宿儺「どけ!!!俺は主人公の相棒だぞ!!!」 作:バケギツネ
◇
ここは、高専内のフリースペース。
赤犬バギーとの戦いの後、少し休んだ俺たちは長野から東京に帰還。その翌日には五条さんから、事の経緯について聴取を受けていた。
『いや〜、特級呪霊に襲われるなんて、災難だったね〜。悠仁に.....宿儺。』
『そうだよ先生!マジで化け物だったんだよ、アイツ!頭富士山なのに!!』
「ああ。なかなかの強敵だった.....」
『ふーん。ま、僕ならもっとスマートに祓えてたろうけどね〜。』
は?
『それより、今後の予定についてだ。悠仁、黒閃を決めたんだって?』
『先生、黒閃って何?』
「五条悟、コクセンって、なんだ?」
『宿儺、お前マジで言ってる?』
だって分かんないんだもん。
コクセンをきめる?キメる.......
あ、危ないお薬的な?
「あ、ああ。思い出した、アレだろ?コクセンってほら、キメると気持ちよくなれるやつ.....だよな?」
『ま、そうだけど。』
まあそうなの!?え、悠仁がコクセンをキメたって.....
おい悠仁!!見損なったぞ!!!
『とにかく!悠仁にもう基礎的な訓練は必要ない!ってわけで、重めの任務をいくつかこなしてもらうよ〜。』
重めの任務....か。きっと更なる強敵が待ち受けているに違いない!
バトル漫画はインフレが激しいからな。
ひょっとしたら最終回が終わる頃には、赤犬バギーの強さは下から数えた方が早いぐらいになっているかもしれない。
恐ろしい世界やでホンマ。
『漏瑚が死んだか......』
『クックック。奴は我々、呪霊四天王の中でも最弱。』
今こうしている間にも、奴の仲間がそんな会話をしているかもしれないな。
まあついていけるでしょ。俺たち、主人公だし。
◆
『伏黒とか言ったか?どんな女がタイプだ!?』
一方その頃。
久しぶりに登場した伏黒恵は、話の通じないゴリラに絡まれていた。
『ちなみに俺は、タッパとケツがでかい女がタイプです!!』
どう考えても必要がないのに上着をビリビリに破いたのは、話の通じないゴリラもとい、
一級術師・東堂葵だった。
『なんで初対面のアンタと女の趣味を話さないといけないんですか?』
伏黒恵のマジレス。しかしその程度で引き下がるほど、東堂葵はまともでは無い。
『京都3年、東堂葵だ。これでお友達だな。早く答えろ。』
伏黒は仕方なく、妥当な答えを模索する。
『人を許せないのは悪い事じゃ無いよ。それも恵の優しさでしょ?』
自然と彼の頭に浮かんだのは、自身の姉の姿だった。
『別に好みとかありませんよ。その人に揺るがない人間性があればそれ以上は何も求めません。』
『...........やっぱりだ。退屈だよ、伏黒........』
東堂葵は泣いていた。
ドンマイ、伏黒恵。彼は日和ったばっかりに東堂の怒りを買った。もしあそこで伏黒が、
『髪はほんの少し茶髪がかった黒髪。胸も尻もその細いシルエットを損ねないほどの慎ましやかなもので、かと言って、無さすぎるというわけでもなく、性格は、おっとり系をベースにしつつ、ちょっと気が強いところもあるっていうスパイス入りって感じな、CV早見○織の義姉!!!!
あと揺るがない人間性!!!
それさえあれば、それ以上は何も求めません(キリッ)。』
とでも答えていたら、結果は違っていたかもしれない。
ただその場合は確定で、隣にいた野薔薇が敵に回っていた。
ともかく。
ゴリラの機嫌を損ねた者に待っているのは、理不尽な暴力。東堂のラリアットによって、伏黒は吹き飛ばされていた。その身体は勢いよくグラウンドに突っ込んで、砂煙をあげる。
『わざわざ質問したのに......お前は俺の優しさを踏み躙ったんだ。』
尚も涙を流す東堂にドン引きしながら、伏黒は頭を回す。彼は東堂に関する知識が全くない。
去年に未曾有の呪術テロでもあれば、そこでの東堂の活躍は伏黒の耳にも届いていただろうに。
情報がない以上、伏黒は東堂を見た目で判断する。
敵はどう見ても近接タイプ。なら距離をとったうえで拘束するのが最適!
『鵺プラス蝦蟇、 不知井底!!』
伏黒の周りに羽の生えた蛙が複数体出現する。
『やれ!!』
伏黒の合図で、蝦蟇たちの舌が一斉に伸びる。しかし東堂は、その包囲網をなんなく突破し伏黒に肉薄していた。
『薄っぺらいんだよ。身体も。女の好みも!!』
東堂のラリアット。だがその動きを察知していた伏黒は、自身の影に沈み込んで、その一撃を回避する。
『ほお、俺の動きを目で追えるのか。』
『もっと速い奴を知ってるんでな。』
伏黒の脳裏に浮かぶのは、少年院での戦い。自分の浅慮が最悪の事態を招くところだった、あの時。
『その気はなかったが仕方ない。やってやるよ。本気でな。』
あの時の自分から少しでも成長しようと、伏黒恵は努力を重ねていた。
『ちょうどいい。そっちから仕掛けてきたんだ。実験台になってもらう。』
伏黒恵は掌印を結ぶ。その形は魔虚羅を呼ぶためのものではない。今、彼が放とうとしているのは、呪術戦の頂点。
『闇より出でて闇より黒くその穢れを禊ぎ祓え』
伏黒の下ろした帳が、自身と東堂を包みこむ。
『帳だと?何を考えている...?そんなに俺と2人っきりになりたいのか?悪いが俺には高田ちゃんが....』
妄言を撒き散らすゴリラをよそに、伏黒は意識を集中させていく。
あの時、自身の憧れがやったことの猿真似。
だが今は、それでよかった。
原作で伏黒自身がこぼしているように、領域というのは難易度が高い。現実空間にスケールの異なる擬似空間を重ねる感覚が、なかなか掴めないとのことだ。
ならばと、伏黒は自身の下ろした帳をそのまま領域として転用する。東堂はその異様な気迫を感じ取り、伏黒恵を初めて警戒した。
『領域.....展か
パンッ
伏黒恵の目の前から東堂の姿が消える。集中が途切れ、領域は霧散した。
『高速移動、いや、瞬間移動の類!?』
答えに辿り着いた瞬間、東堂の打撃が伏黒の後頭部に炸裂する。
『があっ!!』
吹き飛ばされた伏黒は、校舎の壁に激突してようやく止まる。
もちろん校舎の壁は死んだ。多分、弁償してくれるさ。京都校のおじいちゃんが。
『伏黒よ、悲しい誤解があったようだ。お前は退屈なやつじゃない。先程はヒヤっとしたぞ。』
伏黒は、手放しそうになる意識を必死で手繰り寄せる。
『IQ53万のこの俺が、事前に察知し、術式を使用していなかったら、危ないところだった。交流戦、楽しみにしてやるぞ。』
『待てよ。』
伏黒はなんとか立ち上がる。その顔からは、闘志が未だ消えていない。
術式はわかった。恐らくあの手拍子が発動の合図。
『次は、対応できる...!』
『ほお、全く欲張りなやつだ。いいだろう。第二ラウンドを.....』
『動くな』
『何、やっ、てん、の!?』
東京校の呪言師・狗巻棘と準2級術師・パンダが見かねて助けに入る。呪言で縛られ、まともにガードのできない状態で食らった、パンダパンチ。
それでも東堂はピンピンしていた。
『久しぶりだな、パンダ。』
『なんで交流戦まで我慢できないかねえ〜。帰った帰った。大きい声出すぞ、イヤーンって。』
『まあ、いいだろう。そろそろ現地へ向かう頃だしな。』
『ツナ......』
『すみません、熱くなり過ぎました........』
東堂はさっきまで上着だったものを回収すると、釘崎と一悶着起こしていた真依を引き連れて、高田ちゃんの個握へと旅立っていった。
『ああ、そうだ。乙骨に伝えておけ。お前も出ろと。』
最後に、現在海外遠征中の特級術師・乙骨憂太への伝言をのこして。ちなみに、この伝言がアフリカにいる乙骨に届くことはない。
◆
記録 2018年9月
神奈川県川崎市、キネマシネマ。
上映終了後、男子高校生3名の変死体を従業員が発見。
死因 頭部変形による脳圧上昇 呼吸麻痺。
『あの、映画館の....あなたがやったんですか?』
『へぇ〜、君。俺が見えるんだ。』
呪術廻戦。
その作品の方向性を決定づけたあの事件が今始まる。