見せてもらいましょう、借り物の体でどこまで飛べるか   作:てぬてぬ@TSF

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109.開幕と乱入

『今から始まるのは、解放戦線とレッドガン、そしてハンドラー・ウォルター達が協同する作戦のブリーフィングだ。用意はいいね、シオン』

 

「あぁ。情報や作戦は頭に叩き込んでる。最後の顔合わせって奴だな」

 

トラルテクトリのコックピット内。オペレーターを努めるアーシルの言葉を聞きながら、シオンは両手首を軽くほぐしていた。緊張はしているが過剰ではない。ゆったりと息を吐き、ブリーフィング用の回線に繋ぐ。

 

『全員揃ったようだな。今作戦の総指揮を努めるミドル・フラットウェルだ。では、作戦の概要を説明する』

 

淀み無い口調で説明し始めたのは、シオンの上司でもあるミドル・フラットウェル。作戦を立案したのは彼とG1ミシガンであり、その内容は緻密かつ正確なものだ。

 

計7機のACでグリッド018を包囲するように接近。同時多発的に襲撃を開始する。シオン、ラスティ、621は単独で。イグアスとレッド、チャティとシャルトルーズはコンビを組んで突入する手筈になっていた。

 

単独の三者は戦力の密度が薄い代わりに広大な範囲の地域を。コンビを組む側は戦力の集中が見られる地域を担当する。ドーザーの戦力配置がここまで筒抜けなのは、エア及びブランチメンバーの情報収集能力に寄る所が大きい。

 

しかし。それでも尚、敵を纏め上げているリーダー的存在の詳細は不明なままだ。ベアトリーチェと名乗るドーザーは、ウォッチポイント・アルファ決戦の前後でグリッド018を掌握。その後星外に情報を流し始めた・・・・・・らしい。エアやブランチがそこまでしか調べられていない時点で、ただ者ではないと伺える。

 

今回の作戦はドーザー勢力の排除以外に、ベアトリーチェの身柄確保も目的に入っていた。戦力の分散投入というリスクを冒しているのはその為でもある。ここで逃せば更なる害になりかねない。

 

もしグリッド018から脱出されたとしても、周辺には解放戦線とレッドガンの混成部隊が網を張る手筈になっている。そちらはG2ナイルが指揮を執っているようだ。大袈裟にも思える布陣だが、それだけ余裕があるという証拠でもある。

 

複数のACに大規模な混成部隊。これによって作戦を成功させ、内外に力を示す。示威行為としての側面もあり、ここまでの大規模戦力が動員されているようだ。懸念は一つ、足並みが揃うかどうか。特に解放戦線とレッドガンは軋轢もあり、士気が崩壊する可能性もあった。

 

言わばこれは、いずれ来たる星外勢力との決戦のデモンストレーションでもある。実戦を通じて問題点の確認を行い、また組織間の関係性を修復する。もし今回の作戦で現場の混乱が発生しても、致命的にならないよう配慮がされていた。

 

「・・・・・・」

 

ブリーフィングを聞きながら、シオンは集中力を高めていく。精強で頼れる味方。合理的で余裕のある戦略。数だけの脆弱な敵。どれを見ても勝ち戦になる。そう思えるからこそ、決して油断してはならない。不測の事態はいつでも起こり得るのだから。

 

今回参加するAC乗り達もそれを理解している。最も経験が浅いレッドですら、予想外の事象に対応する覚悟を固めていた。失敗は許されないというプレッシャーは、心を引き締めるカンフル剤にもなる。

 

『これでブリーフィングを終了する。・・・・・・ここはレッドガンの流儀に倣うとしよう。諸君、愉快な遠足の始まりだ』

 

フラットウェルの最後の言葉でブリーフィングは終わり、コックピット内に静寂が訪れた。現在トラルテクトリを乗せた輸送ヘリは投下ポイントに向かっており、若干の時間を要するようだ。と、アーシルからの通信が入る。

 

『どうやらドーザー達がこちら側に気付いたようだ。投下ポイントをE-1からE-4に変更、迎撃に出てきたMT群を撃破後突入を試みよう』

 

「了解。まぁ、相手が案山子じゃつまらねえからな。きっちりやらせてもらうさ」

 

相手に察知されるのも作戦には織り込み済みだ。むしろ、グリッド018の外郭から引き剥がせるのは有利でもある。固定型の迎撃兵器を気にしなくていいからだ。シオンは程良い緊張感と集中力を保ったまま、投下に備えトラルテクトリを操作する。そして、すぐにその時は来た。

 

『E-4地点に到達。シオン、どうか武運を』

 

「あぁ、任せな。トラルテクトリ、出るぞ!」

 

輸送ヘリの後部が開き、ブーストを吹かしてトラルテクトリが飛び出す。遠方の正面に陣形を組み始めているMT群に向け、アサルトブーストを起動した。

 

 

 

 

 

 

 

後方の作戦本部。各ACから送られてくる映像を確認しつつ、フラットウェルは僅かに目を細めた。

 

「想定よりも迎撃に来た戦力が少ないな。どう見る?」

 

「穴倉に籠るのが得意なようだ。餌を撒き、引き込んで叩くつもりだろう」

 

簡潔に返答するのはG1ミシガン。G4イグアスのオペレーター、そして今作戦の副官を兼任している。本来はミシガンを作戦本部司令官に据えるつもりだったのだが、本人が固辞。仕方なくフラットウェルが上に立つ形になっていた。

 

「撃滅後突入、ルートは予定通りで問題無いか。気になるのはA地点側、レイヴンを迎撃する戦力はほぼ皆無。何かに勘付いた可能性が高い」

 

「怯えているのなら楽だが、そうもいくまい。G5、聞こえるか!奴らは尻尾を振って巣の中に引き込むつもりだ!浅はかな考えを叩き潰してやれ!」

 

罠だと分かっていながら、ミシガンはオペレーターとして発破をかける。現状のG5、及びG6のコンビならば問題無いと判断しているからだ。G6・・・・・・レッドの方には五花海がオペレーターとしてついている。あれはあれで戦術眼に優れている、実戦経験に乏しいレッドの助けになるだろう。

 

『こちらウォルター。このまま突入させるが、構わないな?』

 

「頼む。想定通り罠を張っている可能性がある、その場合はルート変更も視野に入れてくれ」

 

指示を飛ばすフラットウェルは冷静さを保ったまま、各オペレーターを統括している。想定された状況からはまだ外れていなかった。突入後、どのような歓迎をされるのかもある程度予測済みだ。配備されている兵器、搬入されている弾薬類。全てを分析し、対策を立ててある。

 

だが。歴戦の直感が伝えてくる。何かある。悪意か、敵意か、それに準ずる何かの匂い。こういう時は大抵ろくなことが起きないと、これまでの半生で理解していた。と、不意にミシガンが視線をこちらに向けてくる。

 

「感じるか。どうやら、何者かの思惑に乗ってしまったようだ」

 

ミシガンも気付いているのか、激を飛ばしている時とはまるで異なる思慮深い表情を浮かべていた。恐らく、彼の素はこちらなのだろう。

 

「全てが罠ということか?いや、それにしては端々が杜撰過ぎる。少なくとも、我らに痛撃を与えるのが目的ではないはずだ」

 

「そこだ。感情がこちらも向けられていないからこそ、狙いが読めん。多少リスクを負う必要があるな」

 

「作戦は続行。備えは万全だが・・・・・・さて、どう出てくるか」

 

思考と共に言葉を交わし、百戦錬磨の両者は一段と気を引き締める。グリッド018から漂う気配は、作戦が進む毎に一層濃さを増していた。

 

 

 

 

 

 

「苛烈な出迎えね。さて、チャティと言ったっけ。殲滅するよ」

 

『了解だ、支援する』

 

シャルトルーズとチャティ・スティック。勢力を超えてコンビを組んでいる一人と一機は、迎撃に出てきた大量の兵器と相対していた。

 

『シンダー・カーラから情報が送られてきました。浮遊しているのは、封鎖機構の無人防衛兵器を流用したものと見られます。敷設される機雷及び自爆特攻に注意を、シャルトルーズ』

 

現在、シャルトルーズにはレイヴンのオペレーターが付いている。誰が作戦に参加するかは多少揉めたが、純粋な火力に優れ、アサルトブーストによる巡航にも適性があるアンバーオックスに白羽の矢が立った。

 

「分かってるって。まったく、うじゃうじゃと・・・・・・全部叩き落としてあげる!」

 

迫る無人兵器をグレネードと拡散レーザーで纏めて蹴散らし、更にレーザーライフルで生き残りを吹き飛ばす。シャルトルーズの後方、チャティのサーカスからはミサイルが放たれ、グリッド内から湧き出てくる無人兵器に降り注いだ。

 

『想定以上の数ですね・・・・・・こちら側に戦力を集中させたのでしょうか』

 

「だったら逆にありがたいけどね。いくらでも来なさい、相手になってやるからさ!」

 

言葉通り、無人兵器はシャルトルーズに到達する前に撃墜され続ける。APもまるで削れていない。これがベアトリーチェの判断だとしたら、あまりにも稚拙に過ぎた。戦力を無駄に捨てているだけだ。

 

シャルトルーズも気付いてはいる。企みの上でこのような用兵をしているのだろうと。足止めか、あるいは別の意図か。ここ以外の戦場で影響する何かかもしれない。

 

「他のとこの様子はどう?妙な感じになってない?」

 

『ひとまずは順調です。我らの損害は些少、あちらの被害は甚大。何を企んでいるにせよ、今の所はこのまま進めるべきかと』

 

「ま、わざわざ化け物の腹の中に飛び込むのも一興か。見抜くのはそっちに任せるよ」

『はい。シャルトルーズ、貴女は戦闘に集中を。何か分かったら伝えます』

 

レイヴンのオペレーターは本部に戦況を共有しつつ、自身も敵の行動解析を始めた。深淵を覗き込むような緊張感は、相手が謎のままだからだろうか。だとしても臆する必要は無い。いつも通り、明らかにすればいいだけだ。コンソールを叩く彼女は僅かに目を細め、指の動きを早めていった。

 

 

 

 

 

 

 

『様子が妙です、レイヴン。殆ど抵抗も無く侵入出来るなんて・・・・・・』

 

『気を付けろ621。誘い込んだ以上、何かを仕掛けてくるはずだ』

 

通信越しに二人の声を聞きながら、621はゆっくりと前進していく。周辺には幾本もの柱が建っているが、そのどれもが崩れかかっているようだ。必然、足場となる場所も狭い。

 

【分かってる。でも、気配が無い。どうしてだろう】

 

各所に配置された少数のMTや砲台から攻撃が飛んでくるが、621には当たらない。丁寧に撃破し奥へと進んでいった。今の所、敵戦力も対応も想定の範囲内。だからこそ警戒すべきだと経験が囁いてくる。

 

『防衛設備及びMTは無人で稼働させているようだ。ドーザー達はどこにいった・・・・・・?』

『こちらでもグリッド018内にアクセスを試みます。レイヴン、警戒を怠らないようにしてください』

 

考えることは信頼出来る二人に任せよう。自分はただ、目の前の敵を倒すだけだ。そう割り切りながら敵戦力を殲滅していく621。被弾らしい被弾も無く、とても順調だ。と、オペレーターであるウォルターの元に緊急の連絡が飛び込んできた。

 

『待て、後方のMT部隊から連絡があった。ACの接近を確認、機体名・・・・・・ロックスミスだと!?』




いけいけぼくらのV.Ⅰ、今日も元気に命令無視だ!
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