宿儺「どけ!!!俺は主人公の相棒だぞ!!!」 作:バケギツネ
《2018年7月。これは少年院での一件にて、虎杖悠仁が魔虚羅によって殺害された、少し後の出来事。》
おっす、俺すっくん。ラスボスの変態マコマコ野郎に、俺は負けた....
完敗だった。悠仁たちを死んでも守るって、そう誓ったはずなのに。俺はっ、
悠仁、恵くん、ごめん、ごめん、ごめん...!
クッソ、俺がもっと強ければ!!もっと、修行でもなんでもして、力をつけておけば!
両面宿儺には、あのマコマコ変態野郎を倒せるだけのポテンシャルがあったはずなのに!転生者である俺が不甲斐ないばっかりに!
「俺にもっと、力があれば.....」
【その力、俺が与えてやらんこともないぞ。】
「え、」
気がつけば、俺は骨と血の池の空間にいた。
ここは?俺のいつもいるとこは、畳部屋にリフォームしたはずだし。
【どこを見ている。上だ。】
俺と同じ、諏訪部ボイスのした方を見上げる。骨山の上で、俺と同じ顔をした白い和服姿の男が頬杖をついていた。
まさか、この人、モノホンの両面宿儺あ!?え、ホンモノ出てきちゃったよ!!
【一つ聞かせろ。お前は何者だ?】
「あ、ど、どうも。あの、私は、ですね、あの、」
ど、どうしよう!?どっから話したらいいもんか。転生のこと話しちゃう?いやいやいやいや、信じて貰えるわけがない!余計に印象を悪くするだけだ!!
「い、言うならば、俺はもう1人の貴方って、ところかな....はい....」
何言ってんだ、俺。
【まともに答える気はないか。まあ、正体などどうでもいい。俺の興味は、お前の才能にある。】
さ、才能っすか?
【ああ。空間を切り裂く斬撃に、狙って黒閃を出す技術、結界術や縛りの斬新な運用法。はっきり言おう。俺は貴様に期待している。】
「エヘヘヘヘヘヘ〜」
照れるなぁ〜。いやまあ、転生先の宿儺さんあってのことなんだけど。まあ、褒められるのは気持ちがいいし、黙っておこう。
【だからこそ、こんなところで死んでしまっては困るのだ。】
あ。
「ご、ごめんなさい。貴方の身体死なせちゃって!」
俺はひとまず、宿儺ご本人様に謝罪する。
【案ずるな。お前はまだ死んでいない。】
え、そうなの!?
【ここにいるのがその証拠だ。ここは生得領域。心の中のようなものだ。】
はぇ〜、勉強になります!流石は呪いの王!!
【さて、俺の条件を飲め。そうすれば、生き返る術を教えてやろう。それを使えば、伏黒恵も蘇生できるぞ。】
「ま、まじっすか!?」
神様、仏様、宿儺様!至れり尽くせりじゃないですか〜!!ん、待った。条件?
「あ、あの〜、それで条件というのは......」
【そうだな。
1、俺が契闊と唱えたら、
1分間身体を明け渡すこと。
2、この約束と俺の存在を忘れること。
そうすれば、お前に反転術式を教えてやる。この呪いの王が、直々にな。】
「あの、ちょっと待ってくださいね。」
俺は思わず、宿儺さんの言葉を遮った。
【なんだ?】
「宿儺さん、その、何か良からぬこと企んでますよね?」
俺は、宿儺さんをジッと見つめる。
【さあな。】
はい、絶対何か企んでるうううう!
危ない危ない、うっかり契約しちまうところだったぜ!!
考えてみれば、人外系主人公の相棒ポジが、こんなに早い段階でデレてくるのは不自然だ!きっとまだ、宿主を騙して利用しようとしている段階!
相棒ポジションに落ち着くのは、まだまだ先のことになるはずだ。それまでは慎重に行動しなくては!
【分かった。ならば仕方ない。ならばその1分間、誰も殺さないと約束しよう。】
「ご、ごめんなさい。全然信用できません。」
【信じる信じないの話ではない。これは縛り。誓約だ。守ることが強制され、守らなければ罰を受ける。】
な、なるほど。少なくともこれは本当っぽいな。Hu○ter ×Hu○ter にも、似たような仕組みがあったし。
ならば問題は、契約の内容だ。
「その1分間、誰も殺さないし、傷つけもしないと約束してください。」
【ああ、いいだろう。】
「あ!首絞めたけど、物理的に傷がついてないからセーフ!とかはダメですからね!!他人への暴力行為は全面的に禁止ですから!!」
【よかろう。】
「あと、回数制限設けましょう!何度も契闊されたら困るので。」
【ああ、契闊で体を明け渡すのは、一度だけで構わん。】
「後、1分ってちょっと長いですね。5秒にしましょう。じゃあ、本契約の方を」
【おい、待て。】
げ、サラッとOK貰おうとしたのに。流石にバレるか。
「こ、この条件が飲めないなら、こ、交渉は、決裂です!」
【ほお、俺を脅すか。】
ヒェッ、宿儺さんにめっちゃ睨まれてる!本物怖ええええ!頑張れ頑張れ、俺!
【いいのか?俺の機嫌を損ねれば、小僧と伏黒恵、そしてお前も死んだままだぞ。】
「で、でも。それだと貴方も困りますよね.....」
悠仁、恵くん。すまない。ここは強気にいかせてもらう!
今の宿儺さんはやっぱり危険だ!対応を少しでも間違えれば、大惨事になる!
だからこそ、縛りでできるだけガチガチに縛っておく!
【5秒か......(まあ、やれんことはないか。)いいだろう。5秒で構わん。】
よし、要求が通った!いや、待てよ。本当にこのままでいいのか?よく考えろ、主人公の身体に封じられてる系のキャラが、最も望んでいるのは、
「あ、最後に、一つだけ条件を足させてください!!」
【何だ?】
「宿儺さんが、悠仁の身体の外に出るのを禁止します。」
【............少し考えさせろ。】
宿儺さんちょっと困ってるぞ!
やっぱり、悠仁の身体から出ようとしてたんだな!まあ、そうだよな。悠仁の身体は檻のようなもの。当然抜け出そうとするよな。
「い、今までの条件を全て飲んで頂けなければ、このお話は無かったことにさせていただきます!!」
怖いので宿儺さんと目を合わせないようにしながら、俺はそう宣言する。しばらく沈黙が続いた後、宿儺さんが口を開いた。
【いいだろう。条件を全て飲んでやる。】
よし、通った!
やっぱり宿儺さんも自分が死ぬのは嫌だろうからな。どこかで、妥協してくれると信じて、強気な交渉をしてよかった。
【では、条件を纏めるぞ。】
1、
宿儺が契闊と唱えれば、身体の支配権はすっくんから宿儺へと一度だけ移動する。
*それから5秒間、
以下の行為を禁止する。
・他人を傷つける暴力行為・殺害。
・すっくんが身体の支配を取り戻すこと。
2、
宿儺が、虎杖悠仁の身体の”外“に出ようとするのを禁止する。
3、
すっくんは反転術式を習得した瞬間、これらの縛りと宿儺の存在を忘れる。(忘れる以前に、誰かに口外するのも禁止)
【こんなところか?】
「あ、ああ。それでいい。それじゃあ、早速教えろ。反転術式とやらを......」
【負のエネルギー同士を掛け合わせ、正のエネルギーを生む。それが反転術式だ。それさえ分かれば、あとはどうとでもなるだろう。貴様ならな......】
「ちょ、待.....」
気が付けば、俺は自分の畳部屋に戻ってきていた。
宿儺さん、いや、宿儺の奴、教えるの下手すぎるだろ!!
あんなザックリした説明で、できるようになるわけ、できたあああああ!!!!
《この瞬間、すっくんの記憶から縛りと宿儺の存在が消える。》
あれ、俺は...................えーっと.........そうだ、これを使って悠仁と恵くんを生き返らさなきゃ!!
あ、その時に“縛り”を持ちかけるのもいいかもな〜。ワンチャン身体が自由になって、修行が出来るようになるかも!
おーし、頑張って悠仁にお願いするぞ〜!!
【正のエネルギーの結晶化か。やはり貴様は面白いな。もう1人の俺よ。】
その後、反転術式を習得したすっくんの仙豆によって、虎杖悠仁と伏黒恵は蘇生する。おまけにすっくんは、「HEY 悠仁」で身体の支配を得られる縛りを、虎杖と結んでいた。
【ククッ、いいぞ。そちらの方が都合がいい。】
2018年8月。
すっくんは、大地の特級呪霊・漏瑚と交戦。防御に特化した領域展開を駆使し、見事勝利する。
【魅せてくれたな。もう1人の俺よ。】
2018年9月13日。
羂索が小学校に投げ込んだ指を、すっくんが取り込んだ。これで虎杖悠仁の体内には、指が4本入ったことになる。
【この感覚...契闊を使わずとも、自由になれるかもかもしれんな。】
宿儺には、とあるサブプランの構想が生まれた。
【その調子で強くなれ。そしてもっと、俺の指を取り込むがいい。】
しかしその後、真人の策略によって虎杖悠仁の檻は強化される。すっくんの顕現も、不可能になってしまった。
これにより宿儺は、プランの練り直しを余儀なくされる。
【お前のせいで、俺の計画は水泡に帰した。貴様のような路傍の石ころ風情が、この俺をつまづかせるだと...?実に不愉快だ。分を弁えろ。】
宿儺は苛立ち混じりに、自身の生得領域に侵入した真人を切り裂くのだった。
2018年9月下旬。
すっくんは夜蛾正道に弟子入りする。時折、パンダや七海建人の協力を仰ぎながら、彼は自身の術式を使いこなすための訓練を始めた。
【なるほど。それは使える。早く掴め、もう1人の俺よ。】
2018年10月。
八十八橋の戦いで、虎杖は5本目の指を取り込む。
【転生か、なるほど。クックック、面白い。貴様らをみていると退屈しない。】
さらに宿儺は、ようやくすっくんの正体を知ることとなった。
【分水嶺は、指が10本を超えた時.......といったところか。後は小僧の檻さえなんとかすれば....まあ、問題なかろう。もう1人の俺の術式は、既に完成している。あとはそれを、使いこなすだけだ。】
宿儺はそう遠くない未来に、”自由“を手に入れることとなる。
2018年10月30日、渋谷事変の前日。
『やあ、裏梅。明日は頼むよ。』
晴れ舞台を控えた羂索は、協力者である裏梅と最後の打ち合わせを行なっていた。
『第一目標は、五条悟の封印。これは言うまでもない。そして第二に真人を取り込むことだ。そうすれば、彼の術式と宿儺の指6本を同時に獲得できる。』
死滅回遊を始めるため、そしてその先にある目的のため、真人の確保は羂索にとっての絶対条件となっている。
『取り戻した宿儺様の指は...』
『ああ、分かってるさ。ちゃんと虎杖悠仁に取り込ませる。』
羂索は懐から、封印されている宿儺の指、3本を取り出した。
『これと、真人の6本を合わせた計9本。それを一気に虎杖悠仁に取り込ませる。』
『それで、自由になれるんだな。宿儺様は。』
『ああ。宿儺にはきっと考えがある。一度顕現さえしてしまえば、どうとでもなるはずだよ。』
五条悟が封印できなかった場合に備えて、羂索は保険の用意を怠らない。
『そうだ。久しぶりに会えたことだし、キミにも、一つ聞いておきたい。』
『なんだ?』
羂索は、裏梅に一つの問いを投げかける。
『キミ、3つ目の魂を持ってたりしない?』
『.......ん?どういう意味だ。』
『いや何でもない。その反応をみるに、知らないようだね。一応重ねて聞いておこう。受肉した時、何か妙なことは起こらなかったかい?』
『妙なことだと?』
『ああ。どんな些細なことでもいいんだ。例えば、頭の中に知らない声が響くとか、存在しない記憶が溢れ出すとか。』
『........強いて、言うならだが、お前の登場する、馬鹿げた夢を見た。』
裏梅からその答えを聞いた羂索は、目を輝かせて口の端を吊り上げた。
『それについて、詳しく聞かせてくれるかな?』
裏梅から話を聞き終えた羂索は、自身のプランを変更する。渋谷事変の前に、”とある人物を殺害しておくこと“を決意するのだった。