宿儺「どけ!!!俺は主人公の相棒だぞ!!!」 作:バケギツネ
津田○次郎、いいよね。
◇
ケヒヒッッ!
やったやった!久々の任務。
どうやら今回は俺と悠仁に加え、一級術師の1人が引率に加わってくれるそうだ。
『はーい、注目!脱サラ呪術師の七海建人君でーす!』
『その言い方やめてください』
五条さんに肩を組まれて登場したのは、金髪グラサンのイケオジだった。七海建人か。
あれ、待てよ。このイケオジの声って、もしかして.....
「HEY 悠仁!」
俺は思わず悠仁の身体を借りて、顕現する。
『!? 両面宿儺....!』
なぜかこちらを警戒している七海さんに、俺は恐る恐る声をかける。
「あの、『粉砕・玉砕・大喝采』って、言ってくれませんか?」
『.................はい?』
間違いない!この渋いイケボ!!!
海馬社長の人!海馬社長の人だ!!!
うっひょーーー、たまんねえ〜。この人の声、大好きなんだ!!!
あ、七海さん....いや海馬社長が怪訝な顔してる.....
まあ、そんなことはどうでもいい!!
なぜか武器を構えかける彼に俺は最高スピードで接近し、抱きしめた。
『!? 』
「ずっと会いたかった......!!」
『........????????????』
海馬社長、わけがわかんないだろうな〜。でも、しょうがないじゃん!!
前世の推しと同じ声帯に出会えたんだぞ!!
あ、やべえ。嬉しすぎて、涙出てきた。
「う、うう、ああ.....会えて...よかった.....よかったよ....うう....」
その気になればすぐに身体を取り返せる悠仁も、俺の尋常じゃない様子を察したのか、静観してくれている。
ありがとう、悠仁。ありがとう、海馬社長。
今はただ、君たちに感謝を....!
◆
『ねえ、七海。宿儺とどういう関係?』
『それを聞きたいのは私です....!!』
呪いの王に知らない名前で呼ばれ、泣きながら抱きつかれる。
『今まで遭遇してきた、どんな呪霊よりも、ホラーだな...』
宿儺の鼻水にスーツを汚されながら、七海建人は1人ごちるのだった。
◇
被害者は頭を変形させられて死んでいた。海馬社長と会って、浮かれていた気が一気に引き締まる。
あの後、ひとしきり津田○ボイスを味わった俺は、身体を悠仁に返却。そのまま現場であるこの映画館に来ていた。
痛かっただろうな......クッソ呪霊め........
「HEY 悠仁!」
遺体の前で手を合わせている悠仁が、身体を譲ってくれた。俺も被害者たちの冥福を祈っておこう。俺と悠仁が必ず仇をうってやるからな。
『.......................』
呪霊の痕跡、残穢を追って、俺と悠仁、ナナミンの3人は映画館の外に出る。あれ、さっきから海馬社長のサングラスの奥から、視線を感じる。
きゃっ、照れちゃう。思い切って聞いてみよう。
「あの.....海馬社長、どうしました?」
『両面宿儺、あなたという生き物がまた一つ分からなくなりました。』
「........?」
どういう意味だ?俺ほど分かりやすい人間もいないと思うんだがな。
「それより、海馬社長!」
『その社長というのをやめてください。』
「じゃあ.........海馬ぁ!!」
『そういうことではありません。』
『じゃあさ、すっくん。ナナミンって呼ぶのはどう?』
俺の中から、悠仁がナイスアイディアを出してくれる。
「いいな!そうしよう。ナナミン!!」
『ナナミン!!』
「ナナミンーーーー!!!」
『ナナナナナミーーーン!!!!』
あ、流石にやりすぎたか。ナナミンちょっとイラッとしてる....
俺はたまらず、悠仁の奥に引っ込んだ。
『あ、すっくん!!逃げたな!?』
いきなり表に出され、盾にされた悠仁はあたふたしている。
「悠仁、俺を助けろ.......」
『いや出てこいって、おい、すっくん!!』
『.......貴方達、随分仲がいいんですね。』
『え....?.....まあ、相棒だし!』
「ふ、ふん!仕方なく、一緒にいてやってるだけだがな....」
『あ、ごめんナナミン。こいつめんどくさいんだよ.....』
『.................』
なんかナナミン、今更ながら海馬社長とはキャラ違うな。なんか、暗いっていうか、大人っぽいっていうか。
『虎杖悠仁くん。一つ忠告しておきます。』
ナナミンは、悠仁の顔に生えている俺の顔を指差した。
『そいつはどこまでいっても呪いです。』
お、おう......中々手厳しいな。
『分かり合えていると思っているなら、それは勘違い、貴方は利用されているだけです。いずれ裏切られ.....』
『ナナミン!!!すっくんはそんな奴じゃ....』
悠仁がその言葉を遮ってくれた。だが......
「悠仁、いいんだ。」
俺は生やした口から言葉を紡いでいく。
「ナナミンを責めるな。この人は、悠仁を本気で心配してくれてるんだぞ。」
『........................』
「まあ無理もない。俺は呪いの王だしな。」
初対面の際のこの反応、流石に慣れた。まあちょっと辛いけどな。
大丈夫。これから時間をかけて、分かって貰えばいいさ。
悠仁の時みたいに。
『呪いは人間とは根本から違う存在。分かり合うのは不可能。これは、呪術師にとっては常識です。』
常識、か。
「......そうか。クックック........」
『どうしました?』
「ならば、俺もお前に一つ、忠告しておこう。常識だと?そんなもので俺を測れると思うな。俺は誰がどう言おうと、悠仁の相棒だ。」
そこだけは、絶対に揺るがせるつもりはない。
「何なら、この場で縛りを結んでやってもいいぞ。俺は絶対に悠仁を裏切ることはない...!」
『すっくん..........』
どうだ!俺の渾身のプレゼンは!!
流石にナナミンの心にも響いて.....
『ええ。ではお願いします。縛りを結んでください。』
「...........え?」
『虎杖悠仁くんを裏切らないという縛りです。早く結んでください。』
あれ、全然響いてない......?
「いや、あれはさ、言葉のあやというか......」
『では、やはり裏切るんですか?』
「え?」
『裏切らないのであれば、縛りを結んでも問題はないはずです。やはり裏切るんですね?』
「ぐぬぬ......いいぞ、結んでやる.....!!!」
はい縛り!!!
“俺と悠仁は互いを絶対に裏切らない”
「どうだナナミン!俺と悠仁の友情パワーを思い知ったか!?」
『では、行きましょうか。』
クッソ!この冷血漢め!!!
俺は生得領域の中で、ちゃぶ台に台パンするのだった。
『はあ.......本当に縛りを結ぶとは.......両面宿儺、ますます分からない.......』
ナナミンめ、いつか俺と悠仁の仲を認めさせてやるんだからな!
でも今は任務だ。さ、切り替え!切り替え!
事件の犯人を早く見つけなくては...!
『監視カメラには、何も映ってなかったんだよね?』
『ええ。被害者以外は少年が一名のみです。』
「いや、ソイツだってっっっ!!!!!!!!!!」
ヤッベ、生やした口からつい大声出しちゃった。
『うわ、びっくりした。どったの、すっくん?』
「いや、その少年、怪しいだろう!?なんかこうメタ的に!!」
現実ならともかく、ここは少年ジャンプの世界。このシーンは、“被害者以外は誰もいない”でもいいわけだ。わざわざ、1人の少年の存在を匂わせるだと?
間違いない!!犯人はソイツだ!!!
そういえば、事件現場の映画館では『ミミズ人間3』なる映画が上映されていた。
そのあらすじは、マッドサイエンティストが改造によって、強化人間を作る的な奴!!
犯人の少年はその映画の大ファン!!!
故に模倣したんだ!!!
ミミズ人間を実際に作りたかった、それが動機だ!!!
真実は、いつも一つ!!!!!!
『まあどうであれ。その子の身元特定は警察に任せましょう。』
まあ、そうだよな。俺たちに、探すあてがあるわけじゃないし....
『ストップ。』
ナナミンが悠仁を制止する。前後に2体、悍ましい気配がする。呪霊か。
「悠仁、替わるか?」
『大丈夫!試したい技もあるし!』
さすが悠仁だ、頼もしいぜ。
『私は前の個体を。虎杖くんは後ろの個体をお願いします。』
『了解!』
こうして2対2の戦いが始まる。
ナナミンの術式、それは、なんかこう、7:3を作って、こう、それを相手に当てはめて、あの、ポケモンの弱点、いや、きゅうしょみたいなのを殴るみたいな感じで、殴る、あの、あれだ。
俺はてっきり、式神:青眼の銀龍とかだと思ってた。
あと自分の技を自分で説明したら、威力が上がるらしい。
でも俺、上の通り説明下手だからな。あんまりそれは使えないかも。
おまけに俺ってば、自分の技をまだよく分かっていないし。
そうだ、今度敵と戦う時は、
「心配せずとも。術式の開示など狡い真似はせん。」
とでも言ってみるか。うん、そうしよう!
いいな。すごく強キャラっぽい感じだ。まさか相手も、俺が知ったかぶりしてるとは思うめえ!
さて、次は悠仁の戦いの方だ。
やっぱ、ステゴロ強いな〜。呪霊をフルボッコだドン!って感じだ。
今度格闘技教わりたいんだけど、俺たち身体は一つだからな〜。俺の身体を縦に斬ってから反転術式でそれぞれ再生するとかで、2人に増えたりできない?
うん、流石に無理だな。普通に即死する気がする。あと絵面が気持ち悪くて嫌だ。
真の意味で悠仁と共闘出来たりしたら胸熱なのにな〜。
お、悠仁、いいパンチだ!
行け!そこだ!やれやれ〜!!
◆
黒閃を狙って出せる術師は、存在しない。
「黒閃?ああ、ブラックサンダー・スクナックルのことか。出し方だと?ヒューとやってヒョイッだ。ヒューヒョイッ。分からないだと......?..........ごめん。」
すっくんという意味不明なバグを除いては。
だが今、その例外がもう1人現れようとしていた。
虎杖悠仁は、漏瑚との戦いを、その後五条悟から受けたレクチャーを思い出し、集中する。
「悠仁!頑張れ、ヒューってやってヒョイッだぞ!!ヒュ.............
悠仁の頭の中から雑音が消える。目指すのは、打撃との誤差0.000001秒以内に呪力を衝突させること。
『悠仁、パンチ.....』
『虎杖くん!トドメは待ってください!!』
◇
なんだなんだ?
悠仁が呪霊に拳を振り下ろす直前、ナナミンからのストップがかかる。その表情は、凄まじく険しかった。
『落ち着いて聞いてください。私たちが戦っていたのは....人間です。』
悠仁の足元に転がるグロテスクな生き物に目をやる.......
人......
これが......人..............?
◆
『大丈夫かい?相手は虎杖悠仁。あの漏瑚を倒した術師だ。』
陀艮の作った領域のビーチで、羂索は問いかける。その相手は、人から生まれた特級呪霊・真人。
羂索にとって、真人、いや彼の術式は、自身の計画を完成させるために必要不可欠なもの。何があっても失うわけにはいかなかった。
『まあ、まともにやったんじゃ、勝てないだろうね。虎杖悠仁、奴の体は強靭すぎる。でも...........』
そう言って真人は笑顔を浮かべる。
『彼の心、魂の方は、どうかな?』
その顔に悪意と好奇心をたっぷりと滲ませて。
『夏油はどう思う?彼の魂、へし折り甲斐があると思わない?』
すっくんはいずれ対峙する。『死』という鏡そのものであり、ターゲットの魂を殺すことに愉悦する。
そんな、自身の天敵と。