宿儺「どけ!!!俺は主人公の相棒だぞ!!!」   作:バケギツネ

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懐玉 -弍-

 

 

 私、シン・理子ちゃん!!

 

 ありがとう、理子ちゃん(モノホン)。貴方のおかげで、目が覚めた!!

 

 私は生きる!最後まで!!

 

「んっ!!」

 

 とりあえず、天逆鉾?とかいう武器は、素手で粉々に砕いておく。悲しいかな、これで私もゴリラの仲間入りだ。

 

 あの筋肉ゴリラ相手には効果が薄そうだし。奪い返されるくらいなら、こっちの方がマシだろう。

 

『それ、10億はするんだがな。』

 

 じゅ、じゅうお、お、お、お、じゅうおく!?

 

 わ、わたし。シーラナイ!!!

 

 とりあえず、呪力の糸を射出して倒れた五条くんを囲うようにバリケードを形成する。

 

 よし、五条くんはいい感じに死んでたな。あの死にっぷりのままなら、原作同様、反転術式とやらでどうにかなるだろう。

 

『六眼のガキは、後回しだな。多少見栄えは悪くなるが仕方ねえ。次は首を落としてやるよ、星漿体。』

 

 ゴリラは刀を一本拾い上げて構えると、不敵な笑みを浮かべる。あの刀は、なんだっけ?あれも、なんか強かった気がする。気をつけなきゃ。

 

 さて、同化まであと7分って感じか。時間がない.....

 

 私はこのゴリラを戦闘不能にしつつ、再びあの結界に入らないといけないのだ。

 

 キツイって!!

 

『いけ。』

 

 んん!?

 

 ゴリラの合図で、周囲を飛び回っていたキモめの虫たちが、私を一斉に取り囲む。こいつらって、無害でいいんだよね?あれ、あのゴリラはどこに...あ、頭ムズムズ!!

 

『よお。』

 

 ゴリラは、私の背後に回り込んでいた。そういえばコイツは、呪力が無いから感知されないみたいな話だっけ?

 

 でも、私の○パイダーセンスに呪力の有無は関係ない!!

 

『チッ、』

 

ゴリラの斬撃を私はギリギリで回避する。

 

「おりゃー!!!」

 

 すかさず蜘蛛糸を発射して絡め取ろうとするが、ゴリラは虫を盾にしながら、再び姿を眩ませてしまう。

 

「速すぎるってぇ...!」

 

 どうやら単純なスピードは、向こうが上っぽいな。結界までの鬼ごっこを仕掛けるのも得策じゃ無さそう。

 

 あ、また頭ムズムズ!!

 

「危なっ!!」

 

 今度は少し掠ってしまった。右腕の皮膚が切れ、血が流れる。戦うのってこんなに痛かったんだな.....

 

 でもこんな痛み、気にしていられない!!

 

 攻撃直後、一周動きが止まったゴリラに私は左手を向ける。さっきよりも大量の蜘蛛糸を、さっきよりも速く!!

 

「はあああああああ!!、っ、あれ?」

 

 突如おぼえた違和感。なんだこれ、蜘蛛糸がうまくだせない!?

 

 

 

 

 甚爾は二度目の斬撃の際、予め回収していた天逆鉾の破片を天内の右腕の傷口からその体内に混入させていた。

 

 欠片とはいえ、特級呪具は特級呪具。

 

 術式の完全解除とまではいかないまでも、天内の術式・降霊術を弱めるだけの効果があった。

 

『じゃあな。』

 

 天内に生じたわずかな隙。それを甚爾が利用しないわけはなかった。

 

 回避の遅れた彼女の首を刎ねようと、彼は釈魂刀を振り抜く。

 

 

 

 

 

 

「違和感があるのは、ここ!!」

 

 斬撃の構えをとったゴリラを視界に収めながら、私は一か八か、自分の右腕を自ら引きちぎる。

 

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!

 

 でもこれで、違和感は取り除けた!!術式の出力も元に戻ってる。

 

「うおりゃあああ!!」

 

 残った左腕でゴリラの刀を受け止める。私の首を狙った刃は腕の皮膚と筋肉を切り裂いて、骨に当たってギリギリで止まる。骨に蜘蛛糸まとわせといて、正解だった。

 

「捕まえた...!!」

 

 そのまま左手から出した蜘蛛糸で、ゴリラを絡めとる。このチャンス、逃さない!!!

 

「んぎいいいいいい!!!!!!」

 

 私は反転術式で生やした右腕をすぐさま術式で強化して、パンチを放つ。

 

 その衝撃で、黒い火花が散った。ナニコレ、知らん怖。

 

 まあ、威力が上がってそうだしラッキー!パンチがクリーンヒットしたゴリラを蜘蛛糸で振り回して、ぶん投げる。

 

『せいっ!!!』

 

 ゴリラは高専内の建物の一つに突っ込んだ。なんか歴史ありそうな建物だったけど、気にしない!

 

 近づくのが怖かったから、遠くから蜘蛛糸を連射して、奴をベッタベタにしておく。

 

 ヤッバ、同化まであと4分!!

 

 私は急いで、再びあの結界に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 よーし、なんとか着いた!あと3分....あぶなっ!!

 

『......うう......ああ.......』

 

 ああ、夏油くんが重症だ!原作通りなら死にはしないだろうけど、一応回復しておこう。

 

「反転術式!」

 

 夏油くんの傷はたちまち治って、彼は意識を取り戻す。

 

『理子ちゃん...?そうか、なるほどね。』

 

 私の姿を一目見て、夏油くんは事情を察したらしい。

 

『ここは天国か。すまない、キミを守れなくて....』

 

「いや違う違う違う。時間がないから、黙って聞いて!私はもう一度天元と同化しに行く!!同化まであと3分ないくらい、それまで守って欲しいの!!」

 

『....分かった。』

 

 よし、あとは結界に入るだけ。その前に、やっておくべきことは.....

 

『理子ちゃん...?』

 

 夏油くんは、この先大丈夫だろうか?私の同化が成功すれば、あの“拍手”も無くなる。でも、それだけかもしれない。

 

 やっぱり、あれはきっかけに過ぎないんだろう。夏油くんは闇堕ちして...私にはその先が分からない。

 

 あの後、夏油くんはどうなるんだろう。

 

 闇堕ちだって、彼なりの選択だ。彼が本当にやりたいことだったのかもしれない。アニメでも、闇堕ちした後の夏油くんはスッキリした顔をしていたっけ。

 

 私は夏油くん達のおかげで、この世界で自由に生きられるようになった。そんな私が、夏油くんの生き方を強制するなんてのは間違ってる。

 

 だけど、そう分かっているのに...

 

 だめだ。それは違う。ダメだ私。言ってはいけない。

 それは彼にとって、呪いになる。

 

 でも、

 

「夏油くん.......後は、頼むよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『理子ちゃん......』

 

 夏油傑は動き出す。同化が完了するまで、後151秒。

 

 その間、自分の使命を、夢を、命を懸けて果たさんとする少女を絶対に守り抜くと誓って。

 

 ありったけの呪霊を呼び出して、入口を物量で固める。あの男を呪力で感知することは不可能だ。ならば呪霊を肉壁にして、物理的に感知する。

 

 後119秒を切った時点で、夏油は感じる。自らの呪霊の消失反応を。

 

『戻ってきたか.......』

 

 夏油の呟きと同時に。呪霊の山を突き破って、伏黒甚爾は現れる。

 

『よお、元気そうだな。あのガキに回復してもらったか。』

 

 彼の手にあるのは正真正銘、釈魂刀一本のみだった。

 

『お前の仕事とやらも終わりだ。好きにはさせない。』

 

『終わり?まだまだこれからだろ?』

 

 伏黒甚爾と夏油傑は、向かい合う。

 

 同化まで、後101秒。

 

 先に動いたのは、伏黒甚爾。

 

 彼は夏油を放置し、星漿体の殺害を第一に動く。そのスピードを、正攻法で捉えるのは無理と判断した夏油はとある呪霊を呼び出した。

 

『ねえ、わた、わた、わたし....綺麗?』

 

 原作との差異として。一度目の敗北の際、夏油は呪霊を出す暇もなく不意打ちで倒されている。

 

 そのため彼には、まだまだ手札がたくさんあった。

 

 そのうちの一つ、仮想怨霊・口裂け女。

 

 彼女の簡易領域によって、甚爾の動きは止められる。本来ならばフィジカルギフテッドは、領域に閉じ込められることも、必中効果の対象となることもない。

 

 だが口裂け女の簡易領域には、領域の外殻も、必中効果もなかった。“環境効果”として、口裂け女の質問を聞いたもの全てに、答えるまでの不可侵を強制しているに過ぎない。

 

 質問に答えるだけという簡単な解除方法が縛りとなって、その強制対象は非常に広い範囲に及んでいた。

 

 原作において、口裂け女の簡易領域が甚爾相手に通用しているのは、そのような理由があったからだ。

 

 多分。

 

『趣味じゃねえ。』

 

 甚爾が質問に答えると同時に、不可侵が解除される。彼は周囲に出現したハサミごと、口裂け女を斬り裂いた。

 

 この時点で、同化までは後89秒。

 

『終わりだな。』

 

『お前がな。』

 

 甚爾の背後に回り込んでいた夏油は、消滅しかけていた口裂け女を圧縮し、高密度の呪力へと変換する。

 

 

 

『呪術師の成長曲線は必ずしも一定じゃない。確かな土壌、一握りのセンスと、想像力。後は些細なきっかけで、人は変わる。』

 

 

 

 これは数十年後、とある高専教師が自らの教え子に語る言葉。夏油もまた、きっかけを得たことで大きく成長しようとしていた。

 

『理子ちゃんの夢を、邪魔するな!!!』

 

 夏油が繰り出すのは、呪霊操術の最高到達点。

 

 

呪霊操術・極ノ番

うずまき

 

 

 放出された呪力の砲弾は釈魂刀を砕き、伏黒甚爾を吹っ飛ばす。

 

 この時点で、同化まであと73秒。

 

『こいつ...』

 

 それでもなお立ち上がる甚爾に、夏油は問いかけた。

 

『今からお前に質問する、よく聞け。』

 

 それと同時に、再び不可侵が強制される。

 

 うずまきの真価は、準一級以上の呪霊を圧縮した際に起こる術式の抽出。夏油は、抽出したての口裂け女の術式を早速使用していた。

 

 この時点で、同化まであと59秒。

 

『チッ、質問は?』

 

 領域の性質を既に知っている甚爾は、夏油に質問を催促する。

 

『私は、弱者生存こそがこの世界のあるべき姿だと、ずっと自分に言い聞かせてきた。だが内心では、疑問に思っていたんだろう。自分達術師が自らを犠牲にしてまで、非術師を守る必要があるのかと。そんな時、出会ったんだ。星漿体である、彼女に。』

 

『おい、質問は?』

 

『黙って聞け。“質問の途中”だろ。』

 

『お前.........』

 

 同化まで、あと31秒。

 

 甚爾は気付く。夏油は“質問を終わらせる気”が無いのだと。

 

 この簡易領域の不可侵は、術式の持ち主が、質問を始めた時からスタートし、その質問に相手が答えると同時に終わる。

 

 当たり前の話だが。質問は最後まで聞かなければ、それに答えることなどできない。

 

 同化まで後17秒。

 

『最初は、ただのおかしい子だと思っていた。行動は無茶苦茶だし、言っていることも支離滅裂だったからね。だが、彼女は必死に何かを守ろうとしていた。』

 

 夏油は質問を引き伸ばし続けることで、その呪力が尽きるまで、不可侵を持続させることができる。

 

 甚爾の手に天逆鉾があれば、結果はまた違っていただろう。だがその呪具は天内理子の手によって既に砕かれていた。

 

 同化まで、後7秒。

 

『彼女はこう言っていた。“大いなる力には、大いなる責任が伴う“と。口先だけの綺麗ごとなんかじゃない。彼女は掲げたその大義を、最後まで貫いたんだ。』

 

 とうとう日が沈む。

 

 星漿体・天内理子と天元は一つになり、同化は成った。

 

『私は、彼女に心から敬意を表する。私は彼女に託されたんだ。彼女が愛したこの世界をね。この先何があっても、その思いに背くつもりはない。』

 

 この世界の天内理子が最後に残した言葉は、幸か不幸か、夏油をしっかりと呪っていた。

 

『はいはい、そうかよ。』

 

 タダ働きが確定した甚爾は、うんざりした顔でそう呟く。今の彼は、夏油の呪力が切れるまで待っているしかない。

 

『簡易領域とは言え、維持するための呪力消費は少なくない。もってあと10分ってところか?』

 

 領域の強行突破を諦めた甚爾は、逆にそう問いかける。

 

『いや、5分も持たないだろうね。私1人じゃ、お前は仕留められないだろう。でもね、』

 

 そう言うと夏油は、自ら簡易領域を解除する。

 

 

『私たちは最強なんだ。』

『俺たちは最強なんだ。』

 

 呪力の核心を掴み、反転術式を会得して。

 

 現代最強となった五条悟が、薨星宮に降臨していた。

 

『傑、天内は?』

 

『しっかりと、自分の責任を果たした。彼女は紛れもなく、この世界のヒーローだよ。』

 

『そうか...』

 

 天内の行く末を知った五条は呪力を練り上げていく。

 

 順天の蒼い無限。

 反転の赫い無限。

 

 五条が押し出そうとしているのは、それぞれの無限の衝突から生まれる仮想の質量。

 

『虚式 茈』

 

 その眩い光は、天与の暴君を包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『最期に言い遺すことはあるか?』

 

『.........2、3年もしたら俺のガキが禪院家に売られる。好きにしろ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後高専関係者の尽力によって、盤星教は解体される。呪術界を知る主犯達も、若き特級術師2人によって次々と検挙されていったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとね。夏油くん、五条くん。」

 

 

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