宿儺「どけ!!!俺は主人公の相棒だぞ!!!」 作:バケギツネ
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改造呪詛師。
羂索が雇った呪詛師を、真人が改造する事によって生まれた、異形のアウトローたちである。
“魂の一部だけを変形させる”という真人の離れ技によって、彼らは自我と術式を据え置きのまま、呪力が大幅に強化され、改造人間以上のフィジカルを発揮する事ができる。
しかし、原作以上の強さを手に入れた彼らも、それ以上のパワーアップを果たしていた呪術師たちによって、その全員が“実質的に”全滅していた。
原作では、伏黒を追い詰めた事で布瑠部由良由良を誘発し、宿儺に助けられたり殺されたりしたものの、本作では普通に釘崎と七海に仕留められた重面春太。
原作では、虎杖と伏黒のタッグという割と豪華な対戦相手に恵まれたものの、本作ではチュートリアル要因かつ甚爾の前座にされた、あべこべ爺こと粟坂二郎。
原作同様、オガミ婆が降ろした禪院甚爾の身体に魂が敗北し、伏黒恵らとの激戦の末にサラッと死亡が確認された、孫(本名不詳)。
そして、“魂の消滅”という原作とは異なる死因によって、甚爾暴走の遠因を作った、イタコにして大のジャニーズオタク(公式情報)であるオガミ婆。
さて、彼女の魂が消滅するきっかけについてだが、それは真人の改造の副作用などではない。原作同様、彼女の死には彼女自身の術式・降霊術が絡んでいた。
以前、降霊術を穢土転生呼ばわりしたすっくんが、死者の大量復活を警戒した事がある。その際、彼のそばにいたメカ丸の端末は、このように提言していた。
『降霊術はそうそう連発できるようなもんじゃなイ!!改造呪詛師とやらになって、呪力量が多少強化されていたとしても、せいぜい使うのは2、3回が限度ダ!!それより今は目の前の敵に集中しロ!!』
メカ丸の予想は概ね正解だった。
改造によって呪力量が増大していた彼女は、降霊術を“2回”まで使用できる。
自身の孫に“禪院甚爾“を降霊した後、彼女が自身を依代として新たに憑依させたのは...
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『ぷは〜!おい、真希〜!!お前酒持っとらんかー!!』
『持ってるわけねえだろ。こちとら未成年だぞ..』
禪院直毘人と禪院真希の2人は、改造呪霊を祓いながら渋谷マークシティを散策していた。
もっとも直毘人は、呪霊たちの相手を真希1人に任せ、自分はただただ酒をかっ食らっている状態であったが。
『やる気がねえなら帰れ、クソ爺。』
『ハハハッ、帰れか。それは真希、お前の方だろ?』
自身に辛辣な言葉を浴びせる姪っ子を一瞥する直毘人。空になった缶ビールをそこら辺にポイ捨てした彼は、一転して鋭い目つきとなっていた。
『お前じゃ力不足だ。大物と出くわす前に引き返して、俺の酒でも買っておけ。』
『てめえみたいな酔っ払いよりは役にた...』
真希がその言葉を言い終わらぬうちに、風をきりながら真っ黒な影が飛来する。猛スピードで真希たちに突進してきたソレは、プテラノドンに形状の似た巨大な式神だった。
『っ!コイツ疾え!』
咄嗟に武器を構える真希だが、その非常な能力に対応しきれない。式神は、防御が間に合わない真希を襲...
『だから言ったろ。』
『!?』
御三家の一角、禪院家現当主の禪院直毘人。現代最速(五条悟を除く)の術師である彼は、その式神の動きを完全に見切っていた。
『今のお前に、このレベルは早すぎるのだ、真希よ!!』
飛行していた式神に自身の手で触れた直毘人は、その動きを空中で“フリーズ“させる。
『フン!!!』
透明な枠に閉じ込められた式神に、呪力で強化された直毘人の拳が炸裂する。身じろぎすらできないまま、痛恨の一撃を食らった式神は、飛び散るフレームの破片と共にその身を消滅させるのだった。
『...すまねえ、助かっ』
『その礼の言葉は、もう少し後に聞かせてもらおう。』
居心地が悪そうに叔父への感謝を述べる真希だったが、直毘人の顔は晴れない。彼は尚も、式神の飛んできた通路の奥を睨みつけている。
程なくして、直毘人を称賛するしわがれた声が聞こえてきた。
『ワシの式神より速いとは、なかなかやるではないか。最近の術師にしては、だがのお。』
先程の式神の持ち主は、威厳のある力強い足取りで、真希たちの方へ近づいてくる。都会の街には馴染まないその姿を一瞥した直毘人は、思わず苦笑した。
『ハハハハッ。随分とまあ、“有名人”のお出ましだな。』
御三家に生まれ、呪術の歴史などの知識を幼い頃から叩き込まれていた直毘人。当時、そのような勉学には不真面目だった彼ではあるが、それでも目の前の人物が誰なのかくらいは知っている。
体には腰巻のみを身に着け、長く伸ばした髪をマントのように背中で広げ、顎には立派な髭を蓄えている。歴史書からそのまま飛び出してきたような、仙人のような出立の老術師。
その正体を、直毘人は知っている。
『ドルゥヴ・ラクダワラ...!』
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オガミ婆が降ろした肉体の持ち主。その正体は、
乙骨に瞬殺された、パンツ被ったジジイ
かつて倭国大乱において、単身で列島制圧を成し遂げた宿老だった。
降霊術の条件は、降ろす人物の肉体の一部を依代が取り込むこと。
『オガミ婆、キミの術式はなかなか有用だからね。これは私からのちょっとしたプレゼントだよ。』
今回彼女を雇った、特級術師であるはずの依頼人・夏油傑(羂索)が、そのあたりのお膳立てを済ませている。ドルゥヴの受肉を計画していた彼にとって、その肉体の一部を用意する事など容易かったのだ。
『ほお、これは素晴らしい。なんてちか、かかかかか、かかかかか、かかかかか』
見事、そんな大物の降霊に成功したオガミ婆。しかしここで、彼女にとってのイレギュラーが、羂索にとっては想定通りの事態が発生する。
少し先の話になるが。
ドルゥヴ・ラクダワラは死滅回游編にて、仙台コロニーに登場する事になるのだが、その際にこのような記述がある。
“2度目の受肉”と。
そう、彼は死滅回游以前に受肉を果たしていた事になる。
ドルゥヴは自力で、死後呪物になる方法を見つけ出す程、魂の扱いに精通していた術師だったのだ(多分)。
彼の使う“完全自律型”の式神もその技術を応用し、自分の魂の一部を式神に分けあたえることによって、運用しているものである(多分)。
そんなドルゥヴが自らの死後、自身の肉体が悪用されることを想定しなかったわけがない。彼は自らの肉体の情報に、自らの魂の情報を紐づけていた。
彼の狙い通り、黄泉の国から帰還したドルゥヴの肉体と魂は、オガミ婆のソレを完全に乗っ取り、完全復活を果たすこととなる。
ドンマイ、オガミ婆。さよなら、オガミ婆。
『数千年ぶりに蘇ってみれば、実に嘆かわしい....呪術の何たるかも分からぬ有象無象共によって、この国はずいぶんと変わってしまった。こんなものを進化とは呼ばん。我々は今一度、立ち返るべきだ。古き良きあの時代に。そう思わんか、若造どもよ。』
かくして平成の渋谷の地に、日本最古の“最強”は君臨する事となる。