〈R〉【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました! ~失われたギフト~   作:高見南純平

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第25話

 冒険者パーティー・ハンドレッドとニールダウンが邂逅した時刻、チームCつまり冒険者パーティー光焔万丈も未知なる敵と遭遇していた。

 

 場所は北東に位置する大池だ。本来は穏やかで鏡のように透き通った水面が広がっている。はずなのだが、現在はその美しさの片鱗もない状態になってしまっている。

 

 その原因が、泥だ。池の表面だけではなく、周辺の地面や草木にも大量の泥が付着してあった。

 さらに、他の池同様、周りには大量のカエルの死体が散乱している。これらにも、不気味な黒茶色の泥がべっとりとついている。

 

 異様な事態となっているわけだが、そんなことは些細なことでしかなかった。

 今、光焔万丈の3人が相対している相手に比べれば。

 

「あー、デカすぎるぞ! あいつ」

 

 そう吐露したのは、光焔万丈のリーダー・炎使いゲッキである。燃えるような赤髪とテンションが特徴的な若い魔人族である。

 彼を含めたパーティーメンバーは、大木の木陰に隠れて身を潜めていた。

 

「しかもわちらの攻撃、全然効いてないみたい」

 

 隣にいる水虎使いのシヲヌが、無表情のまま悲しげにしていた。何故わかるのかというと、目の下で両手の人差し指を曲げているからである。これは、涙を表現しているのだ。

 

「ゲッキくん、ここは逃走あるのみっ、じゃ~ない??」

 

 逃げる準備万端の土蹴りのリマンロ。丸い狸耳をぴくぴくと動かしている。

 

「こんなの放置してたら、村が破壊されるだろ。クエストには関係ないけど、誰かが倒さなくちゃいけない」

 

 逃げるのを得意とする狸人リマンロに対して、炎使いゲッキは戦う意志を固めていく。彼の戦い方は、真っ向勝負。今こうして姿を隠しているのも、あまりやりたいことではなかった。

 

「関係、あると思うよ~? 

 カエルが大量発生、しかも村に近づいて来てたんだよね。

 と、いうことは~、カエルたちはあれから逃げてきた、てことになるんじゃ~ない??」

 

 のほほ~んとした態度と喋り方にしては、鋭いことを言うリマンロ。逃げる者の気持ちが分かるのかもしれない。

 

「っあ! そういうことか。だったら尚更ひけない! 2人とも、やれるだけやるぞ! 

 泥まみれになる覚悟、決めろ!」

 

 あまりやる気のなさそうな仲間2人を無理やり鼓舞するリーダーのゲッキ。このパーティーは、リーダーのゲッキがいなければまともに機能しないのだ。

 

「やるしかないもんね」

 

 変わらず表情を崩さない水虎使いのシヲヌ。だが、両手で〇の形を作っている。戦いに了承はしたようだ。

 

「もちろん、私は言われれば、な~んでもやりますよ」

 

 逃げが得意なリマンロだが、常に逃げるのが好きというわけではない。彼女の脚力は逃げにも戦いにも転用できるというだけだ。

 彼女は仲間が求めることをするだけなのである。

 

「よっしゃあ、いくぞ!」

 

 パーティー全員が同じ方向を向き、いざ開戦、といったその瞬間、大池のある方角から大量の泥が飛んできたのだった。

 

 そしてそれは、彼らが隠れていた大木に直撃する。斧で斬るには長時間かかるほどの年輪なのだが、泥の威力に負けていとも簡単に折れていく。

 

「っえ? ま、まじかよ!」

 

 一瞬ゲッキは理解できなかった。声を上げた後、大木が自分たちに向かって倒れてきていることを悟る。

 

 これにいち早く反応したのは、土蹴りのリマンロだった。

 彼女はゲッキ、そしてシヲヌに抱き着き、そのまま左へと飛び出した。

 

 大木はずしずしと音を鳴らしながら、ゲッキたちがいた場所へ倒れていった。あのままあそこにいれば、下敷きになっていた。

 

「た、助かった。ありがとう、リマンロ」

 

 戦う勇気を振り絞っていたゲッキだったが、一瞬で肝が冷えてしまった。

 

「さて、次はあれをどうにかしないとだね。どうする? リーダー」

 

 お礼を言われたリマンロだったが涼やかな顔をしていた。助けるのは当たり前、と考えているようだ。

 

「はぁ、あんな奴初めて見るぜ」

 

 隠れる物が消失した光焔万丈の3人は、大池の方に目をやる。

 するとそこには、大池を覆いつくすほど巨大に見える大型のモンスターがいたのだ。

 

 モンスターの種族名は、「デイダイオウ」

 

 類似する生物は、オオサンショウウオだ。

 

 泥まみれの大地に降り立つ、巨大なオオサンショウウオ。その体は重厚で、泥の重みをまとったような質感がある。眼光は鋭く、まるで闘志に燃えるように輝いていた。

 それの皮膚は泥で覆われ、まるで自然そのものと一体化したような印象を与えてくる。

 

「ルロロォォォオォォ」

 

 口からは威圧的な唸り声がこだまする中、その舌は毒々しい光沢を帯び、獲物を威嚇している。泥濘に濡れながらも、奴の歩みは力強く、地面を踏みしめる音はまるで大地自体が揺れるかのようだ。

 この泥まみれのデイダイオウは、自然の中で威厳を持ち、その存在はまるで神秘の力が宿ったような異次元的な雰囲気を醸し出している。

 

 一目でわかる。このデイダイオウが、今回の異様な現場を作っている犯人であり、高レベルかつ強力なモンスターであることが。

 

「とりあえず、攻撃するしか……」

 

 作戦がまだまとまらないリーダーのゲッキ。

 先制してきたのは、すでに彼らは標的と定めていたデイダイオウの方だった。

 

 奴が放つのは泥系統のスキルだった。

 

【マッドブレス】詳細

 効果……口から泥を発射する。威力は肺活量によって反動する。

 

 

 超大型のその口から射出される泥の塊。それはゲッキたちの視界をほぼ全て遮り、飲み込んでしまうには十分すぎるほどの大きさだった。

 

「っくそ! 【フレイムショット】っ!」

 

 ゲッキは魔力を消費して、広範囲の炎を作り出した。だが、泥に比べれば、その大きさは心許ない。

 炎使いゲッキは、咄嗟の迎撃策として、火炎を泥にぶつけていく。

 

 デイダイオウが発動した【マッドブレス】、そしてゲッキの放った【フレイムショット】は衝突すると激しい衝撃音を鳴らす。

 

 このスキル対決に軍配が上がったのは、やはり泥系統の【マッドブレス】だった。

 

 全く【フレイムショット】が効いていないわけでなかった。泥は炎がぶつかったことにより、少しだけ散乱した。だが、それは塊の大きさを一回り小さくしたに過ぎない。

 

 逆に炎は泥に飲み込まれていき、少しだけ弾速を遅めながらも、ゲッキたちに襲来してくる。

 

「ぜ、全然ダメじゃんかっ! リ、リマンロ、頼む!」

 

 自分のスキルが効果が薄いことを察したゲッキは、すぐさま仲間に頼った。自分の系統では相性が悪いが、彼女のスキルなら何とかなると思ったのだ。

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