勇者と魔王の瞬瞬必生   作:きゃぷてん

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後書きに盾勇のちょっとしたネタバレがあるので、盾勇原作を見てない人は注意してください。一応ワンクッションは入れておきます。


衝突2019

「マイン!?」

 

 意外な人物の登場に、俺は驚いた。枕荒らしの犯人が、マイン?

 

「マイン!? どうして……」

 

 考えてたら元康も驚いていた。

 

「だから言ってるだろう? 彼女が尚文くんの物を盗んだ枕荒らしだとね」

 

「そ、そんな訳がないだろ!?」

 

「うむ、モトヤス殿の言う通りじゃ!」

 

 元康の言葉に便乗する王様。錬と樹はどちらに味方すればいいのか分からないのか、今は静観をしている。

 

「王様もそう思いますよね!? 大体、証拠があるのかよ!? マインがやったっていう証拠が!」

 

「あるよ」

 

 そう言ったのはソウゴであった。すると、ソウゴの手から緑色の何かが取り出される。やがてそれは変形し、人型となった。それから水色の光が発せられると、ホログラムが出現し何かの映像が再生された。

 

 映し出されたのは、とある扉の前。しばらくして、何者かがその扉を開いた。その何者かとは、マインだ。

 

 カメラと思われる部分が移動すると、そこにはさっきのマインと思わしき女と、俺がいた。

 

『……本当に盾の勇者はいいカモだわ』

 

 女はそう言った後、俺の鎖帷子や元の世界の服、銀貨が入った袋、俺の寝巻きを脱がして奪った。

 

『……全く馬鹿な男ね、騙されちゃって。ふふふ……明日が楽しみだわ……』

 

「これは……」

 

「なんと……」

 

 錬と樹はその映像を見て少なからず驚愕をしていた。

 

 その後、女が宿から出た後、元の世界の服や寝巻きを売りつけている映像も映った。

 

 更にその後、

 

「あ、え……俺……?」

 

 元康は、映像に酒場で自分が映り込んだことに口を開ける。

 

 映像の元康はマインに声をかけ、しばらく楽しげに話し込んでいた。

 

 やがて、マインが鎖帷子を元康に渡していた。

 

『俺に? はは、ありがとう! 嬉しいよ、マイン!』

 

 喜んでマインに礼を言った元康。そこで映像は終わり、プツンと乾いた音を立てて消失した。

 

「これは……嘘だ……」

 

 元康は動揺をしていた。自身が身につけている……俺の鎖帷子を触っていた。

 

「マイン……そんな、どうして!?」

 

 俺はマインに問い詰めた。どうしてこんな、裏切るような真似を。昨日の言葉の一つ一つや、彼女の笑顔が頭の中で回想され始める。

 

『これからよろしくお願いしますね、盾の勇者様』

 

『頑張ってください勇者様!』

 

『やりましたね勇者様!』

 

『大丈夫ですよ、勇者様には勇者様の戦い方がありますから。一緒に頑張りましょう?』

 

『本当に良い方ですね、盾の勇者様は……』

 

 この世界の右も左も分からず、戦闘力の無い盾の俺に付いてきてくれて、町のことを案内してくれて、励ましてくれて……。彼女のおかげで頑張れる気がしていたんだ。

 

 なのに、どうして……。

 

「さて、君の弁明を聞いてみようか、マインくん?」

 

 ウォズはマインの口につけられていた紐を解いた。

 

「マイン……なあ、何かの間違いなんだろ? そうなんだろ?」

 

 マインに問いかける。しかし、彼女は俯くだけで何も答えない。

 

「……黙ってないで何とか言ってくれよ、マイン!」

 

 思わず大きな声を出して問い詰める。しばらくして……彼女は顔を上げて、叫んだ。

 

「モトヤス様! どうかお助けください! これは、この者と盾の勇者達の陰謀なのです! 私はこんなことをしていません!」

 

 ………………は?

 

 は!?!?!?!?

 

 い、いきなり何を!? ソウゴや、俺の陰謀? さっきの映像を見たばかりなのに、そんな唐突すぎるデタラメを元康がすんなりと信じる訳が……。

 

「そうだ、マインがこんなことをするはずがない! ソウゴ、尚文! マインを嵌めやがったのか!?」

 

「えっ」

 

 ちょっと待って、色々カオス。何でこう、すぐに信じちゃったの?

 

「お前らは後だ! ウォズ、マインを放せえ!」

 

 と、元康が槍を構えウォズの元へ駆け出した。その時だった、甲高い音が鳴り響いたのは。

 

「錬! どういうつもりだ!」

 

 素早く移動していた錬が元康の槍を剣で受け止めていた。

 

「それはこっちのセリフだ。いきなり斬りかかることはないんじゃないか?」

 

「そいつらは無実のマインを陥れようとしてるんだぞ!? 斬って当然だ! どきやがれェ!」

 

「ッ!」

 

 元康が剣を弾く。しかし、

 

「う!」

 

 突如元康はよろめいた。背中に矢を受けたからだ。矢を放った人物は勿論、

 

「樹、お前まで……!」

 

「何がどうあれ、いきなり斬りかかることはないという意見には同意です。申し訳ありませんが、一度大人しくしてもらいます!」

 

 樹が弓を構えエネルギーで生成された矢を引いて放った。

 

「ちっ!」

 

 槍で防ぐ元康。後ろは錬、前は樹と挟み撃ちの状態だ。一方は近距離、もう一方は遠距離なのが割と厄介そうである。

 

 ちなみに、周りにいた兵士は下手に動くは出来ないのか少し狼狽えていた。

 

「ふっ! はあああっ!」

 

 しかし元康とて弱い訳ではないのだろう。戦いの中で錬を振り切り、ウォズの下へ駆け出した。

 

ウォズに槍で突こうとした時、甲高い音が鳴った。ウォズは元康の槍を何かで受け止めていた。それで槍を上に弾いた後、ヤクザキックで元康の腹を蹴り、後ずらせた。

 

「ちょうどいい機会だ。これの真価を見せる時が来たかな?」

 

「……こんな状況で、じゃ無い方が良かったけどね」

 

 ウォズが例の蛍光グリーンと黒の物を出し、隣にいたソウゴも同じように白と黒の物を取り出す。

 

『ビヨンドライバー!』『ジクウドライバー!』

 

 それをそれぞれ腰に装着。その後、懐から掌サイズのガジェットを取り出した。

 

『ジ・オウ!』

 

『ウォズッ!』

 

 それから音が鳴った後、腰の物にセットした。

 

『アクションッ!』

 

 お互いの物から音楽が流れ出し、ソウゴとウォズはポーズを取った。

 

「「変身!」」

 

 その言葉が叫ばれた後、腰のそれに触れる。

 

『ライダータァーイム!』

 

『投影ッ! フューチャータイムッ!』

 

 二人の周りを巨大なリングが回転して囲む。それが弾け飛ぶと、二人の身体は黒と銀のスーツに包まれ、顔全体にヘルメットマスクが装着。

 

『仮面・ライダァーッ! ジ・オーウッ!』

 

『スゴイ! ジダイ! ミライ! 仮面ライダーウォズ! ウォズ!』

 

 二人の背後に出現していた時計に存在していた文字が飛び、メットに嵌め込まれた。

 

 その光景を、俺を含めたその場にいた誰もが呆然と見ていた。

 

「何だ、それは……?」

 

 最初に問いかけたのは錬だった。クールそうな雰囲気は何処へやら、驚愕の表情を見せている。

 

「ソウゴさん、ウォズさん、それは……?」

 

 次に樹がソウゴに問いかける。彼も錬と同じように驚愕の表情を見せていた。

 

「これが……前に言った仮面ライダーだよ」

 

「それが?」

 

 どうやら二人が変わった姿のことを仮面ライダーというらしい。

 

「さあ、元康くん。かかってくると良い。囚われのお姫様を助けたいんだろう?」

 

「ッ、舐めやがって!」

 

 くいくい、と指で挑発するウォズ。仮面ライダーに驚いていた元康も、その挑発に気を取り戻したようだ。

 

『ジカンデスピア! ヤリスギ!』

 

 向かってくる元康にウォズは腰のやつから出現した緑色の槍を装備する。

 

『ジカンギレード! ケン!』

 

 ソウゴも同じく腰のやつから出てきた剣を構えた。

 

 そのまま三人で戦闘が始まる。

 

 錬と樹は一旦攻撃の手を止め、事態を傍観することにしていた。

 

「乱れ突き!」

 

 元康が槍を連続で突きまくる。二人はそれを武器で受け止めていた。

 

 二人が槍を弾き、元康は後ずさる。

 

「くっ! ライトニングスピア!」

 

 槍の刀身に雷が収束し、それが斬撃となってソウゴ達に放たれた。

 

『ジ・オウ! ギリギリスラッシュ!』

 

「でやあっ!」

 

 ソウゴの剣からはマゼンタの斬撃が放たれ、元康の斬撃とぶつかり合い相殺し空中で爆発が起こった。

 

「ちっ! なら……」

 

「そこまでじゃ!」

 

 元康が槍を構えた時、ここで王様が待ったをかけた。

 

「このまま戦いを続ければ謁見の間が壊れてしまう。モトヤス殿、一度落ち着くのだ」

 

「で、でも!」

 

「そうだ元康。頭に血が昇りすぎだ、落ち着け!」

 

 王様と錬が元康を宥めようとする。二人に言われ、元康は渋々と槍を下ろした。

 

「……さて、マイン君のことはどうしますか? オルトクレイ殿?」

 

 ウォズが元の姿に戻り、王様に尋ねる。

 

「…………まずは本人の弁明をもう一度聞いてみぬか? それが先だ」

 

 王様にそう言われ、元の姿に戻ったウォズは肩を竦めながら座っていたマインを立ち上がらせ、口の紐を解いた。

 

「ッ! レン様とイツキ様も、どうか私を信じてください! 私はあんなことをしていません! アレもこの者達が作った偽物です!」

 

「「………………」」

 

 訴えるようなマインの発言に錬と樹は訝しげな顔をする。どう判断すべきか決めあぐねているのだろう。

 

「そんな……信じてくださらないのですか……?」

 

 と思ってたら、マインが涙を流し始めた。泣かれると流石に心が揺らいだのか、困った顔をする錬と樹。

 

「下手くそな泣き演技の為に体内の水分を無駄遣いするとはご苦労なことだね」

 

「ウォズ、てめぇ……! 女の子の涙に嘘がある筈がないだろ!?」

 

「そんなことよりさ、元康。アンタが着てる鎖帷子、早く尚文に返してあげたら?」

 

 マインに対するウォズの煽りに突っかかっていた元康にソウゴは口を挟んだ。そうだ、元康が着ているのは俺の鎖帷子だ。

 

「こ、これは……マインが自分の金で買った物の筈だ! 尚文から盗んだ物じゃないだろ!」

 

「ふーん……じゃあ、あの映像のはどう説明するの?」

 

「あの映像はお前らが作った偽物だろう! マインが盗んだかのように都合よく編集したんだ!」

 

 元康は何故そこまでしてマインを庇うんだ? 付き合いだって長くない筈だろ?

 

「何でそこまでマインを庇うわけ?」

 

「……俺は、俺は女の子を信じ抜くと決めたからだ! だから俺はマインの言葉を信じる! お前らのような卑劣な奴から、彼女を守る!」

 

 元康の庇う理由はわかった。……おそらく、元康はマインに利用されてしまってるのだ。

 

「そもそもさ、俺達がマインを騙したところで、どんなメリットがあるの?」

 

「それは……賠償金を請求することも出来るだろ!」

 

「それ、俺達にそんな気はないって言ったらそこまでじゃない?」

 

「うぐ……でもお前達にしか分からない利点だって……!」

 

「盗んだことを認めて反省してくれればそれで良いんだよ。元康……今のアンタはマインに利用されてるんだ。アンタのその考え方につけ込んでね」

 

「そんなわけが無い! マインが、女の子がそんなことするはずが!」

 

 もう完全に不毛な争いになりつつある。段々元康が可哀想に思えてきた。何と言うか、DV彼氏を必死に擁護する彼女みたいな。そんなのに見えてくる

 

「やめぬか。このままではいつまで経っても決着がつかん」

 

 と、王様がまた待ったをかけた。

 

「王様! マインを騙したこいつらなんてもう元の世界に返しましょうよ!」

 

「……実は、元の世界に返す方法は存在しない」

 

「え?」

 

 おい、さらっととんでもない爆弾発言が来たぞ。元の世界に帰る術がないだと!?

 

「おい、そんなの聞いてないぞ……!?」

 

「そんな……!」

 

 錬と樹もその言葉に動揺していた。

 

「仮に新しい勇者を召喚するとしても、それは現勇者達が全員死亡した時だと研究者は語っておる。恐らく、元の世界に帰れるのは全ての波を退けた時であろう」

 

 つまり、長期間この世界に縛られるのは確定しているということなのだ。王様の話を聞いて、三勇者達は狼狽えているようだった。

 

「…………話を戻すようだが、我も国民である彼女の言う事は信じたい。だから直ぐに判断を下す事は出来ぬ。だから、ここは猶予をつけるとしよう。その間にマインをモトヤス殿に任せる。彼を見張りとしてつかせれば、何かしても大丈夫な筈。良いな? モトヤス殿」

 

「は、はい! 勿論です! マインの無罪を必ず証明します!」

 

 その後、元康は目を鋭くしてウォズを睨んだ。

 

「おいウォズ、マインを解放しろ!」

 

ウォズの方は「やれやれ」と言った感じで肩を竦めた後にマインの紐を解いて解放した。解放されたマインは真っ先に元康の下へ駆け出した。

 

「モトヤス様!」

 

「マイン!」

 

 マインは元康に抱きつきながら「怖かったですぅ」とか言ってた。元康はソウゴ達や俺を睨む。

 

「マインの無罪が証明されたら、お前達には謝ってもらうからな!」

 

「どうやって証明するのか、見物だね」

 

 ウォズは嘲笑うような雰囲気で煽った。

 

 一方、マインは元康の後ろに隠れてソウゴ達を睨んでいる……ように見えたのだが、俺は見た。彼女がソウゴとウォズに向かってあっかんべーとしていたことを。そこで俺は彼女が完全に黒だと悟った。

 

 それに気づいたのであろうソウゴを見て……俺はゾッとした。

 

 何せ、こっちが凍りつきそうなほど冷ややかな目で彼女を見ていたからだ。

 

 その顔は薄く笑いを浮かべていたが、目は全く笑ってなかった。

 

「ひっ」

 

その目にはマインも演技とかではなく素で怯えていた。

 

「……まあ、王様(アンタ)がそう判断するならそれに口出しはしないけど……これが不正のないちゃんとした判決だったらいいんだけどね」

 

「ッ、それはどういう意味かな?」

 

「……さあ?」

 

 眉を顰める王様からの問いかけに相変わらず薄く笑いながらとぼけたような返事をするソウゴ。

 

「元康も、狐には騙されない方が良いよ」

 

「ッ、マインが狐だって言いたいのか!」

 

「別にそうは言っていないよ? ただの警告のつもりだったんだけど」

 

「……お前に言われなくても、俺は騙されたりなんかしない!」

 

「……そ」

 

 その会話が終わった後、この集まりはお開きになった。




Q.何でウォズは煽りまくってたの?
A.こんな茶番早く終われよーって思ってたから。暇つぶしみたいなもの。

Q.マインのあっかんべーはどういう意味のあっかんべー?
A.(へへーん捕まえて裁きたかったんだろうけど相手がパパなのが悪かったな!ざまあみろ!)という意味のあっかんべーです。

ここから盾勇原作ネタバレ



 今になって思うと四勇者の中で元康が一番可哀想だよね。元の世界で幸せになるはずだったのに女の子に殺されて価値観は歪み、そのせいでビッチ氏に体良く利用されて最終的には捨てられるという。
今のですぞ元康は幸せそうだけど、永遠に成長が出来ないも同然な状態だからなあ。
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