宿儺「どけ!!!俺は主人公の相棒だぞ!!!」 作:バケギツネ
◆
“同化”と“受肉”。
魂による魂の上書きという点で、この2つは共通している。
天元との同化が間近に迫っていた星漿体・天内理子にも、魂の余白ができていた。“境界”を越えてきた別の魂が入り込めるだけの、余白が。
その後、転生者・菅原満子が“境界”に穴を開けたことで、さらに多くの魂が呪術廻戦の世界に迷い込むこととなる。
◇
アイアム、すっくん!!
悠仁はまだ気絶してて動けないので、俺1人でお送りします!
もう1人の転生者発見伝!!と思ったら、すぐにどっか行っちまった!
かと思えば、
『悠仁!!起きろ!!俺たちはお前の、お兄ちゃんなんだぞ!!』
「ちょっと待てお前ら!!嘘つけええええええ!!そんな訳ないだろうがぁぁ!!!」
何なんだよこの状況!!
敵だったはずのツインテールが、いきなり悠仁の兄を名乗る不審者と化した!!
いや何で!?
展開に脈絡なさすぎんだろーが!!
「そもそもぉ、うちの悠仁は一人っ子なんだよ!!お前らみたいな個性的な兄弟はいない!!」
そう、そうなんだ。悠仁が一人っ子であるということは33話で確認済み。つまり....
「発言を撤回しろ!!この大嘘吐きツインテールめ!!」
『うるさい!!俺は悠仁のお兄ちゃんだぞ!!悠仁、起きろ!信じてくれ、本当だ!』
こ、こいつ。どれだけ面の皮が厚いんだ!!
とんでもない奴だな!!虚言癖か?
『というか貴様、両面宿儺だな?俺の弟に受肉しているだと!?ふざけるな!!』
はあああ!?何兄貴ヅラしてんだコイツ!!
『一体何を企んでいる!?悠仁からすぐに出て行け!!』
「ふざけてるのは貴様だ!!俺は悠仁と一心同体の相棒だ!!離れ離れになるなんて、あり得ない!!」
『相棒だとぉ〜!?悠仁!お前は宿儺に騙されてるんだ!!目を覚ましてくれ!!』
なんなんだこのブラコンモンスター!全然引き下がらねえぞ!!
お前が悠仁の兄弟なんて、俺は絶対認めないからな!!
「いい加減にしろ、ツインテール!!俺たちに兄弟がいるとしたら、それは京都校のジャイアンだけだ!!お前じゃねえ!!」
『知らん!!誰だそいつは!!』
「本名、東堂葵!!俺たちとは同中のブラザーだ!!」
『知らん!!誰だそいつは!!』
ジャイアンのことを知らないなんて、間違いなくこいつはクロだ。
それだけじゃない!俺たち三兄弟の絆を、アイツは侮辱したんだ!許せねえ!!
「それに、おいお前ら!!」
俺はその辺で呆然としていた、ウソップとTバックを怒鳴りつける。
「お前らはどうだ?普通に悠仁を襲ってきたし、今更悠仁が弟だとは言わないよな!?」
流石にこいつらは、反論できまい!!
『確かに、その少年が弟だとは初耳です。』
『俺もぉ。』
ほれみそづけぇ!!!
『ですが兄さんが言うなら、間違いありません。私は今日から、彼を弟と呼びましょう。』
『俺もぉ。』
クッソ!どいつもこいつも!!
悠仁は何なの?変な奴を引き寄せるフェロモンでも出てんの?
クッソ〜、悠仁が気絶してるから、確認のしようがない!
「って、ていうか、全然似てないじゃん!お前ら。」
俺は自称悠仁の兄弟たちを見遣る。とてもじゃないが、血がつながっているとは思えない。
『実は俺も、そのことが気になっていてな。悠仁は俺たちのような呪胎九相図とは少し違うらしい。』
じゅた、あん?何だそれ。
呪術素人の呪いの王たる俺が理解できるように、分かりやすく説明しやがれ!
あまり難しい言葉を使うなよ、俺が困るぞ。
『まあ細かいことは気にするな、悠仁。今日からよろしく頼む。』
『よろしく頼むよ。』
『頼むぅ!』
「ちょっと待てぇぇぇ!!!!」
いやまあ、確かにこいつらは、追加戦士にしようとしてたけど...え、原作者さん、この展開で合ってます!?
ど、どうしよう。
こ、こういう時は、報連相だ!!
恵くんと野薔薇ちゃんに相談を、って2人は戦闘中じゃん!早く助けにいかないと!!
「と、とりあえず、お前らはそこを動くなよ!!起きろ悠仁!」
『..........はっ、おう!!』
ようやく意識を取り戻した悠仁は、自分を取り囲む自称三兄弟たちに気付く。
『いやどういう!!??』
いやまあ、気持ちはわかるよ。だがまあ、
「悠仁、こいつらのことは一旦保留だ。ひとまず、恵くんと野薔薇ちゃんを助けに行くぞ!!」
『悠仁、行くんだな。俺たちもついていくぞ!!』
『私も。』
『俺もぉ!!!」
「うるせえ!!お前らはついてくんな!!話がややこしくなるだろうがぁ!!」
『なあ、すっくん.....これは一体.....』
「俺も知らん!!!!!!」
クッソ、どうしてこんなことに!?
俺、ボケ属性のはずなのに!何でツッコミやらされてんだよ!!
『おい宿儺!!うちの弟を怒鳴るとは、どういうつもりだ!?』
『え、弟...?俺が...?』
「一応聞いとくぞ、悠仁。こいつら、お前の兄弟か?」
『え、違うけど。』
「やっぱ嘘じゃねえか!ツインテールめ!!」
『違う!話を聞いてくれ!!悠仁!!』
「耳を貸すな!!騙されちゃダメだぞ悠仁!!」
『???????????』
あ、あまりの情報量に、悠仁が気絶しかけてる!!
『落ち着いてください。我々は、少なからず役に立てるはずです。』
ん、どういうことだよTバック。
『俺、悠仁に最初に蹴られた時ぃ〜、宿儺の指に血ぃ付けといたぁ!だから場所、分かる!』
はぇ〜、あん時ウソップはそんなことを。
「でも俺、普通に指の場所分かるぞ。だって、自分の一部だし。」
『『.......................』』
あ、なんかゴメンて。
俺が2人に謝りかけた直後、恵くんの鵺が飛び出してきた。およ?いつの間にか、結界が解除されている。
「ってか、ええ!?何事!?」
鵺に乗っているのは、気絶した野薔薇ちゃんを抱えた恵くん。なんか2人ともボロボロじゃない!?
「恵くん、一体なにがどうなってる!?」
『......いやすっくん。こっちのセリフなんだが...』
恵くんの視線の先には、すっかり味方ヅラをした三兄弟。
「あー後ろの奴らね。えーーーと、こいつらは....」
『俺は悠仁のお兄ちゃんだ。』
『私は悠仁の兄さんです。』
『俺は、悠仁の兄者だぁ!!』
やめろお前ら、勝手に名乗るなぁ!恵くんが混乱するだろ!!
『こいつらを.....洗脳したのか?流石だな。すっくん。』
「違う!!!!違うんだ、恵くん。ま、まあ、とりあえずは味方っぽい!!」
洗脳の方が、むしろ分かりやすくて良かった。
何が原因なのこれ。俺の術式、洗脳だったりする?嫌なんだけど。
ってかそれはないか。だって俺の術式は、
「そ、それより!野薔薇ちゃんを回復する!!」
幸い野薔薇ちゃんの傷は、そこまで酷くなかった。安静にしておけば、そのうち目を覚ますだろう。
「で、何があったんだ?俺の指を取り込んだ呪霊か?」
可能性として考えられるのは、今回の事件の元凶である呪霊が、めちゃくちゃ強いっていうやつだ。少年院で出てきた虫みたいな呪霊が修行を重ねて、ゴールデン特級呪霊に覚醒してるとか、なんかそういう感じのやつ。
『いや、指を取り込んでた呪霊自体は雑魚だった。問題は、その後に現れた、“別の特級呪霊“。すまない。そいつに指を奪われた...』
別の特級呪霊?
それも、恵くんと野薔薇ちゃんをここまで追い込むほどの強さ。
まさか、
「恵くん、その特級呪霊って、顔にツギハギがあったりしたか?」
真人。来てるのか!?ここに!!
『いや、違う』
いや、違った。
『俺たちが遭遇したのは、あの...
『領域展開・蕩蘊平線』
あれ、ここは南国ビーチ?
なんか俺だけ、違う場所に来てんぞ。
んん、え、どういうこと?唐突に水着回?
いや、違う!ここは領域の中!!
この領域を展開したのは、その真ん中にいるタコみたいなアイツか!!
『よくも漏瑚を、花御を、殺したなぁぁぁぁぁ!!!虎杖悠仁ぃぃぃぃ!!!!』
確か、アイツは...
「えーーっと、どちら様でしょうか?」
『殺す!!!!!!』
◆
自然呪霊の最後の生き残り、陀艮。
夏油傑から宿儺の指の在処を聞いていた彼は、八十八橋付近でずっと待ち構えていた。
その目的はただ一つ。漏瑚に花御。兄弟ともいえるような、自身の大切な同胞を奪った、虎杖悠仁への復讐。
それさえ叶えば、夏油の計画なんぞはどうでもいい。彼は自分の欲望のままに、どこまでも呪いらしく生きる道を選んだ。
◇
『殺してやる!!殺してやるぞ虎杖悠仁!!よくも漏瑚を!花御を!』
悠仁は見知らぬタコ呪霊に、因縁をつけられていた。
「じょうご?はなみ?覚えていないな、そんな奴ら。」
『...........殺してやる!!殺してやるぞ!!虎杖悠仁と両面宿儺!!』
あ、やべ。俺まで地雷踏んじゃった。
いやさ、俺と悠仁、なんだかんだでいっぱい呪霊を祓ってきたからな〜。流石に全部覚えてないっていうか....
もちろん、強敵だったのは覚えてるぞ。
ラスボスのマコマコ変態野郎に、
赤犬バギーに、フシギバナ。
こいつらは、マジで天晴れだった。きっと生涯、忘れることはないだろう。
マコマコ野郎に至っては、まだ倒せてないしな。
そんでこのタコも、相当強そうだ。領域展開使える時点で、上澄み確定らしいからな〜。(伊地知師匠が教えてくれた。)
『殺す殺す殺す殺す!!!』
タコは、その領域をさらに拡大して...
あ、まずい!!
恵くんに気を失った野薔薇ちゃんまで、このビーチに引き込みやがった!!
確か領域には必中効果があったはず!(伊地知師匠ゼミ参照)俺だけならともかく、2人を守りきるのはきついぞ!!
『思い知れ。同胞の仇よ!!』
『領域展開・嵌合暗翳庭』
これは、恵くんの領域!ナイス!!
これ多分、タコの領域の必中効果、消えてるな!!
『虎杖!領域を押し合っている間、俺は動けない!その間.....』
『任せろ!!伏黒は俺が守る!!』
むふふ、いいねぇ〜。悠仁と恵くん!2人のこの信頼感、たまんねえ!!
『すっくんも、頼んだぞ。』
「おう!!任せておけ!!!」
さあ、まだ油断はできない。あのタコ呪霊の通常攻撃は、領域によって強化されている。
『多少は腕の立つ仲間がいるらしいな。だが、それがどうした!!』
タコ呪霊は、気色悪いデザインのカラフルな魚を大量に召喚してくる。
『虎杖悠仁、貴様の強さは知っている。なればこちらは呪いらしく、いかせてもらうぞ!!』
うわぁ、世界一悪趣味なお魚天国。ってあの魚、俺と悠仁を狙ってない!?
動けない恵くんと、気絶してる野薔薇ちゃんを5:5で狙うよう、調整されてる!!
『貴様には、思い知ってもらう。奪われる痛みをな!!』
こいつ、ふざけやがって!!
『すっくん!!ここは......』
「ああ、全力で守る!!」
宿儺呪力モード、解禁!!
四方八方から襲いくるキショ魚どもを悠仁と俺は超スピードで蹴散らしていく。だがどれだけ倒しても、魚どもは無限に湧いてきた。
これ、お魚の数量制限ない感じか.......!?
「チッ、キリがない...!」
恵くんと野薔薇ちゃんをスルーすれば、あのタコを祓えないこともない。だが、そんなのダメ、絶対。
『フン、愚かだな。』
「うっせえタコ!!」
でも、ちょいヤベエな。宿儺呪力モードには制限時間がある。このままじゃ、押し負けるのは俺達の方だ!
モードが解除された後に、あの量の魚に襲われたら...『シャンクス、腕が!!』だけじゃ済まなそうだな。
いったいどうしたもんか。
『悠仁ぃぃぃぃぃ!!!大丈夫か!!??お兄ちゃんが助けにきたぞ!!』
アイエエエ!?ツインテール!?ツインテールナンデ!?
まさかこいつ、領域に自分から入ってきやがったのか!?
『悠仁!今はあの呪霊を祓うことに専念しろ!!このままではお前が死んでしまう!!』
こいつ、本気で悠仁のことを想ってるんだな。もしかして、ホントのホントに、実の兄弟なのか!?
だが、悪いな。俺も悠仁も、
「『仲間を見捨てるつもりはない!」』
『............そうか。それが、お前の選んだ道か....悠仁。』
《“10人”兄弟の長男、脹相は決断する。自分の新しい弟が選んだ険しい道を、共に行くと。》
『超新星!!』
ツインテールは血の散弾を発射し、魚どもを対処していく。
『貴様っ、九相図の1人だな!我々を裏切る気か!?』
『うるさい、俺は全力でお兄ちゃんを遂行するだけだ!!』
抗議するタコに、えらい剣幕で怒鳴り返すツインテール。アイツら、元々仲間だったのか。まあ、完全に裏切ってるっぽいけどな。
まあ、今はそんなことより!
「頼むツインテール、そのまま恵くんと野薔薇ちゃんを守っててくんないか?」
『ふざけるな!!お前の指図は受けん!!』
『俺からも頼む!!』
『お兄ちゃんに任せろ、悠仁!!』
なんだこいつ...
マジで悠仁の言うことしか聞かないな。
まあいいや、ここはツインテールに任せて、俺たちはタコに専念する!!
『来たな....虎杖悠仁!!!』
タコの奴が、めちゃめちゃでっかいフナムシみたいなのを召喚する。
「悠仁、直進すっぞ!」
『りょーかい!!』
俺たちはフナムシの口の中を貫通して、タコ呪霊の前に躍り出る。
『はや、すぎる.....!!』
「『黒庭拳!!!!!』」
俺と悠仁の必殺技が、タコの顔面に炸裂する。
『ぬああっっ!!』
タコ呪霊は海を裂きながら、水平線の彼方に吹き飛んでいく。
殴った時に分かったが、あのタコ呪霊はHPが果てしない感じだった。黒庭拳一発でその9割を削れたとはいえ、まだまだ油断はできない。
なんせそれだけのダメージを負ってもなお、奴は領域を解除していない。絶対に俺たちを仕留めるという執念のなせるわざだろう。
「悠仁!!畳み掛けるぞ!!」
『おう!!』
んん、ちょっと待て!!
この領域、水嵩がどんどん高くなって....!
海の特級呪霊・陀艮。
彼は領域に関して、真人を越える天才だといっていい。なんせ呪胎の段階で自身の生得領域を実体化させることができ、受胎後は数分の戦闘の後、すぐに必中必殺の領域を獲得している。
『漏瑚...花御....力を、貸してくれ!!!』
そんな彼は伏黒から奪っていた宿儺の指一本を飲み込むことで、自身の領域をさらに成長させる。
蕩蘊平線 深潭
「ブクブクあぶぶぶぶ......」
(あのタコ野郎、領域全体を水没させやがった!)
悠仁の顔に生やした目と口から、海水が入ってきて気持ち悪い!っていうかこれ、それどころじゃないな。このままだと全員窒息死だ。
「ブクブクあぼぼぼぼぼ、ブクブクブクブク.....!!」
(みんなは....恵くんは流石だ。こんな状況でも領域の押し合いを頑張ってくれている。野薔薇ちゃんは気絶してて、あ、ツインテールも溺れてやがる!この2人が特に危険だ!)
奴が攻撃してこないのは、その余裕が無いからだろう。恐らくこの新しい領域は、まだ安定していないんだ。ただでさえ、恵くんの領域と綱引きしてるわけだしな。
逆に言うと、奴の領域が安定して、攻撃に移られた瞬間、俺たちの全滅は確定だ。
「それまでになんとか祓う!!」
急いでタコを祓いたいが、水中だと宿儺呪力モードのスピードを全く活かせない。
「悠仁!!全力でクロールだ!!」
『ええ!?まあ、おう!!』
なんかシュールな画になっちゃうが、しょうがない!!俺たちは、全力で泳いでタコに近づこうとする。
悠仁に遠距離技がないのが災いした...!俺が顕現できてれば、斬撃飛ばせたのに...!
マズイ、制限時間が...
あ、宿儺呪力モード、中止!!中止です!!ドクターストップを入れます!
悠仁の身体から、オーラが消える。
『すっくん、やべえかも....』
悠仁の言う通りだな....
気付けば俺達の周りを100体近くの海王類クラスが包囲している。タコの領域は既に安定しきっていた。これだけの数....必中効果がナッシングでも、到底避けきれないだろう。
『あの世で、漏瑚と花御に詫びろ!!虎杖悠仁いいい!!』
一斉に、海王類どもが迫ってくる。
「藻荒那(モアナ)」
すっくん達が窮地に立たされる中、気絶した脹相に代わって身体の支配権を手に入れた何者かは、再び自身の術式を行使する。
あれ、海王類どもが襲ってこない...
んん!?なんじゃこりゃああ!!
領域内に突如発生した大量の渦潮が、海王類達一体一体を包んでいく。領域の持ち主であるタコすらも、それに飲まれてまともに動けないっぽい。俺たちの方はなんともないのに。
まるで、“海が味方をしてくれてる”みたいだ。
『何をした!?虎杖悠仁!?』
『知るか!!』
「それな。」
俺は、異質な気配を感じ取った方を見遣る。あれは、ツインテール....いや、その中にいるもう1人の仕業か。
先ほどの氷、今回の渦潮、マジでどういう術式なんだ...?術式は一つだけって話だろ?まさか、転生者特典か!?
ズルい!!!!!!!
すっくんはまだ、自分の術式使いこなせてないのに!!
あれ、ツインテールのガワがぐったりしてないか?大丈夫かな?
『おのれええええええ!!』
あ、タコの領域が解除された。俺と悠仁、ツインテール、恵くん、野薔薇ちゃんは、再び真っ暗な八十八橋の下に戻ってくる。
『貴様は何なんだ...九相図ぅぅぅぅ!!!』
タコ野郎が、その蛸足を転生者の方へ伸ばす。今は領域直後、あのタコの術式は焼き切れているはず(by伊地知師匠)だから、あれはアイツが素で持ってる力か!!
「悠仁!!」
『おう!!』
俺の意図を汲んだ悠仁は、もう1人の転生者を庇うようにして蛸足の前に割って入る。
『黒閃!!!!』
悠仁の拳が、蛸足を弾き返した。
「大丈夫か、転生者?」
そう呼びかけるが、転生者の意識はかなり朦朧としている。マジで大丈夫だろうか?
『舐めるなよ、虎杖悠仁!!』
うわっ、奴の蛸足からさらなる蛸足が伸びてきやがった!?
脚8本どころじゃねえぞ!!
『おわっ!!』
「悠仁!!」
蛸足が身体中に巻き付いて、悠仁の体が宙に浮く。タコはそのまま悠仁の首をへし折ろうとしていた。
マズイ....抜け出せねえ....宿儺呪力モードが健在なら、このまま反転術式流し込んでやるのに……
『死ねええええええええ!!!』
タコの締め付けが一層強まる。
『ああっ..........................うう.....................』
「悠仁!!しっかりしろ、悠仁!!!!」
『蝕爛腐術・朽』
んん、タコ野郎に....バラのタトゥー?
新形態....!?
いや違う.....明らかにあのタコは苦しんで.....
『悠仁!!兄さんは、お前を必ず守る!!ここに誓おう!!』
てぃてぃてぃ、Tバック!!
こいつの術式なのか!?
蝕爛腐術・朽。
壊相か血塗どちらかの血を相手に取り込ませることを条件に、毒と激しい痛みを伴いながら相手の身体を「分解」して腐蝕させていく。
血塗が自らの血でマーキングをしていた宿儺の指を、陀艮は飲み込んでいた。
これにより、術式の発動条件を満たしてしまう。
『くっ、九相図どもめ......』
タコのやつは悠仁を締め付けながら、何かを吐き出す。それは、俺の指!!それと同時に、奴の身体からは薔薇のタトゥーが消えてしまった。
『悠仁!!最初は襲ってごべえええええん!!俺が悪かったぁぁぁぁ!!!!』
タコの吐き出した俺の指を拾い上げたウソップは、泣きながら駆け寄ってくると、それを悠仁の口に放り込む。
『俺、お使い、ちゃんとできたよ!!』
『サンキュー、助かった!!』
悠仁は、俺の指を飲み込んだ。
俺の指を取り込んだ直後の悠仁は、いつも顔に紋様が浮かんでいる。恐らくその瞬間は、悠仁の“檻”が自動的に緩まっているのだろう。
今なら、悠仁の身体に負担をかけずに、もう一度なれるはずだ。
「『宿儺呪力モード!!』」
これを維持できる時間は、15秒もない。だが、それだけあれば十分だ。
「ふん!!!」
蛸足を全て引きちぎって、俺たちは自由になる。
『許さん....許さん!!!この場にいる全員、等しく皆殺しだ!!!』
あのタコ野郎、術式が回復したらしいな。
「だが、それがどうした?」
一瞬でタコとの距離を詰めた俺たちは、術式を使う間を与えずに必殺の一撃を叩き込む。
「『黒庭拳!!!』」
タコの身体は、粉々に吹き飛んだ。
じょうご、はなみ。
ごめん、まけちゃった。
いっぱいいっぱいがんばったけど、
まけちゃった。
くやしい。
すっごくくやしい。
ふたりのかたきをうちたかったのに....
まひと、1人にしちゃってごめんね。
あとはたのむ。
だいじょうぶ、まひとならできる。
のろいのせかい、つくるのがんばってね。
おうえんしてるから。
ぼくと、じょうごと、はなみは、
3人でずーーーっと、みまもってるよ。
その夜、呪いとしての道を突き進んだ“三兄弟”は、その終着点で再会を果たすことになる。