宿儺「どけ!!!俺は主人公の相棒だぞ!!!」   作:バケギツネ

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食生活って大事だよね

 

 

 

「皆んな、本当に久しぶり!会いたかった?僕は賀茂ヒカリ!いつか、この世界のヒロインにして最強無敵のプリンセスの座と、呪いの王・両面宿儺様の愛を手に入れ...」

 

『黙れ、下郎が!』

 

 愛する宿儺様の為、渋谷で行動中だった僕は、白髪のおかっぱちゃんと対峙していた。

 

「彼女は多分、自分を宿儺様の恋人と勘違いしたストーカーで、宿儺様の未来の正妻たる僕に逆上して、いきなり襲いかかっ...うわあ!!」

 

『それ以上戯言を抜かすなぁ!その口縫い付けられたいか!?』

 

 ジャスミンよろしく絨毯に乗って空を滑る僕は、目の前に迫っていた氷塊を寸前で回避する。

 

 早くこんな娘お片付けして、宿儺様のとこに行きたいのにな〜。なんか体感4ヶ月くらい戦い通しな気がするし。

 

「衛瑠裟(エルサ)!!!」

『直瀑。』

 

 お返しとばかりに氷を放つけど、それ以上の氷結に掻き消されてしまう。彼女の鉄壁の防御に阻まれ、先程から此方の攻撃は一発も当たっていない。

 

 この娘強いな。頭のおかしいイカれストーカーの癖に。

 

 え?ブーメラン?なにそれ。

 

「なら、もう一発!衛...っ!!」

 

 再度大技を狙った僕に、鈍い痛みが走る。おかっぱちゃんの指から放たれた氷柱の弾丸が、右手を貫いていた。

 

 この作品、油断したらすぐコレだ。ディ○ニープリンセスだろうと、平気で部位欠損とかさせてきそうだから、気が抜けない。

 

 ○ッキーの名を借りてる自覚ある?もうちょっとだけ優しい世界設定でも良いと思う、僕。

 

『貴様の術式。出力こそ脅威的だが、肝心の呪力操作が粗雑過ぎるな。その程度で私に挑むとは笑わせる。』

 

 リズムを崩された僕は、次の攻撃への対処が遅れる。慌てて飛び降りた絨毯は、地面から生えた氷柱に串刺しにされていた。

 

 ま、魔法のじゅうたん〜!!!!!

 

 あれって高専(?)ってとこの備品を変身させたやつだっけ?後でごめんなさいしなきゃ。

 

『生憎、貴様とは年季が違う。』

 

 それはそうとおかっぱちゃんは、技を出す隙を与えてくれない。頭上から降り注ぐ氷塊から、ギリッギリで身体を逸らす。

 

『己が力で、私は生き抜いてきたのだ。呪術最盛の平安の世から、他ならぬ宿儺様と共にな。』

 

「え、って事は1000歳越えのババア『霜凪...!!!』

 

 冷気の波に飲み込まれる。一瞬で全身が凍りついてその場から動けなくなった。

 

『貴様如きが宿儺様に近づこうとは。身の程を知らないにも程がある。あの方の隣に立つ事を許されたのは、ただ1人。この私だ。』

 

「はいはい、貴方の中ではそうなってるんだね。あーはいはい。」

 

『どこまでも人の神経を逆撫でする奴だ...!』

 

 おかっぱちゃん、いや年増ババアから呪力の昂りを感じる。周囲の氷が、僕の身体を包んだままもろともに砕かれようとしていた。

 

 若造りババアはしたり顔で口を開いた。

 

『私の勝ちだ「衛瑠裟(エルサ)!」

 

 術式対象に選んだのは、僕を閉じ込めている周囲の氷。

 

『っ!?何をした!』

 

「雪だるま作り♪」

 

 コスプレババアの氷は、3頭身のどっかで見覚えがある式神へと姿を変える。

 

『私の氷に干渉したか!』

 

 式神たちは白髪ババアへと一斉に飛びかかった。

 

『『『ぎゅーっと、抱きしめて〜!!!!』』』

 

 ババアの反撃で彼らは全員砕けちる。

 

『『『ヒカリの為なら、溶けても...良い......よ.........』』』

 

「○ラフ1号2号3号〜!!!!」

 

『何だったんだ、其奴らは。』

 

 さて困ったな。ちょっと手詰まり気味かもしれない。

 

 氷攻撃はあらかた試したけど通じなかった。他の能力で攻めようにも、ディ○ニープリンセスに直接戦闘向きの能力持ちが少ないんだよね〜。

 

 まあ、そりゃそうなんだけど。むしろいっぱい居たら嫌だ。

 

 って、なにこの感じ!?

 

 

 

 ヒカリと裏梅の戦闘中、遠く離れた別の場所で、すっくん達と戦闘中だった真人が寂滅呪縛体へと進化する。外殻のない領域が展開され、脹相の魂はその効果対象となっていた。

 

『無為転変。』

 

 真人によってその魂の改造を施された脹相の身体は、少しずつ薄気味悪い化け物へと変わっていった。

 

「いやああああああああああ!何これ何これ何これ何これぇ!」

 

『これはっ!不敬にも宿儺様の指を取り込んだあのツギハギ呪霊のっ...!』

 

 魂を弄られて改造人間となったものは、通常自我を失ってしまう。それを知っていた裏梅は、脹相の変身を見届けると、彼に背を向けその場を去っていく。

 

『フン、私が手を下すまでもなかったか。この戦い、私の勝ち「隙ありいいいいいい!!!!」

 

『なっ!?』

 

 しかし、自我を保っていたヒカリは、改造人間の剛腕で裏梅の整った顔を殴りつけた。

 

『貴様っ、なぜ!?』

 

 真人の領域に弄られたのは、身体の主な持ち主である脹相の魂のみ。ヒカリの魂は元気ピンピンだった為、問題なく変形した身体を動かせる。

 

『この化け物がっ!!』

 

「化け物?」

 

 裏梅の言葉に反応したヒカリは、砕けた氷の破片に映る自らの姿を見つめる。そこには、変わり果てた醜い姿が写っていた。

 

「っ!これって」

 

 状況を理解したヒカリは息を呑む。

 

「僕と宿儺様は、もうすぐキスをするってこと!?きゃああああああああ!!」

 

『お前は何を言っている!?』

 

 否、彼女は何も理解できてはいなかった。

 

「いや分かるでしょ!来た!ディ○ニーの定番!王子様のキスで、元に戻る系の変身イベントだあああ!ふおおおおお!!いやぁ〜、元に戻る為だもんね〜。しょうがないよねぇ〜。あ、口臭平気かなぁ〜。ふふふふふふふふふ。」

 

 ヒカリは改造人間の姿のまま、その場でモジモジし出す。大きな口から溢れたその唾液で、足元のコンクリートはドロドロに溶けていた。

 

「ああ、知らないなら教えてあげる!ディ○ニーではね、キスっていうのは、全てを解決する無敵のお(まじな)いなの!カエルの姿に変えられていても、野獣の姿に変えられていても、呪いで眠らされていても、毒リンゴで殺されていても、何とかなります!そう、愛の篭ったキスさえあればね!!っていうか、きゅ、急に緊張してきた。だ、だだだ大丈夫!この日のために、たくさんイメトレを重ねてきたんだし!」

 

『......まるで理解できん。したいとも思わんがな。』

 

 流石の裏梅も色々ドン引きである。

 

「ってわけだから。ババアは帰ってくれる?宿儺様とのキスの為に準備したいし、2人っきりじゃないと雰囲気でないでしょ?空気読んでよ。』

 

『ふざけるなっ!宿儺様が貴様なんぞとせ、接吻を交わすなど、例え天地が厳島五常楽(いつくしまごじょうらく)を舞い踊ろうとありえない!』

 

「あり得るんです〜!だって僕と宿儺様は、運命の赤い糸で

 

 

《丁度その時、完全顕現を果たしたすっくんが領域を展開する。その効果によって脹相の姿は元に戻った。》

 

 

「.......あれ?身体が元に戻ってる!?そんなぁああああ!」

 

『なぜ残念がる。』

 

「ねえキスは!!!!????」

 

『知らん。』

 

「ちょ、違う違う違う違う!そうじゃないってばああああ!!」

 

 突如としてヒカリの脳内で砕け散った、存在しないシナリオ。脹相の身体へと戻ったヒカリは、体育座りで落ち込んでいた。

 

「そうだババア!僕の事、もう一回化け物にできたりしない?」

 

『できるか。』

 

「使えなっ!!!!!!!!!」

 

『なんなんだ貴様はっっっ!?』

 

 その時彼女らは感じ取る。遠くからでもハッキリと伝わってくる、恋人/主人の気配を。

 

「この感じ、宿儺様だ!!」

『この呪力、宿儺様か!?』

 

 口汚く罵り合っていた2人はほぼ同時に反応を示していた。

 

『貴様の相手をしている暇は無くなった。疾く死ね。』

 

 裏梅の背後には、凍てついた無数の武器が生成されていく。

 

「僕の方こそ、キミ程度に構ってる時間はないんだ。未来の正妻として、宿儺様を迎えに行かなきゃいけないからね。」

 

『まだ言うか。いいだろう、貴様には死すら生温い苦痛を与えてや

 

 突如裏梅の前に、突如ヒカリの“知らない人”が現れる。

 

『貴様はっ....』

 

 その人物に強烈な腹パンを食らった裏梅は、その身でビルの型抜きをしながら、遥か彼方までぶっ飛んでいった。

 

「え、えーーーーーっと、どちら様?」

 

 自分を手助けしてくれたその人物に、ヒカリはそう訊ねる。彼女に返ってきたのは返答ではなく、“タイプの女”を尋ねる別の質問だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おーっす!俺、すっくん!

 

 宿敵である真人との長い長い戦いが、シリアスパートが、やっと終わった〜!イエーーーーイ!

 

『すっくん、おつ!』

「おう!サンキュー悠仁。」

 

 いや〜疲れた、マジで疲れた!ずっとずっとずっとずっとずっとずーーーっと気を張ってたから、もうヘトヘトだ。真顔の期間が長すぎて、表情筋が死にそうになるし!

 

 ぶっちゃけ、今すぐこの場で横になりたいくらいだが、そうゆっくりもしてられない。

 

「よし、休憩終わり!今度はド外道脳みそ野郎をぶっ飛ばしにいくぞ!後に続け悠仁!!」

 

『大丈夫か?もっと休んでからでも、何だったら俺に替わるって手もあるし!』

 

「俺は大丈夫ブイだ!それに、美々子ちゃん、菜々子ちゃんとの約束を早いとこ果たしてやりたい。後、五条さんも助けたいし!ついでに!」

 

 久々であろう俺の生得領域内に滞在している悠仁は、手をブンブンと振ってやる気をアピールしてくれた。

 

 気持ちは嬉しいが、ここは俺に任せて貰おう。久々の完全顕現なんだし、すっくんもうちょっと活躍が欲しい!

 

 それにメロンパンの正体は悠仁のお父さんかもしれないんだ。悠仁に『親殺しいきまーーーーーす』させるのは忍びない。

 

『そうだすっくん。真人が持ってた指、今のうちに回収しとこうぜ!!』

 

「おっ、そうだな!えーーっと」

 

 意識を集中させて自分と同じ気配をサーチする。この指レーダー、何気にかなり便利な仕様だ。

 

「よし!みーーっけ!!」

 

 渋谷の街を飛び回って、真人が取り込んでいたという俺の指を全て回収!一気に6本ゲットだぜ!!

 

 やっぱ、我ながらキモいよな〜この指。

 

『どうする?とりあえず今食っとく?』

「ん〜、そうだな!」

 

 俺が自由に顕現できるようになった以上、宿儺呪力モードの制限時間を延長する意味は無くなった。ならば、今のうちに食いきって、力をつけておいた方がいいだろう。

 

 なんせこの先に待ち受けている敵は、夏油さんの身体を乗っ取った、額に縫い目のある男。恐らくは悠仁の父親で、ラスボス候補!

 

 相当の強さだろうからな!!!!

 

 そういや、同じラスボス候補の変態マコマコ野郎は、最近どうしてんだ?少年院編以来、影も形も出てこないんだけど。

 

 後、真人と組んでいたと思われる仮面の呪詛師。アイツも里桜高校以来、全然登場しないな〜。

 

 この作品の最終回、最終盤で再登場した仮面呪詛師を、暴走したマコマコ野郎が食べてラスボス化。俺たちはそれを泣きながら黒閃して終了!!

 

 みたいな感じになるのかな?

 

 まあ、ともかく!これから、厳しい戦いが待ち受けているのは間違いない!!主人公である俺たちがインフレに置いていかれない為にも、パワーアップをしておかなくては!

 

 何気に自分で食べるのは初めてだ。基本、悠仁に食って貰ってたからな〜。

 

 よし、覚悟を決めよう!!!!!

 

「...いただきます!!!!」

 

 俺は目と鼻を閉じて、キショい指を一本口に放り込む。口の中に広がるのは、腐った梅干しと銀杏を、痛んだワサビに漬け込んで、青汁と一緒にグツグツと煮込んだような、そんな味。

 

 うーーーん、斬新な味わいですね!!好きな人にはたまらないと思いま「おえええええええええ!!!!」

 

『すっくん!?大丈夫かああああ!?』

 

 飲み込んだ指を、思わず吐き出しかけてしまった。

 

「何だこれ、まずっ!!!」

 

『ああ、それな〜。その内慣れるって!ダイジョブ!』

 

「悠仁!お前一回、味覚診てもらった方が良いって!ヤバいって!!」

 

 こんなにマズイとは思っていなかった。最悪。でも強くなる為には、残さず食べなきゃ...クッ!!!

 

 呪術廻戦のコラボカフェとか出たら、絶対出てくるんだろうな〜。この指を模したナニカが。売れる?そんなの。

 

『すっくん、俺が代わりに一気ぐいしようか?』

「いや、大丈夫。もうちょい頑張ってみる。」

 

 悠仁の相棒として、こんな所で遅れをとるわけにはいかない!俺も行くぞ!!そっち側(味音痴)に!!!

 

「いただきまああああああす!!!」

 

 よし、頑張って完食するぞー!それ2本目!!

 

 うわっ、やっぱりキツ...

 

「......?」

 

『どうしたすっくん?』

 

 違和感。

 

『おいすっくん。まさか味にハマったのか...!?』

 

 それは、漠然とした違和感だった。

 

「やめとこう」

 

『え?』

 

 このまま指を取り込み続ければ、後戻りができなくなるような、そんな嫌な予感が頭の中を駆け巡る。

 

「指を取り込むのは、もう、ダメだ!上手く言えないが、何かっ、凄く嫌な感じが......」

 

 

 

 

 

【勘がいいな、もう1人の俺よ。】

 

 

 

 

 指を持っていた俺の手に、突然目と口が生える。それは、残りの指5本をあっという間に飲み込んでしまった。

 

「っ!スクナマス斬り!!!」

 

 指を飲み込んだ自らの手を咄嗟に切断する。口のついたままだった俺の右手は宙を舞い、それと一緒に指は2本だけ飛び出してくる。

 

 既に3本は悠仁の身体に吸収されていた。

 

 

【さて、どうなる?】

 

 

 俺の中から自分とよく似たナニかが迫り上がってくる。意識と身体の感覚が急速に遠のいて、闇の中へと堕ちていく。

 

『すっくんどうした!?何があった!?おい、すっくん!』

 

「悠っ、仁......!身体っ...がっ....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 仙台の高校で1本。

 

 五条悟から貰った1本。

 

 少年院で1本。

 

 里桜高校で1本。

 

 八十八橋で1本。

 

 美々子菜々子からで1本。

 

 たった今取り込んだ計4本。

 

 そして虎杖悠仁の身体に、生まれながらに宿っていた1本。

 

 計、11本。

 

 両面宿儺の力は、分水嶺を超えて溢れ出す。

 

 

 

 

 

【やはり、月明かりは直に浴びるに限る。】

 

 

 

 

 真なる呪いの王は千年の時を経て、渋谷の地に降臨していた。

 

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