宿儺「どけ!!!俺は主人公の相棒だぞ!!!」   作:バケギツネ

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クソ映画って案外悪くないよね

 

 

 時間は宿儺と悠仁、羂索が感動の再会()を果たす10時間ほど前に遡る。

 

 それはすっくんと悠仁、順平の3人がミミズ人間2を2時間ほどかけて見終わった頃、悠仁が順平家をお暇しようとした時だった。

 

 呪いの王、両面宿儺ことすっくんがゴネ出す。

 

「順平!!この映画、1もあるんだよな?それも見たい!!見たい見たい!!」

 

『『すっくん!?』』

 

 悠仁と順平の声が重なる。

 

『あるけど.....超つまんないですよ。』

 

 ミミズ人間第一作目、そのクソ映画っぷりをよく知っている順平は、遠慮がちに忠告する。

 

「いや、構わん。」

 

 しかし、呪いの王は退かない。

 

『おいすっくん、流石に迷惑だって。もうこんな時間だし....』

 

 この時点で既に、午後10時過ぎ。外はすっかり暗くなっていた。流石に悠仁も気を遣う。

 

『いやまあ、僕はいいんだけど........』

 

 そう言って順平は、戸棚からミミズ人間一作目のDVDを取り出す。心なしかその足取りは軽かった。

 

『お、良さげなパッケージ!』

 

『パッケージだけはね。』

 

『あー、本編はこれと全然違うやつか.....』

 

 パッケージ詐欺。それはクソ映画のお約束である。

 

 その後、また2時間ほどかけて。3人はミミズ人間一作目を視聴。見終わる頃にはとっくに日付が変わっていた。ちなみに悠仁は途中から、ほぼ寝ていた。

 

『あ、終わった?じゃあ、すっくん....流石にかえろう』

 

 瞼を擦りながら、悠仁は立ち上がる。しかしすっくんは、まだ満たされてはいなかった。

 

「次は3だな。」

 

『すっくん!?』

 

 悠仁は順平に助けを求めるが....

 

『すっくん.....目覚めたんですね。B級映画の魅力に....!』

 

『順平!?』

 

 すっくんという思わぬ同志の登場に、順平はめちゃめちゃ乗り気になっていた。

 

「さあ、見せてみろ!!ミミズ人間3!!」

 

 

 3人はミミズ人間3の視聴を終える。この時点で、時間は午前3時半。

 

「いや〜、クソだったなあ〜。だが、なかなか楽しめたぞ。」

 

『3から、制作チームがちょっと変わってるんですよ。ゴタゴタしてたんでしょうね。』

 

 少年ジャンプという、いわば王道中の王道を突き進んできたすっくんにとって、B級映画という寄り道は未知の刺激だった。

 

 ツッコミどころ満載の脚本、

 妙にやる気のない役者、

 チープなCG、

 

「一周回って、それが面白い....!」

 

 呪いの王・両面宿儺は完全にB級映画にハマっていた。

 

 

 

 悠仁は帰る契機を失った。

 

 B級映画の沼に沈んだことによる、すっくんの暴走。

 

 今の彼は、体力が尽きるまで本能のままミミズ人間シリーズの視聴を続ける、深夜テンションと化した。

 

 

 続いてすっくんが手を出したのは、『ミミズ人間0』。

 

 作中時系列的には、ミミズ人間第一作目の50年前。ミミズ人間の産みの親であるマッドサイエンティスト、リヒター博士の少年時代を描いた作品だ。

 

 誰得?とかは言ってはいけない。

 

 

「この作品、一作目に繋がらなくないか?」

 

 というのがすっくんの感想。

 

 さらにすっくんの手は番外編にまで伸びる。『ミミズ人間 VS モグラ人間』

 

 知る人ぞ知るあのマイナーB級ホラー映画、『モグラ人間』との奇跡のコラボ作品だ。

 

「ミミズ人間とモグラ人間、最後まで戦わなかったな。」

 

 というのがすっくんの感想。

 

 結局2人の地獄行脚は、既存のミミズ人間シリーズを消費を尽くすまで続いた。

 

 悠仁は、すっくんの畳部屋で寝ていた。

 

 

 

 

 

 

 この時点でのすっくんの認識は、

 

『順平が魔虚羅の部下に狙われている』だ。

 

 B級映画にハマった、のも少しはある。だが、主目的はあくまでも順平の護衛。彼は片時も、順平のそばを離れる気はなかった。

 

 彼の的外れな推理は結果的に功を奏し、羂索のプランを僅かに狂わせることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 羂索は、ずっとスタンばっていた。

 

 原作通り、虎杖悠仁が帰宅した後に、宿儺の指を吉野順平の自宅に仕込むために。

 

 だが、いつまで経っても虎杖悠仁が出てこない。

 

 この指には吉野順平を刺激して虎杖悠仁たちにぶつけるための起爆剤、それ以上の意味もある。

 

 この指は虎杖悠仁ではなく、その他の高専関係者(五条悟は除く)に回収してもらう必要があるのだ。

 

 高専内の、呪物を保管している忌庫。そこへの道標とする為に。高専が保有する宿儺の指、そして自分の作品、呪胎九相図1~3番を取り戻すために。

 

 羂索は待った。それでも悠仁は出てこない。

 

 日が落ちても、日付が変わっても、朝の日差しが差し込んできても、

 

 チラホラと通勤・通学者が増えてきて、黒いローブという不審者スタイルの自分に対し、冷たい視線が浴びせられるようになっても、

 

 それでも悠仁は出てこない。

 

 

『夏油〜、何してんのさ。早くその指、仕込んできてよ〜。』

 

 ついには痺れを切らした真人が、直接催促にやってきた。

 

『そうはいかないんだ。虎杖悠仁が吉野順平に張り付いている。おそらく、私達の計画に勘づいたんだろうね。』

 

 羂索はそのように推理する。大ハズレだが。

 

 ちなみに呪霊である真人の姿は、一般人には見えない。そのため傍目から見た今の羂索は、朝っぱらから黒ローブを見に纏い、何もないところに話しかけている異常者だ。

 

 職質待った無しである。

 

『なるほどね。虎杖悠仁、ただのバカじゃないわけだ。』

 

 真人と羂索が、虎杖悠仁への警戒を強める中で。当の本人はその時...

 

 

 

 

 

 

『..zzzZZ』

 

 すっくんの生得領域で爆睡をかましていた。

 

 殆どの時間を生得領域の中で過ごしているすっくんは、生得領域のインテリアに凝っていた。最近は、Yogiboなんかも導入し始めている。

 

 本来生得領域とは、そう言うものではない。だがすっくんは、その呪術センスによって、自身の生得領域を究極のくつろぎスペースに改造しつつあった。

 

 そのため......

 

『すっげ〜、寝やすかった!!』

 

 後に悠仁はこう語っている。

 

 吉野凪もリビングの机に突っ伏した昨日の状態のまま、すやすやと眠っていた。

 

 原作では朝を迎えることのなかった彼女だが今は毛布にくるまったまま、安らかな寝息を立てている。

 

 

 

 

「ケヒヒッッ、ツッコミどころだらけの作品というのも、悪くない!下手なギャグ漫画よりも笑えたぞ!!」

 

『そう!そうなんですよ!!B級映画は、1人で見るものじゃないんです!!友達とツッコミ入れながら見るのが、一番面白いんですよ!!』

 

 

 一方すっくんと順平は、クソ映画の話題で一晩中盛り上がっていた。

 

『それにしても、あっという間だったな....これで、ミミズ人間シリーズは制覇か。なんだか寂しいものがあるな....』

 

 すっくんはもはや、完全にミミズ人間にはまっていた。

 

『あの、すっくん......これ、見てください!』

 

 順平がすっくんに見せたのは、とある映画のパンフレット。

 

 そのタイトルは.....

 

「ミミズ人間4、だと!?」

 

 すっくんのボルテージが上がる。

 

『今度公開されるんですよ!公開劇場数、すっごく少ないんですけど...!』

 

「これは...見に行くしかないな!!!」

 

『ええ、絶対見に行きましょう!!一緒に!!』

 

「ああ。」

 

 このタイミングで、悠仁の元にナナミンからの連絡がくる。

 

「悠仁、朝だよ!起きなさい!!」

『え、ああ、おう!!もしもしナナミン!』

 

 すっくんに叩き起こされた悠仁は、ナナミンからの報告を受ける。

 

 ナナミンは一連の事件の犯人である呪霊と遭遇したらしい。ソイツは長身色白で、髪は灰色の長髪。その容姿が...順平から聞いていた『真人さん』のそれと一致する。

 

 

 

 そうか。

 

 真人が......犯人か。

 

 ナナミンからの話では、奴は人間の改造を楽しんでいたという。

 

 

『呪いは人間とは根本から違う存在。分かり合うのは不可能です。』

 

 

 正しかったのは、ナナミンだったか。

 

『すっくん.....電話、大丈夫でしたか?』

 

 順平が不安気な表情で聞いてくる。

 

 向き合う時....だな。逃げてはダメだ。

 

 俺も、順平も。

 

「..........順平。真人のことで、知ってることを全部、教えてくれ。頼む.....!」

 

 俺の真剣な表情から、全てを察したのだろう。順平の顔が、絶望に染まる。まあ、彼は嘘をついていたわけだしな。

 

「安心しろ。順平を責めるつもりはない。お前は、大切な友達を失いたくなかったんだろう?その気持ちはよく分かる。」

 

 俺だって悠仁を守るためだったら、なんだってするだろうし。

 

「だが、真人は人を殺す。」

 

 奴に改造された人達のことを思い出す。その時点で、もう彼らを助けることは.........

 

「このままじゃ、たくさんの人が死ぬんだ。俺はそれを止めたい。頼む。」

 

 

 

 

 

 

 

 順平の脳内に短いながらも濃厚だった、真人との日々が浮かぶ。

 

 

『俺は順平の全てを肯定するよ。』

 

 

 あの時の真人さんは僕を救ってくれた。その事実に変わりはない。

 

 でも.......

 

 

『1人の人間を、どこまで大きくできるかの実験。』

 

『逆にそっちは、どこまで小さくできるか試してみた。』

 

『君たちマナーは守ろうね。』

 

 

彼は、人を殺す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 順平は俺たちに、全てを話してくれた。映画館で真人がやったこと。その後、彼から教わったこと。

 

 彼を、信じていたかったこと。

 

『う、うう、ごめんなさい.....ごめん....なさい.....僕が....もっと、強ければ..........』

 

 順平は、自分の心の弱さを悔いていた。

 

「泣くな順平。話してくれたこと、感謝する。」

 

 心が弱いのはお互い様だしな。

 

 さて、悠仁はすぐにナナミンに連絡を取る。ナナミンは遭遇中の改造人間の対処を済まし、すぐにこちらへ向かってくれるとのことだった。

 

「あと30分ほどで、声のいいイケオジがここへ来る。」

 

『すっげー頼りになる人だから、順平たちを必ず守ってくれる筈だ。』

 

『...........はい。』

 

 真人は俺たち高専生と仲良くするよう、順平に言っていたらしい。真人の真意は分からないが、順平には何らかの利用価値があるのだろう。ならば、警護を増やすに越したことはない。

 

「安心しろ、順平。真人は必ず俺達が祓う。そうだな、悠仁。」

 

『おう!!』

 

 

 ちょうどその時だった。俺は感じる。己の持つ力と同質の何かが解放されるのを。

 

『すっくん...?どうした?』

 

 この気配、覚えている!少年院で感じたものとおんなじだ!!

 

 俺の指!

 

 しかも気配が動いてる...あの虫野郎みたいな指持ちの特級呪霊か!?

 

 この感じ、結構近いな...順平の家がある住宅街。そこから少し離れたところにある、河川敷か。

 

 順平の家の近くに、呪霊....?流石に偶然ではないだろう。

 

 バリバリの住宅街である順平の家の周りで、戦いを始めるわけにはいかない。奴が河川敷にいるうちに、叩く!!

 

「HEY、悠仁!」

『オッケー!!』

 

 俺は悠仁から身体を借りる。

 

「呪霊を祓ったら、すぐに戻ってくる!それまで順平、お前はここを動くな!!」

 

『でも..』

 

「お前はここで、一番大事な役目を果たせ。お母様を守るんだ。」

 

『...分かりました!!すっくん、お気をつけて!!』

 

 順平の言葉を背に、俺は指の気配の方に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 河川敷では、黒いローブに身を包み、不気味な仮面をつけたソイツが俺を待っていた。

 

 呪霊じゃない...?呪詛師って奴か?

 

 挨拶がわりに斬撃を飛ばす。

 

「スクナマス斬り。」

 

 しかしその斬撃はあまりにもあっさりと避けられた。こいつなかなか強いぞ....

 

 下手したら、赤犬バギー以上に....!

 

 やっぱりアイツ、『四天王の中では最弱』ポジションだったか。まあ、ビジュアル的にもな。

 

『逢いたかったよ。悠仁、もしくは、宿儺。』

 

 ソイツは妙に馴れ馴れしい口調で話しかけてくる。

 

「貴様、なぜ俺の名を?それにどうして指を持っている?何者だ。」

 

 こいつも、真人の仲間.....?何だろうか。

 

『それはこっちのセリフだよ。今のキミは、一体何者なんだい?』

 

 何者だと?

 

 訳の分からない質問をしやがって。そんなの決まっているだろう。

 

「俺は両面宿儺。呪いの王にして、悠仁の相棒....またの名を、すっくんだ!!!」

 

 

『たはっ、たははははははははははははははは!!!』

 

 俺の目の前で、仮面の男が笑い転げる。

 

 え、なんだこいつ......怖っ。笑いのツボ、どうなってんだよ。

 

『いや〜、驚いたよ。まるで意味がわからない!一体全体何がどうなっているんだか!ははっ、目立つリスクを負ってまで、直接話しに来たっていうのに、謎が深まるとは思ってなかったよ!たはははははは!!!』

 

 何でか知らんがバカウケしてる....

 

「まるで意味が分からないのはこっちだ。お前、呪詛師という奴だな。投降しろ。」

 

『はははっ、ははははははっ、あーーーーー、すまない。あまりにも面白くって。どうしてそうなってるのか、いくら聞いても分かりそうにないね。』

 

 そう言って奴は両手を上げる。

 

「随分物分かりがいいんだな。」

 

『今日は戦いに来たんじゃない。キミと少し、話をしたくてね。想像以上の収穫だった。これは、そのお礼だよ。』

 

 仮面の呪詛師は呪力を用いて、持っていた俺の指を勢いよく弾き飛ばす。

 

「何を...!?」

 

 俺の指は、順平の家とは正反対の方向へ飛んでいき、見えなくなってしまった。

 

 おい、確かあれって.....

 

 呪術廻戦を1話しか読んでない俺でも、知っていることがある。

 

 “宿儺の指は、呪霊を呼び寄せる”

 

 確か恵くんがそんなことを.....

 

『早く回収した方がいいんじゃないかな。確かあっちには小学校があったはずだ。あそこはただでさえ、呪霊が湧きやすいから...』

 

「領域展開・サンドイッチ」

 

 魔虚羅に使った技の強化版。奴の周りにだけ展開した領域で、その動きを封じこめる。

 

『ふふ、領域をこんな風に使うとはね。ますます、気になるよ。キミの正体が。』

 

「黙れ、お前はそこで大人しくしていろ!!」

 

 この技はやっぱり消耗が激しいな....

 

 だが、奴は強い。こうでもしなくては、捕まえられなかっただろう。

 

『あれ、その技.....領域で圧殺するまでがセットなんじゃないの....?』

 

「ふん、俺は人を殺すつもりはない。」

 

『たははっっっ!!!!』

 

 また笑い出した...もういいコイツはほっとこう!!

 

 今は一刻も早くあの指を回収しなくては!俺は全速力で、指の飛んでいった方へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『人を殺さない....か。』

 

 羂索は思い出す。そういえば、彼が自分に放った斬撃も全て手足を狙ったものだったな、と。

 

『あの両面宿儺がねえ〜。ふふ、真人の方もそろそろ仕込みが終わった頃かな?』

 

 真人のプラン。

 

 あれはなかなかに練られた、悪趣味なものだった。それによって追い詰められた時、あの未知の宿儺はなにを見せてくれるのか。

 

『ふふ、期待しているよ。君の可能性にね。』

 

 羂索はすっくんの領域を脱出すると、残穢の処理をした上で、その場を悠々と立ち去った。

 

『ああ、そうだ。万が一、真人が祓われても困る。“彼”にも声をかけておくか。』

 

 

    

 

 

 

記録、2018年9月13日

神奈川県川崎市

 

午前8:42

 

改造人間事件の関係者、吉野順平の通っていた里桜高校に2つの帳が下りる。下ろしたのは、一連の事件の犯人である特級呪霊・真人。

 

 

 

午前8:45

 

虎杖悠仁が現着。その後、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『きゃああああああああああ!!』

『やめて....!来ないでぇぇ!!!!』

『あ、あああああ!!!!!』

『殺さないでぇ!!お願いします!!』

『何で....何でだよ!!!!』

『死にたくないよぉぉ!!!!!』

『ぎゃああっっ.......』

『いやああああああああああ!!!!』

『人殺しぃぃぃ!!!!!』

『痛い...痛いよおおおお!!!!』

『助けて!!!お願いします!!!』

『みんな逃げろ!!!!』

『お願い!!お願い!!!!!』

『嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!!!』

『捕まったら殺されるぞ!!!!』

『あ、あああ.......』

『ねえ、起きて!!起きてよ!!!』

『きゃあああああああ!!!!!』

『何で殺されなきゃいけないの!?』

『早く逃げろ!!!!!!!』

 

『あのピンク髪の男から!!早く逃げろ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

行かなきゃ。

 

戦わなきゃ。

 

このままじゃ俺は..

 

 

 

 

 

ただの人殺しだ。   

 

 

 

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