一話目は20時5分
二話目は20時15分となります
最終話なのにプロローグとはこれいかに?
僕にはお母さんとお兄ちゃんとお姉ちゃんがいます。
あとおじさんともう一人のお母さん、あとシッターのお母さんもいます。
お母さんはお仕事してるときはお姉ちゃんで、アイドルをしています。お歌と踊りがとっても上手です。テレビやご本でもよく見ます。僕たちはそんなお母さんのことが大好きです。
お兄ちゃんとお姉ちゃんと僕は三つ子だけど、僕が最後に生まれたから弟らしい。お兄ちゃんになれないの? と、少し前に僕たちが生まれる時に担当したお医者さんが会いに来てくれた時に聞いたけど、順番だからしょうがないと教えてくれた。
お兄ちゃんやお姉ちゃんは何でもできます。
お母さんの歌を見ながらの踊りとか二人はすごくお上手です。
お話もお勉強も遊びもなんでもできます。
なんでもできてうらやましいなーと思ったりもします。
でも、演技だけは僕のほうがうまい…………と思う。おひげの監督さんもそういってました。
台本に掛かれている通り、現場でいわれた通りにやっているだけだから、なんでできないのか僕にはわからなかった。
お姉ちゃんの演技は見たことないけど、お兄ちゃんの演技もいい感じだとおもいました。
でもおひげの監督曰く
「早熟は頭がいいから監督や現場の意図を汲んで演技をしている。あの年でそれができるだけでもすごいことだ。でもお前は違う。台本の行間を読み、演じるキャラクターになりきり、現場の視線や空気を読んでこのキャラクターならきっとこんな行動するってのを、監督や演出の考え以上に魅せてくれる。そして目立ってほしいときはアイ譲りのオーラで引きつけ、目立ってほしくないときはまるで霞みたいに周りに溶け込んでしまう」
そんなことを言ってました。何を言っているかはわからなかったけど、最後の言葉。
「まさしく天才でアイの息子だ」
すごくうれしかった。
だから僕は演技の世界にいたいとおもう。
でも今日はお休みの日。
なんたってお母さんがドームでライブをする日なのだ。お兄ちゃんもお姉ちゃんもすごくうれしそうにうずうずしてる。おじさんともう一人のお母さんは先にドームにいって準備をしているらしい。
僕たちも朝ごはんを食べ、着替えて待っています。お姉ちゃんは楽しみすぎて寝れなかったといって着替えたあとにベットでねむっている。お兄ちゃんは逆に待ちきれないのか、まだ時間じゃないのに玄関近くで鞄を抱えて座っているみたい。僕はソファーで来週のお仕事の台本を読んでいます。もう一人のお母さんが漢字に読み仮名をふってくれたから、なんとか一人でもよめる。僕が書くとミミズがのたうったような字になって僕でも読めなくなる。だから早く字がうまくなりたいし、漢字が読めるようになりたい。
そしてお母さんも着替えをして準備がおわった時、ピンポーンと玄関の呼び鈴がなりました。
「社長たちかな」
お母さんが玄関に向かおうとすると、お兄ちゃんが珍しく大きな声で叫んでいます。
「アイだめだ!」
「え?」
「社長たちは先にドームに行ってるっていってた。社長たちなわけない!」
「んー。でも誰かきたよ? アクア」
お兄ちゃんは頭がいいから何か気になるのかもしれない。お母さんに大声をあげるなんてはじめてかもしれない。でも、なんでお兄ちゃんがそんなことをしているのかわからない。
「じゃあ、せめてロックをして覗き穴から確認して」
「もー心配しょうだなーアクアは」
お兄ちゃんが一生懸命に言ってることに、お母さんも何か感じたのかもしれない。がちゃんとUの字のロックをして覗き窓から確認する。そして何もなかったようにロックを解除して扉をあけてしまう。
「なっ」
お兄ちゃんが飛び出す…………と、そこにはシッターのお母さんがいた。
「三田さん。来てくれてありがと」
「いえいえ。アイさんもステージでお忙しいでしょうし、ミヤコさんも裏方でお忙しいでしょうから。それにちゃんとお仕事として依頼されてますから、大丈夫ですよ」
「え?」
お兄ちゃんはシッターのお母さんに抱き着くような形で受け止められると、お母さんとシッターのお母さんがお話をしている。今日はライブにいっしょに行くと聞いてるから、きっと僕たちが観客席にいるとき、シッターのお母さんが一緒にいてくれるようにおじさんかお母さんが頼んでくれたのかもしれない。
「ドームライブそんなに楽しみですか?」
「う……うん」
シッターのお母さんに聞かれ、お兄ちゃんもなんかおかしな感じで答えている。今日は朝からおかしかったのは、お姉ちゃんみたいに楽しみすぎて眠れなかったからなのかもしれない。
そんな風に話をしていると時間になったので、みんなで外に向かい呼ばれていたタクシーに乗りこむ。
今日はきっとすごくいい日になる。
だってお母さんのドームライブだ。きっと凄いお歌と踊りを見せてくれる特別な日だ。僕はそんな風におもいながらドームに向かう道の景色を眺めているのだった。