を吐く。 余計な事をしてくれたもんだ。
「まぁまぁ元気出せって。いいとこ見せればお前ならモテモテだぜ?」
「そうですよ、ピンチはチャンスって言うじゃないですか君なら大丈夫ですよ」
僕は首を振った。
「勝ち負けじゃなくて単純に出たくないんだよ」
「ったく、仕方ねぇなシドは。この俺様がいい店紹介してやるから元気出せよ」
「い、いい店ですか?それは一体...」
鼻息荒くジャガが言う。 やっぱモブだなこいつ
「おっと、残念ながらそっちの店じゃねぇよ。最近話題のミツゴシ商会って聞いたことがあるだろ?。何でも目新しい物を扱ってるらしくて、中でもチョコレートだかって菓子が甘くてクソ旨いらしいんだ」
「おおー!甘いお菓子ですか、いいですねぇ」
「バッカ、自分で食ってどうすんだよ」
パシッ、とヒョロがジャガの頭を叩く。
「女にプレゼントするんだよ。女なんて甘いもんやっとけばちょろいもんさ」 ※イケメンに限る
「な、なるほど。さすがはヒョロ君です、勉強になりますねぇ」 ※イケメンに限る
「だろだろ」
と得意気なヒョロ。
「よっしゃ、ほんじゃ早速行こうぜシド」
「行きましょう、シド君」
目を輝かせる2人。
「わかった、行くよ」
僕は溜め息と一緒に言った。
この世界のチョコとやらにも少し興味がある。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
放課後僕たちは王都のメインストリートまで足を運んできた。
噂のミツゴシ商店、そこを見ると人が溢れていて、店を一周するほどの行列が出来ていた。
「うわぁ、すごいですねぇ」
「おぉ、流石だなミツゴシ商店。行列が沢山出来てんじゃねえか。こんだけ人気ならお偉いさんが挙って買いに来るのも納得だな」
モブ二人は目の前の光景を見て驚いた様に口を開く。
そびえ立つ新築の豪華建築物。前世のウォール街のような現代風──ミドガル流に言うならば、ミツゴシ風の未来観に溢れた雰囲気でさえある。
そこに前世ではなかった、剣とミドガル王国でデザインされた紋章が目立つように掲げられている。
一流ブランドのショップに訪れた時に感じたような場違い感がマックスだ。
最後尾にはプラカードを持った制服姿のお姉さんが立っている。現在80分待ちらしい。
「────入店まで八十分待ちらしいけど、大丈夫?」
僕は言った。
「折角ここまで来たんだし並ぼうぜ」
とヒョロ。
「寮の門限には何とか間に合いそうですが」
とジャガ。
「でも最近は人斬りが出るって噂ですし。あんまり遅くなるのは危ないですよ」
「バーカ、バーカ、こっちには魔剣士が3人もいるんだ。どうせ盗賊風情とかだろ?1人くらいなら返り討ちにしてやるよ」
ヒョロは腰の剣をポンポンと叩いた。
ええ.....、君たちは魔剣士だけど雑魚じゃん。僕がモブ友に相応しいと思えるレベルくらい弱いじゃん.....よくそんな強気でいれるね?
それにしてもなんかヒョロにしてはまともな事言うね。確かに平民とかの盗賊が襲ってくるなら魔力も貴族より低いから撃退は出来るけどさ。
「そ、それもそうですね」
「ねぇ、人斬りって?」
話を遮って僕は尋ねる。
「最近王都の夜には人斬りが出るらしいんですよ。何でもかなりの腕前で、ついに騎士団にも犠牲者が出たとか……」
ジャガは声を潜めて言った。
「へー恐くて夜は出歩けないな」
人斬りイベントとか絶対楽しい。ぜひ僕も参加したい。
「──お客様、失礼ですが少しお時間をいただけますか?」
声を掛けられて振り返るとそこには茶髪でロングの髪の毛、同じ色の瞳をした落ち着いた上品な顔立ちのかなりの美人がいた。
この子……もしかしてニュー?
「え、僕?」
自分を指差して言う。
「はい、すぐに済みますので。アンケートにご協力お願いします」
「いいですけど……」
「ありがとうごさいます」
「ぉ、お、俺も是非とも協力します!」
「じ、自分もです!」
ヒョロとジャガ、渾身のモブアピール。
「いえ、お一人様で結構です」
「「ぁ.....はい」」
美人からの笑顔ほど綺麗で怖いものってないよね。
僕はお姉さんに腕を組まれ、長い列の脇を通り抜けて店内に入る。
最後に振り返ると、ヒョロとジャガが絶望の顔で僕を見ていた。
アレクシアってあんまり絡み少ないよね 7陰とかだと楽だけど、難しい
あと最近寒暖差激し過ぎ! 夏よりは過ごしやすくて好きなんだけどね
あとCルートはBルートが終わった後に決めます Bルート終わりの時どれが多いかでルート決定
Cルート編は誰がいい?
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7陰ルート
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ナンバーズルート
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王族ルート(ローズorアイリス)