宿儺「どけ!!!俺は主人公の相棒だぞ!!!」   作:バケギツネ

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理非 -弍-

 

 

『あー、この感じ。始まったみたいだね。』

 

 渋谷駅の地下5階。

 

 そこに1人佇む羂索は、自身の頭上で大きな呪力同士がぶつかり合うのを感じ取っていた。

 

「イレギュラーな宿儺と、進化を遂げた真人。さて、どんなものが見れるかな?』

 

 五条悟を封印した獄門疆。

 

 ようやく動かせるようになったその歩く公害を拾い上げ、羂索は口を三日月型に歪める。

 

 彼は今、原作から逸れた規格外同士の戦いに思いを馳せていた。

 

 

 

 

 

 

 俺はすっくん。

 

 呪いの王・両面宿儺にして、主人公・虎杖悠仁の相棒である、2人で1人の呪術師だ。

 

『ははっ、そうこなくっちゃ!でないとへし折り甲斐がない!!来い、宿儺!お前の全てを否定して、俺はようやく“完成”するんだ!!』

 

『お前の目標なんざ、どうでもいい。』

「今はただお前を祓う!呪術師として!!」

 

 俺達が宿儺呪力モードを使えるのは、残り28秒。変身した悠仁はその時間を消費しながら突進する。

 

『うおおおおおおおお!!!』

「真人おおおおお!!!!」

 

『黒っ閃!!!!』

 

 体勢を整えた真人は、その必殺の拳でカウンターを狙ってくる。しかし悠仁は、奴の直前でさらに動きを加速させる。

 

「『黒庭脚!!!』」

 

『チィッ、』

 

 真人のカウンターを回避しつつ、その胸に鋭い蹴りを突き刺す悠仁。

 

 二重の黒い火花が散ると共に、激しい打撃音が駅の構内に響く。不意を突かれた真人の身体は大きく仰け反っていた。

 

『やってくれるっ...!』

 

 スピードとフィジカルにものを言わせた、カウンターへのカウンター。

 

 少し前にパパ黒との戦いを経験し、その動きを肌で感じた事で、悠仁の格闘センスは飛躍的に向上していた。

 

 そして相棒の打撃に合わせ、あわよくばと俺の術式を放っていたのだが、

 

「...悪い、今度は失敗した!!」

『気にすんな、切り替えてこー!』

 

 先程のように上手くはいかなかった。今はやはり、“彼”から預かった秘密兵器に頼る方がいいだろう!

 

『「うおおおお!!!」』

 

 再び加速する悠仁は、瞬時に次の攻撃へと移行していた。呪力を込めた左の拳を握りしめ、一直線に突き出す。

 

『またそれか!いい加減分かれよ、意味ねーって!!』

 

 悔しいが真人の言う通りだ。

 

 俺達の必殺技である、黒庭拳・黒庭脚。

 

 既に何発か直撃させたが、未だ奴の装甲には小さなヒビが幾つかできた程度で、決定打には到底なり得ない。

 

 だが、そんな事は承知の上だ。

 

 悠仁が突き出した左手はブラフ。狙いは打撃ではない。

 

 相棒は伸ばした左手で真人の右腕を掴むと、それに足を絡ませて腕ひしぎをかける。

 

『関節技...?今更そんなのが効くわけ.....』

 

 次の瞬間、真人の右腕がバシュッと音を立てて弾け飛ぶ。

 

『は?』

 

 遍殺即霊体となり、全身を硬い装甲で覆った真人。だが奴には、たった2箇所だけ弱点がある。

 

 それは真人が、無為転変を使うためにそのまま残した、”両手の掌“。

 

 奴が幾魂異性体を作り出している時、俺の自慢の相棒はその事実に気付いていた。

 

 

『サンキューな、幸吉!!!!!』

 

 

 京都校の友から託されていた、カプセル付きの注射器。その2本が真人の右手に深々と突き刺さっていたのだ。

 

 その結果、カプセル内に封じ込められていた三輪ちゃんの技は、奴の体内で炸裂する。

 

 その名も、

 

「『シン・陰流、簡易領域!』」

 

 大成功!

 メカ丸くんの仮説通りだ!

 

 内側から簡易領域を発生させられた真人は、術式関係なくダメージを負っている。

 

 正直、理屈はよく分からんけどな!

 

 それにしてもかなりの効き具合だ。多分、反転術式を流し込むよりも、遥かにダメージ効率がいいだろう。

 

『幸吉ぃ?誰だよ、そいつ...』

 

 真人は魂の形を弄り、右腕に負った傷を治そうとしている。だが、悠仁の追撃はその数段先をいっていた。

 

『お前らの利用した、俺の友達だ!』

 

 治りかけで装甲が柔い奴の右腕。そこを狙って、相棒は渾身の打撃を叩き込む。

 

『「黒庭脚!!!!!!」』

 

『んぐっっっっ!!!!!』

 

 簡易領域による内部破壊に、傷口へと撃ち込まれた二重の黒閃。

 

 感じるぞ!真人の魂がゴリゴリと削られていくのを!!

 

『ああ、思い出したよ。あの根暗術師か!!』

 

 しかし真人は倒れない。左肘に備わったブレードを突如伸縮させ、追撃を狙っていた悠仁の胸を刺し貫く。

 

『んぐっ!!』

「悠仁!!!」

 

 咄嗟に後退して刺し傷を最小限に抑えた悠仁の前に、右腕を取り戻した真人が肉薄していた。

 

 奴の手にドス黒い呪力が迸る。

 

『黒っ閃っっっ!!!!』

 

 異形の剛腕から放たれる、黒い火花に祝福された一撃。

 

 それをモロに食らった悠仁は、胸骨を砕かれながら吹き飛ばされ、駅の壁に大きなクレーターを作る。

 

 相棒の身体から流れ出た血液で、彼の足元には赤い水溜まりができていた。

 

 たった一撃で、頑丈な悠仁がここまでダメージを負わされるとは...!

 

「大丈夫か悠仁!?すぐに回復する!」

 

『ハァ、ハァ、悪い...助かる!』

 

 宿儺呪力モードを一時中断し、悠仁が負った傷の治癒に専念する。

 

 幸い真人もそのダメージは大きかったようで、無理に追撃をしてくる様子はない。

 

 今は俺たち同様、自身の回復に集中しているのだろう。

 

「悠仁。これでモードの残り時間は、17秒。メカ丸くんから貰ったカプセルは後2つだ。」

 

『...だな。もう2、3発黒閃喰らったら、身体が持たねえ...次で決めきる!』

 

 立ち上がった俺たちの視線の先で、宿敵はゆらりと動き出す。

 

『全くしぶといな〜、お前ら。』

 

「それはこっちのセリフだ。」

 

 簡易領域は警戒されてるだろうな。

 

 奴の魂は残り6割。だいぶ削れたが、悠仁の魂は既に2割をきっている。

 

 時間や弾数に限りがある事も考えると、長期戦は不利。一気に仕掛けるのがベストか...?

 

『まあまあ。そう焦んなよ。』

 

 俺の考えを見透かすように、奴は怪しい笑みを浮かべる。

 

『さて、ギャラリーを増やそうか。』

 

 真人がその口から吐き出したのは、奴が体内に保管していた改造呪霊達だった。

 

 その数は、実に100体以上。

 

 渋谷駅構内に満ちる空気が、一気に暗く淀んだものになったのを感じる。

 

『出血大サービスだ。コイツら全員、お前らと遊びたいってさ。』

 

 真人の中にあった、別の魂の気配が消えている。恐らく今呼び出したのが、奴のストック全部だろう。

 

 なりふり構わず、俺の力を少しでも削りに来たか。

 

『そっちは2人がかりできてるんだ。これくらいのハンデはいいだろ?』

 

 真人の操る魑魅魍魎は、渋谷駅の狭い通路を塞ぎながら、俺たちの方へと迫ってくる。

 

 だが、

 

「勘違いするなよ。ここからは、2人がかりどころじゃない。」

 

 真っ直ぐで温かい、そんな馴染み深い魂を俺が感じとるのと同時に、渋谷駅地下3階の天井が盛大に吹き飛んだ。

 

『瓦落瓦落』

『簪!!!』

 

 有象無象の改造呪霊たちに、呪力の込もった瓦礫と釘が降り注ぎ、一掃する。

 

 上を見上げれば、天井にぽっかりと空いた穴から、頼れる仲間達の姿が見えた。

 

 

「『ナイスタイミングーーー!!』」

 

 

『いえ、遅くなりました。』

『意外と平気そうじゃない。2人とも。』

 

 ナナミンに野薔薇ちゃん。

 

 決戦に駆けつけてくれた心強い救援は、真人からの殺気をものともせず、渋谷駅地下3回に降り立った。

 

『いつぞやのシチサン術師に、虎杖の同期かな?丁度いい。お前らを改造されたら、宿儺はどんな顔するかなぁ〜?』

 

『ざけんな。ナナミンと釘崎には、指一本触れさせねえ。』

 

 くだらない事をほざく真人から2人を庇うように、相棒は前に進み出る。

 

 俺も悠仁と思いは1つだ。

 

 あの日の悪夢を繰り返させるつもりはない。

 

『そうだ釘崎、これ!』

 

「今の真人は、俺の指を取り込んでるからな。きっと、それが役に立つ筈だ。」

 

 悠仁が懐に入れていた、もう一つの預かり物。それが野薔薇ちゃんへと投げ渡される。

 

『ちょっと、すっくん。これ使ったらあんたも...』

 

「そこは何とかしてくれ。野薔薇ちゃんなら、できるでしょ!多分。」

 

 その言葉で、彼女は自らに与えられた役割を察したらしい。同時にその難易度も理解して、分かりやすく顔を顰めていたが。

 

『ったく、しょうがないわね。せいぜい期待してなさい。』

 

 それでも、しっかりと無茶振りに応えてくれる辺り、流石は野薔薇ちゃんといったところだ。

 

 そのイケメン過ぎるメンタル、ちょっと俺にも分けて欲しい。

 

「よし。それじゃあナナミンは、」

 

 

『なにコソコソやってんだ?俺も仲間に入れてくれよ!!』

 

 痺れを切らした真人が此方に接近してくる。

 

『「宿儺呪力モード・改!!」』

 

 ナナミンとのアイコンタクトで意思疎通を終えた悠仁は、再発動させた強化形態でそれを迎え撃つのだった。

 

 

『黒閃っ!!!!!!!』

「『黒庭拳!!!!』」

 

 

 黒い火花を味方につけた2つの拳が激突した。

 

 技の威力、肉体強度、呪力量、体力、信念、様々な要素が絡み合い、俺と真人の激突は互角に終わる。

 

 その凄まじい衝撃は、渋谷の地下を震わせて、俺たちの足元を陥没させた。

 

「『黒庭脚!!!!!!』」

『黒閃!!!』

 

 地下4階へと落下しながら、悠仁と真人は同時に蹴りをぶつけ合う。再び黒い稲妻同士が激突し、2人は互いに蹴り飛ばされ合う。

 

『「まだまだぁ!!」』

 

『ヒヒッ、もっとぉ、もっとだぁ!!!』

 

 今の真人はその両手をも硬い装甲で固めていた。無為転変を使わずに、純粋な打撃だけで俺達を仕留めるつもりなのだろう。

 

 今の奴に、もはや弱点はない。

 

『...って、思ってんだろ?』

 

『はぁ?』

 

 奴の今の形態は、俺の打撃や反転術式を警戒し、外部からの攻撃にトコトン強い形状となっている。

 

 だが呪術とは、足し引きの世界。

 

 領域と同様、外部からの攻撃に強くなる分、内部からの攻撃に弱くなっているとしたら。

 

 

 彼女は真人にとって最大の天敵だ。

 

 

『新・共鳴り!!!』

 

 

 地下3階にいる野薔薇ちゃんの術式が、真人の身体を内部から襲った。

 

『これは、さっきの茶髪女の術式か!?』

 

『はっ、大正解!!!!』

 

 頭上から聞こえる野薔薇ちゃんの頼もしい声が聞こえてくる。

 

 美々子ちゃん、菜々子ちゃんから預かっていた俺の指を、彼女に託しておいて良かった!

 

 

 

 

 重面との戦いで黒閃を経験し、呪力の核心を掴んだ釘崎は、さらに繊細な呪力操作を身につけていた。

 

 彼女がやってのけたのは、宿儺の指を媒介にした共鳴りで、攻撃対象を真人のみに限定するという離れ技。

 

 

 

 

 共鳴りのダメージによって、真人の動きは目に見えて鈍っている。

 

『俺の中にある宿儺の指6本、それを利用されたか...』

 

『「黒庭拳!!!!」』

 

 魂を内側から揺さぶられフラついた真人の横っ面を、悠仁の拳が殴り飛ばした。

 

『虎杖の打撃は問題ない...!俺が今、最も警戒すべきは...!』

 

 真人の中で、再び野薔薇ちゃんの術式が弾けた。防ぐ術のない内部攻撃が奴を襲う。

 

『っ...!!妙な術式使いやがってぇ...!』

 

『「やらせねえ!!」』

 

 すかさず肘のブレードを伸ばして、頭上の野薔薇ちゃんを狙う真人。

 

 しかし悠仁は、仲間へと伸びる凶刃をその手で鷲掴みにしていた。

 

『「うおおおおら!!」』

 

 そのままブレードごと、真人の身体を振り回して地面へと叩きつける。

 

『新・共鳴り!!!』

 

 その間にも野薔薇ちゃんは、再び術式を発動するのだった。

 

『ああっ...!クッソ!!あの女さえ潰せばぁ...!!』

 

 奴の意識は、新たな天敵である野薔薇ちゃんに集中し始める。

 

 その瞬間を狙っていたナナミンは、俺が合図を送るよりも早く動き出していた。

 

「頼むぞ、ナナミン!!」

 

『ええ。ベストを尽くします...!』

 

 ナナミンの術式・十劃呪法。

 

 それは、対象の長さを線分した際7:3の比率となる点に、強制的に弱点を作り出すというもの。

 

『虎杖くん!すっくん!!』

 

「『ああ、見えてる!!!』」

 

 

 

 

 

 

 

 

『申し訳ない.........!過ぎたものを、背負わせてしまいました.......今回のことは全て、私の責任です...!!!』

 

 

 里桜高校の事件の際、自らの到着が遅れた事を、ナナミンは心底後悔していた。

 

 彼が俺の修行に付き合ってくれたのは、その罪滅ぼしとしての意味もあったのかもしれない。

 

 術式を使いこなそうと俺が必死に修行していた時、それに付き合ってくれるナナミンもまた、自身の術式と向き合い、限界まで突き詰めていたそうだ。

 

『今度は、私もついていきます。貴方達だけに行かせはしません...!』

 

 その結果、彼の十劃呪法は進化を遂げている。

 

 今のナナミンは、7:3の線分をとる対象範囲を自由自在に設定できるのだ。さらに副次効果として、作り出した弱点の位置を任意の相手と共有する事もできる。

 

 

 

『虎杖くん!すっくん!!』

 

「『ああ、見えてる!!!』」

 

 悠仁と俺の眼前には、真人の“身体中”に刻まれた無数の線分が広がっていた。今の奴は、全身が急所と化している。

 

 そして、さらにダメ押しだ。

 

『二人とも!頼みます!!』

 

 ナナミンは自らの呪具である鉈を、俺たちに投げ渡してくれる。

 

 彼からの思いと共に愛刀を託された俺と悠仁は、その刀身に自分達の呪力を込めていった。

 

 宿儺呪力モード・改が持つのは、残り5秒。 

 

 ここからの攻撃に全てを賭ける!!

 

『っ!?なに、企んでる!?』

 

 俺たちの動きを察知し、それに迎え撃とうとする真人だったが、

 

『よそ見すんなよ!!』

 

 野薔薇ちゃんの新・共鳴りをまともに喰らい、あえなくその体勢を崩す。

 

『ッ!ふざけやがってえええ!!!』

 

 その間に真人との距離を十分に詰めた俺たちは、弱点まみれの宿敵に対し、鉈を振り下ろす。

 

 その斬撃と7:3の線分が重なった。

 

 

 

『「黒庭斬!!!!!!!」』

 

 

 俺たちの新技は、真人の両腕を魂の輪郭ごと分断する。それと同時に、黒い火花は2度散った。

 

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