宿儺「どけ!!!俺は主人公の相棒だぞ!!!」   作:バケギツネ

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約束

 

 

『美々子、菜々子。キミたちの持つ力は、決して呪われたものなんかじゃない。むしろ誇るべき、大いなる力なんだ。私が保証しよう。その力は、いつか必ず誰かを救う事になる!』

 

 私と美々子にとって、傑さんは救世主(ヒーロー)だった。

 

 あの人は、暗い世界に閉じ込められていた私達を、見つけ出してくれた。明るい世界で、たくさんの幸せを教えてくれた。私たちの生まれ持ったものを肯定してくれた。

 

 大好きで大好きで大好きで大好きな、そんな人。

 

 私達は、傑さんに助けられたあの日から、私たちが真の意味でこの世に生まれたあの日からずっと、あの人のために生きると、そう決めていた。

 

 だから、傑さんが天星教を立ち上げた時も、私達はついて行った。ちょっとでもあの人の役に立ちたかったから。あの人の側にいたかったから。

 

『ほんとに、私について来る気かい?私がこれから進むのは棘の道だ。きっと、たくさんの敵が出てくる。キミたちを巻き込みたくは....』

 

『私たちは、自由に生きていいんでしょ?だったら私たちは、ずーーーっと傑さんの隣にいる!』

『それが、私たちの幸せなの!!それなら、文句ないでしょ?』

 

 傑さんは、私たちを危険に晒したくはなかったみたいだけど、美々子と一緒に必死に説得したこともあって、渋々受け入れてくれた。

 

 あの人、私たちに対してはちょっとだけ過保護なんだ。まあ、それだけ私達のことを大切に思ってくれてるのなら、少し嬉しくも思うんだけど。

 

 そう、とにかくあの人は優しかった。私たちが最後に言葉を交わした、あの日も..

 

 

『傑さーん!今日って、クリスマスイブでしょ?』

『傑さんの任務が終わったら、3人で新宿行かない?イルミネーション、凄いらしいよ!!』

 

『すまない。今日は任務の後、悟と飲む約束があるんだ。』

 

『『......は?』』

 

『いや、その、前々から約束していてね....ほら、悟も私も何かと忙しいし.....』

 

『だからってなんで今日!?今日はクリスマスイブだよ!』

『こんな日に、男2人でお酒飲むとか、もはやクリスマスへの冒涜だよ!?』

 

『す、すまない。この埋め合わせは必ずするよ...そうだ、25日の夜なら、なんとか予定を空けられる。そうしたら、3人で出かけよう!』

 

『むぅ〜、絶対だからね!』

『五条悟からどんなにウザ絡みされても、絶対帰って来るんだよ!』

 

『分かった、分かった。約束するよ、明日の夜までには必ず戻る。』

 

 

 私たちはウッキウキで、傑さんと出かける準備をしてたっけ。可愛いコートを買って、入念にスケジュールを組んで。

 

 あの人が帰って来るのを、ずっとずっと待っていた。

 

 

『傑さん、遅いね。』

『五条悟の介抱でもしてるんじゃない?アイツ下戸の癖に、傑さんと一緒にいる時は無理して飲むから...』

 

 

 2017年12月24日、傑さんは私たちとの約束を初めて破った。

 

 それからは、大変だったな。当然、教祖が突然失踪した天星教は大騒ぎ。私たちや、利久くん、真奈美さん、ラルゥは、混乱する信者達を纏める為に必死で頑張った。

 

 不安も寂しさもあったけど、へこたれてるわけにはいかなかったんだ。傑さんの夢は、こんなところで終わるわけがないって、そう信じてたから。

 

 だから、私たちは待ち続けた。大好きな人とまた会えるその日を。

 

 

 

 

 

 

 

『ただいま、2人とも。』

 

 2018年の10月下旬。傑さんの形をしたナニカが、私たちの前に現れた。

 

『傑さん....?(誰.....?)』

 

『どうしたの?頭のそれ.....(違う.....コイツは、違う....!)』

 

 

『去年の末、任務中に襲撃されてね....その時に負った傷の一つさ。かなり手ひどくやられてね。傷を治して戻ってくるのに、ずいぶん時間がかかってしまった。今まで心配をかけて、すまなかったね。』

 

 混乱する私たちの目の前で、額に縫い目のある男は傑さんのふりを続けていた。

 

『襲撃って...(何を言ってるの、コイツ...)』

 

『一体、誰が傑さんを...(本物の傑さんはどこ...!?)』

 

『悟だよ。私を殺そうとしたのは、五条悟だ。』

 

『え?でも.........』

『アイツは、傑さんの親友だって...』

 

 私たちは話を合わせて、少しでも奴から情報を抜き出そうとした。奴の話が嘘だというのは、すぐに分かったから。

 

 五条悟、アイツは確かにチャランポランで大人気のないアラサー幼稚園児だが、傑さんの親友だ。

 

 あの人を裏切るなんて事はあり得ない。

 

『私も信じられない。偽物、変身の術式、色々な可能性を疑ったさ。だが、あの強さ、術式、間違いなくあれは悟だった。私の魂も、それを肯定しているよ。』

 

 偽物は、いけしゃあしゃあと嘘八百を並べ続ける。

 

 その整った顔も、澄んだ声も、安心するような匂いも、恐らく使う術式も、その全ては傑さんのものである、そのはずなのに。

 

『悟はもう、私の知ってる悟じゃない。彼はもはや、”強さ“と”戦い“に取り憑かれた、呪いそのものだ。彼にとって、自分以外の生き物は全て下等種。その気まぐれ一つで、世界がいつ滅んでもおかしくない...!』

 

 やっぱり違う。コイツは絶対に違う。目の前にいるのは私たちの大好きな人じゃない!

 

『親友を、この手で止めたいんだ。美々子と奈々子にも、手伝って欲しい。』

 

 偽物は薄っぺらい笑顔を浮かべて、私たちに手を差し出す。

 

『きっと、険しい道になるだろう。だが2人なら、ついて来てくれるだろう?』

 

『.....................』

『......................』

 

 違う。

 

 傑さんは決してそんな事は言わない。あの人は過保護なんだ。危険なことに、進んで私たちを巻き込んだりはしない。

 

 考えろ!今、私達が今とるべき最善は....

 

『傑さん。無事で良かった。本当に心配したんだよ。』

『どうせ戻ってくるなら、“あと2週間”早ければな〜。そしたら、私たちの誕生日に間に合ったのに。』

 

 私たちは込み上げる殺意を必死に抑えながら、奴に歩み寄る。傑さんとの日々を思い出して、あの人にそうしていたように、むりやり笑顔を作って偽物へと微笑みかけた。

 

 そして、探りを入れてみる。

 

『何を言っているんだい?君たち2人の誕生日は、8月だろう?』

 

『...................』

『.....................』

 

 どうやら奴は、傑さんの記憶をも手に入れているらしい。なら、尚更迂闊な事はできない...

 

『カマをかけたんだね?ははっ、用心深いのはいいことだよ。流石は、私の家族だ。』

 

 偽物は、いつも傑さんがそうしていた様に、私たちの頭を撫でる。鳥肌がたちそうになるのを堪えながら、私たちは考えた。

 

 コイツが使うのは人の身体に乗り移る術式?だとしたら....

 

 私は、こっそりと試してみる。“生きている”人間に対して発動する私の術式は、偽物には効果が無かった。

 

 それが意味する事は、1つ。

 

 傑さんはもうこの世にいない。恐らく、目の前の偽物の手によって。

 

 私の異変を唯一感じ取った美々子も、その事実に辿り着いたのだろう。彼女の見せかけの笑顔の裏で、深い悲しみが渦を巻いていた。

 

 ダメだ。今は泣いてはいけない。この感情は、押し殺せ!!

 

『さっそくだけど、縛りを結ぼう。2人も、よく知っているだろう?条件は、そうだな....“これから話すことや、私に関することは、計画が成功するまで決して口外しない“とでもしておこうか。』

 

 ここで縛りを断るのは不自然だ。今の私たちでは、目の前のコイツに勝つことも難しい。なら...

 

『うん、早速縛りを結ぼう!』

 

殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す

 

『傑さんと一緒に戦えて、嬉しい!3人で五条悟に思い知らせてやろう!!』

 

許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない

 

 この呪いの気持ちを胸に秘めて、準備を進めよう。傑さんを解放する、その時のために。

 

 たとえ、どんな手を使っても。絶対に......

 

 

『『許さない、後悔させてやる.....!!』』

 

 

 

 

 

 

 

 私たちには協力者が必要だった。

 

 傑さんのニセモノ、アイツは強い。天星教の仲間たちだけではどうしても力が足りないし、生半可な術師の手を借りても犠牲が増えてしまうだけ。

 

 本当なら、五条悟に頼るのが一番いいのだろう。だが縛りのせいで、“彼を封印するという計画”が成功するまでは、ニセモノのことを誰かに相談する事はできない。

 

 そこで私たちは呪いの王に目を付けた。

 

 サブプランもない事は無いけど、到着が間に合うかどうかは分からない。計画の実行日を過ぎれば、あのニセモノは雲隠れしてしまう可能性もある。

 

 だからこそ、10月31日に渋谷に現れるであろう虎杖悠仁さん、その身体に封印されている両面宿儺に頼る必要があった。教団の力も借りつつ、死に物狂いで入手した指一本、それを材料に宿儺と縛りを結んで協力させる。

 

 指一本では宿儺が乗ってこなかった場合、器である虎杖悠仁さんの殺害をチラつかせるつもりだ。

 

 正直、これはあまりやりたくない。

 

 私の術式に使う写真。それを入手する為に、ディ○ニーランドでちょっとだけ話したけど、いい人だったし。

 

 

 

 

 

 

 

 

『時間がない、早く始めよう。』

『.....うん。』

 

 ニセモノの計画通り、五条悟が封印されてしまったのを確認した後、私たちはようやく虎杖悠仁くんに接触することができた。

 

 美々子の術式によって一時的に気絶させた彼の前で、宿儺の指の封印を解く。

 

「ガキども、貴様らの目的は何だ?」

 

『っ!』

『宿儺....!』

 

 突然感じた異質なプレッシャーに、全身は反射的に縮みあがる。虎杖さんの顔には、不気味な口と目が浮き出ていた。

 

 あれが、呪いの王....!

 

 一目見ただけで、奴の持つ圧倒的な力が伝わって来る。恐らく単純な呪力量だけなら、五条悟のそれを遥かに上回っているだろう。

 

 身体が自然と膝まづきそうになるのを、必死に堪える。

 

「聞いているか?ガキども。目的があるなら話せ。この俺が、聞いていると言っているんだ。」

 

『『.............』』

 

 宿儺は私たちに語りかける。それは身体の芯まで響くような、重い声だった。

 

『宿儺.......今この場で、縛りを結んで。貴方には私たちに協力して、額に縫い目のある男を殺してもらう。』

『傑さんを、解放するために!』

 

「ほお.....」

 

『『っ...............!!』』

 

 有利な立場にあるはずの私たちが、気圧されるほどの圧倒的な存在感。些細な一挙手一投足が、全て死因になるうる恐怖。私たちは自然と息を止めていた。

 

 息、していいんだよね....?殺されないよね..?

 

「クククッ、どうした?随分苦しそうだな。」

 

 しっかりしろ、私たち!ここでビビってる場合じゃない!両面宿儺の協力を取り付けて、絶対に傑さんを解放するんだ。

 

「...何か事情があるようだな。話せ、手短にな。」

 

 私たちは話した。ニセモノについて知っていること全てと、傑さんへの想いを。情に訴えかけるやり方に効果があるとは思えない。なんせ相手は呪いの王だ。

 

 でも、何故だろう。話さずにはいられなかった...

 

「なるほどな。事情は分かった。」

 

 私たちの話は聞き終えた宿儺は....

 

「う、ううっ、ぐすっ。」

 

 泣いていた。え、泣いて、え、ちょ、んん!?

 

「ガキども、今まで辛かったな。お前たちはたった2人でよく頑張った。あとは、この俺に任せろ!!夏油さんのご遺体は、必ず俺が取り戻す!!」

 

 .............こんなのおかしい!!

 

『な、何を企んでるの...!?』

 

 私たちは臨戦体制をとる。美々子の呪具であるしめ縄が、虎杖悠仁さんの全身をさらにキツく縛り上げた。

 

「ちょっ!?待て待て!なんか誤解してるじゃん!ちょ、悠仁の骨折れちゃう!!頼むぜ、ガキどもぉ!?」

 

 きっと、何か裏がある!なんせ相手はあの呪いの王。必要とあらば、不意打ち、騙し討ち、ハニートラップ、どんな手だって使ってくるはずだ!

 

 騙されちゃいけない!

 

「まずはこの縄を解いてくれ。大丈夫だ、貴様らには何もしない。俺を信じろ。ケヒヒヒヒヒッッ!!」

 

 怪しい!!!!!!!!

 

『な、ならまずは私たちと縛りを結んで...!』

 

「ああ、そうであったな。はい、縛り成立。」

 

『『え....?』』

 

 

1、

美々子・菜々子はすっくんに指一本を引き渡す。

 

2、

すっくんは夏油傑の遺体を取り戻すため、美々子・菜々子に協力する。

 

 

 

「約束する。貴様らの大切な人を、これ以上弄せはしない!」

 

 他者との縛り、それは何人たりとも覆す事のできない、絶対的なルール。それを結ぶ事の重要性を、私たちはよく知っている。

 

 他ならぬ傑さんが教えてくれた事だ。

 

「死者を冒涜するとは、万死に値する!死体に乗り移るなんて、そのニセモノ野郎、とんでもない呪いだな!ぜってえ許さねえ!!!」

 

 両面宿儺は私たちとの縛りによって、傑さんの遺体を取り戻す事を約束してくれた。この人は、私達や傑さんの為に本気で怒ってくれている...?

 

『................失礼いたします。』

 

 私は自分のスマホを取り出して、数日前にディ○ニーランドで撮影した虎杖悠仁さんの写真を表示する。

 

 何かあった時のためにと、用意しておいたものだ。

 

『あなたと虎杖悠仁さんを回復させていただきます。』

 

 私は自分の術式を使用した状態で、虎杖悠仁さんの身体にそっと触れる。

 

形状記憶(メモリーズ)!!!!!』

 

 私の持つスマホは写真を一枚しか保存しないことを縛りに、呪具となっている。そして私の術式・形状記憶(メモリーズ)は、対象をその写真の中での状態に変えるというもの。

 

 元気な時の写真を使い人を回復させることも、加工した写真を使い攻撃に転用することもできる、用途の広い術式だ。

 

 写真の表示されたスマホを持ったまま、対象に一瞬でも触れれば術式は発動し、その38.4秒後に効果が現れる。

 

 一度発動すれば、その後38.4秒以内に溶岩で焼かれ死のうとも、スマホと写真さえ無事ならば、対象の身体は元通り。しかしこの術式は発動時点で、既に死んでいる人間に対しては効果がない。

 

 そう、私の術式では、大好きな人を蘇らせることはもうできないのだ。

 

 でもせめて、大好きな人の魂を救う...その為の助けになるように、私はこの力を振るうんだ。傑さんが肯定してくれたこの力を!!

 

『お待たせいたしました。宿儺様、いかかでしょうか?』

 

「ふむ、悪くない。」

 

 38.4秒が経過し、虎杖悠仁さんの傷と呪力が完全に元通りになる。彼の身体は、ディズニーを楽しんでいた時の万全な状態に戻っている筈だ。

 

「ケヒヒッ!最高だ、お前たち。」

『おい、すっくん!大丈夫か!?なんだこの状況、ピンチか!?』

「あー、話すと長い。とりあえず、彼女らは味方だ。あと悪いが、ちょっと静かにしといてくれ。悠仁。」

『え?あ、はい。』

 

 両面宿儺は、虎杖悠仁さんとめちゃめちゃ親しげに言葉を交わすと、私たちの方へと視線を向ける。

 

「安心しろ。お前たちには俺たちがついている。呪いの王・両面宿儺と、その相棒・虎杖悠仁がな。」

 

 私たちは、恐怖でずっと逸らしていた目を、ようやく両面宿儺に合わせた。その一つ目はどこまでも真っ直ぐで、優しい光に満ちている。

 

 この人なら、信じていいのかもしれない。張り詰めていた糸が切れ、私たち頬を一筋の滴が辿った。

 

『『ありがとう......ありがとう...!ありがとうございます!!!!本当に...!ありがとうございます...!!!』』

 

 私たちは、その場に膝まづいていた。それは恐怖からのものでなく、敬意と感謝からのもの。

 

『『ありがとうございます!!!!!!』』

 

 傑さんの死を悟ったあの日から、私たちはずっと堪えていた。傑さんを取り返すまで、決して涙を流さないとそう決めていた....この悲しみを乗り越えると、そう誓ったはずだったのに.....

 

『傑さん...!傑さん..!なんで、なんで死んじゃったの....!?』

『絶対...!帰って来るって、そう言ってたじゃん...!なのに...!』

 

 もう、溢れ出す感情を抑え切れない....

 

「....ガキども、今は泣け。泣いていいんだ。」

 

 私たちは、呪いの王・両面宿儺の御前でみっともなく泣き喚いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おっす、俺すっくん!前回までのあらすじ!

 

 俺たちの前に突如現れたJ Kコンビ!彼女らは何故か、両面宿儺の指を持っていた!!

 

「ガキども、貴様らの目的は何だ?」

 

 俺は悠仁の顔に生やした口から、J Kコンビに語りかける。

 

『っ!』

『....宿儺....!』

 

 なんだか知らんが俺、めちゃくちゃ怖がられてる?そういや俺、呪いの王だったっけ。それならこっちは、強気で話を進めるだけだ!!

 

 久しぶりに、ちょっと威厳のある喋り方でもしてみるか!

 

「聞いているか?ガキども。目的があるなら話せ。この俺が、聞いていると言っているんだ。」

 

『『.............』』

 

『宿儺.......今この場で、縛りを結んで。貴方には私たちに協力して、額に縫い目のある男を殺してもらう。』

『傑さんを、解放するために!』

 

 縛り?額に縫い目がある男って、悠仁パパ...?

 

 傑さんを解放?傑さんって、あの夏油傑さん?

 

 ちょっと情報量が多すぎる!頭の中を整理する時間が欲しいぜ!でも、彼女らを無視するのは感じ悪いし、適当に返事を返しておくか。

 

「ほお.....」

 

『『っ...............!!』』

 

 あれ?

 

 なんかJ Kコンビ、めちゃくちゃ震えてない?呼吸もどんどん浅くなっていってるし、大丈夫?呪いの王である俺と話すのに、緊張でもしてるんだろうか...?

 

 耳を澄ますと、2人が小さい声で何かブツブツ言ってるな....

 

『息、していいんだよね....?』

 

 していいけど?

 

『殺されないよね..?』

 

 殺さないけど!?

 

「クククッ、どうした?随分苦しそうだな(心配)」

 

 彼女達は極度の緊張からか、軽い酸欠に陥っていた。驚いた。まさかここまで畏れられていたとは。

 

 流石は呪いの王だな。そんなに緊張しなくていいよ〜。大丈夫〜、中身は俺とかいう偽物だし、全然怖くないよ〜。ほら、ただのそっくりさんみたいなものだから〜!

 

 しかしこうなっては、此方から会話をリードするしかないな。このままただ待っていても、話が進みそうにないし。一応俺たち、先を急がないとだし。

 

「...何か事情があるようだな。話せ、手短にな。」

 

 俺の呼びかけに応えるように、彼女らはポツリポツリと自分達の過去を話し始めた。

 

 生まれ持ったその力ゆえに、村では迫害されていた事。それを、夏油さんに救われた事。夏油さんが大好きだった事。

 

 そして、そんな大好きな人を奪った巨悪がいる事。

 

「なるほどな、事情は分かった。う、ううっ、ぐすっ。ガキども、今まで辛かったな。お前たちはたった2人でよく頑張った。あとは、この俺に任せろ!!夏油さんのご遺体は、必ず俺が取り戻す!!」

 

 この2人はずっとずっと、命懸けの孤独な戦いを強いられてきたのだ。呪術師の端くれとして、そんな2人を見捨てるわけにはいかない!

 

『な、何を企んでるの...!?』

 

「ちょっ!?待て待て!なんか誤解してるじゃん!ちょ、悠仁の骨折れちゃう!!頼むぜ、ガキどもぉ!?」

 

 黒髪ちゃんの縄が、より強く悠仁の身体を縛り上げる。あれぇ!?何か俺、疑われてる!?

 

「まずはこの縄を解いてくれ。大丈夫だ、貴様らには何もしない。俺を信じろ。ケヒヒヒヒヒッッ!!(全力スマイル)

 

『な、ならまずは私たちと縛りを結んで...!』

 

「ああ、そうであったな。」

 

 なるほど。たしかにまだ、縛りを結んでなかったな〜。

 

 そこら辺、この子達はしっかりしている。きっと夏油さんがしっかり教え込んだんだろうな〜。

 

「はい、縛り成立。」

 

『『え....?』』

 

 これで彼女らも、少しは安心できただろうか?

 

「約束する。貴様らの大切な人を、これ以上弄せはしない!死者を冒涜するとは、万死に値する..!死体に乗り移るなんて、そのニセモノ野郎、とんでもない呪霊だな!!ぜってえ許さねえ!!!」

 

 しっかし悠仁パパめ!改めてとんでもない野郎だな!!

 

『................失礼いたします。』

 

 金髪ちゃんは自分のスマホを取り出して、数日前にディ○ニーランドで撮影したと思しき悠仁の写真を表示する。ん?何が始まるんです?

 

『あなたと虎杖悠仁さんを回復させていただきます。』

 

 彼女は恐らく術式を発動した状態で、悠仁の身体にそっと触れるのだった。

 

形状記憶(メモリーズ)!!!!!』

 

 こ、これはっ...!

 

 悠仁の傷、さらには呪力が完全に元通りになっている!何じゃこりゃあ!!

 

『お待たせいたしました。宿儺様、いかかでしょうか?』

 

「ふむ、悪くない。」

 

 それにこれ、悠仁の中にいる俺の呪力まで全快しているじゃないか!凄え!宿儺呪力モードの制限時間も、MAX値の99秒まで完全回復してるぞ!これで“アレ”もいっぱいできる!!

 

「ケヒヒッ!最高だ、お前たち。」

『おい、すっくん!大丈夫か!?なんだこの状況、ピンチか!?』

「あー、話すと長い。とりあえず、彼女らは味方だ。あと悪いが、ちょっと静かにしといてくれ。悠仁。」

『え?あ、はい。』

 

 ごめんな悠仁。後でゆっくり説明するから、ちょっと待っててな。

 

「安心しろ。お前たちには俺たちがついている。呪いの王・両面宿儺と、その相棒・虎杖悠仁がな。」

 

 J Kコンビとようやく目が合った。その瞳から溢れ出した涙は、彼女らの頬を伝う。

 

『『ありがとう......ありがとう...!ありがとうございます!!!!本当に...!ありがとうございます...!!!』』

 

 彼女らは泣きながらその場に膝まづき、ようやく年相応の感情を露わにするのだった。

 

『傑さん...!傑さん..!なんで、なんで死んじゃったの....!?』

『絶対...!帰って来るって、そう言ってたじゃん...!なのに...!』

 

 彼女らは、見たところ15歳くらいか。その年では、とても耐えきれないほどの重荷をずっと背負ってきたのだろう。だが、もういいんだ。これからは、2人だけで背負いこむ必要はない。

 

 俺と悠仁も、キミたちの思いを背負って戦う。だから、

 

「....ガキども、今は泣け。泣いていいんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あと俺の縄って、いつ解いてもらえる感じなんでしょう....?」

 

 

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