宿儺「どけ!!!俺は主人公の相棒だぞ!!!」 作:バケギツネ
思い込みって怖いよね。
◇
里桜高校での事件後、俺と悠仁は五条さんに呼び出されていた。もはや何度目か分からない、彼からの事情聴取。
だが心なしか、五条さんの俺に対する態度がいくらか柔らかくなっている、気がする。
え、キモ。
まあ、それはそれ、これはこれ。聴取は真面目に受けるつもりだ。
『...で、その呪霊と呪詛師に逃げられた、と。なるほどね。』
「ああ。すまない、五条悟。」
その件については、完全に俺の力不足だ。
未だに考えてしまう。もっと上手くやれたんじゃないかと。
『別にお前が謝ることじゃないでしょ。』
ご、五条さん!!??
やっぱりちょっと、俺に優しくなってるよな。
こんなの五条さんじゃない!まさか!!
「五条さん、顔をつねってもいいか?」
『...何で?』
「ほお、断る理由でも?」
『いや逆に何でオッケーするの?まあ、いいけど。』
「感謝する。悠仁、頼む。」
『え、俺!?』
忘れてた、今の俺は自由に身体を動かせないんだった。
『先生、悪い。』
悠仁は渋々五条先生の顔に手を伸ばし、その頬を引っ張ったりする。
ありゃ、五条さん本物だったか。てっきり、誰かの変装かと。
『気が済んだ〜?』
メンゴ、五条さん。疑ってすまん。
「ああ、もういい。だが五条悟、偽物には気をつけるんだぞ。」
『偽物?あーー、うん。で、そうだ。悠仁も、平気?』
『え、顔引っ張る方?』
『いやメンタルの方。』
『ああ。うん!俺は、大丈夫!!』
悠仁...やっぱり、お前は強いな。
それでこそ、俺の相棒!!
『で、おかっぱ頭の呪詛師、か。宿儺。ソイツとお前の関係は?』
「ん?」
『宿儺様だの準備だの、言ってたんでしょ?』
ああ、居たなそんな奴。
悠仁の中から見ていたが...真人を逃しやがって!おまけにあの氷結、なかなかの使い手だ。そもそも氷使いって、強キャラに設定されがちだからな。
あと、キャラデザも好み。なかなかタイプの女の子だった。
ん、何だ?一度見ただけじゃ、男か女かは分からないだろって?
うるせえ!あの子は女の子だ!!あんなに可愛い子が、男なわけねえだろ!!!!
ぶん殴るぞ!!
『宿儺、聞いてる?誰なのそのおかっぱ頭は?』
「知らん。」
『...ん?』
いや、マジで知らん。
いきなり膝まづかれた時、めちゃめちゃ怖かったもん。何なのあの子?
俺へのあの態度、『様』呼び、計画?
もしかして...
モノホン宿儺の仲間?
いや、恋人!
いやフィアンセ!!
って、それはないか。
主人公の相棒、特に人外系はね。
孤高なんだよ。
仲間なんていないし、
部下なんていないし、
愛する相手なんているはずもない。
初めて愛を教わる相手は主人公じゃなきゃいけないの。
つまり、あれだな。
「そのおかっぱ頭だが、恐らく俺のストーカーだ。」
『...ストーカー?』
間違いない!!
あのおかっぱちゃん(仮称)は、呪いの王である俺の存在に惹かれて、一方的に付き纏っているんだろう。
『宿儺様!!私の手料理です!!これから毎日、これを食べさせて差し上げます!!』
『絶対的な強者!!それ故の孤独!!貴方に愛を教えるのは、この私です!!!』
『虎杖悠仁めぇ、宿儺様を誑かすとは、この人外たらしめ!!宿儺様!!!それは愛ではありません!!!私が見せて差し上げましょう、本物の愛を!!必殺!!
アイス・ハート・ブレイクゥゥゥ!!!』
とか言いそう。
ヤンデレ系か、魅せてくれるな。
『えーーっと、じゃあソイツの言ってた『準備』ってのは...』
「さあな。俺との婚姻の儀でも準備してるんじゃないか?全く、迷惑な話だ。」
『................』
あれ、五条さん黙っちゃった。あ、もしかして嫉妬?
確かにその目隠しスタイルじゃ、全然モテないだろうしな〜。
プププッッ!!
しかし、呪いの王というのも困ったものだ。あんな可愛い子に言い寄られるとは。
まあ俺、主人公の相棒だしな。主人公=モテる。そして俺と主人公である悠仁は、一心同体。
つまり 俺=モテる!!はは、最高の計算式だな。
だがごめん、おかっぱちゃん。正直、顔はめちゃめちゃ好みだ。
だけどごめんなさい!!
君の思いには答えられない。
主人公の相棒である以上、俺には一定の威厳が必要なのだ。可愛い女の子にデレデレしていては、示しがつかない。
それにアイツは、おそらく敵だ。そうである以上、毅然とした態度で接しなくてなならない。
俺は頭の中で、おかっぱちゃんとの会話をシュミレートしてみる。
『お久しうございます。宿儺様。』
「誰だ、お前は。」
『.........お、お戯を。お忘れですか...?私は.....』
「知らんものは知らん。俺がそう言ったのだ。その言葉を疑うか?」
『..........す、宿儺様......?お、お待ちください!!私は.....』
「失せろ。目障りだ。」
よし、ちょっと心が痛むけど、次におかっぱちゃんに会った時、そう言ってやる!!
俺はそう固く決意した。
◆
『随分手ひどくやられたね。真人。』
真人は目を覚ます。彼の目に映るのは、青い空、青い海、胡散臭い笑みを浮かべた夏油傑...
(ここは.....陀艮の領域....?そうだ、確か俺は、宿儺と虎杖悠仁相手に....)
『君が助けてくれたの?夏油。正直意外だよ。』
『いいや、キミを助けたのは別の人間だ。まあ、私の協力者ってところかな。』
『ふーーん。』
夏油はその術式で、呪霊を従えることができる。
(あれだけ弱っていた俺を取り込むなんて、簡単だったはずなのに。)
『まあ、夏油が何を考えてようと、俺には関係ないか!』
真人は決意する。
自分の誇りを踏み躙った、ジャージをきた宿儺。奴を必ずこの手で殺すと。もちろん、その身も心も、ズタズタに引き裂いたその後で。
『あ、そうそう。夏油聞いてよ〜。』
そして真人は、夏油に対して話してしまう。
『俺、凄いことに気づいちゃったんだけどさ〜。』
無為転変で虎杖悠仁に触れた時の、不思議な体験を。
魂の三重構造を。
『...真人、いいことを教えてくれたね。』
話を聴き終えた夏油もとい羂索は、満足げに笑う。それはさながら、苦心していたパズルの解法に、漸く気付いた少年のようだった。
『それを聞いて、1つ試したいことができた。花御を呼ぼう。高専襲撃について、プランを詰める。』
東京校と京都校による交流会。
それを発端とする、高専東京校襲撃事件。原作における大きなエピソードが、また一つ、始まりつつあった。
『はは、ノリノリだね〜。宿儺の指、やっぱり早く回収しときたいの?』
『いいや。』
真人からの問いを羂索はあっさり否定する。
『私が今一番欲しいのは、宿儺の指じゃない。呪胎九相図の方だよ。』
◆
後日、任務中の一級術師が宿儺の指の一本を発見、回収する。上層部は、
『指を見つけた?よーし!すぐに悠仁達に食べさせちゃお♪』
とか言うであろう五条悟の手に渡る前に、その指を高専内の忌庫にて保管する事を決定した。
余談だが、指を回収した一級術師は加茂家の人間だったという。