〈R〉【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました! ~失われたギフト~ 作:高見南純平
丸々とした大きな瞳で、じっとハライノスたちのいる方向を凝視している。
彼の距離は100m以上、高さも含めるともっと離れている。が、ハライノスからの視点では、自分とばっちり目が合っているようにしか見えなかった。
「くそ、さっきので気がつかれたかっ! しゃあねぇ、いきあたりばったりでいくか」
魔人ハライノスは、自分の【ディスキル】発動により、少年ララクに気が付かれたと思い込んでいた。
しかし実際は違う。あの時、スキルは発動せず、ララクには何の影響もなかった。
彼は単純に、ハライノスたちの気配や音、臭いなどで察知しただけなのだ。
「面白くなりそうな気しかしないね」
やる気十分な女戦士マベラ。彼女は前衛としてハライノスよりも前に動き出そうとしたのだが、それよりも先に行動を起こした者がいた。
それは、冒険者パーティー ニールダウンの存在に気が付いた、少年ララクだった。
「……なんだ? あの人たち」
林道を歩いていたララクは急に立ち止まり、進行方向とは全く別の所に目をやっていた。
それを感じ取ったチームBの他3人も足を止めた。
「どうした? ララク?」
ララクと同じパーティーである戦闘医ゼマが、同じ方向を向き始める。彼女の視界にも、木の上に立っている見知らぬ3人の影が映りこむ。しかし、顔が判別できないほど距離は離れている。
「直感ですけど、なにか危険な香りがします。
ちょっと、様子を見てきます」
ララクはそう言って、ぴょんと軽くジャンプをする。それだけでも彼の体はふわりと天高く跳び上がっていき、近くの樹林に降り立った。
怪しい3人が気掛かりなようで、ララクはスタスタと木々を渡って近づいていく。
「っあ、私も行くよ」
ララクの後を追って、ゼマも同じように高い位置へと移動していく。ララクほどではないが、彼女も卓越した身体能力を持っており、背の高い樹木にも届く跳躍がある。
残されたのは、歳の取ったねんごろのトーマガイと、若い犬人の剣士・氷人のシェントルマだった。
彼らも同じ動作をすることはなんら難しい事ではないが、体格の大きいトーマガイは躊躇した。これは彼が木に乗っかれば、下手したら枝を折ってしまうかもしれないと危惧したからである。彼は自然に対しても慈愛に満ちているようだ。
そのため、林道を外れて、草木をかき分けながら歩き始める。
氷刃のシェントルマも、仲間として彼から離れずついていった。
「あの、何か用でしょうか??」
お互いの顔がはっきりと分かる所まで近づいたララクは、見知らぬ冒険者たちに声をかける。
「っげ、そっちからお出ましかよ」
魔人ハライノスは、自らやってきた少年ララクを見て、急に緊張し始める。先手を取られた気分だったのだろう。
「冒険者、ですよね。この辺り、カエルが大繁殖してるので、危ないですよ」
ララクは平然とした態度だった。あくまで、道中で出会った冒険者同士として会話を進めていく。しかしその腹の中では、ハライノスたちに対して不確かな疑念を抱いていた。
「カエル? よく分かんねぇけどさ、ちょっと俺の話を聞いてもらってもいいか?」
魔人ハライノスは徐々に呼吸を落ち着かせていく。当初の予定とは少し外れたが、それでもララクと話し合う、という目的は達成されている。
「? ボクでよかったら」
「あのさ、俺たちの仲間になんねぇか? えっと、ララク」
「!?」
ララクは瞬時に腰を低くする。勧誘されたことに驚いたわけではない。初対面なのに自分の名前を知っているからだ。
ハライノスは、その方が打ち解けやすいかと思って名前で呼んだのだが、それが逆効果だった。
ララクは相手が自分の名前を知り得る方法にすぐ辿り着いた。何故ならララクも、スキル画面を閲覧できる【サーチング】を所持しているからである。
「マナーの悪い人だ。
……てことは、ボクのスキルも見たってことですね」
ララクは自分なりに状況を整理し始めた。自分の大量のスキルを見たならば、面識がないのに仲間に誘ってくる事に納得が出来る。
「そだぜ。お前の力が欲しい。俺とパーティー契約してくれよ」
「あなたたちの事何も知らないのに、了承するわけないじゃないですか」
正論で反論するララク。
彼はその中で、ハライノスの余裕な態度が気になった。ララクの実力が分かっているのならば、もっと友好的な会話をしそうなものだ。何故なら、癪に触って反撃される可能性があるからである。
「っま、普通はそうだよなぁ。じゃあ、いつもの行きますかっ!
【ディスキル】オーバーズ!」
魔人ハライノスは、自慢のスキルを乱発する。
その瞬間、ララクは後方に下がった。何らかの攻撃が飛んでくることを予期したからである。
だが、それは無意味だった。
【ディスキル】は基本的に不可避の魔法だからである。