消去した4話を書いてた時から、裁判のシーンをだらだら書いていいんだろうかと考えていたんですが、投稿した結果ほんとによくないなと思うものができてしまったので、二週間くらいかけて考えた結果消去するに至りました。
なので消去した話はお手数ですが完全に忘れていただけると助かります。
追伸
ナヴィア嬢並びにスピナディロースラの皆様本当にごめんなさい、今話のナヴィアさんの登場は全カットになりまする...
人と神の違いとはいったい何があるのだろうか。
一般的な答えは、膨大な力の有無、もしくは価値観の大きな差などになるだろう。
だが、ここフォンテーヌではまた違った答えになる。
それは、失敗を犯すか犯さないかだ。
人間は失敗を犯す、だが神はそんなことをするなどあり得ない。フォンテーヌの人々は、みな口をそろえてそう言う事だろう。
この原因はおそらく、数百年にわたって敵が現れず、尚且つフリーナの神としての演技があったことだろう。どちらか一つが欠けていては、あくまで人である彼女はどこかでミスを犯していたことだろう。
この数百年、彼女は完璧に神として立ち回っていた。だが私は、彼女がいまだに神としては完璧のままであることに、危機感を感じていた。
「......」
「ど、どうしよう...旅人が向こうにつくなんて...」
だから私は、心のどこかで初めてフリーナが失敗してしまうかもしれない今の状況を喜んでしまっていた。この失敗を経ることで、彼女が自ら神の座を降りることができるかもしれない、という淡い願望を基に。
「あ、アッシュ......どうしよう......」
フリーナの問いかけに、私はそんな願望を心にしまってから言った。
「......フリーナ。君はあのマジシャンの少年がこの事件を起こしたと、そう思うのだろう?」
「え? ......まあ、うん。だって状況証拠だってそろってるし、この事件は彼以外起こしようがないだろう?」
不安そうに、しかし確信を持っているような口調でフリーナはそういった。
そんなフリーナを軽くなでつつ、私は彼女に言う。
「ならば、このまま続けるといい。彼が本当に犯人なのであればそれでよし、仮に間違っていたとしても、旅人が彼の弁護をしている時点で彼が間違った判決を受けることはないだろう。むしろ、真犯人をあぶりだしてくれる可能性もある。」
「で、でも、もし僕がダメな神だって思われたら......」
ああ、そうか。
フリーナは、自分が神の座から降ろされてしまうことを恐れているのか。
それによって、予言が完成することも。
私は椅子に座る彼女に合わせてしゃがんでから、彼女を抱きしめる。
「わっ!?」
「......フリーナ。大丈夫だ。君が心配しているようなことが起きる前に、私が何とかして見せるとも。」
私がそう言うと、私の行動に驚きのあまり固まっていた彼女も、こちらを抱きしめ返してくる。
「落ち着いたか。」
「...うん。ありがとう、アッシュ。」
そういって椅子から立ち上がった彼女はすでに、神としての仮面をかぶった姿で。
私にはどうも、その後ろ姿は小さく見えた。
♢
「犯人は......今回の被害者、コーウェルだ!」
何故か眼鏡と髭を付けた旅人の友人、パイモンがそう叫ぶ。
その言葉に、一気に裁判を見ていた観客がざわめく。
当然だろう、旅人とパイモンが挙げた名前の持ち主は、今回の犠牲者。すでに死亡している。それを知ったうえで旅人は彼を犯人だといったのだから。
「......ほう? 面白い、君の推理を話してみるがいい。」
だが旅人はそれに答えず、代わりに一つの疑問をこぼした。
「ホールジーはいったいどこに......?」
ホールジーとは、今回の事件で失踪した女性だ。
彼女はマジックショーの時に観客の中から選ばれてマジックボックスの中に入り、その後服だけを残して失踪を遂げた。
一見コーウェルとホールジーの存在には何の関連性もなさそうだが、どうやら旅人の中で何かをつかんだらしい。
「ふふ、なるほど。虚勢を張っているだけだったんだね?自信満々かと思いきや、真相にはまだまだ遠いみたいじゃないか。」
フリーナがそう言って煽るが、旅人は気にした様子はなく考え込んでいる。
どうやら彼女は本当に関連性を見出そうとしているようだ。
そういえば、と私は思い出す。この裁判が始まる前に、私は警備隊と共にこの事件の物的証拠を洗い出すために観客の荷物検査に立ち会っていた。
だが、ある人物の荷物検査はしていなかったはずだ。
「......クロリンデ。」
「はい。」
フリーナに気づかれないよう、後ろに控えていた今回の護衛役、クロリンデに声をかける。
「頼まれてほしいことが一つある。今回の被害者、コーウェルの残した荷物。それの調査をしてもらうよう、警察隊に伝えてほしい。」
「了解しました。」
それだけ言って、クロリンデはそのまま階段を下って行った。
やはり彼女は優秀だ、妙なことを言っているだろうに、疑問の一つも口に出すことはない。さすがというべきだろう。
「ホールジーが誘拐されたのではなく、消えたのなら!全部つながるぞ!」
その声に、私は裁判中の彼らに目線を戻す。
どうやら、彼らも同じ答えに至ったようだ。
「人を水にする方法があれば......」
「あはは!何を言っているんだい?そんな方法、あるわけが......」
「ひとつだけある。」
フリーナを遮り声を上げた私に、全員の視線が集中する。
思ったよりも注目されているようだ。まあこの事件を解決するカギになるかもしれない、当然ではある。
私は全員の注目が集まるように少し前に出てから話始める。
「ここフォンテーヌには、『原始胎海の水』と呼ばれる特殊な液体が存在する。
一部の人間なら知っているだろうが、これは私が過去にフリーナとともに定めた法律の中で危険物として指定している液体だ。その理由は、私のような例外を除いて、人間が触れると一瞬のうちに液体のようになってしまうからだ。」
私の言葉に、会場は一時騒然となった。当然だ。私があれを危険物に指定したのは百年は前。ならば知らない人間が増えたとしてもおかしくないし、知らないのであればこのような危険物におびえても仕方がない。
そして騒然としている舞台に、警察隊の人間が出てくる
どうやら、待っていた結果が出たようだ。
「捜査は現在も継続中ですが...アッシュ様、結果が出たので報告いたします。
そして彼は、コーウェルの残したバッグの中から原始胎海の水と書かれた試験官が数本、そしてそれについてのノートがあったこと、昨日そのうちの一本が使用されたこと、それを製作するための協力者がいることなどが書かれていたようだ。
「なるほど、ありがとう。......ヌヴィレット。そういうわけだ。原始胎海の水の効能が事実であることは私が保証しよう。であれば、この証拠は裁判に使うことができるだろう?」
「なるほど。では当法廷において、この手掛かりの内容はみなすべきだろう。警察隊の人間はこの手掛かりに沿って調査を続けてくれ。」
「ありがとう。......そういうわけだ、旅人、そしてリネ君。話を続けてくれ。」
これで私から話すべき内容は終わりだ。
私のフリーナの少し後ろという私のいるべき場所に戻る。
一息ついてフリーナの様子を見ると、彼女は少し怒ったような表情でこちらを見ていた。
「......どうして旅人の味方をするようなことを言ったんだい?」
やはりそういわれるか。私は予想通りだったフリーナの問いかけに答える。
「この事件を一刻も早く解決し、歌劇場をもとの平和な場所に戻すためだ。」
「けど、別に旅人の味方をしなくたって......」
「私は別に君の味方をしたってよかった。だが、間違った人に冤罪をかけてしまうことを一番望んでいないのは君だろう?だから私は旅人の味方をした。......君だって、うすうす気づいているだろう?」
私の言葉に、フリーナは言葉を詰まらせる。
やはり気づいていたようだ。フリーナは聡明な子だ、気づいていないわけがないだろうと思っていたが。
「...やっぱり、僕が間違っているよね......。」
「ああ。だが、この裁判を始めたこと自体は間違っていないだろう。おかげでコーウェルという真犯人があぶりだされたわけだからな。その点はさすがだ、フリーナ。」
若干しょんぼりとしていたフリーナの頭を、私はそう言って撫でてやる
そうしていると、フリーナも少し元気を取り戻したのか表情が柔らかくなった。
そんな彼女をなでつつ、私は話を続ける。
「だが原始胎海の水が使われたということだけではおそらく真相には届かないだろう。だからフリーナ。君があえて反証を示してあげるんだ。君が推理の矛盾点をつくことで、旅人もそれを埋めるために考える。そうすれば、旅人はそこから必ず真相を見つけ、事件を解決してくれるはずだ。」
「......わかった、頑張ってみるよ。」
「その調子だ。」
完全に元気を取り戻したフリーナの様子を見て、私はまた元の立ち位置に戻る。
これできっとこの事件は解決されるはずだ。旅人もフリーナも優秀な子だから。
「......しかし原始胎海の水か。再びその名前を聞くことになるとは...計画を早めるべきか。」
少しつぶやきつつも、私は計画段階のそれを進めるためにその場を立ち去った。
......たとえ彼らを後に残してしまうとしても、この計画は成功させなければ。
というわけで何か企んでる主人公さんでした。
ほとんど全部カットした裁判の内容が知りたい方は原作やってください。もう原作の内容はガンガンカットするって割り切っちゃうことにします。全部書いてたらだらだら続いちゃうからね。