宿儺「どけ!!!俺は主人公の相棒だぞ!!!」   作:バケギツネ

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玉折

 

 

 理子ちゃんの護衛任務から一年が経った。

 

 あの一件で、悟はさらに強くなった。任務も全て1人でこなす。硝子は元々危険な任務で外に出ることはない。必然的に私も1人になることが増えた。

 

『夏油、それ何〜?』

 

 ああ、硝子か。呪霊操術をマニュアル操作からオート操作に変えられないか、試してるんだ。早く悟に追いつきたいからね。

 

 

 

 

 

 

 

 その夏は忙しかった。昨年頻発した災害の影響もあったのだろう。ウジのように呪霊が湧いた。

 

 祓う。取り込む。その繰り返し....

 

 祓う。取り込む。

 

 吐瀉物を処理した雑巾を丸呑みしているような...私と、後は悟しか知らない、呪霊の味。

 

『傑〜、お疲れー。またゲロ雑巾食ってきたの〜?』

 

 悟、やめてくれ。本当にマズイんだからな、あれ。何なら、悟ももう一度食べてみるかい?ん?

 

『はは、悪かったって。じゃあさ、口直しにスタバいこーぜ、スタバ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『夏油さん、お疲れ様です!!明日の任務、代わってくれてありがとうございます!!』

 

 灰原か、気にするな。あれは理子ちゃんの言う通り、一級案件だった。キミらの手に負える相手じゃない。

 

 それより灰原、最近は任務も多くて大変だろう?

 

 呪術師、やっていけそうか?

 

『ああ、自分はあまり物事を深く考えないタチなので、自分にできることを精一杯頑張るのは気持ちがいいです!!』

 

 そうか、そうだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『キミが夏油くん?どんな女がタイプかな?』

 

 ...?

 

 あなたは、どちら様?

 

『特級術師、九十九由基って言えば分かるかな?』

 

 貴方が、あの、特級のくせに任務を受けず海外をプラプラしてる、ロクデナシっていう....

 

『ま、まあ、高専と話が合わないのは本当だよ。彼らと違って、私がやりたいのは原因療法。目指すは、呪霊の生まれない世界だからね。』

 

 呪霊の生まれない世界...?

 

『興味を持ってくれたかな?まあ、大雑把に言ってしまうと、全人類が術師になれば呪いは生まれないって話さ。』

 

 全人類が術師に.....

 

 あ、すみません。明日の任務がかなり遠出で、もう出ないとなんです。そのお話はまたの機会に....

 

『ああ。五条くんにもよろしく!これからは特級3人同士、仲良くしよーね!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 祓う、取り込む。

 祓う、取り込む。

 祓う、取り込む。

 

 何のために?

 

 いや、そんなことは分かりきっている。

 

 

「『With great power comes great responsibility.』これ、私の好きなヒーローの言葉ね。意味?『大いなる力には、大いなる責任が伴う』ってやつ。」

 

 

 私は、自分の責任を果たしたい。彼女のように。

 

 彼女の愛した美しいこの世界を、守るために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは、なんですか....?

 

 

 

『何とは?』

 

 この子達は、どうしたんだと聞いてるんです。

 

『この2人が一連の事件の原因でしょう?』

 

 違います。

 

『この2人は頭がおかしい!!!』

 

 はい...?

 

『不思議な力で村人を襲うのです!!』

 

 事件の原因は、私がもう取り除きました。

 

『私の孫も、この2人に殺されかけたことがあります!!』

 

 .........君たちに聞きたい、今の話は本当かい?

 

『違う!!それは.....あっちが!!』

 

 .....キミは、自分と妹を守ろうとしたんだね。

 

『うん!!本当なの!!嘘なんてついてな

 

『黙りなさいバケモノめ!!!!』

 

 やめてください.....

 

『貴方達の親もそうだった!!!!!!』

 

 やめてくれ.....!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私はね、こっちの世界も大好きなんだ。黒井さんがいて、五条くんがいて、夏油くんがいて、綺麗で、美味しくて、楽しくて。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『貴方達がいるから!!村に不幸が続くのです!!泣くのをやめなさい!!被害者ぶるな、この化け物め!!!』

 

『ごめんなさい!!ごめんなさい!!ぶたないでぇ!!悪いのは私です!!もうしません!!!もうしませんから、許してください!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「2人も応援してくれる?私はね、大好きなこっちの世界を、もっともっと素敵な場所にしたいんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 皆さん、一旦外に出ましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 待たせてごめんね。

 

 もう大丈夫だ。もう誰にも君たちを傷つけさせない。

 

 ん?ああ、村の人達は気にしなくていい。あの人達との“話し合い”はもう済んだ。

 

 彼らからたくさん酷いことを言われたと思う。それももう、全部忘れていいんだ。

 

 ん?ううん、違う。君たちは化け物なんかじゃない。おかしいのはあの人たちだ。

 

 うん、ははは、そうだね。うん、私も大嫌いだ。あんな奴ら。さあ、早くこんなところから出よう。もう、キミ達は自由なんだ。どこか、行きたいところはあるかい?

 

 そうか、すまない。村から出たこともないのか..

 

 私の好きな場所?

 

 沖縄......かな。えっと、そうだな...ここよりもずっとあったかいところにあるんだ。私も一度だけ、大切な友人と一緒に行ったことがある。

 

 あそこはいい場所だった。何もかもが美しくて...

 

 きっと、君たちも気に入る。うん、そうだね、3人で行ってみよう。ああ、気にしなくていい。私もちょうど、行きたかったんだ。

 

 南へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 特級術師・夏油傑のしでかしたことは、すぐさま高専に知れ渡る。

 

『は....?』

 

 担任の夜蛾から、その知らせを受けとった五条も唖然としていた。

 

『傑はあの集落......』

 

『聞こえてますよ!!だから、はっ?つったんだ。』

 

 五条は親友の思いもよらない行動に、激しく取り乱していた。

 

『......何度も......言わせるな.........傑は.....

 

 

 

 

 

 

任務先の村から正式な許可を得た上で4歳の少女2人を引き取り、その足で沖縄旅行へ行った!!休学届けを残してな!!』

 

『んなわけねえだろ!!』

 

 思わず、五条はツッコんでしまう。

 

『悟、俺も何が何だか分からんのだ...』

 

 教え子の突然の奇行に、夜蛾は頭を抱えるのだった。

 

 一応説明しておくと、夏油は村人達に呪霊を差し向けたりはしていない。ただ、村人達をなだめてすかして、真っ当な“話し合い”(文字通り)によって、少女を引き取っただけだ。

 

 彼女らを救うために。

 

『なあ、先生...傑のやつ、幼女趣味とかじゃないよな.....』

 

 だが、その辺りの事情を知らない人から見れば、夏油の行動は“そう”捉えられてもおかしくなかった。

 

 この一件以来、夏油傑は

 

『史上最悪のロリコン特級術師』

 

 と陰で言われるようになる。

 

 

 

 

 

 

 

 夏油の休学から、数週間後。

 

『やあ。』

 

 件の男・夏油傑は、家入硝子の前に姿を現す。

 

『あ、青少年保護育成条例違反者じゃん。近づかないでくれる?警察呼ぶよ。』

 

『誤解だ、硝子。』

 

『......あれって冤罪なの?』

 

『当然だろう。』

 

『じゃあ、幼女2人と沖縄旅行行ったって言うのも?』

 

『いや、それは本当だ。待ってくれ、硝子。110番をプッシュするな。』

 

 なんとか同級生からの通報を阻止した夏油は、事の経緯について、彼女に話した。

 

『で、これからどうするの?その女の子達も、高専に預ける気?』

 

 家入は、呪いに翻弄された双子の将来を心配し、夏油にそう問いかける。

 

『いや、そんなのはごめんだね。彼女たちには、自分で生き方を選んで欲しい。高専に縛られてほしくないんだ。』

 

 家入の目からは、今の夏油が前よりも生き生きとしているように映っていた。

 

『なんか夏油、明るくなったよね。』

 

『はは、揶揄うなよ。待て硝子、どこに電話かけようとしてる!?』

 

『普通に五条だよ、110番じゃないから。』

 

 自らに着せられた思わぬ濡れ衣に、夏油は若干自意識過剰になっていた。

 

『もしもし、五条?ロリコン前髪、あ、じゃなくて、夏油が新宿にいたよ。』

 

『待ってくれ硝子。今ロリコン前髪って言ったかい?私のことそう呼んでる?』

 

 

 

 

 

 そんなこんなで再会した最強コンビは、適当な喫茶店に腰を下ろし、話し合いを行った。

 

『説明しろ、傑。』

 

 音を立てて、ストローでジュースを啜る五条。その不機嫌な様子に多少の罪悪感を覚えつつも、夏油は自らの展望を伝えていく。

 

『私はね、呪霊の生まれない世界を作るために、全人類を術師にしようと思っている。そのためにまずは高専を離れ、私が教祖となって宗教団体を立ち上げようと思うんだ。そこで信者達に、呪術を教える。』

 

『?????????』

 

 五条は親友の言っていることが何一つ理解できなかった。

 

『ゆくゆくは、政界へと進出するつもりだ。最終目標は、呪術を義務教育に組み込むことかな。』

 

『無理に決まってんだろ!!!』

 

 初めは五条も何かの冗談だと思っていた。だが、彼の親友の目は明らかにマジだった。

 

『ちょ、待て傑.....いきなり教祖とか...頭が追いつかねえよ...それに、ほら、あれだよ、親御さんが悲しむぞ。』

 

『父さん、母さんとは昨日話し合った。私が決めた道ならと、応援してくれている。』

 

『理解のある親御さんだな、クソッタレ!!』

 

 五条は頭を抱える。まさか両親公認だったとは....

 

『なあ、傑。限界ってもんがあんだろ?できもしねえことをせこせこやんの、意味ねえって。』

 

『できもしない....か。』

 

 夏油にだって、自分の言っていることが無茶だと言う自覚はあった。だが....

 

『意味ならあるさ。意義もね。大義ですらある。それに呪いを扱える人間が増えれば、それだけ呪霊の被害も減るだろう...?』

 

『.........................』

 

 五条が思っている以上に、彼の親友は冷静だった。

 

『それにね。私が保護した双子...彼女らを見て思ったんだ。無知ほど恐ろしいものはないとね。呪術に関する正しい知識が広まっていれば、あの子達のような悲劇もなかった。私はね。あの子達が、美々子と菜々子が堂々と生きれる世界を作りたい。』

 

 夏油は手元の紅茶を一気に飲み干す。

 

『それが今の私の夢だ。』

 

 自分の分の代金を置いて夏油は席を立つ。

 

『生き方は決めた。あとは自分にできることを精一杯やるさ。理子ちゃんの愛したこの世界が、少しでも美しくなるようにね。』

 

 その背中に、五条は声をかける。

 

『なあ、また会えるよな...?』

 

 夏油は振り返って、その問いに答えた。

 

『当たり前だろう?立場が変わっても、たとえどんなに離れていても、私たちは親友だ。ずっとね。』

 

『......だな。はは、そうだよな!!』

 

 五条もまた、代金を置いて店を出る。

 

『傑はそっち?』

 

『ああ、私はこれから、地下鉄に乗って...』

 

『なんだ、途中まで一緒じゃん。』

 

 五条と夏油は歩き出す。目的地は違えど、同じ方向を目指して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数年後。

 

 とある地下ホールには、夏油傑と美々子・菜々子の姿があった。

 

『“傑さん”、ホントにその格好で出るの?』

『もっと、それっぽい服の方が良くない...?』

 

『それっぽい服か.....』

 

 

 

 

ーーー

 

「夏油くん!私知らないよ!!今のままだと貴方、うっさんくさいかつダッサイ袈裟に、袖を通すことになっちゃうんだからね!!」

 

『袈裟に何か問題でも...?』

 

「問題大ありです!!あ、星漿体命令!!夏油くんは死ぬまで、その学ラン脱ぐの禁止!!私的にはそっちの格好の方が好きだし!」

 

ーーー

 

 

 

 

 

 

「いや、せっかくの晴れ舞台だ。これで行くよ。』

 

 夏油は学ラン姿のまま、壇上に上がる。

 

『信者の皆様、本日はここに集まってくれたことを嬉しく思います。私達は、この世界をより良いものに変えるという大義の元...』

 

 その日、夏油傑を教祖とし、呪いの正しい知識と使い方を説く、新興宗教団体、“天星教”が設立される。

 

 

 

 

 

 

 

 

『もしもし〜、傑。ホームページ見たけどさ〜。お前マジで教祖やってんだな。』

 

『ああ、これが夢の第一歩さ。そういえば、そっちはどうだった、悟。伏黒甚爾の息子に会ってきたんだろ?』

 

『あー、親父にそっくりだったよ。結構見どころありそうでさ〜』

 

 天星教と呪術高専の関係は少なくとも表向きは良好だった。それは、教祖である夏油傑の貢献によるところが大きいだろう。

 

 

 

 

 

 

『傑〜、お前もいい加減学ラン脱げよ〜。お前ももう二十歳超えてんだろ?』

 

『仕方ないだろう。もはやこれは信者達の中で、私のアイコンになってるんだ。というか悟、あのサングラスはどうしたんだい?......その包帯、前見えてる...?』

 

 呪霊操術のオート化に成功した夏油は、自身の呪霊を格安で高専にレンタルするというサービスを始めた。

 

 撃退した呪霊はできるだけ祓わず、夏油の元に連れてくるという条件で。時には、教祖かつ特級術師である夏油自らが、任務に赴くこともあった。

 

 

 

 

 

 

『なあ、傑。“僕”さ〜、高専の教師になろうと思ってんだよね〜。』

 

『寝言は寝てから言ってくれ。キミに教師の才能はないだろう?』

 

『........................』

 

『え、マジで言ってたのかい?』

 

 年中人手不足の高専と、更なる呪霊を必要とする夏油、その利害は完全に一致する。

 

 

 

 

 

 

『傑、傑〜、最近4人目の特級術師が高専に入学してさ〜。そいつ、乙骨憂太って言うんだけど....多分彼、僕に並ぶ術師になるよ。』

 

『キミと並ぶだって...?流石にそれは盛りすぎだ。それより、来週の任務明けに時間が取れそうなんだ。久しぶりに2人で飲みに行こう。』

 

 天星教は設立からの10年間、呪いと金を集めながらその勢力を拡大し、高専や御三家に次ぐ一大勢力へと成長を遂げていた。

 

 

 

 

 

 

『傑〜。今日の飲み、いつもの店でいいんだよな?僕は先行ってるから、任務終わったらダッシュで来いよ〜。』

 

『傑〜、遅刻だぞ遅刻!この留守電聞いたらダッシュで来いよ?罰として、今日はお前の奢りな。』

 

『傑、お前約束すっぽかしやがって。今、どこにいんだよ?早く折り返せ。』

 

『傑。悪かったって、今、忙しい感じか?飲みの件なら怒ってないからさ.........なあ、傑........“俺”は........待ってるからな、ずっと。』

 

 天星教の教祖である夏油傑は、2017年12月24日、特級呪霊の討伐任務中に謎の失踪を遂げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私、シン・理子ちゃん。

 

 いや、今はシン・天元って言った方がいいかな?

 

 あれから、ずっと見ていた。

 

 黒井さんを、

 

 五条くんを、

 

 夏油くんを。

 

 いや、違うな...

 

 見ていることしかできなかった。

 

 私は、知らなかったんだ。懐玉・玉折の先に待ち受ける“本編“で何が起こるのかを。

 

 

 

領域展開・胎蔵遍野

 

 

 頭に縫い目のある女に、夏油くんが殺された時も。私はただ、見ていることしかできなかった....

 

夏油くん!夏油くん!ねえ、夏油くん!!起きてよ!!夏油くん!!

 

 泣いても叫んでも、私に何かができるわけじゃない。私はただ、見ているだけ。

 

 

『夏油傑。全人類を術師にするというキミのプラン、いい線いってたと思うよ。ただ、キミは慎重すぎた。私なら、その身体をもっと上手く使える。』

 

 

 夏油くんの死体から脳が抉り出されても、夏油くんの身体が乗っ取られても、私はただ、見ていることしか....

 

 嫌だ、嫌だ!こんなの...!!

 

 まだ足りない。きっと私だけじゃまだ、足りないんだ。

 

 もっと、“仲間”が必要だ。

 

 この世界のことを知っている“仲間”が、もっとたくさん!!

 

 

「お願い、みんなを助けて!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 天元と同化した、1人の転生者。

 

 その願いは通じ、“呪術廻戦の世界”と“別の世界”、その境界を遮っていたとある結界に、穴を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

「両面宿儺....?主人公の相棒か!!」

 

 その穴から迷い込んだとある転生者の魂は、呪いの王・両面宿儺に宿ることになるのだが、それはまた別の話。

 

 

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