宿儺「どけ!!!俺は主人公の相棒だぞ!!!」   作:バケギツネ

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主人公が出ない回って、ちょっと寂しいよね。

 

 

『マジ?30分も経ってなくない?』

 

 歌姫と交戦中の呪詛師・重面春太は気付く。

 

 嘱託式の帳。五条悟の出入りのみを封じていたそれが破壊された。それが意味するところは一つ。ゲームオーバーだ。

 

 遅からず現代最強がやってくる。

 

『逃ーーげよ!!』

 

 重面春太は、迷いなく逃走を選ぶ。

 

 五条悟とかいうクソゲーを相手にするほど、彼は馬鹿ではない。彼は“運良く”、誰からの追撃も受けずにその場を離脱した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『なんだ、僕の出番なさそうじゃん。』

 

 自身のみの出入りを禁止した、ピンポイントメタの帳。それを力技で突破した五条は、虎杖の元へ駆けつける。

 

 しかし虎杖は、特級呪霊と思われる個体を既に祓い終えていた。彼は戦闘の疲れからか、その場に倒れ伏して汚い寝息をたてている。

 

『この感じ、また一つ成長してるね....』

 

 五条悟は教師として、教え子の成長を喜んでいた。

 

『お、葵じゃん。腕平気?』

 

『ああ、問題ない。』

 

 五条が目をかけていた一級術師・東堂葵は左右の手首から先を失っていた。

 

 かなりの激戦だったのだろう。

 

『二人ともお疲れサマンサ〜。あとは、僕に任せてよ。』

 

 五条は自身の術式を使って、高速移動を行う。彼が駆けつけたのは、呪詛師・組屋鞣造と戦闘中の楽巌寺の元。

 

『お、五条悟!!コイツは、イカしたハンガーラックが目に浮かぶぜ!!』

 

 組屋鞣造は手にした斧で、現代最強に立ち向かう。

 

 

 

『五条悟をハンガーラックにする』

 

 この発言のヤバさが分かるだろうか....

 

 現代最強であり、術師なら知らない者はいないとまで言われ、裏社会にまでその名を轟かせている、

 

 その五条悟をハンガーラックにする。

 

 コイツはそう言っているのだ。

 

????????????????????????????????????????????????????

 

 もう無謀とか、命知らずとかを通り越して怖い。彼はどういうつもりで、こんな発言をしたのだろう.....

 

 まあ実際彼は、京都校学長である楽巌寺と互角に渡り合っている。実力は、そこそこあったのだろう。

 

『ラックラックラック!!!』

 

『五条悟、殺すなよ。』

 

『はいはい〜。』

 

 だが、そこそこの強さ程度では...“最強”の強さの前には塵に等しい。

 

 

 

 やめて悟!!

 

 無下限呪術を使っちゃったら、ハンガーラックを作る気満々の、組屋の手足がもげちゃう!!

 

お願い!死なないで、組屋!!

 

 あんたがここで倒れたら、生臭さ坊主との約束はどうなるの?

 

 勝機はまだ残ってる!!

 

 ここで勝てれば、イカしたハンガーラックを作れるんだから!!

 

 次回「組屋死す」呪術スタンバイ!

 

 

 

 

 

 

『ほら、おじいちゃん。コイツに手当てして〜。死なせちゃダメだよ〜。』

 

 組屋鞣造を瞬殺した、五条悟。

 

『ん、逃げの算段はついてるわけか。』

 

 彼は、歌姫の近くにいた呪詛師の気配が消えたことに感づく。

 

『さて、これで一件落着。って、わけにはいかないか.....』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『俺、結局何にもしてないよ。怒られちゃうかな〜。』

 

 逃亡に成功した重面春太は、集合場所の洞窟にやってくる。

 

 だが原作とは違い、花御はすでに祓われている。その場に彼女の姿はなかった。

 

 その代わりに.....

 

『それに比べて、キミは頑張りすぎ。ってか、何があったの...?』

 

『あ、あああっ、あああああああ!!!』

 

 彼の足元には、血を吹き出しながら呻く特級呪霊・真人の姿があった。

 

『あーあ、可哀想。楽にしてあげようか?』

 

 原作とは違い、重面春太を止める者はいない。彼の刃は、真っ直ぐ真人へと振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 事件翌日の呪術高専。

 

 五条、歌姫、冥冥、夜蛾、楽巌寺。壮壮たる面々を前にして、補助監督である伊地知潔高は今回の事件の被害状況を報告していた。

 

『まず、忌庫の被害についてです。特級呪物・両面宿儺の指6本.......』

 

 伊地知の頭に一瞬だけ、自称愛弟子・すっくんの姿が浮かぶ。

 

『.....そして、同じく特級呪物・呪胎九相図の1〜3番。これらが、盗み出されていました。犯人は里桜高校事件の主犯であるツギハギの特級呪霊と見て、間違い無いでしょう。』

 

 その報告で、部屋の空気は一気に重くなる。

 

『この件、呪術界全体で共有した方がいいでしょうか?』

 

 対処を模索する歌姫に対し、

 

『いや、やめておこう。』

 

 呪術界全体の混乱を恐れた夜蛾は、それを静止する。

 

『捕らえた呪詛師は、何か吐いたか?』

 

 一方楽巌寺は新たな情報を期待して、伊地知にそう尋ねた。

 

『詳しいことは、何も知らないようです。ただ、一つだけ気になる事を。』

 

 尋問の際の組屋鞣造のセリフを、伊地知はそのまま全員に伝えた。

 

『「白髪おかっぱのガキ」、その人物に命令されたと。』

 

 伊地知の言葉に、最も強く反応した人物が一人。

 

『白髪のおかっぱ....ねえ.......』

 

 それはすっくんから、そのおかっぱ頭の正体(?)について聞いていた、五条悟。

 

『五条くん、何か心当たりでも?』

 

 その反応を見逃さなかった冥冥は、彼に声をかける。

 

『あー、ソイツね。宿儺のストーカーらしいよ。宿儺本人がそう言ってた。』

 

 開き直った五条は、ありのままを打ち明けた。その場にいる全員の頭に、クエスチョンマークが浮かぶ。

 

『宿儺の、狂信者と言ったところか?』

 

 なんとか五条の言葉を翻訳しようと、夜蛾は奮闘する。

 

『いや、どっちかっていうと、ガチ恋厄介ファンみたいな感じらしいよ。宿儺本人がそう言ってた。』

 

『?????????』

 

 五条からの返答で、夜蛾は翻訳を断念した。

 

『で、では〜。次の報告に参ります。』

 

 伊地知は恐縮しながらも、話を進めていく。

 

『次に、人的被害についてです。結論から、言います。今回の事件における死者は.........ゼロです。』

 

『ゼロ...!?嘘でしょ....!?』

 

 歌姫は、耳を疑う。

 

『いえ、確かです。』

 

 その理由の一つ目。それは、メカ丸の出頭である。

 

 現役高専生の、背信行為。その大事件に際して、彼の捕縛・連行、尋問、裏取り調査などに相当の人手が裂かれていた。

 

 原作で真人に始末された術師のほとんどは、既に出払っていたか、冥冥の常駐しているモニタールーム付近にいた。そのため間引く必要ナシと判断した真人は、そのまま忌庫へと直行していたのだ。

 

『確か、忌庫には門番が二人いたな。そ奴らは?』

 

 楽巌寺の危惧した通り。原作では、天元の側近だという2名も真人の手で殺されている。

 

 だが、この世界ではそうはならなかった。

 

 その側近二人は襲われこそしたものの傷一つなく、伊地知からの聴取に応じられる程、元気ピンピンだったのだ。

 

 彼らは口を揃えてこう言っていた。

 

『天元様が、我らを守ってくれた。』、と。

 

 真人が現れた際、死を覚悟した二人を守るように結界が展開されたという。その強固な結界は真人を全く寄せ付けず、二人に指一本触れさせなかったとか。

 

 

『ふふっ、なるほど。』 

 

 それを聞いた五条悟は一人口元を緩める。

 

 

『そんなことが、あり得るの....?』

 

 歌姫が、疑問を投げかける。

 

『忌庫までの通路....あそこは特に天元様の影響が出やすい........とはいえ、ここまで直接的に動かれるとは........』

 

『前代未聞のケースじゃのう.....』

 

 両学長の意見は一致する。

 

 “本来”なら、そんなことはあり得ないと。

 

『天元様が、進化を遂げている......?』

 

『いいや、それは考えにくい。』

 

 歌姫の仮説を、冥冥が否定した。

 

『10年以上前、天元様は星漿体との同化に“成功”している。きちんと初期化されているはずだ。』

 

 冥冥の主張に歌姫は押し黙る。

 

 そもそも彼女は星漿体の護衛任務に参加していなかっため、その辺りの情報に疎かった。

 

『五条。確か星漿体・天内理子の護衛を担ったのは、お前だったな。』

 

 楽巌寺は五条悟に問いかける。

 

『その時、本当に同化は成功したんだろうな?』

 

 楽巌寺は、五条に疑いの目を向ける。彼が情に絆され、星漿体を秘密裏に逃したのではないかと。

 

 なんせ彼には、虎杖悠仁という前科がある。楽巌寺が五条を疑うのも無理からぬことだった。

 

 

『おじいちゃんは、何が言いたいの...?』

 

 一見普段と変わらないような、五条の軽薄な態度。だが夜蛾だけは、その口調に込められた彼の苛立ちを感じ取っていた。

 

『天内が逃げたって言いたいわけ?自分の役目を放棄して?ハッ、あり得ない。』

 

 五条悟は護衛任務の経験から、彼女の人となりを知っていた。

 

 “この世界”で五条と知り合った彼女は自らの責任を果たすために、自分の意思で天元と同化する道を選んでいた。

 

 色々とあって彼女が同化する瞬間を直接見たわけではないが、彼女は確かに天元と世界にその身を捧げたと、親友からはそう聞いている。

 

 当然、その言葉を疑うつもりはない。

 

 

『それに、そんなに気にすること?』

 

 五条は同席者たちを鼻で笑うと、立ち上がる。

 

『天元は味方のままってことでしょ。何が問題なわけ?』

 

『五条。そんな単純な話ではな...』

 

『はい、この話終わりーーー!!』

 

 苦言を呈した楽巌寺を思いっきり遮って、五条は部屋を出て行ってしまう。

 

『それじゃあ、僕は失礼するよー。可愛い生徒たちが待ってるんでね。』

 

 その相変わらずの奔放ぶりに、両学長は頭を抱えるのだった。

 

 

 

 

 

『ありがとな。天内。』

 

 部屋を出た五条悟は、空に広がる澄み渡った青を見上げながら、思い浮かべる。

 

 今の両面宿儺によく似ていた、一人の少女のことを。

 

 

 

 すっくんよりも先に、この世界の理から外れていた一人の少女のことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『With great power comes great responsibility.』これ、私の好きなヒーローの言葉ね。意味?『大いなる力には、大いなる責任が伴う』ってやつ。」

 

 

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