宿儺「どけ!!!俺は主人公の相棒だぞ!!!」   作:バケギツネ

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無為転変

 

 

 

 

『「黒庭斬!!!!!!!」』

 

 俺たちの新技は、真人の両腕を魂の輪郭ごと分断する。それと同時に、黒い火花は2度散った。

 

 今にも解除されそうな宿儺呪力モード・改を、歯を食いしばって堪える悠仁は、すぐさま次の一撃を狙う。

 

『ッ、領域展開....!!!』

 

 一か八か、真人は最後の切り札を切ってくる。

 

 両手を失った奴は、口内に生やした腕で掌印を組み、自身の生得領域を具現化しようとしていた。

 

 だがそのやり方は、里桜高校で一度見ている。

 

『自閉え

 

「『黒庭斬!!!!』」

 

 無数の手が重なり合った、あの不気味な空間が顔を出すよりも早く、俺たちの武器は真人の顔を掌印ごと刺し貫く。

 

 奴の賭けは不発に終わった。

 

『お前はっ、ここでっ、祓うっ!!!!』

 

『っ、まずっ....!!!』

 

 魂の崩れかけていた真人が、目の前で突如弾ける。奴は身体を複数体に分裂させ、この危機を凌ごうとしていた。

 

 だが、術式への理解を深めた今の俺ならば感知できる。真人の本体だけが持つ、黒く澱んだ魂を!!

 

「悠仁!一番左の奴だ!!」

 

『サンキュー、すっくん!!』

 

 真人の本体が逃げた先に、呪力を練り上げた悠仁が回り込む。

 

 メカ丸くんが、野薔薇ちゃんが、ナナミンが、悠仁が、そして俺が。

 

 勝てる!!

 

 繋いだ!!

 

 全員で!!

 

 ここまで!!

 

 

『「終わりだ、真人おおおお!!」』

 

 俺たちの全身全霊を乗せた斬撃は、7:3のエフェクトと二重の黒い火花と共に、真人の魂の核へと到達し、斬り裂いた。

 

『っ!!』

 

俺が感じたのは、確かな手応えと、急激に弱まっていく真人の魂。

 

『すくなああああああああ!!!!!!』

 

 戦場に断末魔を轟かせて、奴の魂は完全に消滅するのだった。

 

『はあ、はあ、はあ..』

 

 渋谷駅地下4階に静寂の刻が訪れる。

 

 力の全てを使い果たした悠仁は、肩で息をしながら、その場に倒れ込んだ。宿儺呪力モードの制限時間も終了し、相棒の身体を包んでいた鮮やかな光も消えている。

 

『お疲れ様です、2人とも。』

『ま、私らの援護も有ったんだし、当然ね。』

 

 俺たちを呼ぶ声と、駆け寄ってくる足音が近づいてきた。

 

 激戦を終えたばかりの相棒に、俺は生やした口から声をかける。

 

「やったな、悠仁。」

 

『ああ、終わったんだ。ようやく真人を祓え

 

 

 

 

領域展開・自閉円頓裹

 

 

 

 俺は突然感知した。

 

 完全に消滅した筈の真人の魂が、ひとりでに再生していく。

 

 以前よりも悍ましい形で。

 

 

 

 

『感謝するよ、宿儺。お前のおかげで、俺は完成したんだ。ようやく理解した。魂の“根源”を!!』

 

 

 すっくんがその目に焼き付けたのは、純白になった長髪と身に纏う薄汚れたローブをたなびかせて、空中に腰掛ける真人の姿だった。

 

 

 

 全ては、憎き宿敵の心を嬲り殺すため。

 

 真人は自身が取り込んだ宿儺の力を最大限に引き出し、空間を分断しない領域を展開していた。

 

 相手に逃げ道を与える、以降3か月閉じない領域を展開できなくなる、という縛りによって、その効果範囲は底上げされている。

 

 領域は、彼を中心とした半径180メートルにまで及んでいた。伏黒恵への影響が考慮されることもなく、そのサイズは原作宿儺が展開した半径140mよりも遥かに大きい。

 

 結界を閉じずに生得領域を具現化することは、キャンバスを用いずに空に絵を描くに等しい、

 

 まさに神業。

 

 それによって真人の魔の手は、どこまでも伸びていく。

 

 さらに彼は、すっくんや宿儺を警戒し、閉じない領域内の条件に変更を加えていた。

 

 原作で乙骨が見せたように、領域の必中術式の対象から、虎杖や夏油、裏梅といった一部の人間を除外したのだ。

 

 逆にいえば、領域内にいるそれ以外は、全員真人の掌の上という事。

 

『ナナミン、釘崎、これを!!』

 

 メカ丸から預かっていたカプセルを、虎杖は仲間達へと投げ渡す。

 

 その意図を即座に察知した七海と釘崎は、その中に封じ込められていた簡易領域で自らの身を守った。

 

『無駄だよ。』

 

 しかし真人の神業領域の前に、弱者の領域はいとも容易く剥がされていく。

 

『さあ、宿儺。せいぜい噛み締めろ。』

 

 

「『やめろーーーーーっ!!!!!』」

 

 最悪の事態を想起したすっくんは、必死な叫びをあげながら、釘崎と七海へ手を伸ばす。

 

 その声も、手も、届かない。

 

 2人の簡易領域は既に崩壊しきっていた。その状態で真人の術式が発動する。その腕は、数百人単位の贄に絡み付き、闇へと誘った。

 

『無為転変。』

 

 

 七海建人が、

 

 釘崎野薔薇が、

 

 渋谷駅へと向かっていた呪術師達が、

 

 家入硝子の医療テントにいた負傷者と救護者が、

 

 付近の建物内に避難していた非術師達が、

 

 改造人間へと次々に変貌していく。

 

 

 10月31日・ハロウィンの日。

 渋谷の街は怪物で溢れた。

 

 

『くぎっ、さき...?ッ、ナナミン!!』

「おい、2人とも!しっかり...」

 

 すっくんの大切な仲間達はその魂を歪められ、彼の目の前で徐々に改造されていく。

 

『虎杖、すっくん。んな顔するんじゃないわよ。』

 

 その顔の半分を醜く変色させた釘崎。自らの行く末を悟った彼女は、フラつきながらも仲間の元へと歩いていく。

 

『何があっても、アンタらは絶対生きて帰って。それで、もしもの時はみんなに伝えて。』

 

 預かっていた宿儺の指を虎杖へと手渡し、その手を強く握って、釘崎野薔薇は笑う。

 

 いつものように、豪快に。

 

『悪くなかった!』

 

 次の瞬間、その場から釘崎野薔薇は消えた。

 

 残されたのは、視線が定まらないまま金槌を振り回す、不気味な改造人間だけ。

 

 

『虎杖くん、宿儺くん。あえて、言わせてください。』

 

 釘崎と同様に身体が変容しつつある七海。顔が変形し、ゴーグルの外れた彼は、2人の目を真っ直ぐに見つめて、優しく微笑んだ。

 

 そして、呪いの言葉を残していく。

 

『あとは、頼みます。貴方達2人を、信じていますよ。』

 

 完全な改造人間へと成り果てた七海は、地に堕ちていた自身のゴーグルを踏み潰すのだった。

 

『...ああ。』

「少しだけ、待っててくれ。」

 

 2人で1人の呪術師は、七海の言葉を正面から受け止め、その拳を強く握り締める。

 

 

 

 

 

『はははははははははははははははははははははははは!!!気分はどうだ、宿儺!?』

 

「.......」

 

『俺はな。感情は全て、魂の代謝に過ぎないとそう思ってた。でも、違った!恨み、妬み、憎しみ、そういう負の感情こそが、俺たち呪霊の魂の原点!!』

 

「...............」

 

『今の俺は、お前を呪う感情そのもの!!名付けるなら、“寂滅呪縛体”ってところかなぁ!!』

 

 今の真人は、肉体を持たぬ魂だけの存在。

 

 魂への理解がない人間は、真人に触れることも、その存在を認識する事すら叶わない。

 

 逆に真人は生前と同様に、現世へと自由に干渉できる。

 

『ひひっ、ゾクゾクする!自分の才能に!!!生と死なんていう曖昧なものに、今の俺は縛れない!!俺は究極の自由を手にしたんだ!!!』

 

 寂滅呪縛体となった真人。宿儺を呪うその感情が消えない限り、その魂は永久に再生する。

 

 彼にはもはや死という概念すら無いのだ。例え五条悟でも、今の真人を殺す事はできない。

 

『ああ〜、俺って、俺こそが呪いだ!!はははははははははははははははははははは!!』

 

 静かになった駅の構内に、真人の声だけが響いていた。

 

『お前の心は、もう限界だろ?』

 

 自らの勝利を確信した彼は、その場に立ち尽くす宿敵に語りかける。

 

『どうすれば、お前の心をへし折れるか、それだけをずっと考えてきた。お前のことは、俺が一番分かってる。』

 

『お前は救おうとしたんだろ?俺たち呪いに殺される人を、1人でも多く。その為に、強くなろうとしてきたんだよなあ?ハハッ、ハハハハハッ...』

 

『その結果どうなった?お前は何を守れた?無駄だったんだよ、努力もっ!繋がりもっ!!お前がこれまで築き上げてきたこと全てがっ!!』

 

『ふふっ、俺はなぁ、宿儺。お前が憎い。憎くて憎くて、殺したくて仕方がない。それはお前も同じだろう?でもな、お前がいなければ、今の俺は無かったんだ。』

 

『お前が人を助ける為に成長すればするほど、俺はそれを殺す為に進化していく!俺をここまで育ててくれたのは、お前なんだよ!』

 

『俺の言いたい事、分かるか?シチサン術師も、あの釘女も、渋谷の有象無象も、みーーんなお前が殺したんだ。』

 

『認めろ、宿儺。お前は俺だ。』

 

 

 

 虎杖の使っていた宿儺呪力モードは、既に限界を迎えている。仮に使えたとしても、覚醒した真人の敵ではない。

 

 虎杖の仲間達も、その全てが真人の手に堕ちている。

 

 里桜高校で屈辱を味わって以来、真人がずっと待ち望んでいた瞬間が訪れ、

 

 すっくんの心は苦痛の中で死に絶える。

 

 

...そのはずだった。

 

 

『...なあ、何で、何でだよっ...!!!!!』

 

 今の真人は、より鮮明に他人の魂を、心を、感じ取ることができる。だからこそ分かってしまうのだ。

 

 すっくんの魂が、未だ眩い程の輝きを纏っているのを。

 

『何でお前の魂は、まだ折れないっ!宿儺ぁ!!!』

 

 宿敵からの問いに対し、すっくんはその答えを吐き出す。

 

「お前を必ず祓うと、順平に誓ったからだ。」

 

 自分自身に言い聞かせるように、重く、一言一言を噛み締めるように。

 

「野薔薇ちゃんが、ナナミンが、俺を信じて後を託してくれたからだ。」

 

 死に際の釘崎から託された、宿儺の指。彼女の温もりが僅かに残ったソレを、虎杖悠仁は飲み込んだ。

 

 指を初めて飲み込んだ時から、彼の理想は変わらない。ただ目の前の人を、理不尽な死から救うだけ。

 

「絶対に裏切らないと、最後まで一緒に戦うと、相棒と約束したからだ。」

 

 虎杖の顔には、一時的に相棒の紋様が浮かんでいた。

 

 指を取り込んだ影響で、堅牢な檻は僅かに緩む。失われた宿儺呪力モードが、ほんの少しだけ復活していた。

 

「この世界の呪いを解くと、自分自身に誓ったからだ!!」

 

 託された思いが、積み上げたこれまでが、百折不撓の精神が、今にも倒れそうな虎杖達の身体を支える。

 

 蝗guy戦や先程までの戦い同様に、相棒の呪力を纏った虎杖には、すっくんの術式が一時的に刻まれた。

 

「行くぞ、相棒。」

『ああ、ドンと来い!』

 

 すっくんの生得領域の中。2人で1人の呪術師は互いの拳を重ね合わせる。

 

 それと同時に、すっくんの術式が発動した。

 

 

 

『今、何をした...?』

 

 彼らの魂を観測していた真人は、真っ先に感じ取る。

 

 すっくんの術式によって、虎杖悠仁の身体に起こったとある変化を。

 

「悠仁、長い間すまなかった。ずっと、お前1人に戦わせてしまった。」

 

 宿儺呪力モードの欠点は、その短すぎる制限時間と、すっくんが100%の力を発揮できない点にある。

 

 使える技はかなり限られ、呪力総量も、“虎杖の呪力+すっくんの呪力30%”がその上限。

 

 

『いいって、それに1人じゃない。俺たちは、ずっと一緒に戦ってきたろ?』

 

 すっくんと虎杖の脳内に溢れ出したのは、確かに存在する、2人で歩んできた記憶。

 

『これからもそれは変わらない。』

 

「そうだな。」

 

 すっくんは、およそ一月ぶりにあの言葉を口にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

「HEY、悠仁。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 すっくんの術式によって、虎杖悠仁の身体構造は変化していた。今の彼は、檻としての機能を完全に停止している。

 

『後は頼む、相棒。』

 

 虎杖悠仁は自身の相棒に、体の支配権を完全に明け渡す。

 

「ああ、任せろ...!!」

 

 呪いの王・両面宿儺ことすっくんは、久方ぶりの完全顕現を果たした。

 

「野薔薇ちゃん、ナナミン、みんな。必ず、全員助けるからな。」

 

 自由を手にしたすっくんは、時間制限無しで100%の力を発揮できる。

 

 進化した真人すら目で追えないほどのスピードで、呪いの王は釘崎と七海の目前に移動していた。

 

「術式反転。」

 

 すっくんの拳は、2人の身体に優しく触れる。反転術式を会得している彼は、自身の術式効果を反転させて使用した。

 

「戻ってきてくれ、2人とも!!」

 

 すっくんの言葉に応えるように、2体の改造人間は変形を始める。

 

 釘崎野薔薇と七海建人は、まるで逆再生のように元の姿を取り戻していった。

 

「野薔薇ちゃん!!ナナミン!!」

 

 その場に倒れ込む2人をすっくんはそっと抱きかかえる。

 

 彼らは意識こそ失ってはいるものの、しっかりと呼吸をしているのが確認できた。

 

「よかった...!生きてる!生きてる!!」

 

 すっくんは、両眼からボロボロと涙を流して、胸を撫で下ろす。

 

 彼は取り戻した仲間達を、そっとその場に寝かせるのだった。

 

 

『ありえない。魂の治癒なんて、そんなの、俺以外にできるわけがっ...』

 

 一方真人は、目の前で起こったことが信じられないでいた。

 

 自身がその手で捻じ曲げたはずの、釘崎と七海の魂。それが元通りに修復されていたのだ。

 

「さあ、次だ。」

 

 すっくんは掌印を組み、自身の生得領域を具現化させていく。彼もまた、空に絵を描こうとしていた。

 

『まさかっ』

 

「領域展開!!!!!!」

 

 直前に真人が見せた神業は、すっくんにとって良い手本となっていた。

 

 彼の領域もまた、外殻を持たない事、その用途を限定する事で、効果範囲を半径300メートルにまで拡大させている。

 

「術式反転...!!!!」

 

 必中効果の対象は、渋谷全ての改造人間。すっくんの術式によって、あらゆる歪な魂は再生される。

 

 彼らは全員、後遺症無しで元の人間に戻り、生還を果たすのだった。

 

「最後はお前だ、真人。」

 

 領域が解除されたすっくんは、真人にゆっくりと近づいていく。4つの目を殺意で赤く光らせながら。

 

 そのプレッシャーに真人は、里桜高校以来、ずっと抑えていた天敵への恐怖が溢れ出す。

 

 彼の歩みは後ろへと向いていた。

 

『...なんなんだよ!宿儺ぁ!!お前は一体、なんなんだああ!?』

 

「...真人、認めるよ。」

 

 両面宿儺に転生した、少年ジャンプ愛好家。彼の魂には、術式が紐づいていてた。

 

 それが今、覚醒する。

 

「俺は、お前だ。」

 

その術式の名は...

 

 

 

 

 

       -無為転変-

 

 

 

 

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