宿儺「どけ!!!俺は主人公の相棒だぞ!!!」   作:バケギツネ

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リベンジマッチっていいよね。

 

 

 おっす、俺すっくん!!

 

 さあ、競技が始まったぁ!!

 

 ひとまず俺たちは纏まって行動!でもなんか、みんなピリついてない〜?せっかくのレクリエーションなんだから、もっと楽しもうよ〜。

 

 みんなってば負けず嫌いだな〜。

 

『よし、ひとまずこっちだな。』

 

 今はパンダ先輩の鼻と恵くんのワンコで、ターゲットとなる2級呪霊を探しているところだ。

 

 そういえば恵くんのワンコが進化してるな〜。なんか白黒になっている。

 

 めっちゃカッコいい!!

 

 式神ってポケモンみたいな感じ...?俺も今度草むら入って、式神探ししようかな〜。CV大○育江の電気ネズミの式神とか仲間にしたい。

 

『クンクン。この感じ、あいつが来るぞ!!』

 

『はい、分かってます...!!』

 

 パンダさんと恵くんが警戒している。早くも呪霊と遭遇か?

 

『全員揃ってるなぁ!!!』

 

 あれはゴリラの呪霊!?いや違う、人間だ!!

 

『さあ、どこからでもかかってこい!!』

 

 俺たちの前に現れたのは、間違った成長を遂げたジャイアンこと、限りなくゴリラに近い人間、確か東堂葵だったか。

 

 まあ、コイツ見るからに脳筋だもんな。そりゃ突っ込んでくるか。

 

 こういうパワータイプは弱い!(断定)

 

 多分この人、京都校最弱とかだろ。悲しいかな。パワータイプの大柄男キャラは、噛ませになりがちなのだ。よっしゃ!ここは俺が一捻り.....

 

『玉犬!!』

 

 俺よりも先に恵くんが仕掛けた。白黒ワンコは、なかなかのスピードでジャイアンに迫る。

 

 

パンッ!

 

 

 白黒ワンコの爪がギリギリで止まる。

 

 あれ!?恵くんとジャイアンの位置が、入れ替わってる!?ジャイアンの技か!

 

 ジャイアン、まさかのテクニカルゴリラだったか。訂正。奴はなかなか強い。

 

『会いたかったぞ、伏黒。さあ、あの時の続きだ。』

 

 どうやらジャイアンは、恵くんと因縁があるらしい。

 

 あれ、交流会って意外とガチバトルもある感じなのか?まあ、それはそれであり!!

 

 戦いの中で生まれる友情!とかの方が、少年漫画らしいし。俺も京都校の皆とは、殴り合いで仲良くなるとしよう。

 

『皆さん、ここは俺が。』

 

 恵くん、迎え撃つ気満々と言ったところだ。いいね、気合い入ってる!

 

『よし、ここは恵に任せる!!いくぞ、お前ら!!』

 

 真希先輩の号令で俺たちは迂回する。

 

「頑張れよーーー、恵くん!」

 

『ああ。必ず勝つ。』

 

 恵くんからの力強い返答を背に、俺はみんなの後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 すっくんからエールを受け取った伏黒は、たった1人で東堂葵と向かい合う。

 

『お前は随分と、両面宿儺を慕っているようだな。』

 

『.....貴方には、関係ないでしょう。』

 

 東京校のメンバー内で、誰が東堂を足止めするか。それが議題になった際、伏黒は自らその役を引き受けた。以前までの彼ならば、東堂との再戦にはここまで拘らなかっただろう。

 

 だが........

 

『俺は強くなる。そのために、負けっぱなしじゃいられない。』

 

『いいだろう、伏黒。お前の全てをぶつけてこい。そして今度こそ聞かせてもらうぞ!!お前の真の性癖を!!』

 

 伏黒恵vs東堂葵。その第二ラウンドが、今始まる。

 

『脱兎!!』

 

 伏黒は玉犬を解くと、新たな式神を呼び出した。それは、白い兎の群体。

 

 攻撃力がほぼない代わりに、一度に大量に召喚できるのがこの脱兎の特徴だった。

 

 それが、東堂に雪崩かかる。

 

『俺の視界を塞ぐ気か?甘いぞ!!!』

 

 脱兎が東堂を完全に包囲する。それと同時に、拍手の音が響いた。包囲網を形成するウサギ達の一番外側の一体が、東堂と入れ替わる。

 

『鵺!!』

 

 伏黒は新たな式神を呼び出し、すぐさま上空へ退避する。

 

 さっきの入れ替えで彼が理解したことは二つ。東堂は、人間以外かつ直接見えていないものとも、入れ替わる事ができる。

 

『もっと、入れ替えの条件を絞り込む...!』

 

 そのために伏黒は鵺で距離を取る。東堂の入れ替えの効果範囲を確かめるために。

 

『伏黒!!どこへ行く!!俺を置いていくとは、寂しいじゃないか!!』

 

 東堂は近くに落ちていた石ころを拾い、そこに呪力をこめる。伏黒が投石を警戒する中、東堂はその手を離して小石を足元に落とす。

 

 

パンッッ!

 

 

 直後に、東堂の拍手が響く。

 

 鵺に乗ってはるか上空にいた伏黒と、東堂の足元の小石が、入れ替わった。

 

『自分以外のもの同士の、入れ替え...!?』

 

『ようこそ!!俺の間合いへ!!』

 

 東堂の蹴りが伏黒に突き刺さる。

 

 数十メートル吹き飛ばされた伏黒は、大木に叩きつけられてようやく止まる。その衝撃で鵺も解除されていた。

 

『肋骨が、数本いったか.....』

 

 伏黒はようやく理解する。東堂の術式の全容を。その術式対象は、一定以上の呪力を持つもの全て。

 

『分かったはいいが、対応しづらい.....』

 伏黒は思案する。東堂に攻撃を当てるには...

 

 彼の脳裏をよぎる、一つの選択肢。それは相手に対して必中必殺を強制する奥義、領域展開。

 

 しかし伏黒の領域は未だ発展途上であり、その発動には相当の時間を必要とする。

相当の時間を必要とする。

 

 帳のような結果の基礎を用意し、領域を展開して、術式などを付与する。工程としては三段階。

 

 みすみすそんな隙を与えてくれるほど、東堂は甘くない。そのことを彼は理解していた。

 

『さあ、どうした!?そんなものじゃないだろう、伏黒!』

 

『当然だ!!!』

 

 伏黒は掌印を組み、

 

『脱兎!!』

 

 既に呼び出していた個体に加え、それ以上の数を誇る脱兎が、一気に戦場を埋め尽くす。

 

『さらに、このウサちゃんの数を増やすか。』

 

 津波のように押し寄せる白兎の群れが、東堂を飲み込んだ。が、東堂はそのパワーで瞬時にその包囲網を脱する。

 

『やはりな。一気にこれだけ召喚できる式神、一体一体の力は弱い。』

 

 東堂のIQ53万(自称)の頭脳は、脱兎の性質を見抜く。しかしここまでは伏黒の想定内だった。

 

 東堂が包囲を抜け出すのに使った僅かな時間を利用して、伏黒はさらに脱兎の量を増やす。さらに彼は数十体の脱兎で、自分自身をすっぽりと包み込んでいた。

 

『あくまで、時間稼ぎが狙いか。』

 

 東堂葵は、そう推理する。

 

 東堂の周りを取り囲むのは数百体の脱兎。しかし、彼らは包囲を継続しつつも、東堂とは一定の距離を維持している。

 

『攻めてくる様子はない。やはり、このウサちゃん達は陽動だな。』

 

 東堂は確信する。今の最優先事項は、領域展開を狙う伏黒を直接叩くことだと。彼は伏黒の近くにいる、一匹の脱兎。それと自分を入れ替えようと....

 

 

 

 

 

 

 

 その時東堂の脳内で、彼の妄想の産物であるt

 

夕焼けに照らされた放課後の教室。俺は何をするでもなく、ただぼんやりと。窓から見える景色に目を凝らしていた。 

 

なぜだろう、この心のモヤモヤは。

伏黒の領域は厄介だ。

 

発動前に、潰しておくのがベスト。

 

自身の術式を利用した入れ替えで、奴との距離を一気に詰める。その選択に何も間違いはないはずだ。そうだ、こうして時間を浪費していては、奴の思う壺。

 

俺は一刻も早く行動に移るべきだ。

 

『本当にそれでいいの?』

 

術式を発動するための俺の拍手。それを静止したのは...

 

『た、高田ちゃん!!』

 

俺が密かに思いを寄せる同級生、高田ちゃんだった。彼女は俺を静止する際、その柔らかいおててで俺のゴツゴツした右手を包み込んでくれていた。

 

掌から彼女の体温が伝わってくる。

 

そこには確かに、俺と高田ちゃん、2人だけの世界があった。

 

自然と、彼女を見つめてしまう。そんな俺を見た彼女は笑顔を浮かべながら手を振り解いて、一歩後ろに下がった。

 

ああ、なんて素敵なんだ。夕日に照らされた彼女の姿は、この世の何よりも美しい。

 

風にたなびく艶やかな黒髪に、

一度見つめれば吸い寄せられるブラックホールのような瞳、

えもいえぬ色気を放つ桜色の口紅に.....

 

数え出したらキリがない。

 

彼女のパーツの一つ一つが、いや、彼女を構成する原子の一つ一つにさえ、俺は魅了されてしまう。

 

俺は思わず高田ちゃんから目を逸らす。それ以上彼女を見つめていたら、彼女以外の全てが、この世界が、醜く見えるようになってしまう、そんな気がして。

 

『....それで、高田ちゃん。それでいいの? とはどう言う意味かな?』

 

『伏黒くん、迂闊すぎると思わない?貴方の術式を知ったはずなのに、わざわざ呪力を持った式神で、守りを固めるなんて。』

 

『た、たしかに!!』

 

奴の領域を警戒する余り、そのことに思い至らなかった。

 

高田ちゃん、キミは天才だ!!

 

さて。伏黒の防御の仕方はやはり不自然。まるでこのウサギと入れ替わってくださいと、そう言っているようなものだ。

 

となると、考えられる可能性は一つ。

 

『これは、伏黒の罠!!俺は誘われていたのか!?』

 

『正解♪』

 

 

 

《この間、0.1秒!!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

『感謝するぞ、高田ちゃん....!!!』

 

 東堂は術式による入れ替えを中止する。

 

『チッ、気付かれた...?』

 

 狼狽する伏黒をよそに、東堂は...

 

『うおおおお!!!!ふんっ!!』

 

 近くの切り株を引き抜くと、伏黒を包む脱兎のバリケードに投げつける。

 

 その衝撃で、伏黒を包んでいた脱兎は一斉に放電を始めた。その威力は、投げつけられた切り株を跡形もなく吹き飛ばすほど。

 

 伏黒の策は、脱兎に鵺の性質を仕込むというものだった。東堂が自身の近くにワープした際、自分ごと強力な電撃を喰らわせるために。

 

 だが、その目論見は外れる。電撃を食らったのは、伏黒恵ただ1人。

 

『....はあ、はあ......なんで、分かった.....』

 

『愛は無敵、とだけ言っておこう。どうやら、万策尽きたようだな。』

 

 満身創痍の伏黒はその場に倒れ込む。

 

『......まだ.........まだだ....!』

 

 しかし、東堂は気付く。伏黒恵の目が、まだ死んでいないことに...!

 

『脱兎!!』

 

 伏黒の合図で、東堂の周りを固めていた脱兎が一斉に動き出した、次の瞬間。東堂の視界が、突然暗闇に包まれる。

 

『バカな....!?』

 

 

『嵌合暗翳庭・餐怒(さんど)!!!!』

 

 伏黒恵が、初めて成功させた領域展開。

 

 それは奇しくも、彼の恩人・すっくんが、対魔虚羅戦で披露したものと同じだった。東堂1人を包むほどの大きさしかない、相手を閉じ込めることに特化した、ごく小規模な領域。

 

『領域の展開スピードが早すぎる...!』

 

 戦いが始まってから少しずつ召喚数を増やし、東堂の周りを包囲させていた、脱兎。呪力を持ち、人を覆い尽くすほどの数を誇る彼らを、伏黒は結界に転用していた。

 

 領域自体が小さい分、東堂の術式発動が間に合わないほどの早さで、展開しきることができたのだ。

 

『これで、決めきる!!!』

 

 結界に伏黒の術式が付与された。領域内が、液状化した影で埋め尽くされていく。

 

『これは....少々不味いな......』

 

 影の中には酸素がない。浮力も抗力もなくただ沈むだけ。それを察知した東堂は、咄嗟に呪力で足場を強化すると同時に...

 

『簡易領域!!!』

 

 必中効果の打ち消しを図る。しかし伏黒の領域には、元々必中効果がない。

 

『不知井底!!!』

 

 領域内の影から無数の蝦蟇の舌が伸びる。

 

 それは東堂の身体に巻きつくと、威力の上がった鵺の電流を、フルパワーで流し込む。

 

『ぐうおおおおおお!!』

 

 これにはさすがの東堂も苦悶の声を上げる。だがそれでも、彼は意識を手放さない。

 

『高田ちゃん....高田ちゃん......高田ちゃん.......!!!』

 

 東堂は領域で強化されているはずの蝦蟇の舌を、全て引きちぎる。だが......

 

『玉犬!!!』

 

 東堂の背後から伸びた鋭い爪が、彼の首元に突きつけられていた。

 

『降参、してください。』

 

『存外甘い男だな。伏黒。いや、恵。』

 

『...人を無闇に傷つけると、俺の恩人達が悲しむので。』

 

『.....そうか。いいだろう。』

 

 

 

 

《東堂葵、棄権。》

 

 

 

 

 

 

『恵!!素晴らしい成長を遂げたな!!!俺はいま、猛烈に感動している!!』

 

 東堂葵に勝利した、伏黒恵

 

 しかし、彼の身体は限界を迎えていた。戦いで負ったダメージに加え、式神の大量召喚や、領域展開による大幅な呪力消費。

 

 やむなく、伏黒自身も棄権を選んだのだが...

 

『医務室は、確かこっちの方だったな!もうすぐだぞ、恵!』

 

『あの、離してください....!一人で歩けます....』

(何で動けるんだ、このゴリラ.....)

 

 伏黒は何故か自身が破ったはずの東堂に担がれ、医務室へと運ばれていた。

 

『遠慮するな!俺とお前の仲だろう、恵。』

 

『今日で会ったの2回目でしょう.....』

 

『心配するな、友情に年月は関係ない!』

 

 東堂との戦いによって、伏黒はまた一つ成長を遂げる。しかしその代償として、東堂から完全にロックオンされていた。

 

『一つ、聞いていいか?』

 

『また女の趣味の話ですか?』

 

『いや、そちらも気になるが、今俺が聞きたいのは別のことだ。』

 

『......なんです?』

 

『お前は何のために、強くなる?』

 

『何の、為に......』

 

 

 伏黒の脳裏に浮かぶのは....

 

 

「俺は俺だ。救いたいやつを救い、殺したいやつを殺す。手当たり次第にな。」

 

 

 やはり、あの男だった。

 

 

 

 

『置いていかれたくない人が、いるんです。』

 

 少年院での一件。あの時の体験は、今も伏黒の心に重くのしかかっていた。

 

『その人は、とにかく人を助けるんです.....でも、自分が助かろうとはしていない.....』

 

 伏黒の脳裏に浮かぶのは、彼が一度死んだ時。

 

 

「俺はいいから、恵くんだけでも.....」

 

 

 彼は最期の刻まで誰かを呪うことなく、他人を想っていた。自分を顧みることなく。

 

『だから俺は、その人を助けられるくらい強くなりたい。』

 

『......その人というのが両面宿儺、なのか...?』

 

『....笑いますか?』

 

 すっくんは本人の紛らわしい振る舞いと、その悪名のせいで、とにかく周りから誤解されやすい。

 

『まさか。』

 

『少しややこしい人ですけど、いい奴です....』

 

 だがその本質が根っからの善人であることを、伏黒恵は知っている。

 

『だろうな。なんせ、恵が惚れた男だ。』

 

『.....はい?』

 

 東堂の中で、点と点が繋がった。

 

『通りで好みの女を聞いた時、歯切れが悪かったわけだ。好みなのは男......だったか。配慮が足りず、すまなかったな。』

 

『待ってください、誤解です....!!』

 

 伏黒は顔を顰めて、東堂の勘違いを否定する。

 

恵は照れ臭いのか、ほんのりと顔を赤らめながら、俺の問いを否定する。

 

当然、伏黒がすっくんに対して抱いているのは、恋愛感情ではなく、憧憬。

 

だが、奴の友である俺には、その本心はお見通しだ。

 

『あの、東堂先輩、もしもし、東堂先輩?」

 

伏黒の必死の呼びかけも、東堂には届かない。

 

『葵さん、俺は別に....宿儺のことなんか.....』

 

 伏黒はそんなこと言わない。だが、東堂の耳には幻聴が聞こえていた。

 

恵の顔は真っ赤だった。

(幻覚)

 

しのぶれど

色に出でにけり

わが恋は

ものや思ふと

人の問ふまで

 

まさに、今の恵にピッタリの詩だ。

 

『俺は応援するぞ、お前の恋を。』

 

 『頭おかしいんですか?』

『葵さん.....はい!』

 

 伏黒は、心の底から後悔する。あの時東堂には、きっちりトドメをさしておくべきだった。せめて満象で圧殺するくらいは、やっておくべきだった、と。

 

俺とそのライバル、恵は歩いていく。希望の未来に向かって、共に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『誰でもいい.....俺を助けろ.......!!』

 

 東堂に担がれながら、伏黒は一人嘆くのだった。

 

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