宿儺「どけ!!!俺は主人公の相棒だぞ!!!」   作:バケギツネ

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オタク仲間って良いよね。

 

 

 渋谷駅地下3階。人っこ1人いなくなった静かな空間に、呪いが1つ。

 

『まだだ、まだ足りない...!』

 

 夏油とは別行動をとる事にした真人。彼はこの場所で、自らの魂と向き合っていた。

 

 遍殺即霊体。

 

 それは、すっくんの打撃や反転術式に対抗すべく、身体能力と頑強さに重きを置いた真人の新形態である。

 

 全身を覆う硬い装甲は二重の黒閃すらも防ぎきり、反転術式を“体内”へと流し込む為の傷を作らせない。

 

 彼は着実に、呪いとしての成長を遂げていた。

 

 だが、

 

『もっと、もっとだ。俺の進化は、まだこんなものじゃない。』

 

 その偏殺即霊体すら、真人にとっては道半ば。彼の目指す果てなきゴールからは、ほど遠い位置にあるものだった。

 

『早く来い...!』

 

 真人の進化は止まらない。

 

 彼は待ち望んでいるのだ。自分を完成させるために必要な、最後の1ピースを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 渋谷マークシティ自由通路。

 

 ほんの数時間前までは、ハロウィンを楽しむ為に多くの若者が集まり、人々の活気に満ちていたその場所。今はしんと静まりかえり、3人の術師だけをその場に残していた。

 

『ハハハハッ。随分とまあ、“有名人”のお出ましだな。ドルゥヴ・ラクダワラ...!』

 

 特別1級術師・禪院直毘人と、4級術師・禪院真希。2人は、オガミ婆の降霊術によって現代へと甦った、日本最古の呪いの王と対峙する。

 

 かつてない強敵が放つ圧倒的なプレッシャーに圧されながらも、その目を逸らさない真希。彼女の横にいる直毘人もすっかり酔いがさめた様子で、真剣な面持ちのまま相手の出方を伺っていた。

 

 そんな緊張が支配する空間で、ドルゥヴはゆっくりと口を開く。しわがれながらも、その戦歴を窺わせる重く威厳のある声が響いた。

 

 因みにだが、ドルゥヴは原作だと一言も喋っていない。

 

『数千年ぶりに蘇ってみれば、実に嘆かわしい。呪術の何たるかも分からぬ有象無象共によって、この国はずいぶんと変わってしまった。こんなものを進化とは呼ばん。我々は今一度、立ち返るべきだ。古き良きあの時代に。そう思わんか、若造よ。』

 

 太古の日本を、己が力だけで纏め上げたドルゥヴ。現代に甦った彼が抱くのは、今の祖国への失望と憐憫。

 

『日本最古の最強・ドルゥヴ・ラクダワラよ。』

 

 そんな彼の問いに答える形で、直毘人もまた口を開く。

 

『貴様は、アニメーションが1秒間に何フレームあるか知っているか?』

 

『.......はあ?』

 

 否、直毘人はドルゥヴの質問に答える気などサラサラない。原初の最強を前にしながら、彼はどこまでもマイペースな男だった。

 

『おい、若造。まずは儂の質問に答えろ。これだから現代の人間は、目上の人間を敬う気持ちがなっていない。その様な粗末な精神性が、この国を堕落させているとなぜ分から...』

 

『昨今は解像度やフレームレートをあげたがる風潮でな。』

 

『おい聞けぇ!!!若造!!!!!』

 

 直毘人が働いた狼藉に、思わずドルゥヴは声を張り上げる。

 

 しかし当の直毘人は、2000年単位の先達が放った怒声などはお構いなしに、持論を展開していくのだった。

 

『...............』

 

 真希の目前で繰り広げられるのは、圧倒的に自身よりも格上なジジイ同士の言い合い(会話が成り立つとは言っていない)。

 

 それを彼女は、内心で呆れ返りながらも黙って見守っているしかなかった。

 

 真希はある意味で、直毘人から警告を受けたあの時に帰っておけば良かったと、後悔しつつある。

 

『4Kにアップコンバートだの、60fpsでフレーム補完だの、個人で楽しむ分には誰の迷惑にもならんからそれはいい。しかしっ!』

 

『待て若造、貴様何の話をしている!?あっぷこんばと?ふれいむ?な、何なんだそれは!?そんなもの、儂の時代には無かった!!』

 

 受肉で蘇った過去の術師には、器となった人間の記憶が流れ込む。その為受肉体は、すぐさま現代社会への知識を得られるのだ。

 

 しかし今回、ドルゥヴは降霊という手段によって復活している。肉体の情報も魂の情報も、それらはドルゥヴのものでしかない。

 

 その為彼は、オガミ婆が持っていた筈の現代の知識を、殆ど持ち合わせていなかった。

 

 日本最古の呪いの王に立ちはだかるのは、ジェネレーションギャップという大きな壁。

 

『最近のテレビはフレーム補完がデフォルトでオンになってやがる!!』

 

『てれ、び?ふれーむ?え?』

 

 頭にハテナマークを浮かべるドルゥヴを追いてきぼりにして、直毘人は熱弁をふるい続ける。

 

『まさかありがた迷惑という言葉が死語になったわけではなかろうに。嘆かわしいことこの上ない。無粋だとは思わんかぁぁ!!!!!』

 

『知らん!!!何なんだ、貴様はああああああ!?』

 

 とうとう、ドルゥヴはキレた。

 

『この痴れ者がああ!!儂を無視し、わけの分からない事ばかり言いおってええええええ!!おいまさか、現代人、こんなんばっかかあああああ!?』

 

『いや、一緒にすんな。』

 

 それまで黙っていた真希も、堪らずツッコミを入れ始める。

 

『やはりこの時代の人間は退化している。今一度、美しきあの過去に我々は立ち返るべきだ。』

 

『過去に立ち返るべき、か。それはアニメにも通じるところがあるかもしれんな。』

 

『おい、待て!若造やめろ!!アニメとやらの話はもういい!』

 

 意気揚々と語り始めたドルゥヴだったが、直毘人の土俵へと無理矢理引き戻される。

 

『ドルゥヴ・ラクダワラよ。貴様は昨今のCGアニメーションについてどう思う?』

 

『知らん!!!!!!!』

 

『俺はCGを好かん!!!』

 

『だから知らんと言っている!!!』

 

 今もマシンガントークで行われている直毘人のアニメ談義は、一応術式の開示に近い効力を持つ。ドルゥヴというかつてない強敵を前に、彼はできるだけ自身の術式を強化しておこうという狙いがあった。

 

 あと単純に、彼はアニメ談義が好きだった。

 

『CGも、良いところがないわけではない。だが、俺はセル絵の温かみのある動きが好きなのだ。』

 

『いい加減にしろ!だから知らんと...』

 

「分かります!!!やっぱ手書きっていいですよね!!僕もディズニーは、CGより手描き派なんですよ〜!」

 

 

『『『んん!?』』』

 

 

 ただでさえカオスな空間だった、渋谷マークシティ自由通路。そこに迷い込んできたのは、更なるカオス。

 

 その混沌の名は、賀茂ヒカリ。

 

 

 

 

 

 ご機嫌麗しゅう...

 

 僕は、この世界の登場人物・脹相に転生した女の子、賀茂ヒカリ。僕と同じくこの世界の転生者である両面宿儺様の婚約者“だった”者だよ。

 

 そうっ!前回失恋しましたっっ!でもっ、全然気にしてないよっっっ!

 

 宿儺様には、僕なんかよりもよっぽど素敵な、可愛いお相手ができたからね〜!!!!

 

 いや〜、よかったッ!よかったッッ!宿儺様が幸せならOKですッッッッ!!!

 

 ......ハァ〜。

 

 やっぱこんなんじゃ、プリンセスでもなんでもないな。

 

 さて、せめて少しでも宿儺様のお役に立とうと、逃げ遅れた人なんかを探していた僕。そしてなんやかんやで、この渋谷マークシティ自由通路に迷い込んでいた。

 

 そこにいたのは、まず1人目・ガリガリおじいちゃん!

 

 まあ、ビジュアル的に敵キャラかな。なんか顔怖いし、パンツみたいなの被ってるし。ダサっ。

 

 それと相対するのは、和服姿のおじさまに、メガネポニテの女の人。あ、宿儺様と同じ制服〜!って事は、こっちが味方か!

 

 あれれ、何か口論してるっぽい?

 

『CGも、良いところがないわけではない。だが、俺はセル絵の温かみのある動きが好きなのだ。』

 

 ん、分かりみが深い発言!!

 

『いい加減にしろ!だから知らんと...』

 

「分かります!!!やっぱ手書きっていいですよね!!僕もディズニーは、CGより手描き派なんですよ〜!」

 

 まあ勿論、CGアニメーションのディ◯ニー作品も大好きなんだけどね!ラ◯ンチェルとか、モ◯ナとか!

 

『『『んん!?』』』

 

 やばっ、いきなり会話に入っちゃった。その場にいた3人から、ドン引きされちゃってるかも!?

 

『おい、そこのお前。』

 

 多分味方と思われる、和服のおじさまが僕の肩に両手を置く。え、なになに?

 

『なかなか話が分かるじゃないか。』

 

 和服のおじさまは、その渋いお顔でニッコリと笑うと、予想以上の熱量で僕に問いかけてくるのだった。

 

『アニメーション作品の中で、一番のお気に入りは何だ!?』

 

 ええ、いきなり!?

 

 まあ、ディ◯ニー作品なのは確定だけど、うーーーん、迷う!どれもこれも名作すぎて、甲乙付け難い!!

 

 でも、強いて1つだけ挙げるなら...

 

「やっぱり、ディ○ニーの”白○姫“、ですかね?」

 

 なんだかんだこれかな。原点にして頂点!

 

 アニメーションの美しさもさる事ながら、王道を征くストーリーがまたいい。ラストのキスに大きな意味合いがあるのも、私的にはポイントが高かったりする!

 

 僕も宿儺様とのファーストキスは、かくありたい....あ。ダメダメ!今の無し!あの人の事は吹っ切れ!僕!!

 

『そうか、白◯姫か...』

 

 さて、僕の返答を聞いたおじさまは...

 

『その年で、1937年生まれの世界初・長編アニメを上げるかっ!ますます気に入ったっっ!!!』

 

 子供のように、目を輝かせてはしゃいでいた。

 

 何かよく分かんないけど、このおじさま面白いな〜。僕の話を聞くたびに、どんどん笑顔になっていく!!

 

『知っているか?白○姫に使われたセル画の枚数は.....』

 

「あ、知ってます!!25万枚ですよね!!」

 

 ディ◯ニーファンにとっては、この程度常識だ。

 

 当時は初の長編アニメ映画という事もあって、作画にどれだけの枚数を費やすべきか、その基準がハッキリと決まっていなかったのだという。

 

 その為、ほぼ何となくで設定されたのが”25万”という枚数だ。作画スタッフは、750人というとんでもない人数が導入され、彼らは週休1日、日15時間で4年間働き続けたという。

 

 “白”○姫なのにかなりブラックだよね。

 

『ハハハッ、やはりお前は知っていたか!!!!!』

 

 僕という同好の士の登場に、おじさまはかなり嬉しそうだ。まあ、その気持ちはよく分かる!

 

 オタクトークって、楽しいよね!

 

『おい、これなにが始まったんだ?』

 

『......................』

 

 放ったらかしの、メガネちゃんとガリガリおじいちゃんには悪いけど、このまま会話を続けさせて貰おう!

 

「25万枚!!やっぱヤバいですよね!!!」

 

『ああ。大友○洋の「AK○RA」でも15万枚、ジ○リの最大枚数、か○や姫でも17万枚だからなあ!!桁が違う!!』

 

「そうそう!!白◯姫の作画は、もうヌルヌル動くとかの次元じゃないんですよ!!絵が生きてるんです!!」

 

『絵が生きている、か。まさしくその通り!!通常のアニメなら、8時間は作れる作画枚数だからなあ。それを2時間以内の映像に凝縮するという思い切り!そのなんと贅沢なことよ。』

 

「それなっ!!!!!!!!!」

 

 このおじ様、めちゃくちゃ話が分かるじゃないか!!

 

 こんなに話が合ったのは、前世の叔父さん以来!懐かしいな〜。叔父さんの影響で、僕はディ○ニーにハマったんだっけ〜。

 

『お前。高専が管理しているという、九相図、だったか...?総監部に報告が上がっていた、受肉体という奴か。』

 

「ええ、まあ...」

 

 一応今の体的には、そういう事になっている。ややこしくなりそうだし、転生の事は黙っておこう!

 

 それに転生の事は、僕と宿儺様だけの秘密だったわけだし。ウグッ!!!恋の古傷が...

 

『まあいい。総監部の奴らは、俺から言い含めておくとして。ヒカリ、うちの家から好きな女をやる。禪院家に婿入りする気はないか?』

 

「????????」

 

 ん?えーーーっと、婿入り?

 

 まあ、今の僕の見た目は脹相だから、男の子と勘違いしてるのは分かるんだけど、どうしていきなりそんな事に!?

 

「えーーっと、僕は...」

 

『遠慮するな!!少なくとも、今よりは良い待遇を約束...

 

『お前らいい加減にしろ!!会敵中だぞ!!!』

 

 あ、そうだった!メガネちゃんの言葉で、僕はガリガリおじさんの方に向き直る。

 

 改めて、ガリガリおじさんの、その格好は何?今10月だけど寒くないのかな?

 

『全く、どうでもいい話をタラタラと...』

 

 ガリガリおじいちゃんは額に青筋を浮かべて、プルプルと震えていた。状況がよく分かんないんだけど、もしかしてめっちゃキレてる?

 

 ちょ、ガリガリおじいちゃん、一回落ち着いて...

 

『あにめいしょん、だったか?実在しない”偽物“のことでよくもまあ、そこまで真剣になれたものだ。理解に苦しむ。』

 

は?

お前今、なんつった?

 

『な、何だ?』

 

 正直、あのガリガリおじいちゃんが何者なのかはどうでもいい。でも、

 

「今、お前は。僕たちの大好きなものを偽物って、そう侮辱した?」

『どうやら、死にたいらしいな。』

 

 僕とおじさまは、肩を並べて眼前の敵を睨みつける。共通の好きで繋がった即席タッグが、今ここに誕生していた!

 

 

 

 

 

 

 

『いや、何だこれ..』

 

《真希はただ1人、この展開に置いて行かれていた..》

 

 

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