宿儺「どけ!!!俺は主人公の相棒だぞ!!!」   作:バケギツネ

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混沌

 

 

 これは、虎杖悠仁と脹相が八十八橋で対面を果たす、数時間前のこと。

 

 

 

 

 

 呪胎九相図の長男、脹相は150年ぶりに目覚める。隣には壊相と血塗、彼が自分の命よりも大切におもう、弟達がいた。

 

『3人とも、受肉....したのか。お前の仕業か?』

 

 目の前にいる銀の髪を短髪にしたツギハギだらけの呪霊に、脹相は問いかけた。

 

『まあね。感謝してよ〜。キミたちを高専から奪うのに、結構苦労したんだから。』

 

 軽薄な態度で、その呪霊は問いに答える。

 

『俺は真人。見ての通り呪いだ。君たちにはね、俺の計画に協力して欲しいんだ。』

 

『計画だと?何を企んでいる....?』

 

 脹相は直感的に感じ取る。真人と名乗るこの呪霊、こいつは胡散臭い。必ず裏がある。

 

 視線を壊相に合わせると、目配せが返ってきた。恐らくも、壊相も同意見。血塗は、多分何も分かっていなかった。

 

(そんなところも可愛いな、血塗。)

 

 脹相が心の中で兄バカを発揮している間に、真人から返答がくる。

 

『今の世界をひっくり返すんだ。人間を淘汰して、呪いの時代を作る!!』

 

 真人は声高らかにそう宣言する。

 

『君たちにとっても、都合がいいはずだ。だって君たち.....特にそこの緑のやつ....』

 

『緑のやつじゃない、血塗だ。』

 

 すかさず脹相が訂正を入れる。

 

『はいはい。特に血塗とか、今の世界じゃ生きられないでしょ?君たち受肉体は呪霊と違って、ちゃんと身体がある。だから、普通の人間からも丸見えだし。』

 

『......................』

 

 真人の言葉に、脹相は反論できない。彼の言う通り、血塗は人間とはかけ離れた容姿をしている。社会に溶け込むのはまず不可能だった。

 

『おまけに呪術師にとって、キミらは呪霊とそう変わらない。見つかったら、祓われること間違いなしだ。分かる?今の世界にキミらの居場所はない。君たちはもう、呪いとして生きて、世界の方を変えるしかないんだよ。』

 

 脹相は押し黙るしかなかった。

 

『っ、兄さん!』

 

 兄の動揺を感じ取った壊相は、声を上げる。しかし彼もまた、真人の主張に心が揺らいでいた。

 

『兄者あ?』

 

 血塗は、兄の異変を察知しよたよたと脹相に近づく。

 

『壊相、血塗、これは.....俺の我儘だ。俺は.........人として苦しむ2人を、見たくない.....』

 

 脹相は唇を噛み締めながら、言葉を紡ぐ。

 

 彼は選ぼうとしていた。

 原作の彼曰く、“楽な道”を。

 

『兄さん.......』

 

『兄者......』

 

 壊相と血塗は、考える。自分達がどうするべきかを。

 

『なるほど、ならば呪霊側につきましょう。』

『俺もぉ!!!!』

 

2人は、兄の選んだ道について行く。

 

『本当にいいのか?2人とも。』

 

『ええ、兄さんが見たくないものを、見せたくはありませんからね。』

 

『俺も俺も〜!!!』

 

 互いのために生きる、それがこの三兄弟の絶対的指針。それが揺らぐことは決して無かった。

 

『いいか、俺の愛する弟達よ。壊相は血塗のために。血塗は俺のために。俺は壊相のために生きる。俺たちは、3人で一つだ。』

 

 

 

 

 

『うんうん。麗しい兄弟愛だね〜。』

 

『!?』

『いつの間に!?』

『えええええ!?』

 

 気づけば真人は、壊相と血塗と肩を組んでいる。その掌は、しっかりと2人に触れていた。

 

『何の真似だ!!!!』

 

 脹相は血液を圧縮した両手を、真人に向ける。

 

『もぉ〜、カリカリすんなよ。』

 

『!?』

 

 真人は気づけば、脹相の背後に移動していた。そのスピードに彼は唖然とする。

 

『これからは仲間になるんだし、いいでしょ。スキンシップってやつさ。』

 

 真人は脹相の肩にも、その掌で触れる。

 

『.............へぇ〜。驚いた。2人目か。』

 

 真人は1人納得して、アジトの椅子に腰を下ろした。

 

『さあ、三兄弟〜。早速だけど、“お使い”頼めるかな?』

 

 

 

 

 

 

 

 三兄弟がお使いに出かけた後、アジトの奥に潜んでいた羂索は顔を出す。

 

『どうだった、真人?』

 

 彼は問いかける。好奇心に満ちたニヤケ面で。

 

『うん。夏油の予想通りだったよ。』

 

 真人は三兄弟に触れた時、自身の術式、“無為転変”を発動していた。その目的は、彼らの魂を隅々まで”観測“すること。

 

 

 

 

 

 

 

 

『う、ううっ...!!!!』

 

『兄さん、どうしたの?』

『兄者、頭痛いのぉ?』

 

 お使いのために八十八橋へと向かっていた三兄弟だったが、突如脹相に異変が起きる。彼を襲うのは、原因不明の頭痛。

 

『あああっ、がっ、あああっ!!はあ、はあ、はあ...』

 

 頭の痛みは徐々に治まって、脹相の呼吸は安定していく。

 

『はあはあ、何だったんだ...今のは.......』

 

 その痛みに、脹相は心当たりがなかった。

 

(先ほどのツギハギの呪いに触れられた時、何かされた...?いや、どうもそんな感じじゃない....何だったんだ、さっきの痛みは....)

 

 何とも不思議な体験だった。痛みと同時に、身体の自由が効かなくなっていくような....そんな感覚。

 

『兄さんは、ここで休んでいてください。』

『うん!!俺たちだけでも大丈夫!』

 

 長男を心配した次男と三男は、自分達だけでお使いを果たすことを決意する。

 

『壊相、血塗.....しかし、』

 

『私たちを信用してないの?兄さん。』

『俺たち2人なら、すくなの指一本くらい、どうってことないよお!!』

 

 なおも食い下がる脹相だったが2人に説得されて、仕方なく1人待機となっていた。だが....

 

 

 

 

 

『俺はそいつらの、お兄ちゃんだ!!』

 

 胸騒ぎがした脹相は、弟達のピンチに駆け付ける。相対する虎杖悠仁も、自らの弟なのだとは夢にも思わずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やあ、すっくんだぜ!!

 

 なんだなんだ、新手か!?この特徴的なイケボ、浪川○輔さんだな。よし、今からアイツのことは、ツインテール浪川と呼ぼう。

 

「悠仁、大丈夫か?反転術式!!」

 

 血のレーザーで撃ち抜かれた悠仁の左肩を治癒する。ん、なんか違和感あんぞ。この感覚.....毒!?

 

 原因物質を特定!!除去!!

 なんとなくで出来た!!

 

 まあ、俺の指という猛毒に耐える悠仁の身体なら元々大丈夫だったかもしれないが、一応な。余計なお世Wi-Fiだったらすまん。

 

『サンキュー、すっくん!』

「どういたしまして。」

 

『兄者ああああ!!!!』

『兄さん!!!』

 

『遅くなってすまない....お前達は逃げろ!!この男は、俺が食い止める!!!』

 

 ツインテール浪川は「いただきます」の時みたいな形の両手を俺の方へ向けながら、そう叫ぶ。

 

 こいつら、3人兄弟だったのか....奇遇じゃん。俺と悠仁と京都のジャイアンもそうなんだよ。

 

 ジャイアン元気かな?

 

『......しかし兄さん!』

 

『早くしろ!!!』

 

 ウソップとTバックは少し迷った後に、その場から逃げ出す。追撃しようかと思ったが、今はツインテール浪川から目を離すわけにはいかない。

 

 あの構え、また血のレーザーが来る。あのスピードは脅威だ。

 

 河原には悠仁とツインテール浪川の2人だけが残され、お互いに動かず睨み合う。

 

『お前。何であの技、すぐに撃たない?」

 

 悠仁はツインテールに問いかける。たしかに。何ですぐに撃たないんだ..?

 

『さあな。』

 

『弟達が逃げるまで、時間を稼ぎたいんだろ?』

 

『...............違う!!!』

 

 分かりやすっ!!

 

 なるほど、そういうことか。だとしたらこのツインテール浪川、漢じゃねえか。自分がしんがりを務めてまで、弟を助けようとするなんて.....

 

『お前、いいお兄ちゃんだな。』

 

『!!.....だまれええ!!!あ、ああああっ!!!』

 

 ん、なんだなんだ?ツインテール浪川が急に頭を押さえてる。隙だらけだなぁ〜、今のうちに攻撃を、ヘヘヘへへ〜。

 

 いやそれはダメ!!!!

 

 流石にそれは主人公としてライン越えてる!!なんかあのツインテール浪川、あんまし悪いやつじゃなさそうだし。

 

 悠仁も同じように考えたのか、奴への攻撃を躊躇している。

 

『お前、大丈夫かよ?』

 

『うるさい!!う、ああああああああっ!!』

 

 いやまあ、俺と悠仁のこと信用できないのはわかるけどさ〜。それにしたってあの様子は尋常じゃない。

 

 早く何かしらの治療を....いや、そもそもアイツは呪霊?人間?なんか、その中間って感じの気配だ。反転術式やっちゃダメな気がする。

 

 とにかく俺じゃあ手に負えない。早く高専の専門家に診てもらった方がよさそうだ!

 

 だが、普通に説得したんじゃ、言うこと聞いてくれなさそうだし....

 

 よし。ここは少年漫画式に説得するとしよう。

 

「そこのツインテール浪川!!」

 

『....?俺のことか...?』

 

「ああ、そうだ。これは縛りだ。今から俺たちと戦え。勝った方が好きな条件で更なる縛りを結べる。というのでどうだ?」

 

『.....いいだろう!!』

 

「はい縛り!!言質取ったり!!」

 

 よし、あいつも乗ってきた!これでやることが分かりやすくなって助かるぜ!!

 

「さあ、いくぞ悠仁!」

『ああ、死なない程度にボコす!!』

 

『壊相、血塗。お前たちのためにも、俺は負けん!!』

 

 俺たちは睨み合う。何よりも厄介なのは、やはりあの血のレーザー。あの初速は警戒しなくては。

 

 宿儺呪力モード、いっとく?

 

 いや、あれには時間制限もあるし...相手の手の内が完全に分かっていない以上、先にそのカードを切るのは、得策じゃない。

 

「悠仁、悪いが....」

『分かってる。あのモードは温存しとく。』

 

 悠仁は拳に呪力を集め、ツインテールに接近する。

 

『舐めるな!!』

 

 出た、血のレーザー!!

 

『すっくん!』

「おうよ!!」

 

 しかし悠仁はそれをほとんど避けず、直進を続ける。

 

『なに!?』

 

 レーザーは悠仁の脇腹を貫く。それと同時に反転術式!!傷を治して毒を除去!!その頃にはもう、ツインテールは悠仁の射程に入っている。

 

『黒閃!!』

 

 悠仁の通常攻撃パンチ!

 

 ツインテールは血で固めた腕でそれをガードした。なんか、ワンピースの武装色みたいでかっこいいな!!

 

『らああああっ!!』

 

 だが武装色でも、悠仁の一撃の威力を殺しきれなかったようだ。奴は、大きく後退する。

 

『超新星!!』

 

 んん、ツインテールの奴、なんか強そうな技名を....ってわぁ!?悠仁の背後で血の塊が炸裂する。これは、設置型の血の散弾!?

 

 反転反転!悠仁を回復ぅ!

 

『血刃!!』

 

 もう次の攻撃が!?今度は奴の血がナイフに!

 

「悠仁!急所を守れ!!」

 

 最悪即死しなければ、反転でどうとでもなる!!

 

『甘い!!』

 

 ああーーっ!!血のナイフが、悠仁の両足を串刺しに!!

 

 こっちの動きを封じるのが狙いか!!

 

『穿血!!!』

 

 回避の遅れた俺たちに迫る血のレーザー!!避けるのは間に合わん!!

 

 って事でガードだ、悠仁!絶対、頭狙ってくっから!!

 

『んぎいいいいい!!!!』

 

 悠仁は呪力の篭った両手でレーザーをガードする。お、今回のレーザー、思ったより威力がないぞ。

 

『チッ、溜めが足りなかったか...』

 

『うおおおおおお!!』

 

 悠仁は串刺しになっている両足を無理やり引き抜いた。もちろんその足は、すぐに反転で回復する。

 

『くっ、赫鱗躍動・載。』

 

 おんやあ?

 ツインテールの顔に紋様が!

 

 パワーアップした!?

 

 しかもこの技、京都校の糸目先輩の...え、なにこれ?何かの伏線!?

 

 まさかあの糸目先輩、このツインテールと兄弟だったりする!?

 

 くっ、これだから糸目キャラは....すっくんは最初から、アイツを怪しいと思ってたんだ!

 

 おのれ加茂憲紀いいいいい!って、冗談はさておき。

 

 

『はあああああ!!!』

『うおおおおおおお!!!』

 

 おお、やってるやってる。少年漫画らしい殴り合いだ。でも格闘センスと反転がある分、悠仁が押してるっぽいな!

 

 これなら勝てるぞ、ガハハ!!

 

『黒閃!!』

『かはっ、』

 

 おっしゃあ!悠仁の頭突きがクリーンヒットォ!!

 

『まだだあああ!!!』

 

 うぉ!?立ち上がりやがった!タフだなツインテール.....!!

 

 自分の頭を血で硬化して、頭突きの威力を落としてたのか。

 

『虎杖悠仁、確かにお前は強い。だがそれは、弟たちの思いを背負った俺が、負けていい理由にはならない!!』

 

 ツインテールは足から血を噴射して、空を飛ぶ。

 

 ええ!?そんなのあり!?

 

 あの高さじゃ、今の悠仁の大ジャンプでも届かない..!

 

『穿血!!』

 

 あ、それ狡いぞ!!こっちの攻撃だけが届かない位置から遠距離技とか、この陰キャめ!!

 

 スマブラとかで、一番嫌われるタイプの戦いだからな、それ!!

 

『すっくん、ちょっとやべえかも!!』

「すまん、悠仁。今は逃げてくれ!!」

 

 あの血のレーザーは初撃を避ければ、大きな隙が生まれるという弱点がある。それを奴は、出血大サービスのアイマンマンみたいな飛行方法で、カバーしている。

 

 あんなに血出して大丈夫なのかな?貧血とかにならない?

 

 って、アイツの心配してる場合じゃねえ!!下手したらこっちがやられてしまう!!

 

『俺は必ず勝つ!9人兄弟の長男としてなぁ!!』

 

 ツインテールは、血のレーザーを放ちながらもそう叫ぶ。

 

 やっぱこのツインテ、いい奴だろ...決めた。こいつは弟ともども高専に連れ帰って、絶対追加戦士にしてやる!

 

「悠仁、いくぞ!!」

『おお!いいんだな?』

 

 悠仁はレーザーを避けつつも、自らの檻を緩めていく。今ここに再誕する、

 

『「宿儺呪力モード!!」』

 

 身体が溢れ出した呪力に包まれ、顔には歪な紋様が浮かぶ。

 

『なんだ、それは....!?』

 

 いいリアクションだ、ツインテール。

 

「その答えはその身で知るがいい。」

 

 よし、いい感じのセリフが決まった!!

 

『クッ、もっと距離を...』

 

  俺たちを警戒したのか、レーザーを撃ちながらもツインテールはさらに上へ飛ぶ。

 

 だが、もう遅い。

 

「とぶぞ、悠仁。3、2、」

 

『「1」』

 

 宿儺呪力モードで身体能力が爆上がりした俺たちは、“跳ぶ“。俺たちは、レーザービームの初速よりも早いスピードで、奴の上をとっていた。

 

『速い....!』

 

 やっぱ、いいリアクションするよなぁ〜、キミ。味方になっても埋もれなさそうで安心だ。さあ、それでは、

 

「下へまいりまーす!!」

『黒庭拳!!(峰打ち)』

 

 悠仁の渾身の一撃、ああもちろん死なないように加減したその一撃は、武装硬化を突き破ってクリーンヒット。

 

『かはっ...!』

 

 ツインテールは意識を失いながらも、すっげー勢いで地面に叩きつけられた。大丈夫、これくらいで死ぬほど、奴はやわじゃない。

 

『すっくん、ありがとな!』

「おう!」

 

 宿儺呪力モードを解除した悠仁は、地面に着地する。使用時間、15秒って感じだったな。あともう一回くらいは、変身する余裕がありそうだ。

 

「おい、ツインテール。俺の勝ちでいいな?縛りを.....」

 

 って、ありゃ?

 

『すっくん、こいつ気絶してたら、縛り結べなくない?』

 

 あ、........しゃーない。こいつが目を覚ますまで、介抱でもしてやるか。

 

 

『兄者ぁぁぁぁ!!』

『兄さん!!!!』

 

 んん、お前らは、ウソップとTバック!!逃げたはずじゃ..

 

 兄貴のピンチを察して、戻ってきたのか。

 

『兄者を殺さないでくれ!!お願いだよぉ!!俺、兄者が大好きなんだよぉ!!』

 

『ムシのいい話だというのは、百も承知です!!その上でお願いします!!兄さんを助けてください!私たちは、どんなことでもします!!今この場でどんな縛りでも結びましょう!!だからどうか!!』

 

 こいつら、本当に仲いい兄弟なんだな。

 

 っていうかあれ、これって.....

 

「なあ、悠仁。今の俺たち、スッゲー悪の敵みたいじゃない?」

『そりゃあ、まあ、うん。』

 

 とりあえず、誤解を解くか。

 

 この三兄弟は高専の追加戦士として、働いてもらわなきゃだからな!

 

「安心しろ、お前たちの兄を殺しはしない。奴とお前たちにはまだ、やってもらうことがあるからな。」

 

『すっくん、言い方言い方。』

 

「え、なんかまずかった?」

 

 あ、ほんとだ。Tバックとウソップがめっちゃビビってる。

 

 スクスク。僕は悪い呪いじゃないよ。

 

『....................』

 

 お、ツインテールもいつの間にか起き上がってる。よし、とりあえず縛りを結ぼう。それからゆっくりと誤解を解いて...

 

 あれ?

 

 なあ、ツインテール....

 

 

 

「今のお前は、誰だ?」

 

 

 

 俺は夜蛾師匠からの宿題として、日々他人の魂を感知するという修行中。その成果で、今では他人の魂が多少見える。

 

 だから気づけた。

 

 ツインテールの魂が、別の魂と切り替わっているのを。

 

 その魂は、転生者である俺の物とよく似た形をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まだ足りない....

 きっと私だけじゃまだ、足りないんだ....

 

 もっと、仲間が必要だ....

 

 この世界のことを知っている仲間が、

 “もっとたくさん”...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『夏油の予想通り。虎杖悠仁と同じで、魂が三重構造になってた。』

 

 真人は九相図に触れた際、その魂を観測していた。

 

『受肉された身体の魂、受肉した九相図の魂、それとは別にもう一つ出どころ不明の魂があった。なんで分かったの?』

 

 里桜高校の事件で、真人が見たというもう1人の宿儺、それは明らかに呪術の理から外れた存在だった。

 

 この世界の“バグ”だと言っていい。

 

『仮説を立てたまでさ。どんなバグにだって、規則性はあるものだからね。』

 

 もう1人の宿儺、その魂がどこから来たものなのか、羂索には見当もつかない。

 

 だがその魂が宿った“きっかけ”には、心当たりがあった。

 

『受肉。恐らくそれこそが、未知の魂を宿すための引き金なんだ。』

 

 羂索は見出していた。

 この世界における転生のルールを。

 

『受肉したその瞬間にだけ、魂のスペースに余白ができるんだろうね。未知の魂は、そこから入り込んでくる。ふふっ、実に興味深い...!』

 

 羂索は、はしゃいでいた。

 自身の可能性の域を出た、“混沌”の出現に。

 

『って、ことは〜、“受肉”が起これば、必ず3つめの魂ができるってこと?』

 

 真人の問いに、羂索は答える。

 

『いや、必ずってわけじゃない。未知の魂が宿るかどうかは.....運任せってところかな。』

 

 ニヤつきっぱなしの夏油を気味悪がりながら、真人は話を続ける。

 

『まあ、その未知の魂とやらも、これ以上増えることはないんでしょ?今回ので、呪物も使い切っちゃったし.....夏油?』

 

『たはは、はははははははははははは!!』

 

 堪えきれずに、彼は嗤う。

 

 

 “死滅回遊”に思いを馳せて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「答えろ!!誰だお前は!?」

 

 虎杖悠仁はすぐさま脹相(?)に接近するが...

 

 

 

「衛瑠裟(エルサ)」

 

 

 脹相(?)が何かをつぶやくと同時に、虎杖の身体を覆い尽くすほどの氷城が出現する。

 

 脹相の身体には、赤血操術とは異なる新たな術式が刻まれていた。

 

『氷の城..?順平の高校で戦ったおかっぱ頭...アイツと似た術式...?クッソ、身体が.....動かねえ………』

 

 虎杖悠仁は、そこで気を失う。すっくんはそんな虎杖に生やした口から、自分の同胞とも言える存在に対して呼びかける。

 

「お前、転生者だよな!?落ち着いて聞いてくれ!俺も転生者で...そうだ、お前は呪術廻戦を、どこまで知ってる!?教えろ!おい!!」

 

 

「う、ううっ.......!!」

 

 

 必死に呼びかけるすっくんだったが、その声はもう1人の転生者に届かない。虎杖悠仁の危機的な状況に、脹相の術式が反応していたのだ。

 

 突如脹相の脳内に溢れ出す存在しない記憶。

 

 

 

 

『はい、兄ちゃん。あーーーん。』

『あーーーーーーーーーーん。』

 

 

 

 

 

 

『まさか....そんな.......』

 

 脹相は頭に浮かんだ映像から、虎杖悠仁の正体にようやく気付く。

 

「おい、ツインテール!お前じゃない!さっきのやつともう一度話がしたいんだ!頼む!」

 

 すっくんの願いも虚しく、身体の主導権は完全に脹相に戻っていた。虎杖を包んでいた氷城は砕け、彼の身体は自由になる。

 

『に、兄さん?』

『どうなってんのぉ、これぇ?』

 

 度重なる異変に置いていかれ気味の弟たちが兄を心配する中、

 

『壊相、血塗、落ち着いて聞くんだ。』

 

 脹相は自分自身にも言い聞かせるように、重大な事実を告げるのだった。

 

『虎杖悠仁は、俺たちと血の繋がった、兄弟なんだ!!』

 

「そんなことより早くさっきのやつと話を......えええええええええええええええええ!?兄弟いいいいいいいいいいいいいいいいい!?」

 

 

 

 現場は混沌を極めていた。

 

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