〈R〉【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました! ~失われたギフト~   作:高見南純平

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第17話

「あーーーーー、っくそ! なんでこいつの時みたいにうまくいかねぇかなぁ!」

 

 魔人の男は長帽子から出た前髪を掻きむしる。彼は、後ろにいるバンダナ魔法使いをこれで無事に仲間に入れられた成功例があるので、自分のやっていることは間違っていないと思い込んでいる。しかし、バンダナ男が異常な例だった、ということを彼はうすうす気がつき始めていた。

 

「っち、まぁ、大事な決断だしな。ここは様子見、考える時間を与えてやるよ。

 俺の名前はハライノス! パーティー名は、ニールダウン! 

 また会いに来るよ、特にそこの少年」

 

 魔人ハライノスの具体的なターゲットは、クインクウィを呼び出せなくなったデュペルだった。彼の焦り方から、デュペルが一番誘いに乗る可能性があると判断したのだろう。

 

 ハライノスは最後の挨拶を終えると、そのまま奥の林の中に向かって後退していく。魔法使いながら軽快な身のこなしで、枝から枝へと移り進んでいく。

 

「デュペル、奴を追うよ! あいつを気絶させれば元に戻るかもしれない! 

 戻んなくても、今度は殴り続けてこっちが脅す!」

 

 盾殴りのナゲキスは本気だった。何が何でもリーダーである風心クインクウィを取り戻す気のようだ。

 

「お、おう!」

 

 目まぐるしく変わる状況に頭が追い付かずにいたが、ナゲキスの指示のおかげで自分がやるべきことは分かった。

 ナゲキスとデュペルが走り始めようとしたとき、そこに立ちふさがる者がいた。

 

 それは、魔人ハライノスのパーティー「ニールダウン」の最後のメンバーだった。銀色のストレートヘアーをした女性戦士だ。

 目は虚ろで横に広く、なぜか微笑んでいる。魔人ハライノスとはまた違った、異質さを感じさせる女性だった。

 彼女は木の上からスタッと舞い降りると、ナゲキスの進行方向を防いでいた。

 

「鬼ごっこ開始だね。私を倒せれば、だけど」

 

 ナゲキスとほぼ同世代に見える女性戦士は、ずっと不敵に笑っている。

 

「わっかりやすくていいねっ!」

 

 ナゲキスは低い体勢で、女性戦士に強襲する。鍛え抜かれたその脚で、迅速に近づいて行く。

 だが、相対するこの女もまた、素早い動きの洗練された戦士であった。

 

「っふん!」

 

 女戦士は背中に2つの剣を背負っていた。その2つの柄に手を置き、鞘から抜くと、そのままの勢いでナゲキスに向かって剣を振り下ろす。抜刀しながらの攻撃である。

 

 左右から同時にせまりくるロングソードの刃。どちらの剣も同じ形をしており、刀身がかなり太く長かった。普通は双剣の場合、どちらも振りやすいように小ぶりにするか、どちらか片方をサブ武器として小型にする。

 しかし、この戦士の場合は、どちらも片手で振るうには重すぎる構造をしている。それだけ腕力に自信があるのだろう。

 

「【シールドガード】トゥーズ!」

 

 盾殴りのナゲキスは、両腕に装着された盾を使用し、スキルを発動する。これはシールドの防御力と耐久値を高めて、相手の攻撃を防ぐスキルである。彼女は盾を2つ装備しているので、同時に2回発動したのだ。

 

 ナゲキスの両盾が、魔力の聖なる光で包まれる。そしてそこに、女戦士の持つロングソードが斬りつけた。

 女戦士の左右からの攻撃を、ナゲキスは防ぎ切ったのである。

 

「へぇ、両盾なんておもしろ」

 

 女戦士は戦闘中だというのに、それを楽しんでいるような反応をしていた。攻撃を防がれたことが、むしろ嬉しそうだった。

 

「っぐ、あんたにウケるためにつけてるわけじゃないから」

 

 飄々とした態度の女戦士だが、その刃にはしっかりと体重と殺意を込めていた。ナゲキスはこれに押されて、どんどんと盾の位置が下へと下がっていってしまう。

 

「あっそ。ちゃんと剣は防いでるけど、それだけじゃあダメだよ。

 だってさぁ、腹がガラアキィック!」

 

 女戦士は喋っている途中で、次の一手を仕掛ける。左右の攻撃を防ぐために、ナゲキスは両腕を広げていた。そのため、真正面に何もない空間が出来てしまったのである。

 

 そこに狙いを定めて、女戦士は長い脚を使って蹴りを入れた。その蹴りは、ナゲキスの胸元にクリーンヒットする。

 

「っぐはっ!」

 

 みぞおちに近い部分に蹴りを入れられたナゲキス。手痛いダメージを喰らっただけではなく、勢いを殺せず彼女の体は後ろへと蹴り飛ばされていく。

 

 そしてその先には、魔人ハライノスを追いかけようとしていたデュペルがいた。

 

「っえ、えぇ!?」

 

 デュペルは向かってくるナゲキスをつけることが出来ず、2人は激しくぶつかり転倒した。

 

「ふぅ、狙い通り行くって気持ちぃぃぃぃぃ」

 

 どうやらデュペルに当てるまで、彼女の作戦だったようだ。やはり彼女は戦闘そのものを楽しんでいる。天を仰ぎ、気持ちよさそうに叫んでいた。

 

「っく、げほ。はぁ、ヤバいやつじゃん」

 

 ナゲキスは咳をしながらも素早く立ちあがる。戦闘において地に伏せているなど、隙だらけでしかないからである。デュペルは「いたたたた」と言いながらゆっくりと起き上がっていた。

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