異世界に盾の勇者として召喚された普通の大学生こと俺、岩谷尚文。
ぐっすりと部屋のベッドで眠って起床し、食堂で朝食を済ませて再び部屋へ戻った俺たちは、王様からのお呼びが掛けられるのを待っていた。
大体十時過ぎくらいに呼び出され、俺たちはワクワクしながら謁見の間へ向かった。
「勇者様方のご来場」
「俺、王様なんだけどなあ」
謁見の間の扉が開かれる時に、ソウゴがぼやいていた。
そんなこんなで部屋に入ると、冒険者風の装いをした15人の男女達がいた。
ちなみにウォズ曰く、自分とソウゴがワンセットで行動する旨を大臣に伝えたらしい。だからこの人数を募ったのだろう。
ということは、均等に三人ずつ分ければ良さそうだな。
「勇者殿と同行したいと言う者を募った。さあ、未来の英雄達よ。仕えたい勇者殿と共に行くのだ」
えっ、そっちが選ぶのかよ!?
いやまあ、昨日来たばっかの奴らに選ばせるより、国民側に選ばせたほうが良いだろうが。
そう言うわけで、冒険者達がそれぞれの元へ行く訳だが……。
錬、5人。
元康、4人。
樹、3人。
ソウゴとウォズ、3人。
俺、0人。
「ありゃ……」
ソウゴが苦々しげに俺の方を見て言った。
「あのォ! 王様ァ!」
「わ、ワシもこのようなことになるとは思わなかった」
王様がそう言った。棒読みに聞こえたのは気のせいか?
「人望がありませぬな」
「昨日来たばっかの人に人望なんて無いと思うけどなあ。勇者とはいえさ」
呆れるような大臣の言葉にソウゴが正論を入れた。言われた本人は少しムッとした顔をした。
「錬! お前5人もいるなら分けてくれよ!」
俺がそう言うと、錬の仲間が何故か怯えた目で錬の後ろに隠れる。
錬も思うところはあるのか頭を掻きながら仲間を見て
「俺はつるむのが嫌いでな。付いてこれないなら置いていくぞ」
と、突き放す口調で言ったが誰も動こうとはしなかった。
「元康、どう思うよ! これ酷くないか!?」
「まあ……うん」
ちなみに、元康のパーティーは皆、女である。ハーレムじゃねェかよ。
「偏るとは……まあ……なんとも……仮に他のチームから分けても、無理矢理では士気に関わりそうですし……」
樹も困った顔をしているが集ってくれた仲間を拒絶はできないらしく、その後にぐさりと刺さる正論を言われた。
「うーん……やっぱ……盾ってアレだからか?」
「あ、アレってなんだよ?」
「いやぁ……俺がやったゲームだと、盾って負け組の職業なんだよ」
「え…………」
その言葉に俺は思わず口をガックリと開けて呆然とする。
「防御力が高くて使えるのも最初だけで、高レベはほとんど居ない。廃止も決定してたかなあ」
「僕のところのゲームもそんな感じでしたね」
「俺の所もそうだった」
「ま、マジかよ……」
別の世界のゲームとはいえ、衝撃の事実に戸惑いを隠せない。
「ちょっと……そんな追い詰めること言わなくても」
「でもよ〜……盾って武器っていうより防具だろ? そもそも戦いには向いてないっつーか」
ソウゴが元康に注意するも、またもや盾へのマイナス情報が追加された。俺が何をしたというんだ。
おいおいヤベェぞ、俺、このまま一人で旅立つことになるのか!?
「あの、私が盾の勇者様と行きましょうか?」
と、元康の下に行っていた一人の女性が手を上げた。
「良いのか?」
「はい!」
セミロングで赤毛の可愛らしい女の子だ。
かなり可愛らしい顔立ちで、身長は俺より低いくらい。
「……………………」
何故か、ソウゴが彼女のことを見つめていた。彼女の美貌に見惚れてるとかそんな感じではなく、目を細めていて……警戒してるように見える。ウォズはウォズで彼女を品定めというか、値踏みするように見てる気がする。何なんだ?
「他に、ナオフミ殿の下へ行っても良いという者は?」
と思ってたら、王様が皆に聞いた。
しかし誰も手はあげない。王様は溜め息を吐く。
「仕方があるまい。ナオフミ殿はこれから仲間を勧誘し加入させるとよい。勇者殿には援助金を配布するが、ナオフミ殿には他の勇者よりも今回の援助金を増やすとしよう」
「あ、ありがとうございます!」
しゃあっ、ちょっとラッキー。
そうだな、俺を気に入らないなら他のやつを探して入れればいい。
「それでは支度金である。勇者達よ、しっかり受け取るのだ。ナオフミ殿は銀貨800枚、他の勇者殿には600枚用意した。これで装備を整え旅立つがよい」
俺たちは敬礼し、謁見を終えて部屋を出た。
その後、それぞれ自己紹介タイムに入った。
「初めまして。私、マイン・スフィアと申します。これからよろしくお願いしますね、盾の勇者様」
「よ、よろしく」
マインと名乗った女性はそう気さくに話しかけてくれた。
折角仲間になってくれたんだ、盾として守っていかないとな。
「じゃあ行こうか。マイン、さん」
「はーい!」
元気に返事をしてくれるマイン。その横で、ソウゴがさっきのように警戒する目で彼女を見ていたことに、俺は気づかなかった。
◇
「尚文! 彼女をしっかり守れよ〜?」
「手伝うことは出来ませんけど……仲間集め、頑張ってくださいね!」
「時が来たら、また……」
元康と樹と錬から激励の言葉を貰った。
「尚文! ……何かあったらどうにかするからね」
ソウゴからはそんな言葉を貰った。まるで俺に何か不幸なことでも起こるみたいじゃないか。
と、そんなマイナスに捉えちゃダメか。本当に親切で言ってるのかもしれないしな。
「これからどうします?」
「まずは武器屋とか行ってみたいな」
「そうですね、それだけのお金があれば良い装備も買えますし。私が知ってる良い店に案内しますね」
「良いの? ありがとう」
マインが俺を案内しようと先行して歩き出す。
「…………?」
「どうしました?」
ふと、振り返った俺にマインが声をかけた。
「え? ああ、いや……何でもないよ」
まあそんなこんなで、俺たちは武器屋に行った。こっからはダイジェストでお届けするぞ。……俺は誰に言ってるんだ?
入った武器屋の店主は筋肉質な、いわゆるマッチョな男性だった。ここからは武器屋の親父と呼ぼう。
「らっしゃい!」
そこで買い物をした訳だが、ちょっとしたことが判明した。
俺が剣を購入しようとして試しに持ってみた時、何故か弾かれてしまった。何と、盾の力で他の武器は持てないのだという。
『伝説武器の規則事項、専用武器以外の所持に反しました』
こんな感じの表示が出たのだ。ちなみにヘルプを見たら、
『勇者は自分の所持する伝説武器以外を戦闘の意思を持って使用することができない』
ってあった。親父曰く、盾の宝石から強力な力を感じるらしいから、それのせいかもしれない。
使えないものを買うわけにはいかないので、鎖帷子を買うことになった。
でもっていざ、草原に出発! オレンジバルーンという雑魚モンスターと戦うことに。
しかし、そんな雑魚モンスターを倒すのにも5分くらいの時間をかけてしまった。噛まれても盾の力で痛くはないのだが……。
それと近くにいた錬は剣ですぐに倒してた。ですよね!
その後、オレンジバルーンの残骸を拾った。内臓とかは無いわけだが、どうやって生命活動を可能にしてるんだ? というか、どういう原理で風船が生き物になるんだ? ……ま、ファンタジーの世界でそんなツッコミは野暮か。それこそ魔力とかでどうにかしてるんだろう。
で、盾の宝石に残骸を吸わせたらオレンジスモールシールドの欄がウェポンブックに出てきた。一定の材料を吸い込ませ、Lvアップしたら使えるらしい。
ちなみに、マインが剣でバルーンと戦ったらやっぱ1発だった。あの! 俺の弱さが浮き彫りになるって!
俺たちは日が傾くまでオレンジバルーンと色違いのイエローバルーンと戦った。マインが攻撃、俺が防御だ。
その後は町に戻って親父の武器屋に寄り、魔物の素材買取の店の存在を知り、マインの装備を買った。それと元康達も店に来てたらしい。
つーわけで今は宿屋でマインと明日の方針を相談し、飯を食って割り振られた部屋にいた。
鎖帷子は脱いで、銀貨の入った袋を備え付けのテーブルに置いた。それと銀貨30枚を盾の中に隠した。
「……何か、一日中誰かにつけられてた気がするな」
実は、ずっと誰かにつけられている感覚を覚えていたのだ。最初に振り返ったのも、何か気配を感じたからだ。
結果として、誰もいなかったわけだが。今は、何も気配を感じない。
ベッドにかけ、そのまま横になる。
…‥俺、本当に異世界に来たんだなあ。出遅れてしまっているが、これから大活躍してやるんだ。ああ、ワクワクが収まらない。
眠くなってきた……。戦いの疲れと、晩飯を食べたからだろう。
元康や樹の声が聞こえてきた気がした。あいつらもここに来たのかな。
ランプを消す。寝るとするか……。
◇
雀と思わしき鳥の声が窓の外から囀る。この世界にも雀みたいな鳥がいるのかなーなんてことを思いながら、俺はベッドから身を起こした。
「……あ、あれ!?」
寝る前に着ていた服が、鎖帷子が、銀貨を入れてた袋が、元の世界の服が全部ない!
まさか、枕荒らしか!? ど、どうすれば……! まずはマインに!
「おっはよー、尚文!」
と思ってたら、扉から誰か入ってきた。それはソウゴだった。
「ソウゴ? 何でここに……でもちょうど良かった! 聞いてくれ、実は枕荒らしに物を盗まれたんだ!」
「その盗まれた物、持ってきたよ」
「え?」
と、ソウゴは俺に積まれた服と銀貨の袋を渡してくれた。
「あ、ああ……ありがとう……」
「盗んだ犯人も捕まえたんだ。城に連れてくるから、着替えたら着いてきて」
と、ソウゴが歩き出した。俺は急いで着替えて、着いて行った。あ、そうだ。
「マイン、起きてくれ。実は……」
「仲間は連れてこなくても大丈夫だよ」
と、部屋にいるだろうマインに呼びかけようとした俺にソウゴが言った。
「ああ……そうなのか?」
「うん。置き手紙も入れてるから、行こう?」
「お、おう。分かった」
そうして宿を後にした。
「そういえば、鎖帷子は? それだけ無いんだけど……」
「ああ……実はそれは取り戻せてなくてさ……ある人が持ってるから」
「ある人?」
「すぐに分かるよ」
そんなこんなで城に着き、俺たちは謁見の間まで行った。
そこには、錬と樹と元康と王様がいた。で、俺は気づいた。元康が鎖帷子を着けてることを。まさか、アイツが? いや、それはないか。多分枕荒らしが着けてるんだ、偶々被っただけに違いない。
「ようお前ら。何でここに?」
「貴方と同じですよ。僕らもソウゴさんに呼ばれてここに。それにしても、災難でしたね尚文さん。まさか枕荒らしに遭うなんて。ウォズさんが捕まえてるらしいですけど、盗みを働くなんて許せません」
樹が眉を顰めて義憤を漏らしていた。正義感が強いみたいだな。
「ああ、確かにな。一体どんな奴なのか、早く顔を拝んでやりたいぜ」
と、元康は言った。
しばらくして、扉が開く音がして誰かが入って来た。ウォズだ。
「我が魔王、連れて来たよ」
ウォズは捕まえている人物を突きつける。黒い布でガッチリ縛られており、顔にも布を被されていた。今から外すんだろうな。それにしても、あいつが枕荒らしの犯人なのか。
「尚文くん、彼女が枕荒らしの犯人だ」
そう言って、ウォズはその人物に被せてる布を外した。見えたその顔に、俺は目を見開いた。
「んんっ!?」
「マイン……!?」
縛られていたのは、マインだった。
狂う歴史。渡る筈の道を外れる歴史。その先にある未来は、吉か凶か。
鎌田「許せません…仲間のフリをして…枕荒らしを…」
この作品の最終回は過去と未来のマインが一つになりジオウと四聖勇者に倒されて終了。嘘です。