父親が研究所に住み込みで勤務するようになったケミストは、スレッタの家で一緒に生活することにした。
そちらの方がさみしくないし、何より小さい時から仲がいい幼なじみだからだ。
しかし、とうとうスレッタもケミストも思春期に突入した。
家中に気まずい雰囲気が流れる。
13歳になった彼らは、それまでは同じ部屋、同じベッドで眠っていたが、「よくよく考えたら...」というようにして距離が空くようになってしまい、今では別の部屋で過ごすようになった。
「あ、あの、スレッタ」
「は、はい」
「僕たち、ずっと水星で暮らすのかな」
「...わかんない...です」
「そう...だよね...」
「...」
「が、学校行ってみたくない?」
「学校ですか?出来ればいきたいですけど...お金がかかりますし...」
「『アスティカシア高等専門学校』っていうところは」
「...?」
「企業に推薦してもらえば、入学できる」
「そそ、そうなんですか!?」
「これはプロスペラさんが言ってたことだから、間違っては無いと思うよ」
「お、お母さんに聞いてみましょう!」
「そうだね」
...アスティカシア高等専門学校...
フロント73区に建造された、教育機関 兼 企業実習場。
そこに存在するベネリットグループの企業は子供を推薦し、生徒として入学させることが可能。
地球は迫害を受けているので、学校内でも地球出身の生徒はいじめを受けるなどされている。
そこに、地球人...アーシアンの息子であるケミストが入学するなど、自殺行為に近い...しかし、ケミストは「スレッタのためなら、別にいい」と考えているらしい...
次のプロスペラの休みに、2人は学校について聞いてみることにした。
「お母さん、アスティカシア高等専門学校って、なに?」
「僕たち、学校に行きたいんだ」
「あら、そんな言葉、どこで聞いたの?」
「あなたが僕のお父さんと喋ってる時に聞こえたんです」
「そう...実はね...」
「あなたのお父さんの研究所、【スイセー環境研究社】は、ベネリットグループのうちの一つなの」
「えっ!?うそ!」
「お父さん、やるな...」
「だから、推薦しようと思えば推薦できるわ」
「本当?じゃあ、学校に...」
「ただし」やや食い気味に言う。
「...」
「...ゴクリ」
「まだ入学できる年齢じゃないのよー、ごめんね」
「じゃあ、いつになったら入学できるの?」
プロスペラは、手で1と6を作って、「16よ」と言った。
「じゃあ、あと3年だね」
「そう、3年待てばいいの。だからおとなしくすごしてなさい」
はーい、と二人は答えた。
2人は今、希望に満ち溢れていた。
しかし、今のこの不安定な胸の高鳴りを...今まで一緒に過ごしてきた仲だったはずなのに、なぜ、瞳を見ることができなくなったのかを...
彼らはこの状態を理解するのに、そう時間はかからなかった。