宿儺「どけ!!!俺は主人公の相棒だぞ!!!」   作:バケギツネ

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主人公の対になるキャラって、いいよね。

 

 

 補助監督・伊地知潔高はすっくんから相談を受けた『縛り』について五条悟に報告していた。

 

『人を殺さない縛り?あの宿儺が......?』

 

『はい.......』

 

『何かのブラフって可能性は?』

 

『恐らく、それはないでしょう。ただの心証ですが。彼は本気で、人の命を.....守ろうとしています。』

 

『......オッケー。引き続き、悠仁のサポート頼むよ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 電話を切った五条はため息をついた。

 

 奴と一度だけ戦ったあの夜を思い出す。呪いの王・両面宿儺、そのポテンシャルは本物だ。警戒すべき。間違っても心を許すべきではない。

 

 なのに、奴には妙な親しみが湧いてしまう。

 

『やっぱ、似てるんだよな〜、“アイツ”に。』

  

 五条は今の宿儺にとある人物の面影を見ていた。

 

『意味不明なことばっか言う癖に.....全力で、何かを守ろうとしてるところ、とかさ。』

 

 五条悟は回想する。あれは確か、10年以上前。自分がまだ学生服を着ていた頃....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『出てくるならさっさとしてください。』

 

 とある下水道。対峙するのは、一級術師・七海建人と一連の事件の犯人、特級呪霊・真人。

 

『いやーよかった。あんまり弱いと、実験にならないからさ。』

 

『残業は嫌いなので、手早く済ませましょう。』

 

 原作の流れと同様に、両者は激突する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 こちらすっくん、こちらすっくん!

 

 現在吉野順平の追跡中であります!

 

 ケヒヒッ、俺から逃げられると思うなよ?っていうか、吉野順平...私服?

 

 学校はどうした学校は?この不良少年め!

 

 お、ふむふむ。家に帰るところだな?

 

 あれ、家の前に誰かいる?ポッチャリ系の...教師か?

 

 キャラデザ的に、メインキャラじゃ無さそうだ。

 

『吉野、どこ行ってたんだ?』

 

 順平に話しかけるポッチャリ。うん、声的にもメインキャラでは無さそうだ。あのキャラデザで声優が有名だったら、それはもうコナンの犯人なんよ。

 

『外村....先生.......』

 

 順平の顔に影が差す。

 

『聞いたか?佐山、西村、本田、亡くなったって。お前、仲良かったよな?』

 

 順平の顔が、目に見えて曇った。

 

『友達もいないお前をよく構ってやってたろ。それなのに葬式にも出ないで.....全くお前は、一緒に行ってやるから、線香だけでもあげにいこう。』

 

 ちょ、外村気付けって!順平の顔見てみろって!!

 

『何ブツブツ言ってんだ。引きこもっておかしくなったか?なんて。ハハ.....』

 

「もういい。お前は喋るな。」

 

『うわっ!?なんだ、君は、どこから現れた!?』

 

 ヤッベ。

 

 すっくんってばつい、2人の間に飛びこんじゃった.....

 

 まあいい!言いたいことを言ってやらあ!!

 

 

 

 

 

 

 突然の乱入者に、順平は驚く。

 

 顔に紋様のある黒づくめに赤パーカーの男が、いつの間にか、自分を外村から守るようにして立っていたのだ。

 

(動きが速すぎて見えなかった...?)

 

 この人の気配...

 

 何ていうか、真人さんに似てるような...

 

「外村だったか?順平が傷ついてるのが、分からないのか。」

 

(僕を、庇ってくれている...のか?)

 

『なんだと!?誰だか知らんが、失礼だなキミは!!』

 

 唾を飛ばしながら何かを喚き散らしていた外村。その安そうなスーツとズボンが、突然3枚におろされる。

 

『な、なんだ!?いきなり服だけがビリビリに破けたぞ!?どうして俺が、こんなエロ漫画みたいな目にーーー!!!』

 

 ズタボロになった服を抱えた外村は、大事なところを隠しながらその場を走り去る。

 

(間違いない。真人さんと同じ不思議な力。この人は...!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 すっくん、反省.....

 

 カッとなって、ちょっとやりすぎちゃったかも。

 

 あの外村とかいう教師も、悪気があるわけじゃないんだろうな。色々と配慮ができていないだけで。

 

 あと、おっさんのラッキースケベを強制的に見せられた順平、ごめん。

 

『あの、』

 

 恐る恐るといった感じで、順平が話しかけてくる。で、どうしよ...

 

 つい勢いで追跡対象の前に出てきちゃった。

 

 いやだってさ、順平の顔すっげえ辛そうで...見てられなかったんだよ...

 

『ありがとうございました!』

 

 俺に向かって頭を下げる順平。

 

 ほえ?

 

『外村のあれ、貴方がやってくれたんですよね?』

 

 ああ、それが分かるのか。とりあえずこの子は呪術適性ありと。

 

 っていうか...

 

「俺を怖がらないのか?」

 

『ええ。貴方も、呪い...なんですよね?』

 

「あ、ああ。呪いの王をやらせてもらってる.........え、ホントにビビらないのか?」

 

『僕はそういうのどうでもいいので。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 既に真人という前例を体験している順平は、呪い、特に人型で理性を持っている呪いに対して、ある種の信頼を置いていた。

 

 彼らは人間ではない。だが、自分の最も嫌いな奴らよりは、よっぽど人間らしい存在だ、と。

 

 それどころか...

 

 

『君たちマナーは守ろうね。』

 

 

 呪いなんかよりも、よほどタチの悪い害虫を排除してくれる。

 

 

『君との会話はストレスが無くて助かるよ。』

 

 

 安全圏から決して出てこないあいつらとは違って、自分の声に耳を傾けてくれる。

 

 

『俺は順平の全てを肯定するよ。』

 

 

 自分を認めてくれる。

 

 

 吉野順平にとって、呪いは自分の味方だった。故に彼は臆さない。

   

 そんな彼のスタンスはすっくんにブッ刺さる。

 

「順平!貴様めちゃくちゃいいやつだな!!!」

 

『え、いや、そんな........』

 

「いいや、貴様はいいやつだ。お前が初めてなんだ、初対面でこの俺にビビったり、警戒したりしなかった人間はな。」

 

 

 強者ゆえの孤独.。

 

 とはちょっと違うかもしれないが、すっくんは両面宿儺に転生して以来、あらゆる人間にビビられて、あるいは警戒されていた。

 

 彼の転生先を思えば、それも仕方のないことなのだが。

 

 

 

  

 思い出すなぁ〜。この作品の1〜8話あたりだったか。

 

 あの頃は、悠仁を含めたほぼ全員から疑われまくっていたっけ。

 

 実はすっくん、普通に傷ついてたんだからね!

 

 俺は元々普通の高校生。

 

 漫画脳で多少誤魔化されているとはいえ、そのメンタルは人並みなんだ。もっと優しくしてほしい。

 

「ま、そんな俺も今じゃ理解ある相棒ができたんだがな。だろう?悠仁。あれ、悠仁....?」

 

『......................ああ、悪い。ちょっと、考え事してた。』

 

「いつもより、元気なさそうだぞ。大丈夫か?」

 

『.......おお。モーマンタイよ!』

 

 そう言って悠仁は奥へ引っ込んだ。大丈夫かな....?

 

 あれ、何の話だっけ?そうだ、順平はいいやつって話だ。俺は順平への賛辞を送り続ける。

 

「順平。お前のその分け隔てなさは素晴らしい美徳だ。誇れ」

 

『いえ僕は、つまらない拘りに囚われたくないだけで....』

 

 

 

 

 順平は謙遜しつつも、その口元を自然と緩ませていく。

 

 真っ直ぐに自らを肯定してくれるすっくんは、順平にとって、真人と同等の劇薬だった。

 

「俺は両面宿儺。すっくんと呼んでくれ。よろしくな、順平。」

 

 すっくんはその手を差し出す。

 

『あ、どうも。す、すっくん。』

 

 順平は迷わずその手を取った。

 

 

 

 順平めっちゃいい子!ノータイムで握手してくれた!!

 

 俺がこの身体に転生してから、何度握手を断られたと思ってる!?この子、マジで呪いを差別しないな。

 

『す、すっくん........あの、そういえば.....』

 

「どうした、順平。何でも聞いてみろ。」

 

『なんで僕の名前を知ってるんですか?』

 

 ギ、ギク!!!

 

「あ、えーーーーーと.............」

 

 どうしよう。任務のこと、どこまで話していいんだっけ...

 

 今の俺には断言できる。順平は犯人じゃないし、人を殺すような奴でもない。

 

 全く誰だよ、順平が真犯人とか言ってたアホは。とはいえ、一応まだ調査対象だし...

 

『もしかして、真人さんから僕のこと聞いたんですか?』

 

 ...マヒト?

 

「誰だ、そいつは。」

 

『え.......あ、いや........』

 

 そこで初めて順平は、自分の失言に気づいたようだ。その反応からなんと無く察しがつく。その真人ってやつは...

 

「呪い、なんだな?」

 

 

 

 

 

 

 順平はようやく気づく。すっくんの服についた、うずまきのボタンに。

 

(真人さんが言ってた、呪術師.....?)

 

 

◇ 

 

「順平答えろ。そいつは呪いなんだな。」

 

 順平には悪いが、大事なことだ。確認しなくてはな。

 

『.....はい。人から生まれた呪い、本人がそう言ってました。』

 

何!?人から生まれた...だと!?

 

『でも、彼は悪い人じゃありません!!』

 

 

 

 この時の順平は原作のあの時とは違い、真人によって改造された人間の惨たらしい姿が、脳裏をよぎることはなかった。

 

 いや。

 

 たしかに脳裏に浮かんだ上で、見て見ぬふりをしたのかもしれない。彼は、自分の理解者を守りたかった。

 

「その真人ってやつは、お前の友....なのか?」

 

『........はい、そうです!』

 

「そうか..........最後に一つ聞かせてくれ。数日前、キネマシネマでお前の同級生3人が死んでる。それについて、何か知ってることは?」

 

『いえ、何も。』

 

 順平は、咄嗟に嘘をついた。ついてしまった。

 

 もう、後には引けなくなってしまう。

 

『突然みんなが死んで...怖くなって、その場から逃げた。それだけです。』

 

「信じて、いいんだな?」

 

『はい。』

 

「そうか............」

 

 その問答を終えた後、すっくんはしばらく黙り込む。

 

 その表情は、外村に向けたものとは比べ物にならないほど、険しいものだった。それからさらにしばらくして、すっくんはようやく、順平の方へと向き直る。 

 

 

 

「順平、お前は高専に来い。真人と一緒にな。」

 

『......え?』

 

「そこそこ強い教師や、頼りになる仲間がたくさんいる。皆、お前と真人の力になってくれるはずだ!!」

 

『ちょ....』

 

「お前の同級生を殺した外道も必ず見つかる!」

 

『いや...』

 

「必ず報いを受けさせてやる。一緒に戦おう!!!俺と、順平と、悠仁と、真人の4人で!!!!』

 

『.........はい、そうですね。』

 

 順平は、考えるのをやめた。

 

 

 

 

 

「真人は呪い、なんだな?」

 

『.....はい......人から生まれた呪い、本人がそう言ってました。でも、彼は悪い人じゃありません!!』

 

「その真人ってやつは....お前の友......なのか?」

 

『........はい、そうです!』

 

「数日前、キネマシネマでお前の同級生3人が死んでる。それについて、何か知ってることは?」

 

『突然みんなが死んで...怖くなって、その場から逃げた。それだけです。』

 

「信じて、いいんだな?」

 

『はい。』

 

 

 

 

◇ 

 

 順平から、聞きたいことは全て聞けた。点と点がつながって、この事件の全体像が見えてくる。

 

 まず、順平と真人。この2人は、

 

 俺たちの追加戦士だ!!!!!!

 

 術師と呪霊のタッグ。組み合わせとしても申し分ない。

 

 特に、俺が気になっているのは“人から生まれた”という呪霊、真人だ。

 

 順平の話では、彼は長身色白で髪は灰色の長髪。おまけにイケメンイケボときた。

 

 これで味方じゃないとかある?

 

 おまけに。

 

『人から生まれた』

 

 つまり真人は、呪霊の父親と人間の母親、その禁断の愛の末に生まれた、呪霊と人間のハーフ!!!

 

 そういうことだろう。きっと壮絶な過去があったんだろうな.....

 

 今、すっくんの脳内に溢れ出す存在しない記憶!!!

 

 

 

 

 

 

真人パパ

『真人。お前は父さんに似て、強い。だから、人を助けろ。』

 

真人ママ

『もお〜、パパったら〜、お母さんに似て、でしょ?』

 

 優しい父、頼りになる母、その2人の愛をたっぷり受けて育った息子、真人。真人ファミリーは、それはもう温かい家庭だったのだろう。そこには、種族を超えた美しい愛があった。

 

 だが、そんな彼らの幸せは脆くも崩れ去る。アイツの手によって。

 

魔虚羅

『マーコマコマコォォ!!真人パパ!!人間に与し、特級呪霊たる誇りを捨て去るとは、見損なったマコよ!!』

 

 魔虚羅の剣が家族の仲を引き裂いていく。

 

真人

『パパァァ!!ママァァ!!』

 

真人パパ

『真人、お前は逃げろ!!』

 

真人ママ

『逃げなさい!!私が魔虚羅を素手で抑えているうちに!!』

 

魔虚羅

『く、人間ごときが、中々やるマコねえ!!!!』

 

真人

『やだよ、離れたくない!!!パパとママと、ずっと一緒にいたい!!!』

 

真人ママ

『逃げなさい!!早く!!!!』

 

真人パパ

『世界は広い!!ありのままのお前を受け入れてくれる存在と、必ず出会えるはずだ!!!だからそれまで....頼む....!』

 

真人夫婦

『『生きてくれ!!!!!』』

 

 

 両親の犠牲により、何とか魔虚羅の追跡を逃れた真人。彼は父からの教えに従い、呪いの身でありながら、呪いを祓い、人間を守っていた。

 

 だが......

 

 どんなに人を助けても、呪霊の血を引いているというだけで、人間たちからは迫害されてしまう。

 

モブA

『この化け物め!!貴様がいるから人が死ぬんだ!!!!』

 

モブB

『頼む、村から出て行ってくれ!!これ以上、村人に死んで欲しくないんだ......』

 

モブC

『きゃあああ!!やめて!!!私の息子に近寄らないで!!領域展開!!!!!』

 

 生きる意味を見失いつつあった真人。

 

 そんな彼が出会ったのは、呪霊を差別しない青年・吉野順平だった。

 

真人

『なんで逃げないの?僕、呪いなんだよ....?』

 

順平

『そんなこと、どうでもいいでしょ?』

 

 2人はゆっくりと、しかし確かに友情を育んでいく。

 

 だが魔虚羅の部下的な奴が、ついに真人を見つけてしまう。今回起きた映画館の事件は、魔虚羅の部下的な奴から真人への脅しなのだろう。

  

魔虚羅の部下

『真人。私たちの仲間になれ。さもなくば.....私はいつでも、キミの親友・吉野順平を殺せることを忘れるな。マーーーーコラのブーーーカッカッカーーーー!!』

 

 

 以上が、今回の真相だ。真実はいつも一つ!!!!

 

 

 順平と真人をシロとするならば、これくらいの推理じゃないと説明がつかないしな。

 

 だって、だってさ。

 

 映画館の件について聞いた時、順平自身が『何も知らない』、そう答えたんだ。

 

 俺は順平を信じる。

 

 呪いである俺を疑わず、信じてくれた順平をさあ、俺の方が疑ってどうすんだよ......

 

 それに真人のことも。呪いというだけで、悪役だと決めつけたくはない。

 

 同じ呪いである俺だけは、それをしちゃダメだ。これでも、フィルター越しに見られる息苦しさは、よく知っているつもりだし。

 

 

『呪いは人間とは根本から違う存在。分かり合うのは不可能です。』

 

 

 脳裏によぎったナナミンの言葉を振り払う。

 

 きっと、きっといるはずだ。俺の他にも、人間と仲良くできる呪いが。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ 

 

『大当たり。』

 

 悠仁と順平の様子を、フードを目深にかぶった人物がずっと見守っていた。

 

 その額には、縫い目。

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