宿儺「どけ!!!俺は主人公の相棒だぞ!!!」 作:バケギツネ
◇
俺、すっくん。
バカバッタを倒して、術師を拒む帳を解除した俺達は、地下4階に屯する改造呪霊どもを冥冥さんたちにお任せし、いち早く地下5階へと辿り着いていた。
「真人おおおおおお!!!!!!」
そこにいたのは俺たちの因縁の相手、人から生まれた特級呪霊・真人。この手で祓うべき、邪悪!
あの時とは違う!今の俺には、魂の感知ができる!!
今目の前にいるコイツは、分身なんかじゃない!紛れもない本体だ!もう、逃がさない!!
『ははっ、会いたかったよ!!宿儺ぁあああ!!!!!』
九相図三兄弟から、聞いていた通りだ。今の真人は、悠仁の邪悪な双子みたいになっている。
その身に取り込んだという、俺の指の力を制御するために、悠仁の身体を術式で再現しているのだろう。どこまでもふざけた奴だ。
「悠仁の身体を悪用しやがって!!」
『すっくんの力でイキりやがって...!!』
『「宿儺呪力モード!!!」』
ここまで来て、出し惜しみはしない。今この場で真人を確実に祓うべく、俺たちは瞬時にフルパワーを発揮する。
「『黒庭拳!!!!!』」
俺たちが放つのは、基本技にして必殺技の黒庭拳。二重の黒い火花を発生させる、空前絶後の一撃。
『ははっ、こわ〜。』
しかし真人は頭部を自ら弾けさせ、俺たちの拳を紙一重で回避する。初めてかもな、この一撃が避けられたのは。
今まで他の追随を許さなかった宿儺呪力モードのスピードに、コイツは対応してやがる。
『多重魂・撥体!!!』
真人がカウンターを仕掛けてくる。奴の手から、大口を開けた数十体の化け物が飛び出してきた。この魂の感じ、アイツお手製の改造呪霊どもか!
「反転術式!!!」
俺は生得領域内で練り上げた正のエネルギーを、悠仁の身体越しに放出する。俺の相棒を飲み込んだ改造呪霊達は、粉々に砕け散った。
『反転術式か。お前の“得意技”だもんなぁ、人殺し。』
「っ!」
『黙れっっ!!!!』
今は亡き友人の姿が、その母が、俺の目の前で死んでいった罪もない人達の姿が、脳裏をよぎる。集中だ、集中しろ!
『ははっ、ムキになんなよ。』
真人との距離を詰めようとする悠仁だが、真人はそれを許さない。両手を鞭のようにしならせて、俺たちを狙ってくる。
攻撃のスピードが速いな、避けきるのは難しそうだ。俺はダメージを抑えるべく、悠仁の構えた腕に呪力を集中させていく。しかし、
『黒閃。』
「『っっ!!!!』」
真人の鞭。その打撃と同時に、黒い火花が散った。
凄まじい衝撃が悠仁越しに伝わってくる!今まで、散々黒閃を放ってきた俺たちだが、自身でそれを食らうのは初めてだ。
こんなにも、強烈なものだったのか!
『黒閃っ!!!!!』
『「ああっっ....!!!」』
反転術式が回りきる前に、真人は2発目の打撃を叩き込んでくる。その一撃も、黒い火花によって祝福された。被弾箇所にヤマカンで呪力を集中させたが、それでも威力を殺しきれない。
『ははっ、これが黒閃!いい気分だっっ!』
今度は両腕を使って、鞭の打撃を放つ真人。
『黒閃っ!!!!!』
『うっ!!うおおおおおおおお!!!』
二発同時の黒閃をモロに食らった悠仁だったが、彼は真人の両腕をしっかりと掴んでいた。そのまま一気に引き寄せて、自分の間合いへと持ち込む。
「『黒庭拳!!!』」
今度は、胴を狙った一撃。
『またそれか。ワンパターンなんだよっ!!』
真人は胴体を変化させて、それを回避する。
「悠仁!!」
『おう!!!』
黒庭拳が避けられることは、俺達の想定範囲内。悠仁はその身体を翻して、俺達の呪力を込めた右足を振り上げた。
「『黒庭脚・卍!!!』」
右の拳をブラフに使った、黒庭拳の卍蹴りバージョン。真人の意表を突いたそれはクリーンヒットし、その魂を大きく揺さぶった。
『んぎいっっ....!!』
このまま押し切る!!!!!
『チッ、多重魂・撥体!!!』
真人は俺たちの前に改造呪霊の肉壁を出現させる。だが、そんなものじゃ俺たちは止められない...!!
「『黒庭拳!!!!』」
俺達の渾身の拳は壁を打ち破り、そのまま真人の身体へと届いた。黒い火花が2度散る。
◆
『礼を言うよ、虎杖悠仁、宿儺。この身体で黒閃を経験して、ようやく理解した。俺のむき出しの、魂の本質を。』
真人は、自身の身体をさらに作り替えていた。取り込んだ指の力を抑え込むための内部組織はそのままに、彼は自身の肉体を極限まで強化する。
“自身が変形しない”ことを縛りに、攻撃力・防御力・俊敏性はそれまでとは別次元の段階に押し上げられていた。特にその肉体の硬度は、原型の600%。
「嘘だろ........」
その防御力は、黒庭拳の一撃を耐えきる程だった。
『名付けて、真・遍殺即霊体。』
◇
「悠仁!!!下がれ!!!!」
マズイ、今の真人は危険だ!
俺と同じく、真人の変身に危機を感じた悠仁は、すぐさま後退して真人との距離をとろうとする。
『遅えよ。』
「『っっ!!!』」
新たな姿を手に入れた真人は、俺達の、宿儺呪力モードのスピードを完全に凌駕していた。悠仁の頭を両手で掴むと、いつぞやのお返しとばかりに強烈な頭突きを喰らわせる。
『黒閃っっっ!!!!』
その衝撃で悠仁の意識は飛び、彼はその場に膝から崩れ落ちる。緩んでいた檻が元に戻り、制限時間を待たずして宿儺呪力モードは解除された。
「おい、しっかりしろ、悠仁!悠仁!!」
必死に呼びかけると同時に反転術式での回復を試みるが、ダメージが大き過ぎるためか、傷の治りが異様に遅い。
『なんだ、もう終わりか?俺はようやくノッてきたってのに。』
真人はその硬質化した足で、悠仁の身体を踏みつける。
「やめろっ!!!!」
『お前らには、感謝しなきゃなっ!』
真人はそう言うと、意識を失ったままの悠仁を蹴り飛ばす。それすらも、黒い火花は祝福した。悠仁の身体は宙を舞い、駅の壁に叩きつけられて、ようやく止まる。
『ハハッ、まだ死ぬなよ〜。お前には、もっと地獄をみせてやるか......ん?』
真人と俺は、同時に気付く。地下5階に突如現れた、数十羽のカラスに。
『神風。』
そのカラス達は異常なほどの呪力を纏って、一斉に真人に突っ込んでいった。
『虎杖悠仁。全く、だらしがない。』
それと同じタイミングで、俺の目の前に突然憂憂くんが現れる。彼は自身と悠仁を白い布で包むと、術式による瞬間移動を発動した。
◆
『へえ〜、なかなか便利な仲間がいるじゃん。』
カラス達の特攻を無傷で凌ぎ切った真人だったが、既に地下5階には虎杖悠仁の姿は無い。
『逃げたか〜。ま、楽しみは最後に取っておこう。それよりも、お仕事しなきゃ。』
真人が乗り込むと同時に、ずっと待機していた列車は動き出す。
その行き先は、“現代最強”。
◇
勝てなかった。
『宿儺くん、虎杖くんは大丈夫なのかい?』
「はい。そのうち、目を覚ますと思います......」
冥冥さん達に助けられた俺と悠仁は、一度地上まで撤退していた。彼女がいなかったら、どうなっていたことか。
あ、悠仁が起きたぞ!!
『っ!そうか、俺たちは負けたのか.....』
悠仁も現状を把握したらしい...
『絶対真人を祓うって.....決めてたのに......』
「.........................」
『まあ、あまり引きずりすぎないことだ。』
いつの間にか、俺たちの正面に回り込んでいた冥冥さんと目が合う。
『術師をやっていれば、壁にぶち当たることなんて.....挫けそうになることなんてしょっちゅうさ。かつての私もそうだったからね。』
「え、あの、冥冥さん....?」
『静かに。姉様が話しています!』
「あ、すんません。」
なんか、憂憂くんに怒られた。
『でも私はね。一度挫けたからこそ、再び自分と向き合うことで一級術師として花開いたんだよ。』
パチパチパチパチパチパチパチパチパチ
憂憂くんめっちゃ拍手してる。
『.....貴方達も、拍手を。』
「あ、はい。悠仁。」
『お、おっす.....』
とりあえず、悠仁は拍手を送る。
『大事なのは、挫けた時に立ち止まらないことさ。前に進み続けてさえいれば、新たな景色が見えてくる。そんなものだよ、術師の人生なんてのは。』
冥冥さん、俺たちを励ましてくれてたのか。めちゃいい人じゃんか!聖母かな?
自分を見つめ直す、か。彼女の言う通りだ。立ち止まってる場合じゃ無い!
「ありがとうございます冥冥さん。貴方のおかげで、自分のやるべきことを、思い出せました。」
『ふふっ、宿儺くん。感謝の言葉はいらないよ、一銭にもならないからね。ところでキミ、いくら持って
「俺、地下5階に戻ります!!」
『そうだね。ところで、資産
「いくぞ、悠仁!!動けるか?」
『おう!!すっくんが治してくれたおかげで、モーマンタイだ!!』
『宿儺くん。平安の隠し財産とか
ありがとう、冥冥さん。俺達は、前に進み続けるよ!
この世界をハッピーエンドで締めるために!
『姉様を無視するとは、全く信じられない奴らですねぇ!!』
『....まあ、恩は売れたみたいだし。よしとしておこうか。』