見せてもらいましょう、借り物の体でどこまで飛べるか   作:てぬてぬ@TSF

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15.危機は絶え間無く

『シオンさんっ!!大丈夫ですか、応答してください!』

 

青年の悲鳴が鼓膜を打つ。それが聞こえるということは、まだ生きているということだ。

 

「っ俺は無事だ!状況は!?」

 

周囲に意識を向けると、どうやらレーザーは掠めただけのようだ。動きを止めたシオンのACに対し、敵である二機は再び距離を取りミサイルを放とうとしている。意識を失っていたのはほんの数瞬らしい。

 

『は、はい!敵性機体、依然健在です!直撃には至らなかった模様!一体どうすれば・・・・・・!』

 

「決まってる、俺に構うな!もう一発アイボールをぶっ放してくれ!」

 

相手の跳躍からの踏みつけは、レーザーに対応して動いた可能性が高い。一度見たのならばやりようはある。それに、このままではジリ貧だという状況は変わっていないのだ。アイボールのレーザーが直撃すれば戦局は大きく変わる。それが例え、自身ごと焼くことになろうとも。

 

『ですが、それではシオンさんが・・・・・・!』

 

「大丈夫だ、対策は出来てる!いいから早くしてくれ、これ以上は持たないぞ!」

 

嘘と虚勢を織り交ぜて、シオンは眼前の攻撃を凌ぎながらも急かした。APは後半分、レーザーを耐えられるかどうかは微妙な所だ。それでもなぶり殺しにされるよりはまだ希望がある。グレネードの爆風をクイックブーストで避けながら、限界まで集中し時間を稼いでいく。

 

敵機体はAIが操縦しているのか、攻撃に一定のパターンがあるようだ。ミサイルを放ち、次に速射砲。一定の距離になったらグレネードを放つ、といったように。僅かながらそのパターンを感じ取り、シオンは少しずつ敵の動きに対応していく。だが、2対1という状況は覆しようも無い。波状攻撃で削られていく中、青年が叫んだ。

 

『アイボール、照射準備完了!気を付けてください!』

 

「分かってらぁ!」

 

シオンも叫び、マシンガンとバーストハンドガンを乱射しながらもレーザーに備える。何よりも先に受けた踏みつけを警戒しつつ、敵機と一定の距離を保っていた。レーザーの照射が始まり、再び閃光が迸る。相手も気付いたのだろう、先ほどと同じように跳躍し、シオンを踏みつけ移動を封じようとしてきた。

 

「そう来るのは見えてんだよ!」

 

敵機がこちらに突っ込んでくる瞬間、横にクイックブーストを吹かし回避する。さらに迫りくるレーザーから遠ざかるようにアサルトブーストを起動。距離を取るシオンに追い縋ってきた機体に、アイボールから照射されたレーザーが直撃した。

 

『やった・・・・・・!?』

 

青年の願うような声。しかし、シオンはレーザーの閃光が収まらぬ内に突っ込んだ。一撃で落とせたと考えるのは楽観に過ぎる。だから動く。

 

「っおおおぉぉっ!!!」

 

このACに乗ってから、シミュレーターで数えきれない程繰り返してきた挙動。左腕のマシンガンを肩のチェーンソーと持ち替えるウェポンハンガーを活用し、すぐさまチャージを始める。二連刃が展開された直後、シオンはブースターを吹かし砂埃の先にいる敵機に肉薄した。予想通り、未だ撃破されていない。

 

「喰らええぇぇぇぇぇっ!!!」

 

スタッガーしている敵機にチェーンソーの刃を押し付ける。装甲を削り、内装まで破壊しようと刃が回り続ける。傷口を押し広げるような刃の動きと共に、シオンは思い切りチェーンソーを振り抜いた。吹き飛んだ敵機は辛うじて動いているようで、肩のグレネードキャノンをシオンのACに向けている。鳴り響くアラートを無視してシオンは再び突っ込んだ。

 

ガァンッ!!

 

お返しとばかりに蹴り込むと、敵機は全身から火花を散らし爆散した。レーザーが直撃した上にチェーンソーの一撃を受け、さらにキックを見舞われては耐え切れなかったようだ。だが、まだ一機残っている。シオンはハンガー切り替えでマシンガンを構え直し相対した。ここで気を抜けば自らは死に、ストライダーも落とされてしまう。と、

 

『っ、シオンさん!急速に接近してくる敵影を確認!これは、まさか・・・・・・!』

 

「どうした、何があった!」

 

ここに来て更なる増援か。これ以上対応することは・・・・・・。思考が絶望に染まりかけたシオンに、青年が叫んだ。

 

『え、ACです!友軍タグが付いたACがこちらに向かっています!』

 

「なんだと!?」

 

予想外の言葉に慌ててレーダーを確認すると、確かにこちらに向かってくる友軍機がいる。しかも、画面に表示されたデータには見覚えがあった。あの時、多重ダムで見た飛ぶような戦い振りの独立傭兵。その名は。

 

「レイヴンっ・・・・・・!」

 

独立傭兵レイヴンが、夜空を舞って駆け付けた。

 

 

 

 

 

「どういうことだ、あれは我らが同志の輸送ヘリを落としたACではないのか!?」

 

『艦長、抑えてください!帥淑フラットウェルにも許可は取ってあります!』

 

「しかし!餌さえあれば容易く裏切る輩だろうに!」

 

乱入者であるレイヴンを苦々しげに見つめ、ストライダーの艦長は怒りを隠そうともしない。増援は願ってもないことのはずだが、よりによってストライダーに届けられるはずだった輸送ヘリを落としたACとは。先ほど通信を繋いできたアーシルに言い募る。

 

「企業と裏で繋がっているのではないか?たまたまこの近辺にいたなどと、タイミングが良すぎる!」

 

『ですが、このままではシオンは撃破されストライダーも・・・・・・!ご理解いただきたい!』

 

艦長の剣幕に一歩も引かず、アーシルは強い口調で言い返した。たとえ金銭で容易く裏切る相手だとしても、今この時は友軍だ。艦長の、半ば私怨めいた敵愾心で状況を悪化させるわけにはいかない。

 

『今は危機を脱することが先決です!まずは敵機の撃破を!』

 

「えぇいクソッ!アイボール、照射を続けよ!一度引き剥がしたのだ、決して近付けさせるな!」

 

議論をしている時ではないと己を納得させたのだろう、歯を食いしばりながらも艦長は命令を下す。アーシルの言う通り危機は去っていないのだ。今は、ストライダーを守らねば。

 

「コーラルよ、ルビコンと共にあれ!戦士諸君、奮闘せよ!」

 

通信越しに部下達を鼓舞しつつ、艦長はシオンとレイヴンが合流するのを確認した。いっそ、纏めてレーザーで薙ぎ払ってしまえばいい。湧き上がってきた悍ましい思考を振り払い、彼はストライダーの指揮を続けるのだった。

 

 

 

 

 

『こちらレイヴンのオペレーターだ。助力しよう』

 

「助かる、後一機は殆ど無傷!機動性が高い、気を付けてくれ!」

 

手短に言葉を交わし、シオンとレイヴンは残り一機になった敵に相対した。状況が変わったのが原因か、敵機は距離を保ったままこちらの出方を伺っているようだ。

 

『アイボール、照射準備完了!撃ちます、巻き込まれないでください!』

 

「レイヴン、こっちは右に回る!挟み撃ちにするぞ!」

 

均衡を破るようにアイボールからレーザーが放たれる。同時に二手に分かれたシオン達は、回り込むように敵機へと接近した。敵機がレーザーをかわすと同時にシオンが武装を乱射しつつ突っ込み、注意を己に向けさせる。

 

「そら、こっちだポンコツ!」

 

自分がこう動けばレイヴンは合わせてくれるはず。シオンは、あの時見たレイヴンの圧倒的な実力を信頼し切っているようだ。そして、それはこの場においては正しかった。

 

敵機の注意がシオンに向いた瞬間、レイヴンは鋭くブーストを吹かし踏み込む。敵機が対応する間も無く距離を詰め、オービットによる射撃と共にパルスブレードの斬撃を叩き込んだ。スタッガー状態になった敵機を更に蹴り飛ばし、ミサイルとライフルで追撃する。動き自体は基本的なものだが、速度と精度が桁違いだ。

 

「すっげえな、ったくよぉ!」

 

愚痴とも賞賛ともつかぬ言葉を叫び、シオンも可能な限りの銃火器を放ち続ける。敵機はスタッガー状態が回復する前に爆散し、パーツが周囲に飛び散った。レイヴンが合流してからシオンのACにダメージは無い。完勝である。

 

『凄い・・・・・・こんなあっという間に』

 

呆然としたように呟く青年の声を聞きながら、シオンは何かを振り払うように首を振った。いくら二機がかりとはいえ、こんな赤子の手を捻るように決するとは。相手に何もさせず、かつレイヴンのACは無傷に見える。信じがたい程の実力だ。

 

「・・・・・・助かったぜ。ありがとうよ。あんたとは、敵対したくないな」

 

感謝を告げても返事は返ってこない。というよりも、まだ戦闘体勢を崩していないように見える。違和感を感じたシオンは訊ねようとするも、その前に青年が叫んだ。

 

『ま、待ってください!新たな敵性反応!しかも、南北の二方向から!』

 

「っ、増援だと!?このタイミングで!?」

 

『間違いありません!片方は識別不能ですが、もう片方はアーキバスのAC部隊、ヴェスパーです!AC一機及びMTが多数!来ます!』

 

ヴェスパー。アーキバスお抱えの精鋭部隊だ。このタイミングで何故?裏で手を引いていたのか?だが、浮かぶ思考を広げている時間は無い。シオンはブーストを吹かし、近場のヴェスパー部隊が侵攻してくる方向へ向かう。アサルトブーストを起動しながら、縋るような思いでレイヴンに言った。

 

「ヴェスパーの方は俺が行く!もう片方を頼めるか、レイヴン!」

 

相変わらず返事は無い。しかし、レイヴンをアサルトブーストを起動しているのが見える。向かう先はシオンとは逆方向。どうやら、引き受けてくれたようだ。

 

「頼むぜ・・・・・・!」

 

状況は先ほどよりも更に悪い。自分一人で名高いヴェスパー部隊を撃退することなど不可能だ。レイヴンが片方の襲撃を片付け、こちらに向かうまで耐え切ることは出来るのか。多重ダムの時のように、助けに来てくれるのか。

 

甘えるな。シオンは自身の感情を噛み殺す。ここに、戦場にいるのは自分の意志だ。解放戦線に協力すると決めたのも、武装採掘艦ストライダーを訪れたのも全て自分が決めたこと。自分の選択の結果ならば、自分で背負わなければならない。

 

「やってやるぜ、こっちだって最新式の強化人間だ。灰かぶりて我らあり、ってか?上等だよ!」

 

なけなしの勇気をかき集め、ACを駆り真っすぐに突撃していくシオン。目標はV.Ⅵ、メーテルリンク率いるヴェスパー部隊だ。

 

『アイボールの軌道修正に時間がかかる!それまで持ちこたえてくれ!』

 

「分かってますよ艦長!初陣には丁度いい地獄だぜ、まったく!」

 

死ぬ。このままでは確実に死ぬ。それでも、決して止まることは無い。戦闘の高揚とはまた別の、使命感のようなものに突き動かされながらシオンはヴェスパー部隊と接敵した。




武装採掘艦護衛、ストライダーが健在で支援攻撃してくれてたらあそこまで地獄にならなかったと思うんですよ。現実は非情なのでミッション開始前に撃墜されるんですが・・・・・・。
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