あけましておめでとうございます。書き納めとはいきませんでしたが...まあ新年になってすぐなので許してください。
かつてこの世界には、世界を生み出すことができるほど強大なとあるものが存在した。
実際にそれは使った人間を神に生まれ変わらせ、絶対的な支配者であった古竜たちを打ち滅ぼすほどの力を与えた。
だが、その力は人が用いるにはあまりに強すぎた。
神となった彼らは結局それを使いこなせずに滅び、それを真似しようとした後世の人々も滅んだ。それほど危険なものだった。
故に私は、すべてが終わった後に
そしてそれから幾年もの年月が経ち、その場所にはある建物が建てられた。
それこそ、深海に作られたことでだれも脱出するすべを持つことができない完成された牢獄、メロピデ要塞だ。
そして私は今、“それ”を開放するため、メロピデ要塞に訪れていた。
「......ここも随分様変わりしたものだ。以前は牢獄らしくどこか暗い雰囲気を漂わせていたというのに。君の改革の影響だろうな、公爵。」
「はは、俺はただルールを少し変えただけですよ。そんな大層なことはしちゃいないです。」
「よく言う、私はまだ君が先代侯爵を追い出すために私に直談判をしてきたことを忘れていないがね。」
私は隣を歩く現在メロピデ要塞の公爵を務める男、リオセスリの軽口に、かつて彼が私に直談判をしてきた過去を蒸し返しつつ言葉を返す。
「何年もフリーナの側近を務めている都合上、何人もの公爵を見てきた私でも君ほど熱意のある侯爵は見たことはなかった。そして、どうやら私の目に狂いはなかったらしい。」
「お褒めにあずかり光栄ですよ、閣下。......それで、ここに何の用事で?閣下のことだ、大した用事もなくここには訪れんでしょう?」
どうやら世間話をするのはここまでだったようで、リオセスリが本題に切り込んでくる。
さすがに自治区として認められているこの要塞の管理人に何の断りもなく封印を解くのは難しいだろう。しかし本来の目的を話すわけにもいかない。
私は事前に考えておいた噓を彼に伝える。
「......予言の件、君の耳にも入っているだろう?」
「そりゃもちろん。」
「直近の事件で原始胎海...人を溶かす水を持つ人間が現れた。それが予言の兆候ならば、真っ先に沈むのはここだろう。」
「......なるほど。そりゃ閣下がわざわざ赴くわけだ。そういうことなら自由に歩いてもらっても構いません。」
「ありがとう。」
どうやら噓は通じたようだ。彼はほんの少しこちらを探るような目を向けたものの、何も言わずにその場から去っていった。
これでだれにも疑われずに下に向かうことができる。
「......では、行くとしよう。」
かつてすべてが始まった場所......祭祀場へ。
♢
要塞の公爵執務室から階段を下り、その先にある固く閉ざされた扉を開く。
天然の水によって削られ、迷路のようになっている洞窟を迷わないように歩いて行く。
「......ここに来るのも随分久しぶりだ。」
長い年月によって風化した石で作られた棺。
もはや跡形もない、かつてエストの灰瓶を持っていた死体やここを徘徊していたスケルトンたちの跡。
ここはかつて私が旅をした最後の火継ぎの旅の始まり、私が灰として目覚めた始まりの場所だ。
初めてここを歩いた時を思い出しつつ、この先にあるであろう火継ぎの祭祀場を目指して歩く。
しばらく歩くと、開けた広場が見えてきた。
随分と懐かしい。ここで確か、私は遅れた英雄と初めて戦ったのだったか。
それから、モーンの彼とも。
戦うつもりのなかった彼を殺してしまったあの時ほど、後悔したことはなかった。
そういえばモーンの彼が守っていた少女......彼女は、どうしたのだったか。
「......」
思い出そうとすると、鈍い頭痛がする。あまり思い出すべきではない記憶なのかもしれないな。
そう思い出に浸りつつ、唯一残っていたかつてかがり火をともしていた器に近づき、再び火を灯そうとした時だった。
突然、私の後ろで火が燃え上がるような音がし始める。
私はその音を聞いて懐にさしていた太陽の直剣を引き抜き、音の主と対峙する。
先ほど私がともしたかがり火から漏れたらしいその炎はさらに燃え広がり、やがて人の形を作る。
その人物は私より二回りは大きく、手には巨大な斧槍を持っていた。
私はその人物に心当たりがあった。
「......はは。よもや君を再び目にすることになるとは。
残り火の英雄、グンダ
♢
「くっ!」
炎でできたグレイブによる横薙ぎをかろうじてかわしつつ、彼......英雄グンダと呼ばれたその男を観察する。
かつて二度戦った彼の姿とほとんど同じなようだが、しかし炎によって作られているからか驚異的なリーチを誇る斧槍の長さはまるで炎が揺らめくかのように伸縮を繰り返しており、距離感を図るのが非常に難しそうだ。
「ずいぶん強くなって帰ってきたようだなっ!」
しかしよけてしまえばスキが大きいのが斧槍の弱点だ。
斧槍のに連撃を回避し、その体に直剣の連撃を叩き込む。
どうやら物理攻撃の効果がないというわけではないらしく、しっかりと攻撃は通じているようだ。
仕返しとばかりに振るわれた腕をよけ、さらに直剣による攻撃を食らわせる。
スタミナを回復させるために一度距離をとると、チャンスとおもったのかグンダが斧槍をかまえ、こちらに突進してくる。
英雄の突進と呼ばれたそれは、当たればとんでもないダメージを繰り出すことだろう。
「だが、当たらなければどうということはないだろう!」
その攻撃を回避し、全力の一撃をその体にたたきつけると、グンダの体勢が崩れ、彼がよろめく。
私はその隙を見逃すことなく、彼の喉元に剣を突き立て、一気に引き抜く。
だがその程度で彼はひるまず、立ち上がって再び横薙を放った。
「......変わらないな、君は。」
私はそれをよけず、代わりに左手に持っていたバックラーでその攻撃をはじいた。
そして最後の一撃を、彼の体に叩きつける。
「これで、終わりだ。」
その一撃によって、彼はかつてと同じようにソウルの塵と化し、私の体に吸い込まれていった。
HEIR OF FIRE RETURNED
♢
「どこも変わっていない、か。」
あれほど長い年月が経っていたというのに、この祭祀場に変わった様子はほとんどなかった。
人はいなくなってしまったものの、5つの玉座や鍛冶道具などはそのまま放置されていた。
とはいえここにあまり良い思いではない。さっさと用事を済ませてしまおう。
そう思って広間に戻ると、来た時にはいなかった、見覚えのある人物が立っていた。
「......帰ってきてしまわれたのですね。灰の方。」
「......なぜ、君がここに。」
彼女が、ここにいていいはずがない。
あの時の彼女はすでに職を全うし、そしてすでに人として死んでいるはずなのだから。
もうすでにこの場所にとらわれていないはずであり、彼女がここにいるのはおかしいのだ。
「...ずっと、あなたのそばにいました。幾度となく訪れたあなたの選択を見続けて、あなたの旅路を見つめ続けた。ですから、あなたがここを訪れることは、二度とないだろうと思っていました。」
「......」
「きっとあなたは罪をすべて背負わんとしているのでしょう。あの旅のように、国すべての人々の命運を。」
彼女は私に近づき、そっと私の手を握った。
「......もう、あなたが他人の罪を背負う必要はないのではないですか。」
その言葉に私は俯く。
確かに、そうだ。
私が今やろうとしていることは、あのおぞましく、何の意味もない旅とほとんど変わらないのだろう。
彼女はそれを理解しているし、ゆえに私を止めてくれたのだろう。
だが、あの旅と私の今からやろうとしていることには、たった一つの違いがある。
“......アッシュ!”
助けたい人がいるか、いないかだ。
だからわたしは、この儀式をやめるつもりはない。
「......火守女?」
私が再び顔を上げたとき、その場所には誰もいなかった。
ただ、彼女の立っていた場所には。
かつて彼女がつけていた、あの仮面が落ちていた。
Windowsの変換がくそなことは有名だと思いますが、今回もめちゃくちゃそれに苦しめられました。なんだよ利小瀬須利って。どうやってその当て字見つけたんだよ。逆にすごいわ。
追記になるのですが、この小説結構伏線張ってたりして分かりにくくなっている気がします。なのでいつかこの小説の解説とかしたいなと思っておりますので、よろしければリンクに質問等をお寄せいただけると幸いです。いつかまとめて返します。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=307156&uid=398318