宿儺「どけ!!!俺は主人公の相棒だぞ!!!」 作:バケギツネ
◇
俺、すっくん......ハッ!!!
開けた視界に映ったのは、骨骨骨骨まみれ。
「あれ、なんかデジャブだな。」
倒れていたらしい自分の身体を、どっこいしょと起き上がらせる。
「やっぱりそうだ。ここはっ、初期設定の生得領域!!」
俺が両面宿儺に転生した直後の、呪いの王初心者時代を思い出す。快適な和室にリフォームされる前の生得領域は、こんな感じの空間だったのだ。
「しっかし、やっぱ悪趣味な部屋だよな〜。何この骨、牛?恐竜?何か薄暗くてキモいし、ちょっと浸水してるし。」
状況を把握するため、時代を先取りしすぎたみたいなデザインの、その空間を散策し始める。
「実際キツいだろ、ここで生活すんの。寝る場所が水辺or硬い骨の上の二択とか、どんな罰ゲームだよ。うわっ、何か骨がばっちい!」
【おい。】
「言っちゃ悪いが作り手の審美眼を疑う!製作者は、これがカッコいいとでも思ってるのかなぁ〜?センスねぇ〜。」
【..................】
「あ、でも俺も、中学入りたての頃はこういう部屋に憧れてたっけ〜。うわっ、今思い出すとキツ
【久しいな、もう1人の俺よ。】
「あ、どうも〜!久しぶ......え?」
聞こえた俺似のイケボに釣られて、後ろを振り返る。そこには、俺とそっくりの顔があった。
「............」
とりあえず、笑顔でダブルピースをしてみる。向かいあった同じ顔は仏頂面のままだった。
なるほど、鏡じゃないようだ。
「えええええええええええええええええええええええええ!?誰ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
【騒々しい。】
衝撃的な事態に、 思わずオーバーなリアクションをとってしまった。○ンピースなら、飛び出した目玉がスクリューを描いていた事だろう。
「ど、どちら様だ!?」
俺のそっくりさんを、よーく観察してみる。確かに顔つきは俺とクリソツだが、何というかツラ構えが違う。
それに身に纏っている衣服も、格式が高そうな白い和服だった。あ、アレも初期衣装じゃん。
【よく考えろ。心当たりがあるはずだ、“転生者”である貴様ならな。】
「っ!!!!!」
まさか、目の前にいるこの男は!
「見た目はすっくんソックリだが、真逆の信念を持つアニオリ映画のボス敵・ダークすっくん!!!」
【いや、誰だソイツは。】
え、違うの?じゃあ残るはっ、
「まさかっ、本物の両面宿儺さん!?は、初めまして!えっと、いつも貴方の呪力にはお世話になっています!その、今までご挨拶できなくて、サーーッセンした!!」
まさか普通に原作宿儺さんだったとは!
この作品も65話になるというのに、全然登場しないもんだから、存在が無かったことになったのだとばっかり!!
「え、えっと、とりあえず握手しましょうか!あ、でもちょっと待ってください!今手汚れてるんで、ちょっと足元の水で濯いでから
【要らん。】
「あ、そうっすか!...えっと、良いお部屋ですね!」
【“悪趣味な部屋”の間違いではないのか?】
「え!?あ、ま、まさかぁ!カッコいいと思ってますよぉ!エヘヘヘヘ!」
【............】
「.........えーっと、天気良いっすね。」
【貴様とは、こんな無駄話をしにきたわけではない。】
モノホン宿儺さんはひとっ飛びで、よく分かんない骨のテッペンに着地していた。
【ただ一言、礼を言いにきただけだ。貴様のおかげで、随分と多くの気付きがあった。】
「あ、はあ。お役に立てたなら良かったです。って言うか、今はどう言う状況なんでしょうか?俺は確か......」
そう。真人が取り込んでいた指を拾い食いしてから、なんか身体がおかしくなったのだ。
急に気分が悪くなって.......
宿儺さんの指で食中毒に当たった?まあ、あんな見るからにって見た目だし、仮にそうでも驚かないが。
いや、そんな感じじゃない。それにその後、勝手に生えてきた手が指をいきなり喰らってしまったのだ。
恐らくそんな事ができるのは、目の前にいる本家宿儺さんだけ。
そうなると今のこの状況は...
【貴様から身体の主導権を奪ったのだ。】
「...どうしてこのタイミングで?」
【転生が起こってから今まで、俺の魂は貴様の魂に封じ込められていた。しかし、取り込まれた指が十を超え、その均衡が崩れたと言うわけだ。】
無為転変を応用した感知で相手の魂を推し量る。どうやら彼の言う通り、俺とシン宿儺の力関係は完全に逆転しているらしい。
「悠仁は、俺の相棒は何処ですか?」
【ああ、お前がやたらと気に入っているあの小僧か。ほら、彼処だ。】
宿儺の指差した方に、これまた厨二デザインの巨大な檻が出現する。その中には、意識を失ったまま十字架に架けられる、相棒の姿があった。
「悠仁!!!!!!」
【耳障りだったのでな。口を閉じて貰った。】
「っ!!!!」
その場で跳躍した俺は、頭上で踏ん反り返る宿儺に向かって拳を振り上げる。
「ブラックサンダースクナックル!!!」
【黒閃。】
ぶつかり合った互いの拳からは、黒い火花がバチバチと散っていた。
【これも、貴様が与えてくれた気付きの1つだ。黒閃を確定させる絡繰、確かに学ばせて貰った。】
「絡繰?そんなんあんのか!?」
【貴様はどこまでも感覚派なのだな。まあ、その”正体“を考えれば、そのセンスにも合点はいくが。】
「正体?何の話だ!!」
続いて放った黒閃キックも、同じ技によって相殺されてしまう。俺たちは互いに跳ね飛ばされ、その下の水辺へと着地していた。
【良い機会だ。貴様が無意識にやっていた事を言語化してやろう。】
警戒する俺にゆっくりと歩み寄りながら、呪いの王は青空授業を始める。
【黒閃に必要とされるもの。大きく分ければ、それは呪力操作と空間だ。特に難儀なのが2つ目の”空間“でな。気温や湿度にすら影響される故、黒閃は狙って繰り出せん。本来ならな。】
宿儺の右手に、俺と全く同じ質感の呪力が収束していく。それはグローブのように奴の拳を包み込んでいた。
【その不可能を可能にするのが、この技術だ。予め纏わせた呪力で、拳の周りにだけ黒閃に最適な環境を形成する。お前の真の才能は、”空間“に干渉する力なのだ。】
気付けば宿儺の声は、背後から聞こえて来る。
【改めて礼を言うぞ、実に良い見本をくれた。】
「っ!!!!」
痛烈な打撃を食らった俺は、その勢いのまま水切り石のように地面を転がり、巨大な骨へと叩きつけられた。
【そしてもう1つ。貴様のお陰で、俺の御厨子も進化を遂げている。】
再び俺に近づきながら、呪いの王は掌印を組む。
【貴様がかつて、五条悟を相手に一度だけ成功した術だ。対象を、存在する”空間ごと斬り裂く斬撃“。発動条件はこの掌印だけで事足りる。貴様らのセンスに合わせ、こう名付けよう。】
スクナマス斬りとは文字通り次元の違う斬撃が、格子状に連なって俺へと迫り来る。回避も防御も不可能だった。
【次元断。】
◇
【さて、目が覚めたか?】
気が付けば俺は悠仁の隣で、彼と同じように磔にされていた。
「悠仁!クッソ、何だこれ!!」
必死にもがくが、手に付き刺さった杭は外れる様子はない。
【無駄だ。貴様が
奴の言う通り、悠仁の身体は俺と悠仁自身の魂を縛り付ける、強固な檻へと姿を変えていた。宿儺呪力モード時代よりも遥かに厳重なその拘束は、力づくではどうやっても突破できそうに無い。
「そうだ!起きろ悠仁!!お前が“Hey 悠仁”って言えば、もしかしたら」
【それも無意味だ。その縛りは貴様と小僧が結んだもの。俺には効果が無い。“転生者”と“転生先の人間”は、別人として扱われるようだな。】
現状は八方塞がりだった。
今の俺は、性格の悪さを顔いっぱいに貼り付ける宿儺を、檻越しに睨みつける事しかできない。
【安心しろ。刻が来れば貴様だけは解放してやる。俺の主菜としてな。だがその前に、久方ぶりの自由を心ゆくまで楽しむとしよう。】
ガチ宿儺の顔に浮かんだ邪悪な笑みを見て、俺は確信する。コイツは改心も光堕ちもしない、生まれながらの悪なんだと。
「やめろ!何をする気だ!?」
【そうだなぁ。手当たり次第に女を喰ってみるか。子供なら尚良い。】
「っ!?」
宿儺のニマついた顔と言葉で、俺は確信する。
女を手当たり次第に喰う(意味深)。子供なら尚良い(意味深)。
呪いの王・両面宿儺は、少年誌に載せられないレベルの、えげつないないロリコン変態野郎だと。
【奴らは美味で良い。肉つきが柔らかく、瑞々しいからな。】
「おまっ、何て事を....!!!」
コンプライアンス上非常に宜しくない性癖を、突然語り出した
マズイ、マズイぞ!
このまま奴を野放しにしたら、この作品のジャンルが変わってしまう!!
【裏梅も、渋谷に来ているのだったか?丁度いい。(素材を保存する為に)奴にも声をかけるか。】
「もう1人にも声をかける?まさか、3人でする気か!?」
【? 何を言っているかは分からんが、貴様はそこで指を咥えて見ていると良い。】
「馬鹿野郎!人に3Pなんてもの見せつけんじゃねえ!!!」
【3P?誰がいつ、そんな低俗な話をした。】
「お前だよ!て言うかお前、3Pの意味、ちゃんと分かってんじゃねえか!」
【......虎杖悠仁の記憶だろう。】
「嘘をつけ!嘘を!!!!」
そういえば原作の第一話でも、無意味に上着を破り捨てて、上半身を露出させていた!きっとあれも、両面宿儺ど変態説の伏線だったのだろう!
恐るべし、芥◯下々!!!!
恐るべし、呪いの王....!!!!