宿儺「どけ!!!俺は主人公の相棒だぞ!!!」   作:バケギツネ

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懐玉玉折編
過去編って、ワクワクするよね。


 

 

 これは、天内理子に転生した一人の少女の物語。

 

 

 

 

 

 

 

『満子ちゃん。ただいま〜。』

 

 自分の名前を呼ぶ声に、私は目を覚ます。

 

『あら、ごめんなさい。起こしちゃった?』

 

 私の隣の部屋に、健診を終えたおばあちゃんが戻ってきたみたいだ。彼女は、最近出来たお友達。よく話し相手になってくれる。

 

「大丈夫ですよ。今日もお話ししましょ!」

 

『ふふ、ありがとねえ〜。こんなクソババアの話に付き合ってくれて。』

 

「いえいえ!おばあちゃんの話、いっつも面白いから!」

 

 おばあちゃん、年は84歳だっけ?

 

 私とは70歳差のはずなのに。点滴まみれの私よりも彼女はよっぽど元気そうだ。

 

 70年後はあんなおばあちゃんになりたいな〜。まあ、私じゃ無理だろうけど。

 

『満子ちゃん、どうしたの?ボーッとして。』

 

「いや、何でもないよ!」

 

 いけないいけない、せっかくおばあちゃんが話しかけてくれてるのに、空気悪くしちゃったかも.....反省。

 

「それでそれで、今日はどんなお話ししてくれるの?」

 

『今日はねぇ〜、満子ちゃんに、今季アニメのオススメを布教したくてねえ〜。』

 

「なんか思ってた話と違う......」

 

 おばあちゃんの感性は、めちゃくちゃ若かった。

 

『るろうに剣心のリメイク、最初は心配だったけど、PVを見る限り安心ね。斉藤壮馬くんの声がめちゃめちゃハマってて最高だわぁ〜。初代声優・涼風真世さんのエッセンスをほのかに残しつつ、実写版の佐藤健くんの演技も参考にしてる感じがあって、すごくいいわぁ〜。』

 

 さらに言うと、おばあちゃんはアニオタだった。何でも、お孫さんの影響なんだとか。

 

『あら、るろうに剣心2クールやるの?斉藤一と剣心の斬り合いまで見れるかしら......』

 

 アニメについて語る時のおばあちゃんは、きもーち早口で、でもすっごく楽しそうで。

 

 聞いてるこっちにまで、元気をお裾分けしてくれる。

 

 彼女のおかげで、私もアニメにハマった。

 

 特に、バトル系のやつ!

 

 元々、その手の作品が好きだというのもある。小さい頃から家にあった『スパイダーマン』の映画はもう、100回以上は見ているし。

 

『旧アニメの方はね、そこの作画が凄かったのよぉ〜。演出も神っててぇ〜、まじ最高だったわぁ〜。あら、ごめんなさい。昔話ばっかりしちゃって。』

 

「昔話が思ってたのと違う.....」

 

 私とおばあちゃんは、暇さえあればアニメの話で盛り上がっていた。自分用のタブレットから、片っ端からアニメを見ていって、気に入った作品を互いにオススメしあったり。

 

『あら、呪術廻戦2期やるのね。わたし1期見逃しちゃったんだけど、大丈夫かしら?』

 

 ある日、おばあちゃんは“それ"を見つけた。

 

「これも、ジャンプのバトル漫画系ですよね?なら、ハズレは無いんじゃないですか?」

 

 私も一期は見てないんだよな〜。そんなことを考えながら、PVを見てみる。

 

 ふむふむ。すっごく爽やか!!!

 

 作画も綺麗だし、青春活劇+バトルって感じだね。これならスッキリ見れそう!

 

「おばあちゃん、これ見ようよ!絶対面白いって!!」

 

 こうして私達は、かいぎょくぎょくせつ編?のアニメを見始めた。

 

 キャラクターも魅力的だし、オープニングもかっこいいし、何より絵がスーパー綺麗!!!

 

 五条くんも夏油くんもカッコいい!!

 理子ちゃんと黒井さんは可愛い!!

 

 2話の最後で黒井さんが攫われちゃったけど、五条と夏油のコンビなら大丈夫!!

 

 最後はきっとハッピーエンドになる!!

 

 だって見てよ、この爽やかなオープニング!こんな青春アニメで、人が死ぬわけな

 

 

 

 理子ちゃんが死んだ。

 

 

 

 え、マジで...............?

 

 辛い、辛すぎる。ショックなんてもんじゃない.......

 

『作者にはっ、人の心がっ、無いのかいっ!?』

 

 隣でおばあちゃんはブチ切れていた。それでも、怖いもの見たさというのだろうか.。私たちは視聴を続けた。

 

 五条くんが覚醒して、理子ちゃんの仇をとった。でも、最後の拍手のシーン.......

 

 それに夏油くんが闇堕ちした...最悪だ。

 

『夏油くんが病んでる!!夏油くんが病んでる!夏油くんが病んで...あ、シャワーシーン♡.....いややっぱ夏油くんが病んでる!!!』

 

 5話視聴中のおばあちゃんは、大体こんな感じだった。

 

『ごめんねえ、満子ちゃん...あたしがこんな、鬱アニメを進めたばっかりに.....』

 

「ああ、いえ.......」

 

『こう言う時は、別のアニメを一気見して、口直ししましょ。満子ちゃん、ポプテピピックって知ってる?頭空っぽにしてみれるからいいわよ〜。

 

 突然、おばあちゃんの声がぼやけていく。あれ、身体の力が入らなくなって...

 

 私の手からタブレットが離れ、床に落ちる。カラフルな絵が映っていた液晶には、大きなヒビが入った。

 

『満子ちゃん!!満子ちゃん!!!』

 

 そっか、お迎え来ちゃったか。

 

 まさかおばあちゃんより早いとはな〜。ああ、泣いてくれてるんだ。私なんかのために...

 

 もうお話しできないなぁ〜。一人にさせちゃってごめんね...

 

『菅原さん!!!菅原満子さん!!聞こえますか!?』

 

 私の名前を呼ぶ、お医者さんの声もだんだん小さくなっていく。

 

 お父さんとお母さん。

 

 私がちょっとでも長生きできるように、お仕事たくさん頑張らせちゃって、ごめん。

 

 私がいなくなったら、自分の人生をしっかり生きてね。

 

 ああ、そろそろかな......

 

 輪廻転生って、本当にあるのかな....?

 

 生まれ変われるとしたら....

 

 そうだな.......

 

 誰かの役に立てる、そんな存在になりたいな。

 

 今世じゃ、生まれてから死ぬまで、ずっと誰かに迷惑をかけ続ける人生だったから。

 

 来世では、人を助けたい....!

 

「ああ、わた...........し...........は...............』

 

 私はその短い一生を終えていく。ほんのちょっとだけ、自分のことを呪いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

『理子様?』

 

 あれ、私死んじゃったよね?誰かの声で私は再び目を覚ます。

 

「あれ、ここは...」

 

どこかのホテル?

 

『理子様、大丈夫ですか?』

 

 私を心配そうに覗き込むのは、メイド服姿の綺麗な女性。この人、なんか見覚えが......

 

 あれ、っていうかなんだこれ!?

 

 点滴がないし、一人で立ち上がれる、歩ける...!

 

「っ!」

 

『ちょっと、理子様?』

 

 私はすぐ近くにあった姿見で自分の姿を確認する。

 

「この子.......可愛い!」

 

『急に自画自賛?』

 

 そこにいたのは、私と同い年くらいの頭にバンダナを巻いたセーラー服姿の女の子だった。

 

 ってかこの子は、鬱アニメ呪術廻戦の天内理子ちゃん!

 

 ...え?

 

 これってもしかして転生っていうやつ!?あり得るのそんなこと!?

 

『理子様、大丈夫ですか!?』

 

 膝から崩れ落ちた私を心配して、アニメで見た通りの姿の黒井さんが駆け寄ってくる。

 

 どうしよう....

 転生のこと、話したほうがいい?

 

 っていうか、このままだと私たち二人ともCV子安武人のゴリラに殺され...ん、何だろう?

 

 なんか、頭がムズムズするような...

 

 

 次の瞬間、部屋が爆発する。40階のフロアから私の身体は放り出された。

 

「......うわ、高い〜。」

 

 嘘でしょ?もう死んじゃう?

 

 転生先で、こんな着地狩りみたいな真似されることってあるの?

 

「きゃあああああああああああああ!!!」

 

 私の身体は重力に逆らえず、遥か遠くに見える地面へ真っ逆さまに落ちていく。あまりの恐怖に、私は意識を手放すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『貴様!おい貴様!!誰だか知らんが、気をしっかり持て!!このままだと妾の身体もミンチになってしまう!!』

 

 気が付けば何もない真っ白な空間にいた。

 

 目の前には今の私と同じ姿の女の子。もしかしてモノホン理子ちゃん!?

 

「あの、どうも初めまして。」

 

『言ってる場合か!!!』

 

 そうだ、私落ちてるんだった...!!

 

え、どうしよう。アニメだと、ここからどう助かったんだっけ?

 

 頭がパニクってて、よく思い出せない!

 

『というか、お前は何者じゃ!?なぜ、妾と同じ顔をしておる!?』

 

「えっと、説明が難しいんですが、大変申し訳ありませんでした!すぐにこの身体からは出ていきます!....あの、どうやって出ていったらいいですか?」

 

『ふざけておるのか貴様はぁ!?もう嫌じゃーーー!!助けて黒井ーーーー!!!』

 

 どうやら私は転生した時に、彼女の身体を乗っ取ってしまったらしい。

 

 何やってんだ、私の魂!そんなんただの悪霊じゃんか!

 

「理子ちゃん、本当にごめん!!!」

 

『うわっ、なんじゃ!?』

 

 私は精一杯の誠意を込めて、理子ちゃんに土下座する。

 

「私が、“生まれ変わったら"なんて願ったせいで、こんなことに...」

 

 私なんかが、そんな願いを持っちゃいけなかったのに。生きる事は迷惑をかける事なんだって、前世で分かってたはずなのに...

 

「ごめんなさい!!ごめん....ごめんなさい!!!」

 

『もうよい。貴様に悪気がないのはわかった....』

 

 理子ちゃんは、みっともなく泣き喚いていた私に手を添えると、目線を合わせてくれる。

 

『何があったのか話してくれぬか...?』

 

「.........うん。」

 

 私は話した。アニメ呪術廻戦の事と、自分の生い立ちに、自分が別の世界から転生した事。

 

『にわかには信じられんな......』

 

「いや、でもホントなの...このままだと、理子ちゃんも黒井さんも死んじゃうし、夏油くん、ああ、変な前髪の子も大変なことになって.....とにかく、すごくマジでヤバイの!!』

 

『..........そうか。』

 

 彼女は複雑そうな顔をしている。まあ、それも当然か。

 

『分かった。妾の身体は、このままお前にやる。」

 

「ちょ、理子ちゃん!?何言って...え、」

 

 私は気付く。というか、感じた。

 

 理子ちゃんがどんどん薄まっていくような、そんな嫌な感じがする。

 

『何となく分かるのじゃ。どのみち妾はじきに消える。だから、貴様にこの身体は託す。その代わり、一つだけ約束してほしい。』

 

 理子ちゃんは、私に向かって頭を下げる。

 

『黒井を守ってくれ。頼む!......私の、大好きな家族なの!』

 

 理子ちゃんは、ゆっくりと薄らいでいく。

 

 彼女が死ぬ前に満喫できた二日間を、大切な人たちと過ごせたはずの時間を、私は奪ってしまった。

 

 その罪は重い。だから絶対に、行動で償う.....!!

 

「任せて。黒井さんは、絶対に助ける....!」

 

『...お前は、真面目な奴じゃな。そうだ、もう一つ言っておこう。』

 

 消えかけの理子ちゃんは、私の耳元で囁く。

 

『黒井さえ助ければ、後は何でもいい。お前の好きなように生きろ。』

 

「え?」

 

『そろそろお別れじゃ。貴様、名前は?』

 

「菅原、満子.......」

 

『...なるほど。満子、達者でな!!』

 

 理子ちゃんは、消えていく。最期まで、笑顔のまま...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ私、落ちてるんだったーーーーーーー!!!!」

 

 現実世界に戻ってきた私は、現状を把握し絶望する...んん、あれ、落下が止まった...?

 

『大丈夫かい?』

 

 あー、生夏油くん!

 近くで見ると想像以上にカッコいい!!

 

 空飛ぶエイみたいな呪霊に乗って、私を助けてくれたみたいだ。彼は気を失っている黒井さんの近くに、私を運んでくれる。

 

『キミを襲った奴らは私が片付ける。キミは、その女性のそばにいてやってくれ。』

 

 めっっっっちゃ、いい子!ほんとに何でこんないい子が、闇堕ちしなきゃいけないの!?原作者許せない!!

 

『降参!実家!米!!あーーー!!!』

 

 私の部屋を爆破したと思しき人の、悲鳴が聞こえる。

 

 夏油くん、もう敵をやっつけたのか。やっぱ強いよな〜。

 

 転生できただけ有難いんだけど、やっぱりああいう特殊能力系には憧れてしまう。

 

 理子ちゃんって確か、そういうのなかったからな〜。そうだ黒井さん!

 

「ねえ、黒井さん、大丈夫!?」

 

 気を失っている黒井さんに必死に呼びかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『黒井、大好きだよ。ずっと、これからも....ずっと!!』

 

 

 

 

 

『理子様!!』

 

 天内理子が最期に伝えた言葉を聞いて、彼女の世話係・黒井美里は目を覚ます。

 

「あの、黒井さん。お話ししたいことが、あります...」

 

 目の前にいるのは、自分の主人・天内理子。そうではないと、彼女の魂は告げていた。

 

 黒井は耳を傾ける。自分の家族が全てを託した、新たな主人の言葉に。

 

 

 

 

 

 

 

 夏油くんと五条くんが戦っている間、私は黒井さんに事情を説明していた。

 

「ごめんなさい!!私のせいで、本物の理子ちゃんが..」

 

『ご自分を責めないでください。それが理子様の意思なら、私はそれを尊重するまで。むしろ、理子様の我儘を聞いてくれた貴方には、感謝したいくらいです。』

 

 黒井さんは、とにかく優しい人だった。

 

 彼女は諸々の混乱を防ぐためということもあり、夏油くんたちの前では私を『理子様』として扱ってくれることになった。

 

 

『Qの奴らなら片付けた。最高戦力があのザマじゃ、組織自体もおじゃんになるんじゃない?』

 

『2人とも、お怪我はありませんか?』

 

 って、やば!!

 

 そうこうしている間に、戦いを終えた五条くんと夏油くんが戻ってきた!どうしよう...

 

 理子ちゃんから託されたこの命と、黒井さんを守り抜くために、彼らの助けは必要不可欠。

 

 私の命はもう、私だけのものじゃないんだ。とりあえず、誠心誠意事情を話して、2人に協力してもらうしかない!!

 

 

「お願いします!黒井さんに死んで欲しくないんです!なんとかしてください!CV子○武人の筋肉ゴリラが犯人です!銃でバーーンって撃たれます!ああ、私も撃たれます!エンディングが流れてる最中に!ちょうどサビに当たる部分!確か、歌詞は『頭flight』のところ!その場面で私もこの世からflight away !だからお願い助けてえええええ!」

 

『『.....は?』』

 

 

 私はスタートダッシュで盛大にずっこけるのだった。

 

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