お開きになって解散、そして外に出た。
結局、俺の鎖帷子が戻ってくる事はなかった。ちなみに、俺たちは城門の前にいる。
元康とマインは城から出て、街のほうへ行った。恐らく他の仲間を迎えに行ったのだろう。
「尚文、ごめん。鎖帷子は取り返せなくて」
「……良いよ。あの状態の元康から取り返すなんてほぼ無理だし」
マインの罪を認めない限り元康は鎖帷子を返しはしないだろう。王様によって今回は有耶無耶になったが。
「お前ら」
と、ソウゴと話してたら錬と樹がやって来た。
「錬、樹」
「今回は災難だったな」
「ですね。実質、あの人はほぼ無罪みたいなものですし」
この発言を聞くに、二人は味方だと判断しても良さそうだ。
「お前ら……!」
「勘違いするなよ。お前達が騙してる可能性も捨て切った訳じゃ無い。あの女が黒だとは考えているが、お前達の今後の行動次第でその判断も変えるかもしれないからな」
俺がちょっと笑うと錬がそう言った。ツンデレキャラかお前は。「あはは……」と側では樹が苦笑いしていた。
「そろそろ俺は仲間の所へ行く。レベル上げもしたいしな」
「僕もこの辺で。これ以上皆さんを待たせてはいけませんしね。それじゃあ、お元気で」
そう言って二人は町の方へと歩いて行った。
「そう言えば……ソウゴ、お前の仲間は? 迎えに行かなくていいのか?」
「解雇したけど」
「え?」
何故に!?
「え、なんで……?」
「……街へ行けば分かるよ」
そうして、俺たちは街に行くことになった。
◇
「………………」
何故か、町の住民達が俺たちを訝しげな目で見てはヒソヒソと内緒話をしていた。
「何なんだ……?」
それでちょうど、俺達が武器屋の前を通りかかった頃。
「おい、盾のアンちゃん」
武器屋の親父が外にいて、声をかけて来た。
「親父……」
「聞いたぜ、金を手に入れる為に仲間を嵌めようとしたんだってな?」
「え?」
何の話だ? むしろ嵌められたのは俺だ。戸惑っていると、胸ぐらを掴まれた。
「一発殴らせろ……!」
「ちょっ、待てよ親父! 何の話なんだ!? 嵌められたのは俺なんだよ!」
「…………どういうことだ?」
眉を顰める親父。
「まあまあ、アンタも一回離して。落ち着いて話そう?」
と、ソウゴが宥めたことにより、親父は掴んでいた手を放した。
それから、武器屋に入って俺は親父に事情を説明した。
「なるほどなあ、そんなことが……」
親父は腕を組んでうんうんと頷いている。
「ま……アンちゃんはそんなことをする奴には見えねぇや。いきなり掴んで悪かったな」
「いやいや……誤解が晴れて良かったよ」
「確かに、あの嬢ちゃんは怪しい感じはしてた。長年接客してると、何となく勘でわかるもんでな」
つまり親父は人を見る目のLvが高いってことだな。
「にしても、俺がマイン……あの子を嵌めたって何処から聞いたんだ?」
「あ? 町の奴らからだ。ついさっきそういう噂が広まり始めてな、今じゃ兄ちゃん達を卑怯者だと思ってる奴らばかりだぜ。この国は女性優位な風潮があるからな、余計にそうなってるんだろうさ」
「何でそんな噂が……一体誰が?」
火のないところに煙は立たない、なんて言葉がある。つまり、そういう噂を流した原因となる奴がいるということだ。
「それに関しては俺もさっぱりだ。あり得るとすれば、例の嬢ちゃんだろうな」
「………………」
マインが噂を流した。これが本命といったところだろうか。しかし、マインが町に出たのはついさっきだ。ここまで早く広まるものなのか? 悪い噂ほど早く広まるとはいうが……。
「そんで、アンちゃん達はこれからどうするんだ? つーか、そこのアンちゃん二人は丸腰でいいのかよ?」
と、親父はソウゴとウォズの二人を見て言った。
「あー大丈夫大丈夫。俺たち力持ってるから」
「うん? そうなのか? てことは、魔法使いか何かか?」
「いや、魔法使いというより王様」
「はあ?」
「あーほら、親父! この二人はアレだよ。知らない? 勇者召喚の時に六人呼び出されたって話」
ソウゴの発言に親父が目を細めたので、慌てて俺は誤魔化す。
「もしかして……残りの二人がそいつらか?」
「そう! そうなんだよ。この二人の力を俺も見たんだ」
「へぇ……あ、ちょっと待て思い出したぞ。そのアンちゃん二人も噂されてたんだ。盾のアンちゃんと共謀して嬢ちゃんを嵌めようとしたって」
「え!?」
と、俺はソウゴとウォズを見る。しかし二人はふーんと言った感じの様子だった。
「いや冷静すぎないかお前ら!?」
「まあ……ねえ?」
「気にするに足りないかな」
ソウゴが同意を求めるようにウォズに視線を向け、実際ウォズも同意していた。メンタル強っ。
「お、おう、そうなのか……とりあえず、俺は波に備えてレベル上げをしようかと思ってるんだけど」
「俺とウォズもそうしようと思ってるよ」
ソウゴ達もレベル上げをするらしい。
「ま、それが一番だろうな」
親父が同意した。
それから、俺は新しく装備を整えた。今度は鎖帷子ではなく皮製の鎧だ。
正直……盗られたやつをもう一回買うのは精神的に色々と……。
そのあと、俺たちは外に出た。
「結論から言うと……俺が仲間を解雇したのは今流れてる噂に巻き込まないためだよ」
外に出てソウゴが俺に告げた。……なんとなく予想はついていたがやはりか。良くない噂がついてしまった俺たちといたら、酷い目に遭うかもしれないから……。
……しかし、考えるに解雇したのは恐らく噂が流れる前だ。さっき考えた説と辻褄を合わせるなら……噂が流れるのをあらかじめ予期していた? そうだとしたらかなり先を読んで動いてるな……。
…………本人に聞いてみるか。
「それってあらかじめ噂が流れるって考えてたのか?」
「…………そんなとこかな。マインのこと調べれば予想はついてたからね」
「? 調べたって何を」
「彼女の素性だよ」
俺の質問に答えたのはウォズだ。
「彼女の本名はマルティ=S=メルロマルク。この国の王の実の娘だ」
「え!?」
マインが王様の娘!? そんな話聞いてないぞ!? 聞いてないから当たり前だけど!
「じゃあ……王様がマインを実質無罪にしたのも、自分の娘だから……!?」
「そういうことだろうね。そして噂が早く流れてるのも、あの裁判中に部下でも使って仕込んでいたんだろう」
おいおいおいおい……なんかやばい話に巻き込まれたんじゃないか、俺?
というか……よくよく考えたらマインは王様に招集された冒険者という体で潜り込んでたわけで……俺を嵌めるために王様とグルだったってことも……いや、流石に考えすぎか……? 王様が俺を嵌める理由がない。単にマインが王様に頼んで冒険者として立候補し身分を隠していた可能性もある。
だが……なぜか俺は召喚された初日の王様の値踏みするような目つきや俺の名前を呼び忘れていたことを思い出した。
「でも……何でそれをあの時皆の前で言わなかったんだ?」
「敢えて、といったところかな。変に情報を出して警戒され、刺客でも差し向けられたらそれはそれで面倒だからね。だからといって、今は警戒してないわけじゃないけれど」
まあ、相手は王様だからな。警戒するのもおかしい話じゃないか。
今回の件でこの先なにかあるかもしれないから警戒しておくに越したことはないだろう。
「てか、そんなことどうやって調べたんだよ」
「独自の調査ルートを使ったんだよ」
何か言い方的に企業秘密感があるな。深入りしない方が良さそうだ。
「それと……尚文が良かったらでいいんだけど、これからは俺達とパーティー組まない?」
「え? 俺と? 全然良いけど……そっちは良いのか?」
「もちろん。尚文もマインが抜けたから一人だし、誰かしらは欲しいでしょ?」
「そうだな……」
ソウゴ達の実力はこの目で見た。攻撃力のない俺からしたら、パーティーの戦力になることは間違いなしだろう。
「うし分かった、組むよ」
「パーティー成立だね。それじゃあこれからの行動方針を考えとこうか」
それからソウゴから提案が挙げられた。
「まずは波に向けてのレベル上げ。その次に、勇者を仮面ライダーに覚醒させること。この二つをメインにしたいところかな」
それがソウゴの挙げた行動方針だ。後者については、やはり本人が見た夢のこともあるからだろう。
「てことは、他の勇者を探していくのか?」
「そういうことになるね。でも、今はレベル上げの方を優先しよう。まずは強くなることが一番だ」
「確かにな」
そういうことだから俺達の今の行動方針はレベル上げということになった。波には1ヶ月の猶予があると言われたが、それだけの時間があれば充分強くなれる……筈。頼むから攻撃力上がってくれよ。
それから俺たちは魔物狩りをするため街の外に赴くのだった。
武器屋の親父と我が魔王と魚津は前日に合ってないです、実は。