あと誤字報告とかはバンバンお願いします、多分めっちゃ誤字しちゃうので。
エピクレシス歌劇場は、フォンテーヌの中でも有名な場所だ。
その最も大きな理由はやはり、ここでは裁判が行われるからだろう。
この国での裁判は、ただ罪を裁く場所というわけではない。 民衆にとってそれは娯楽と同じものであり、そしてその娯楽は国を支えるものなのだ。
この国には諭示裁定カーディナルと呼ばれる機械がある。歌劇場に設置されているこの機械は、裁判という舞台によって集められる水神への信仰心を、律償混合エネルギーと呼ばれるエネルギーへと変換し、それによってフォンテーヌという都市は発展を遂げた。
「こうか? うーん、でもこれじゃあ威厳がないなぁ…… こっちはどうかな?」
「……」
多くの民衆にとってこの機械は間違いなく、国の発展を支えた国の象徴たる機械だろう。
だが私にとってこの機械は神を殺すための処刑道具でしか無い。
故に私は、この歌劇場が嫌いだ。極力この場所に近づきたくは無い。
「これもなんだか微妙だ、ちょっと神がするポーズにしては可愛すぎる……」
「………………」
私は過去に何度も、今目の前で奇妙な動きをしている少女にそのことを伝えたつもりだった。
だが彼女は何を勘違いしたのか、むしろこうして何かと理由をつけてはここに連れてくるようになった。
「うーむ……ねぇアッシュ、君がもし僕と同じ立場だったらどういうポーズで旅人たちを迎える?」
「……………………」
そう変なポーズをしながら、フリーナはこちらを振り向いて聞いてきた。
私は視線を彼女から離して無視を決め込む。
そんなもん知るか。私に聞かれても困る。
「おい! 無視するなよぅ! これは水神として大事なことなんだぞう!」
「はぁ……そんなことを聞くために私をここに連れてきたのか、フリーナ」
私は怒っているぞー、と言わんばかりに頬を膨らませているフリーナの頬を潰しつつ、私はフリーナにそう言った。
それを聞いた彼女は私の手を顔から引き剥がし、どこか寂しそうな笑顔で言った。
「……こうでもしなきゃ、君はここにきてくれないだろう? 今日はせっかくリネとリネットのマジックが見られるんだ、僕は君とここで見たいから」
「…………」
そう言った彼女の表情に、私はいつか見たフォカロルスを幻視してしまう。
フォカロルスの写し身たる彼女は、やはりフォカロルスとよく似ている。
そして私が、その表情に弱いことも、フォカロルスの面影を感じてしまう原因だろうか。
「……足でも組んで、見下ろすようにしていれば神らしいだろう」
「! そ、そっか、そういうのもありだな……」
慌てて座り方を直す彼女の姿に少し笑いつつ、客席の方へと目を向けると、そこにはこの国の最高審判官であるヌヴィレットが座っていた。
「……ずいぶん早いな」
「ん? 何か言ったかい?」
「いや、気にするな。 ……私は少しヌヴィレットと話してくる、君は旅人が来る前に"威厳あるポーズ"とやらを考えておきなさい。決めてる姿を見られたら恥ずかしいだろう?」
そう言い残しつつ、私は客席に座っているヌヴィレットの方へと歩いて向かった。
♢
「ヌヴィレット」
「……アッシュか」
まるで公務室の椅子に座っているかのように姿勢よく座っている彼に、私は声をかける。
彼は私に気がつくと、隣に座るよう促してきた。
……ここは全席指定だから間違いなくこの席の主がいるだろうに。気が利くのか利かないのかわからないな。
とはいえ今この席の主人は来ていない。彼が指し示す席に、私は大人しく座った。
「席に座るにしてもまだ時間はあったと思うが、随分今回のマジックを楽しみにしているようだな」
「ああ。私自身はそこまで興味があったわけではないが、リネ君がわざわざ送ってきたチケットだ、座らないわけにはいかないだろう」
「……そうか」
まあそんな気はした。ヌヴィレットは基本的に何も言わなければ公務室にこもって延々と仕事を続ける男だ。そんな彼がこのような場所に来るのは珍しいと思っていたが……やはりフリーナがチケットを渡していたらしい。しかしそれを今言わなくてもいいだろうに。
「……そういう君こそ、歌劇場にいるとは思わなかったが。嫌いなのだろう、この場所が」
「随分と痛いところをついてくる。確かにこの場所は嫌いだ。……だが、それを理由に彼女の誘いを断るほど、私は子供ではないさ」
そう言いつつフリーナに視線を向ける。相変わらず"威厳のあるポーズ"を探している彼女は、本来の彼女らしくとても可愛らしかった。
その姿を見た私は、思わず呟いてしまう。
「こうして演じていない彼女の姿を見ることができた。それだけでも、この場所にきた価値はあったさ」
「……」
私の呟きが聞こえただろうに、しかしヌヴィレットは何も言わず、しばらくの間静寂がその場を支配した。
やがて開演時間が近くなり、何人かの人々が客席へとやって来る。
その人々の中には、見慣れた姿もあった。
「あー、なあ旅人、おいらたちの席ってあの人が座っている場所で……いいんだよな?」
「……そうみたい」
どうやらこの席は彼女たちの席だったらしい。私は立ち上がりつつ、ついでに二人に挨拶をする。
「失礼、友人と話がしたくてね、少し場所を借りてしまった。……しばらくぶりだな、旅人」
「あーっ!? だ、だれかと思ったらお前、アッシュ!?」
「む、気づいていなかったのか」
ふむ、確かに劇場に来るにあたって普段の鎧姿ではまずいからと着替えたが……声を聞くまでわからないとは。
そしてその旅人の言葉を聞いたヌヴィレットが言った。
「ふむ、確かに今日の君は随分と美しい。とても君のセンスで着替えたとは思えないな」
「お、お前普通に失礼だな……」
「構わないさ、ヌヴィレットは友人だから。……しかしよくわかったな、確かにこれはフリーナが選んでくれたドレスだ」
ヌヴィレットの言葉に驚きつつ私は言った。
今着ている紫色のこのドレスは、私が着ていく服をフリーナに見せた時に彼女が慌てて選んでくれたものだ。
本来私は黒協会のドレスを着て行こうかと思っていたのだが、それを見たフリーナが「葬式じゃないんだから!」と言ってこのドレスを着せてくれたのだ。だがこう褒められるあたり、彼女のセンスは良いものだったのだろう。
「ああ。仮に君が自身の服を選んでいた場合、血みどろの鎧か暗い単色のドレスを選んでいただろう。だがそのドレスは明るい紫であり、いくつかの装飾も見て取れる。君がそのようなドレスを持っているはずはないし、仮に持っていたとしても間違いなく着ることはないだろう」
「……お前そんなにセンスないのかぁ?」
「……ふふ、伊達に長く親交を持っているだけはあるな、ヌヴィレット。私のことをよくわかっている」
「認めちゃったぞ.」
そんなふうに話していると、後ろの扉が閉まり始める。どうやらもう間も無く開演らしい。直に照明も落とされるだろう。
「……ふむ、もうすぐ始まるらしい。 では、私はこれで。 ……ああそうだ、旅人」
「何?」
そう聞き返して来る旅人に、私は上に座っているフリーナを指で刺しつつ言う。
「あそこで君を"威厳のあるポーズ"で見下ろしているフリーナだが、彼女は君が来るのを楽しみにしていた。すまないが、できれば気にかけてやってくれ。 ……ではな」
私は旅人にそう言い残してから、この場を去った。
さて、あとはマジックを楽しむだけだ。
と言うわけでちょっと短めです。まあ前が長すぎただけなんですけども。
ぬっさんマジックとかあんまり興味なさそうですけど実際どうなんでしょうか。
ガチャスルーしたせいで持ってないからわかんないんですよね。
あと毎日投稿みたいになっていますが、本来の僕の更新速度はこんな早くないですし、牡蠣ダメなんて物もしてないんで多分これ以降は少しずつペース落ちていくかもしれません。
よければのんびり更新お待ちください。