見せてもらいましょう、借り物の体でどこまで飛べるか   作:てぬてぬ@TSF

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105.数多の駆け引き

交流会とはまた別の日。シオンはやや緊張した面持ちで、既に通い慣れ始めたレッドガンの拠点へと降り立った。目的はG4ヴォルタのリハビリを手伝うこと。五花海の怪しげな誘いに乗った形になる。

 

「さぁて、何が出てくるやら・・・・・・」

 

単独で判断してはいけないと思ったシオンは、通信メッセージ越しにミドル・フラットウェルへ裁可を仰いだ。果たして誘いに乗ってもいいものか、否か。帥淑にとっても悩ましい提案だったようで、暫しの時間の後返答が来た。

 

『・・・・・・罠の可能性は極めて低いだろう。だが、断言は出来ん。何かしらの策略を仕掛けてきている可能性はあるな』

 

『ですよねぇ・・・・・・。そもそもG4のリハビリに付き合う義理は無い。でもまぁ、俺としちゃ鍛錬代わりに手伝ってもいい気はしてるんですよ。せっかくの同盟だ、固められる所は固めるべきじゃないかなって』

 

『それも道理ではあるか。ならば、責任は全て私が負おう。シオン、お前自身が好きに選択するといい』

 

結果として、シオンは単独レッドガンの拠点に赴いている。他に誰も連れてきていないのは、シオンなりに敵意や裏が無いのをアピールしているつもりだった。

 

「よく来てくれた、シオン。こっちだ、ついてきてくれ」

 

「どうも、レッドさん。世話になります」

 

G6レッドに出迎えられ軽く頭を下げる。彼はあまり交流会に参加してはいないが、それでも拠点を訪れる度に会話を交わす程度には親交があった。実直な好青年だとシオンは思っている。他のレッドガンの番号持ちは曲者揃いな為、レッドが一番とっつきやすかった。

 

「それで、G4ヴォルタさんのリハビリって話ですけど・・・・・・俺が出来ることなんて、シミュレーターで相手するくらいですよ?役に立つかどうか」

 

「そこは五花海せんぱ、G3が色々と考えているみたいだ。ただ、G5はかなり反対していて・・・・・・一悶着あったけど納得はしてくれている」

 

「あー・・・・・・まぁ、イグアスさんは気難しいからな」

 

レッドの言葉に苦笑を浮かべるシオン。彼もイグアスの性格は承知していた。そして、その強さも。未だに1vs1では敵わない実力者である。そのまま二人は気安く言葉を交わしつつ、やがて交流会で使っているシミュレーター室とは別の場所に到着した。

 

「ここだ。G6、レッドです!来客をお連れしました!」

 

「おや、早かったですね。どうぞ入ってください」

 

扉の前でレッドが告げると、先日通信越しに聞いた声が返ってくる。G3五花海のものだ。相も変わらず胡散臭さが滲む口調に、シオンは片眉を上げる。彼は何を企んでいるのだろうか。レッドに続いて部屋の中に入っていくと、予想通りの妖しげな笑みに出迎えられた。

 

「ようこそおいで下さいました。歓迎しますよ、ルビコンの天使」

 

「どうも、五花海さん。というかその呼び方やめてくれ、背筋痒くなるんで」

 

「ははは、これは失礼。しかし歓迎しているのは本当です。今回はよろしくお願いしますね、シオン」

 

恭しく一礼をする五花海に露骨に顔をしかめるシオン。わざとらしさを前面に押し出しているのは、それこそわざとだろう。彼から目を背け部屋の中を見回すと、シミュレーター用の機材が整然と並んでいる。無駄な丁度品や装飾も無い無骨な雰囲気だ。

 

そこにいたのは4人。出迎えた五花海に、見慣れた顔のイグアス。既にシミュレーターに乗り込んでいる大柄な男。そしてもう一人は、

 

「君がシオンか。汚染市街以来となるな。私はG2ナイル。あの時は助けられた」

 

レッドガンの副長、ナイル。かつて敵として相まみえ、奇妙な因果で共闘を演じた相手がそこに立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

シオンがレッドガンを訪れたのと同時刻。レッドガンを率いる総長、G1ミシガンは秘匿回線を用いてとある人物に連絡を取っていた。相手はかつてのヴェスパーの二番手。実質的にヴェスパー部隊を率いていたかつてのV.Ⅱ、スネイルだ。

 

『この居場所を突き止めるとは。レッドガンの諜報網を侮ってたようです』

 

「世辞は必要無い。無駄な前置きもな。要件を告げよう」

 

簡潔な物言いのミシガンは、通信越しに聞こえてくる幼げで甘い声にも反応を示さない。ナイルの調査報告により事情は把握していた。V.Ⅱスネイルはフロイトに連れ去られた後、趣味の悪い少女の義体に換装させられたと。

 

ミシガンは相手の人柄で油断するような人間ではない。とはいえ、スネイルと言葉を交わすのは対アイスワーム時の共闘以来だ。あの時のスネイルはミシガンの指揮下に甘んじていたが、今は違う。互いに何を思っているのか、少なくとも声の気配からは読み取ることは出来なかった。

 

「レッドガンに降れ、V.Ⅱ。既にアーキバス残党の降伏は受け入れている。来る戦いでの共闘を確約するならば、誰も罰さん」

 

『随分と上からの物言いだ。まぁ、それはいいでしょう。せっかくの提案ですが、お断りです。レッドガンに頭を下げるつもりは毛頭ありません』

 

「状況を理解した上での言葉だな?であれば、そちらの拠点を叩き潰す他あるまい」

 

脅しにも似たミシガンの言葉に、スネイルは平静とした様子を崩さない。当然予測出来る行動だからだ。

 

『無論、想定しています。ですがそうなればフロイトが出る。勝てずとも、多大な損耗を負わせることは可能でしょう。決戦を前に、それは本意ではないのでは?』

 

どのような大戦力で押し寄せようとも、フロイトならば撃退出来る。尊大な信頼を隠しつつ、少女の義体に押し込められた男は駆け引きを挑んだ。相手は熟練の古豪、ミシガン。戦場以外でなくとも難敵には変わりない。

 

「必要ならばやるだけだ。貴様らを放置は出来ん。是か非か。選択肢はこれのみだ」

 

『それは実に残念なことだ、G1。我々は降りません。折角の出撃の機会です、存分に暴れ回ってもらいましょう。今のフロイトは戦場に餓えていますからね』

 

「・・・・・・成程。遊び相手を求めているわけか。貴様の苦労も透けて見える」

 

自信を滲ませる幼い声に、ミシガンは見透かしたように呟く。意図して通信の音声に乗せたそれは当然スネイルの元に届いた。挑発しているのか、揺さぶりをかけているのか。腹立つ内心を抑えつつ、静かに告げる。

 

『残念ですが、この話はご破算です。次にまみえるは戦場ということになる。貴方自身が前線で指揮を執ってくれるのを願っていますよ』

 

「そうか、残念だ」

 

通信が切断され、ミシガンは軽く息を吐く。この結果はある程度予想が付いていた。フロイトというルビコンでも屈指の個の戦力。それを盾に交渉を有利に進めようとしてくる、と。

 

言葉ではあぁ言ったが、スネイル達が潜む拠点を叩くのはリスクが高い。フロイトの存在もそうだが、防衛設備や陣地構築の内情はまだ掴めていないのだ。その上で叩き潰すという選択肢を取るには、状況がややこしくなっている。

 

現在のルビコンには曲がりなりにも平和が訪れていた。今までの武断的対処に頼るのにも限界はある。更に、レッドガンは精強と言えど数は少ない。解放戦線の戦力と比べて1割にも満たないだろう。

 

更には降伏したアーキバス残党の存在。ここで元上司であるスネイルとフロイトを討てば、道理や理屈とは関係無く動揺が走る可能性がある。総じてレッドガンの身動きを取り辛い条件が揃っていた。

 

が、身動きを取り辛いのはあちらも同じだ。攻勢に出るのは論外として、このルビコンにおいてスネイル達に協力する者は殆どいない。こちらへ再交渉を図るか、星外へ連絡を取るか、レッドガン以外の勢力と独自の密約を結ぶか。監視を強め、見極めなければならなかった。

 

あるいは。イグアスの提案によって引き込んだ例の殺し屋を使うという手もある。いや、相手がフロイトでは難しい。であれば・・・・・・。思考を止める事無く、ミシガンは立ち上がる。ひとまず要件は済んだ。備えは怠らないまま、今出来ることをやるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおぉぉっ!?」

 

圧倒的な迎撃の弾幕に晒され、シオンの駆るトラルテクトリは思わず距離を取った。相対しているのはG4ヴォルタのキャノンヘッド。重装甲高火力のタンク型ACだ。シオンにとっては経験の少ないタイプの相手である。

 

『へっ、どうしたよ・・・・・・!噂も当てにならねえな、こんなもんか!?』

 

キャノンヘッドの動きは鈍重だ。タンク型だからという以前に、ヴォルタの操縦技量が追い付いていない。故に彼は迎撃だけに注力している。愛機の持つ火力を、射程内に入った敵に叩きつける。それがリハビリを続ける中で得た答えだ。

 

「これでリハビリ中ってマジかよ・・・・・・!レッドガンは化け物揃いだなぁ、おい!」

 

悪態のように誉め言葉を吐きつつ、シオンは状況打開の策を練る。彼の戦術は単純だ。銃火器でスタッガーに追い込み、チェーンソーを直撃させる。しかしそれは、ヴォルタの間合いに踏み込むということだ。

 

火力差を押し付ける今のヴォルタの戦い方は、シオンにとって最悪の相性である。レッドガンの番号付きには近接兵装を装備したACは現状存在しない。総長ミシガンのライガーテイルが炸裂弾投射器を装備しているが、あれは厳密には近接兵装ではなかった。

 

これこそがシオンの呼ばれた理由である。キャノンヘッドに対してトラルテクトリは御しやすい相手だが、一度チェーンソーを喰らえば全てがひっくり返されてしまう。内輪では積めない経験をヴォルタに積ませる。リハビリとしても丁度いい手法だ。

 

「おやおや。思っているよりもヴォルタが好調ですね。相性差もありますが、新たな相手に高揚しているのでしょう」

 

「言ってることと内心が合ってねえんだよ。相変わらず気色悪ぃな」

 

だが。五花海の狙いはもう一つあった。シオンを観察し、分析し、丸裸にする。相手を深く知らなければ、ここぞという時に利用するのも難しい。あるいは詐欺にかけることも。それを肌で感じているのか、横に立つイグアスは露骨に顔をしかめているようだ。

 

「お得意の詐欺だのなんだの、好きにやりゃいいがよ。迷惑だけはかけるんじゃねえぞ」

 

「ほう。それは貴方にですか?それともまさか、あの幼い少女に?」

 

「レッドガンに、だ。よかれでやってご破算になったとしても、巻き込まずてめえ一人で堕ちやがれ」

 

横目でにらんでくるイグアスに、五花海はにっこりと微笑む。いつも通りの態度のまま、囁くように言い放った。

 

「これは嬉しい評価だ。レッドガンの為だと理解しているんですねぇ。存外、以前よりも洞察力が磨かれている」

 

「舐めた口利くんじゃねえ。それとも一戦やるか?ぶっ潰してやるよ」

 

「遠慮しておきましょう。今日の主役はあくまでG4ヴォルタ。そしてかのルビコンの天使。私達が出る幕はありませんよ」

 

「・・・・・・いや、この後俺らもヴォルタとやり合うだろうが」

 

二人が会話している間にも戦局は動いていく。どっしりと構えているヴォルタに、距離を取り機を伺っていたシオンが踏み込む。互いの武装が火を吹き、再度の交戦が始まった。




キャノンヘッド、頭部パーツ以外はガチタンのお手本なんですよね。やっぱ装甲の分厚さと火力は正義。兄貴が言ってたから間違いねえよ、ガハハ!
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