宿儺「どけ!!!俺は主人公の相棒だぞ!!!」 作:バケギツネ
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『やあ、夏油〜。元気〜?』
先程まで激戦が繰り広げられていた渋谷駅の地下5階に、真人の軽薄な声が響く。
現代最強(誇張なし)の術師・五条悟と対面した際、その戦力差を鑑みて一度戦線をスタコラしていた真人。彼は獄門疆による五条封印が成功した後、何食わぬ顔で羂索の元へと戻って来ていた。その姿を一瞥した羂索は、心底鬱陶しそうに言葉を返す。
『五条悟...最後まで、私の邪魔をするとはね...』
羂索には決して油断があった訳ではない。六眼と無下限術式の抱き合わせ、その厄介さを彼は身をもって知っている。なんせ、過去に二度もそれに纏わる術師に敗れているのだ。
だからこそ最大限に警戒し、その為に打てる手を打ち尽くした。五条の善性につけ込み、その親友だった男の身体を利用し、非術師達を最大限に有効活用、必死に探し当てた獄門疆まで引っ張り出した。
結果、何とか難敵の封印に成功したものの、手痛い反撃と足止めを食らってしまう。5秒近く、最強の領域・無量空処に晒された羂索。彼は以降13時間、自身の領域・胎蔵遍野を使用する事が出来なくなっていた。
おまけに、獄門疆がファイル:五条悟の読み込みを完了するまで、その場を離れることができない。
正に、踏んだり蹴ったりだった。
『1000体の改造呪霊も、悪路王達も、みんなやられちゃったか....離れておいて正解だったよ。』
駅構内は、0.2秒の無量空処で気絶した人間で満たされている。その場所を見渡した真人は、ポツリとそう呟いた後に、顔を険しくした羂索の方へと視線を向ける。
『夏油も、結構辛そうだね。助けてあげようか?』
宿儺の指・6本を取り込んだまま、遍殺即霊体へと進化を遂げていた今の真人。全身が硬い鎧で覆われている彼は、“無為転変”の発動の為に敢えてそのまま残している左右の掌を見せながら、羂索にそう問いかけた。
『いや、遠慮しておくよ真人。この姿には愛着があるしね。』
『俺たちの仲だろ?遠慮なんかすんなって。もっとイケメンにしてやるよ。』
『.......................』
羂索と真人、向かい合った両者に緊張が走る。が、
『ハハハ、なーーんてね。冗談だよ、夏油。』
朗らかに笑う真人は、その緊張した空気を霧散させる。
『俺と夏油は仲間だ。少なくとも、今のところはね。それに、宿儺と決着を着ける前に、わざわざ消耗するなんていうバカな真似はしないよ。』
そう言い残した真人は、羂索に意味ありげな視線を送った後に、渋谷駅の上の階へと向かって行った。
『俺はここの3階あたりで宿儺を待つ事にするよ。それじゃあ夏油、気をつけてね。』
『......お互いにね。』
真人が地下5階を去り、その場に残された羂索は1人ごちる。
『真人の奴、最高の収穫時かもしれないね...でもあの強さ、取り込むのにはかなり骨が折れそうだ......』
羂索の目的は真人の無為転変を抽出し、それを用いて”死滅回遊“の引き金を引く事。しかし今の進化した真人を手中に収めるのは、彼にとっても楽な事ではない....
『それにしても、やはり彼女たちは来なかったか。』
真人が乗って来た電車の中に、とある”2人“の術師が乗っていなかった事を、羂索は確認する。それは彼がついでに利用しようと考えていた、夏油傑にゆかりのある人物達。
『まあいい。五条悟の封印は完了している。今更彼女たちが足掻いたところで、何も変わらない。』
その直後、妙な呪力を察知した羂索は即座に低級呪霊を召喚し、その主を撃墜する。
『......ああ、キミだったか。与幸吉。』
ムカデの呪霊に破壊された小さな傀儡が、煙を上げながらその場に落下した。それは以前羂索が、内通者として利用していたとある少年の操るもの。
◇
『よく聞ケ。悠仁、宿儺。大事な話がある。』