幼少期
水星は、周辺の有人惑星の人々には「とても危険な星だ」と認知されている。
例えば、水星周辺には、強力な磁場が発生している。この磁場は、人の体を蝕み、崩壊させてしまうのだという。
他にも、地球の1/3程の弱い重力や、大きい昼夜の気温差により、そこには人類は存在しないものとされていた。
しかし、そこには小さいが最低限発展している集落があった。
その集落は、惑星間戦争などの被害を受けた人々が水星へ逃げてきた時に最終的に流れ着く終着点なのだ。
そこに2人...ヴァナディース事変から親子が流れ着いた。
彼女らはの名は、「エルノラ」こと「プロスペラ・マーキュリー」(ガンダムルブリスの主要パイロットだったため、名前を伏せている)と、プロスペラの娘、「エリクト・マーキュリー」だ。
水星に着陸する際に、2人はピンクと白の目立ったガンダム、「ガンダムルブリス」から降りてきたので、水星の人々はそれを恐ろしく思い、彼女らに深く関わらないようにしていた。
しかし数年後、そこに好奇心から近づいてきた少年がいた...
彼の名は「ケミスト」。
どうやら地球で研究所の所長をしていた男性の息子らしい。
ケミスト自身、生まれたのは水星だ。なので、水星の環境や生命維持のための機器の使い方はある程度知っている。
彼の父親は、小規模ではあるが研究所を水星に建て、水星の資源を利用し、住み良い土地にしていこうとしているらしい。
その影響か、幼いながらも科学を全網羅している天才だ。
まあ、社会性には欠けるらしいが。
プロスペラは、ケミストのことを歓迎した。それと同時に、エリクトのリプリチャイルドである「スレッタ・マーキュリー」とも親交を深めた。
父親が研究で忙しいケミストにとって、プロスペラとスレッタは家族同然だった。
しかし、時が経つにつれプロスペラは父親の作った水星開発研究所に勤務するようになり、スレッタとケミスト2人きりで過ごすことが増えた。
「スレッター、今日からお母さん会えなくなる日が多くなっちゃうかもしれないわ。」
「えー?そんなぁ...」
「大丈夫、なるべく帰ってくるようにするわ。」
「...うん、わかった!お仕事頑張ってね、お母さん!」
こうしてプロスペラとスレッタは、接触する機会がズンと減ってしまった。
「こんにちはー、あれ、プロスペラさんは?」
「今日からお仕事増えちゃうんだって...」
「そんなぁ...ちょっと退屈になっちゃうね」
「そうだね...」
普段、プロスペラから文字や数字を教えて貰っていた2人にとって、彼女のいない時間は、「授業中に先生が居らず、なおかつ遊ぶことも出来ない」こととおなじだ。
「じゃあ、エアリアルのところに行こう!」
「エアリアル...?」
「私の家族を紹介するよ」
2人は、家の奥の地下階段から格納庫に向かった。
そこには、エリクトの精神をモビルスーツに移した「エアリアル」が居た。
「なんだ、これ...」
「これが、私の家族、エアリアルだよ」
「エアリアル...」
「エアリアル、入ってもいい?」
スレッタが声をかけると、どこかから、スレッタそっくりの声で
「隣の男の子は誰?」
と聞こえた。
「私の友達だよ、悪いことしたりしないから大丈夫」
それに応じるように、コックピットが開いた。
「ありがとう、エアリアル」
2人は、エアリアルのコックピットに、作業用足場を使って入った。
「エアリアル、ゲーム出して」
コックピットからモニターに情報が送られる。
ゲームが起動した。
「ケミスト、交代でゲームしよう」
「わ、わかった」
初めて他人の家に上がったように緊張した声で、ケミストは答えた。
(なんだか、スレッタ特有の日干し布団みたいな匂いがするな...)
「ちょっと気持ち悪いよ...」
ケミストの脳内にエリクトから直接声が送られる。
(スンマセン...)
ケミストは気を取り直して、モニターに目を向けた。