宿儺「どけ!!!俺は主人公の相棒だぞ!!!」   作:バケギツネ

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思い込みって怖いよね -弍-

 

 ご機嫌麗しゅう。僕は賀茂ヒカリ。

 

 いつか、この世界のヒロインにして最強無敵のプリンセスの座と、呪いの王・両面宿儺様の愛を手に入れるものだよ〜♪

 

 さて、前回までのあらすじ!

 

 アニメ大好きでオタク友達の和服イケオジ・禪院直毘人さんと、カッコよくて美人のメガネが似合うお姉さん・禪院真希さん。

 

 2人の協力もあって、ガリガリパンツ被りおじいちゃんを、見事撃破!

 

 スランプ期を完全に脱却した僕は、また一つヒロインとしての試練を乗り越えたのだ。今の僕は絶好調!誰が相手でも負ける気がしない!!

 

『ヒカリ、だったか?お前はやはり、呪術師として見どころがある。禪院家に来い!!俺はいつでも歓迎するぞ!』

 

 アニメという共通の話題によって、すっかり仲良くなった直毘人おじ様。彼は僕を、やたらと禪院家(?)とやらに勧誘してくる。

 

 誘ってくれる気持ちは嬉しいんだけど、禪院家なんて、前世でも聞いたことのない所だ。一体、どんな場所なんだろう?プリンセスたるこの僕に、相応しい場所だといいんだけど。

 

「ねえねえ。えっと、真希さん〜!」

 

『ん、どうした?』

 

 僕は早速、戦闘後に教えてもらった下の名前で、真希さんに話しかける。

 

 少し接してみて分かったんだけど、彼女はワイルドめの口調に反して、ものすごく面倒見がいい。何というか、”お姉ちゃん“って感じだ!

 

 せっかくだし彼女に、おじ様の言う禪院家について聞いてみよう。まあおじ様のオススメなら、そんなに悪い所じゃなさそうだけど。

 

「ねえねえ、真希さん。おじ様の言う禪院家ってどんなトコ〜?」

 

『クソだな。』

 

 クソ!?

 

『悪いことは言わねえ。やめとけ。』

 

 真希さんが顰めた顔は、本気で嫌そうな表情をしていた。

 

「え、クソって、そうなのおじ様?」

 

『心配するな、ヒカリ。才能あるお前にとっては、天国だ。』

 

「???」

 

 えーっと、ん?どゆこと?おじ様が嘘をついてる感じはしないし。

 

『まあ、多少窮屈なことに目を瞑れば、禪院家も悪くはない場所だぞ。財も、女も、権力も、好きなだけ手に入るからな。』

 

 ほえ〜。禪院家ってもしかして、すっごくお金持ちの家だったりするのかなぁ?華麗なる一族的な?うーーん。僕の求めるプリンセス像とは、ちょっと違う気がするんだよな〜。

 

「っていうか、おじ様。僕、そっちの趣味はないというか...」

 

『んん?』

 

「いや僕、女の子なんで!」

 

『『え、そうなのか!?』』

 

 おじ様も真希さんもびっくりしてる。そういえば、なんだかんだで2人には僕の性別言ってなかったっけ?

 

 まあ、僕の見た目は男の子の脹相だし、”ヒカリ“って名前も中性的だしね〜。2人が勘違いするのも無理はない。

 

 やっぱり、僕を一目で転生者の女の子と見抜いた宿儺様って、凄かったんだな〜。

 

 まあ、愛の力ってやつだね。宿儺様、大好きいいいいい!!

 

『それは失礼した。そうか、女か...』

 

 自分の非礼を詫びたおじ様は、顎に手を当てて少し考えた後、悪戯っ子のような顔を浮かべて口を開く。

 

『それなら、俺の倅なんてのはどうだ?一応次期当主ではあるし、顔だけなら俺の嫁に似て綺麗だぞ。顔だけなら。』

 

 おじ様ってば、ホントに僕のことを気に入ってくれてるんだな〜。おじ様の息子さん、どんな人なんだろう?気持ちは嬉しいけど、ごめんなさい!

 

 

《悲報・禪院直哉、勝手にフラれる。》

 

 

「おじ様、ごめんね。僕には両面宿儺様という、心に決めた優しい王子様がいるので!一応、彼からは情熱的なプロポーズをされちゃった身だし!エヘヘへへへへへへへ。」

 

『ブワッハッハッハ、面白い冗談だ!!』

 

え、マジだけど。」(ガチトーン)

 

『お、おう。そうか、その、すまない...』

 

「あっ、こちらこそごめんね!おじ様!ついムキになっちゃって!!」

 

 いけないいけない。宿儺様のこととなると、頭に血が昇ってしまう。これが恋の病ってやつかな?気を付けなくては!

 

「でも、宿儺様がプロポーズしてくれたのはホントだよ!あー、今でも昨日の事のように思い出す〜。」

 

『......そうか〜。』

 

 何かを諦めた顔で相槌を打つおじ様に、僕は運命の人と将来を誓い合った時の事を語り出す。

 

「宿儺様はね〜、この世界に来たばかりで、不安で泣いていた(嘘泣きだけど)僕を、優しく抱きしめてくれてぇ〜!そのまま、優しい笑顔を浮かべながらプロポーズを、

 

 

 

 

 

 

『いい加減にしろ!!!この三下があああああああああああああああああ!!!!!!!』

 

 

 

 うわっ、びっくりした!僕たちは、凄まじい怒鳴り声が聞こえてきた方を振り返る。そこには、和服を着こなした白髪のおかっぱちゃんが立っていた。

 

 彼女の端正な顔立ちは、怒りによって限界まで歪み、その額には、今にもはち切れそうな青筋が浮かんでいる。

 

 めっちゃキレてるじゃん、こわ。

 

「えーーーっと、誰?」

 

『そこのお前!!!今の言葉、もう一度言ってみろおおおおお!!!!』

 

 おかっぱちゃんは、すごい剣幕で僕に指をさす。何この子?情緒不安定すぎて怖いんだけど。

 

「えっと、両面宿儺様は、泣いてた僕を優しく抱きしめて、優しい笑顔を浮かべながら、プロポーズを...

 

 

 

 ヒカリの言葉で、突如裏梅の脳内に溢れ出した、存在しない記憶。

 

 その中で、彼女の主たる呪いの王・両面宿儺は、男泣きする脹相をその下両腕で抱き締めていた。

 

 4本の腕を持つ宿儺は、恋人を抱きしめていても、両の手が空手となる。彼は上左手で脹相の頭を優しく抑えると、上右手で丁寧に撫でていた。

 

 また、腹に口が存在する宿儺は、心肺に負担をかけずに愛の言葉を囁き続ける事ができる。

 

 腕と口が常人の倍あることは、恋愛戦においてこれ以上ない優位性となるのだ。

 

宿儺

『九相図(兄)。俺と貴様の絆は例え御厨子でも断ち切れん。その強固さは、

 

宿儺のお口

『龍隣。』

 

宿儺

『そう、龍鱗よりも硬く、そして美しい。例えこの先、

 

宿儺のお口

『反発。』

 

宿儺

『そう。互いに反発し合おうとも、俺たちの運命はまた重なる。それはさながら、』

 

宿儺のお口

『番の流星。』

 

宿儺

『そう、番の流星だ。眩く輝き、燃え落ちるその時まで、俺たちは共にあり続ける。きっとそれは、死ぬまでの暇つぶしにしては、悪くないものになるのだろうな。少なくとも、俺はそう確信している。』

 

宿儺のお口

『だから九相図(兄)。俺と結婚してくれ。』

 

 

 

『宿儺様が、言うわけないだろう!そんな戯言を!!!!』

 

「いや、ホントだってば〜。」

 

 おかっぱちゃん、事情はよく分からないけど、キレすぎじゃない?深呼吸とかしようよ、一回。

 

『はあ、はあ...宿儺様が、貴様ごときに婚姻を申し込むだと!?ふざけるのも大概にしろ!!!そんな世迷いごとを口にするとは、一体なにも.....................貴様、万か!?』

 

「いや誰よ、その女。」

 

『惚けるなああ!!!貴様のような、頭のおかしい女が、2人もいてたまるかあああ!!!!!』

 

 おかっぱちゃんがブチ切れて咆哮をあげるのと同時に、彼女の呪力が膨れ上がるのを感じる。

 

「やばっ、おじ様、真希さん、逃げて!!!」

 

 おかっぱちゃんの周囲が冷気に包まれ、彼女を起点に凄まじい量の氷が出現する。

 

 ってかそれ僕の技!パクリだパクリだ!!!!

 

「衛瑠裟(エルサ)!!」

 

 おかっぱちゃんと同じサイズの氷を出して、僕たちを貫こうと迫っていた彼女の氷塊にぶつける。

 

 ギリギリセーフ!何とか、おかっぱちゃんの攻撃を相殺しきれたみたいだ。

 

『私と同じ氷の術式だと?気色が悪い...貴様、本当に何者だ?』

 

「僕は賀茂ヒカリ。いつか、この世界のヒロインにして最強無敵のプリンセスの座と、呪いの王・両面宿儺様の愛を手に入れるものだよ!」

 

『なるほど、ただの阿呆か。』

 

 互いに冷気を纏いながら、僕とおかっぱちゃんは睨み合う。彼女も僕と同じように、氷を操って戦うスタイルなんだろう。ただ、技の威力や精度は、どう考えても向こうのほうが上。

 

 ちょっと、キツイ戦いになるかもしれない。

 

 それに、スピードがあるとはいえ接近戦主体で戦うおじ様と真希さんは、範囲攻撃持ちの彼女と相性が悪そうだ。

 

 最悪、僕の攻撃に巻き込んでしまう危険もある。となると、

 

『真希、この場を離れるぞ。』

『っ、でも』

『分からんか。今の俺たちでは、ヒカリの足手まといになる。奴が全力で戦う為には、これが最善だ。』

『...チッ。死ぬなよ、ヒカリ!!』

 

 さすがおじ様!判断が早い〜!真希さんと一緒に、無事に離脱してくれたようだ。それにしてもこのおかっぱちゃん、一体何者なんだろう?

 

 宿儺様の婚約者候補である僕への憎悪、僕と同じ宿儺様呼び、そして彼へのこだわりの強さ。

 

 あ、わかった!この子宿儺様のストーカーか。

 

 きっと思い込みが強すぎて、自分のことを宿儺様の恋人か何かと思い込んでいる、精神異常者なんだろう。

 

 うわっ、ドン引き〜。仕方ない、ここは見せてあげようか。宿儺様の未来の正妻たる、余裕ってやつを!そうすれば、彼女も諦めがつくはずだ。

 

「おかっぱちゃん、そういう一方的な思い込みは良くないと思うよ〜。いやまあ、宿儺様をお慕いする気持ちは分かるんだけどさ!あの人、ちょー強くて、カッコいいし」

 

『ちょー強くて、カッコいいだと?そんな陳腐な言葉で纏められる程、宿儺様の存在は矮小ではない!それにっ!あのお方の絶対的な力と崇高さは、貴様に言われるまでもなく知っている!!!』

 

 この人、よっぽど宿儺様の事が好きなんだな〜。まあ、男の人を見る目は確かみたいだね!

 

 ひょっとしたら、推しトークを通じて仲良くなれるかも!おじ様の時もそうだったし!!

 

『完全無欠にして、天上天下唯我独尊!己の快・不快こそが生きる指針!!それこそがあの御方だ!!』

 

「え?ちょっと待って。解釈違いなんですけど。」

 

 ハァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。これだからニワカは。天上天下唯我独尊?快・不快こそが生きる指針?

 

 宿儺様じゃなくて、別の人のこと話してる?

 

「宿儺様の最大の魅力は、誰よりも他者を思いやれる、その優しさでしょうが!なんでそれが分からないの!?

 

『貴様、ふざけているのか!?宿儺様が他者を思いやるだと?そんな事、天地が逆転しようとありえない!!!!』

 

「あり得るんですうううううう!!だってだってぇ、宿儺様は実際に、いつも僕のお話に付き合ってくれるし〜!お土産をよく差し入れてくれるし〜!一回だけだけど、お昼寝の時に添い寝してくれた事も......」

 

『やめろおおおおお!!!それ以上、宿儺様を玩ぶなあああああああああああああああああああああああ!!!!!!』

 

 どうやらおかっぱちゃんとは、一生かかっても分かり合えそうにない。

 

 自分の何よりも大切なものを、互いに否定し合っているのだ。ならば、もう...

 

「『呪い合うしかない みたいだね/ようだな 』」

 

 

 

 

 

《加茂ヒカリ vs 裏梅。》

 

《“両面宿儺“を慕うもの同士の戦いが、今ここに始まろうとしていた。》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はーーーーくしょん!!!!!

 

 おっす!!俺すっくん!!!

 

 なんだかちょっと、久しぶりな感じがするぜ!!

 

 色々あって身体を全快させた俺たちは、渋谷駅の地下へと突入していた。

 

 今いる場所は、地下3階。メカ丸くんの情報が確かなら、あと2つ下に封印された五条さん、そして夏油さんの身体を乗っ取った脳みそ野郎がいるのか。

 

 ひょっとしたら、真人の奴も一緒にいるかもしれない。

 

「真人...!」

 

 以前の戦いでは、俺たちの必殺技・黒庭拳は奴に通じなかった。今回も、厳しい戦いになるだろう。だからといって、ここで退くわけにはいかない。

 

 俺の術式の方は未だ完成していないが、今回は新技と預かりものの秘密兵器があるのだ。今回は、今回こそ...

 

 

 

「安心しろ、順平。真人は必ず俺達が祓う。」

 

 

 

 今回こそ、あの時交わした亡き友との約束を果たすんだ。

 

「.............」

『どうした、すっくん?』

 

 周囲を警戒していた俺は、感じ取る。

 

 ずっとずっと意識し続けてきた、忘れもしない澱んだ魂の形。その気配がどんどん濃くなっていくのを。

 

「来る、奴が。」

 

 

『多重魂・撥体!!!!』

 

 悠仁は素早く、その場から飛び退く。駅の壁が崩され、さっきまで俺たちがいた場所に、大口を開けた改造呪霊が飛び出してきた。

 

『よお、宿儺。また会ったな♪あの時の続きをしよう!』

 

 改造呪霊の口から這い出てきたのは、俺たちの仇敵。

 

「続きか、そうだな。」

 

 決意に満ちた表情で、俺の相棒は拳を構える。

 

「『ここからは“あの日”の続きだ!』」

 

旧友との約束を懸けた最後の呪い合いが、今ここに始まろうとしていた。

 

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