タイトル、オーバークォーツァーかな?()
現在、俺たちは武器屋に来ていた。俺たちは俺たちでも、俺とラフタリアだけだが。
ソウゴとウォズは武器屋で買う物もないからその辺りを歩いてるそうだ。
武器屋に来た理由としては、俺がブラッドクリーンコーティングという、刃に血糊をつけることによって切れ味を落とさないようにする技術を思い出し、そういえばラフタリアが持っているナイフにはそれがないなと思った。
切れ味が落ちた刃物はメンテナンスをする必要がある……って昔どっかで見た情報も思い出し、武器屋の親父にアドバイスを貰おうと赴いたのだ。
「で、武器をメンテナンスするにはどうすればいいんだ?」
「メンテナンスには砥石を使う必要があるな。で、これがその砥石だ」
親父が砥石を見せてくる。それは白い石のようだった。
「買えるか?」
「買えるが……」
親父はラフタリアをジッと見た。
「嬢ちゃんはもう剣を挑戦させてもいいかもな」
「そうなのか?」
「やる気があるようだしな。で、提案だが、剣を買ってくれりゃあ砥石もおまけでつけるぞ?」
「んー……じゃあ頼もうかな」
「おう、短めの剣を見繕ってやる。入門にもいいからな」
親父は武器屋の隅のコーナーから剣を持ってきた。ついでに胸当ても持ってきてもらって装着し、剣のレクチャーを受けた。
それで剣を購入し、砥石も受け取る。すると、盾が反応するのが見えたので、吸わせてみた。
【砥石の盾の条件が解放されました】
それが表示されると、砥石の盾に関する情報が色々開示された。自動研磨なる専用効果があるらしい。
ヘルプを確認したところ、専用効果というのは、その武器である時のみ発揮するものだという。武器解放による能力付与の恩恵は受けれないから、必要な場合はその武器に変化させなきゃいけないらしい。
試しに変化させてみると、それは白い石の盾だ。何個か溝が存在している。これに武器とか入れるのか?
「お、おい、アンちゃん、なんだそれは?」
「え? 砥石の盾」
「なんでそれになってるんだよ?」
「砥石吸わせたからだけど……そういえば見せたことなかったっけ。伝説の武器は、特定のものを吸わせると何かしらの武器が解放されるんだよ」
「はぇー。なるほど、そういうことなのか。目の前で見せてもらったのはアンちゃんが初めてだ」
どうやら他の3人は見せてないらしい。まあわざわざ見せるものでもないからな。
「……なあ、悪いけどさ、何か錆びた武器とかない?」
「あん? あるにはあるが……どうした?」
「この盾に自動研磨っていう効果があるんだけど、それ試してみたいんだよ」
厳密にいえば、【自動研磨(8時間)消費大】という名前である。
8時間は研磨にかかる時間なんだろうが、消費大が何を消費するのかという問題がある。
親父は顎を触ったあと、錆びた剣を持ってきて盾の溝に突き刺した。
「オマケしてやる。それで試してみろ」
「ありがと」
刺しこまれたあと、研磨中、という文字が視界の端に浮かび上がった。
ふとアイコンを見ると、俺のステータスにあるSPという値が減っていくことに気づいた。多分、これを消費するんだろう。スキルに使うものかと思っていたが、これでも減るらしい。
「さて、そろそろ行くか。色々とありがとうな、親父」
「おう、気をつけてけよ」
「……あ、ちょっと聞いていいか?」
「ん? どした?」
「城下町の草原を越えて、森を抜けた先にあるダンジョンと同じくらいの魔物がいる場所って知らない?」
地図を広げて、かつてマインが勧めたダンジョンがある方角を指して尋ねる。……何となくだが、そこには行きたくないなという思いがあった。
俺を嵌めようとして、エグめのトラップのあるダンジョンを選んだのかもしれないと勘繰ってしまうからだ。
「街道の先にある村の方に似た様な魔物がいるぜ。リユート村ってとこだ」
「なるほど、ありがとう。そこに行ってみるよ」
俺はラフタリアを連れて外に出た。その直後、ラフタリアの腹の虫が鳴いたので、近くの屋台でご飯を買った。
◇
ソウゴ達に合流したあと、リユート村に行ってみないかと提案し、それに乗ってくれたので俺たちは村へ。
別の場所に行きたいのは、他の場所に行ってみたいという個人的な思いと、新しい魔物を倒して他の盾を解放しておきたいと思いがあったからだったりする。
リユート村は宿が一つしかないが宿泊費は銀貨一枚であり、買取商人も二日に一度は滞在するらしい。
ここに薬屋はないらしいけど、村人が薬を欲しがってるらしいから、城下町のとこより安めに売った。
そして俺が行商として村の周辺で倒した魔物の素材を売った時、お客さんからこの村の近辺にある炭鉱から鉱石が採れるということを聞いた。上手く採掘できたら、ちょっとは稼げるかもしれないと。良い値で売れる珍しい石もあると。
なんで皆はそこに行かないのか? と質問したところ、どうやら危険な魔物が生息してからは足が遠のいたらしい。
ソウゴと相談した後、俺達は炭鉱へ赴くことになった。魔物と戦う時は、前みたいに俺が魔物を押さえつけてラフタリアがトドメを刺す方針で行くことに。
着いた先、廃坑の入り口には放置されたツルハシが数本と、放置された休憩所を見つけた。休憩所の中を見たところ、ロープ、雑貨、廃坑の地図くらいしかなかった。
ちなみにツルハシとロープを盾に吸わせると、"ツルハシの盾"と"ロープシールド"が解放された。
ロープシールドを解放されると、"エアストシールド"なるスキルが解放された。ちなみに、ロープシールドの見た目はロープを丸めた感じ。防御力は今までの盾の中だと鬼弱い。
が、防御力は弱いものの、専用効果"ロープ"がついていた。これは使ってみたところ、ロープが射出して何処かしらに結びつくらしい。いざって時に使えそうだ。
で、肝心のエアストシールド。ヘルプを確認して、スキルの発動方法を見てみた。
『スキル』
『発動の際、そのスキル名を叫ぶことによってクイックアクションが可能です。他、モーションで発動するスキルも存在します。』
とのことらしい。
「すまん、ちょっと離れてくれないか?」
「どしたの?」
「解放されたスキルを使ってみたくて」
俺がそう言うと皆は離れてくれた。というわけで
「エアストシールド!」
唱えると同時に視界へどこに出すかを指示するようにと表示され、出せる範囲がサークル内で地面に映った。目の前に出すように意識すると、イメージ通りの場所に出現。
形状はやや大きめの盾。向こう側が透けて見えることから、エネルギーシールドみたいだ。触れてみたところ、動く気配はない。
「おお、すご。工夫すれば良い感じに使えそうだね」
「んー、確かに」
でもなんでこれがロープで解放されたんだ?
あれか、色んな盾解放したからそれのボーナス的な?
まあとにかく、新しい力を手に入れたところで、俺達は炭鉱に進み始めた。
◇
松明を片手に俺達は進む。
進んでる途中までは、木で補強された洞窟みたいだったが、しばらくして鍾乳洞みたいになっていく。小さな滝や泉、上に空いてる穴から光が差し、洞窟内の埃を幻想的に瞬かせる。
「な、ナオフミ様」
「ん? どうした?」
ラフタリアが裾を引っ張ってきて、下にある何かを指す。それは、犬と思わしきものの足跡だった。
多分、これは住み着いたって言われてる魔物の足跡かもしれない。
「とりあえずは進もう。魔物に出くわしても、いつも通りやれば大丈夫だ」
「う、うん」
俺の言葉にラフタリアは頷いた。
そうして進んでいったところで、それはいた。
「グルルルル……ッ!」
二つの頭を持つ犬がいた。確か神獣でこういうのがいた気がする。オルトロスだっけ? 結構デカく、俺の身長ぐらいはある。
「ワォォォォォォォ!」
犬が遠吠えして突撃してきた。俺は盾を構え、犬の突進を受け止める。重さを感じるものの、どうにか押さえつけた。
「ラフタリア!」
俺はラフタリアを呼んだ。しかし、彼女は震えながら虚空を見つめている。
「あ……ああああ……!」
あれは……夜の叫びの時の表情だ……!
「イヤァァァァァァァァァァァ!」
耳が遠くなるほどの絶叫。押さえつけていた犬もそれに反応したのか、一度離れる。その後、ターゲットをラフタリアに切り替え走った。
しかしその時、赤い光線がぶち当たり、犬は後ろに吹っ飛ばされる。
手に銃……本人曰く、"ファイズフォンX"をもったソウゴが、ラフタリアに駆け寄る。
「ラフタリア、大丈夫?」
「あ、ああ、あの夢の魔物が……村の皆や……お父さんとお母さんを……!」
「彼女は最初の波で魔物に襲われたことによって両親を失っているらしい。多分、あの魔物はそれに類似していたんだろう。それでトラウマを刺激されたと言ったところかな」
ラフタリアが犬を見て怯える中、ウォズはご丁寧に色々と解説をしていた。
その間に、魔物は復帰を果たしたのか起き上がる。
「……………………」
「しょうがない……! ソウゴ! アイツを頼めないか!?」
「いや」
俺が頼むが、ソウゴはそれを断った。
「尚文、とりあえずあの犬をもう一回押さえてきて」
「えっ。でも、ラフタリアは……!」
「ラフタリアのことは任せて。少しの間、持たせればいいから」
「ッ、分かった」
俺は向かってくる犬を受け止める。やっぱ重いな……!
「ラフタリア、やれる?」
「っ、う、いやぁ……!」
ラフタリアがなおも恐れる声が聞こえる。ラフタリアなりに、戦うことへ覚悟を決めてたんだろう。でも、過去のトラウマの前だとそれも揺らいでしまってるのかも……!
「………………ラフタリア。今の君なら、もう乗り越えられるよ」
「え…………」
「君は戦うことも、最初は怖かったのかもしれないけど、勇気を持ってやろうって思えたんでしょ? 一度そうやって出来たなら、今回だっていけるよ」
「で、も……!」
ソウゴはラフタリアを諭そうとするが、本人は戦う気力を取り戻せていない。
「それにさ……悔しいでしょ」
「え……?」
「泣いて喚いて、怯えて何もできなくて。前も奪われたのに、今度は自分で掴んだ勇気も奪われそうになって、悔しくない?」
「…………………………くや、しいです」
ラフタリアの嗚咽混じりの声と鼻水を啜る音が後ろから聞こえてくる。
「じゃあ、やることは一つしかないよ。その悔しさも力に変えて、戦うんだ。そうすれば……過去を乗り越えられる。波でアイツみたいなのが出ても、戦える」
「………………そうしたら…………もう、何も奪われない?」
「ああ」
ソウゴの返事を聞いて、ラフタリアの声は止まる。
頭だけ振り返って見ると、ラフタリアが立ち上がり、剣を構えていた。服で涙を拭い、その表情には緊張が宿ってるものの、先程までの怯えてる表情は無いように見える。
「やああああああっ!」
意を決したラフタリアが走ってきて、犬の身体に剣を突き刺す。犬は悲鳴をあげており、突き刺した部分からは血を垂れ流していた。
「ガウゥ!」
「うおっ!?」「う!」
犬が痛みからか暴れ回りラフタリアは後ろの方へ飛び、俺も思わず後ずさる。
「ッ、剣が!」
ラフタリアが叫んだので見てみると、犬の身体に剣が突き刺さったままになっていた。吹っ飛んだ拍子に手を離したのだろう。
突き刺さった状態だが犬は動き、無防備のラフタリアを標的にして飛びかかろうとする。させるか!
「エアストシールド!」
ラフタリアの前に盾が出現し、それに頭からぶつかった犬は脳震盪でも起こしたのかふらふらとしている。
その瞬間、犬の片方の頭が突如として血と共に吹き飛んだ。頭がなくなったせいか、首がだらんと脱力したように傾いた。そのせいでバランスを崩したのか、よろける犬。
何が起こったのかと思って周りを見ると、赤いオーラを身体に纏って剣……本人曰く、"ジカンギレード"を片手に握っているソウゴが近くにいた。刃についていた血を振り払うと、
「ラフタリア! 決めろ!」
ラフタリアの名を呼ぶ。彼女はすぐさま走り、突き刺さっていた剣を抜き取り、もう一度犬の体を刺した。一回だけで終わらず、何度も突き刺す。
「ガ……ウ……」
やがて犬は絶命し、地面に倒れ込む。その犬は強かったからか得られる経験値が多く、レベルアップした。
「いやはや、見事な活躍だったよ、我が魔王」
「最後に決めたのはラフタリアだから、ラフタリアのことも褒めてあげてね」
「……ラフタリアくんも見事だったね」
い、言わされてる感〜……。こういうのを見るとウォズに対する何なんだこいつ感が増していく。
「で、二人とも、大丈夫?」
ソウゴが駆け寄り、俺達の安否を確認する。
「俺はなんとか」
「私も、大丈夫です」
俺とラフタリアは二人とも大丈夫なことを伝える。
「やったね、ラフタリア」
「頑張ったな」
ソウゴと俺はラフタリアに労いの言葉をかける。
「…………ありがとうございます」
「もう、怖くはなくなった?」
「…………はい!」
ソウゴからの問いに、ラフタリアは力強く頷いた。
「私……これからも、頑張ります」
ラフタリアはそう宣言する。彼女は過去を、恐怖を乗り越えて、新しい一歩を踏み出せたのだ。
それからは犬の魔物の死骸を解体し、盾に吸わせて新しい盾を解放した後、鉱石探しを再開。そこでライトメタルというのを発見し、夕方まで採掘して十個入手。それも吸わせて新しい盾を解放。
村に帰還してライトメタルを売ると、高値で売れて懐がホクホクになった。
「ナオフミ様、ソウゴ様、ウォズ様……絶対に、波に勝ちましょうね」
「ああ」
「勿論だよ」
ラフタリアの言葉に俺とソウゴは答える。負け、それはつまり死。当然だが勝つしか無い。俺も、頑張って強くならないとな。
鉱石を売った足でそのまま、俺達は晩飯を取りに行くことにしたのであった。
> 何なんだこいつ感が増していく。
ウォズは身内以外には割と冷淡な感じだと思うから許したげて
【現在公開可能な情報】
今回で解放した盾
双頭黒犬の盾
装備ボーナス"アラートシールド"
専用効果"ドックバイト"
解放素材:双頭の犬型の魔物
ライトメタルシールド
専用効果"魔法防御向上"
解放素材:鉱石"ライトメタル"