〈R〉【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました! ~失われたギフト~ 作:高見南純平
「わ~かったよ。ふぅ、【大地蹴り】!」
土蹴りのリマンロは、右手のひらを前に向ける。するとそこに彼女の魔力が集合して、それは岩石へとされていく。
円状に近くボールのような形となっていく岩石だったが、今のままでは泥に破壊されて終わりである。
この【大地蹴り】の本領はここからである。
リマンロが生み出したその岩に、地面の土が吸い込まれ始めていく。それらは雑草や泥が混じっているが、岩石に集約されてリマンロの体よりも大きいほどに成長していく。周囲の大地を取り込んで威力をあげる、これが【大地蹴り】のスキル効果なのだ。
「はいや~!」
空中に浮いている巨大な土の塊を、リマンロは力いっぱい蹴り飛ばす。この蹴りにもスキル効果が適用されており、脚の強度や威力を高めてくれている。
岩の芯に蹴りがヒットすると、勢いよく作り出された巨岩は、【マッドブレス】に真っ向から勝負を挑む。
再び2つのスキルがぶつかり合う。
岩石は泥に穴を開けるように突き進もうとするが、泥の方は岩を飲み込もうとしていく。
泥系統、土系統という類似する系統のスキル勝負。
「っあ」
土蹴りのリマンロは、自分が作り出した岩石に亀裂が走ったことに気が付く。泥の衝撃に耐えきれなくなったのである。
そのままそれは爆発するように散開していった。
だが、負けたわけではなかった。
【大地蹴り】で生み出した土塊がはじけ飛ぶと、そこには泥は存在していなかった。【マッドブレス】はその効力を失い、勢いがなくなって地面に落ちていったのだ。
「まじかよ! さすがだぜ、リマンロ!」
ゲッキは大いに喜んだ。リマンロなら対抗できると考えてはいたが、実際にその目で見ると興奮が抑えきれなかった。実際は、【フレイムショット】で、【マッドブレス】の威力を少しだけでも抑えていたから為せたことだった。
「ふぅ、でもこれでやっと相殺、だよね~。もっと分かりやすい有効技があればいいんだけど~」
大木をなぎ倒すようなスキルと相打ちしたのだが、リマンロは満足していなかった。何故なら、【大地蹴り】は彼女の中では大技だからだ。元々ある大地を利用するので、そこまで魔力を消費するわけではない。問題は、溜めである。土を作る→そこに周囲の大地を吸収させる→力強く蹴る、という工程がある。これにより、瞬間的に発動できるようなスキルではないのだ。
それに対してデイダイオウの放つスキルは、ただ息を吐きだすだけだ。もちろんそう単純なものではないが、工程としては短い。
「……確かにな。俺の炎は相性不利そうだし。ただでさえ、バカでかい泥だっていうのに」
スキルの系統には相性がある。炎は水に強く、水は雷に弱い。これは一般的な知識であり、スキル効果や威力によって変動はする。
今回の場合は、泥に対して炎は相性が悪かった。土系統のスキルを燃やし尽くすにも膨大な時間と魔力が必要だ。泥系統はそこに、水系統の力が加わっている。水分を多く含んでいるので、より燃やしにくく、炎の力を弱めていく。
「……2人とも、避けて」
水虎使いのシヲヌは、オオサンショウウオのデイダイオウが、新たに攻撃をしかけてきたことに気が付いた。
今度は、塊の大きさが小さくなった分、速度が上昇していた。
しかも、何発も連続で発射されていた。
【マッドブレス】のようなスキルは自分で威力を調整しやすい。そのため、デイダイオウは息継ぎを短くする代わりに、連続でスキルを発動したのだ。
敵も、このままでは決め手に欠けると判断したようだ。
シヲヌ、そして俊敏な土蹴りのリマンロは、華麗に避けてみせる。しかし、作戦を考えていたゲッキは、咄嗟に反応できなかった。
「っげ、あっぶねっ!」
ゲッキは転びそうになりながら、慌てて右方向へ飛び出して、泥爆弾を避ける。だが周囲を把握しきれていなかったゲッキは、大きなミスをする。
それは、避けた先が、別の【マッドブレス】の軌道だったことだ。
「っま、まずいっ!」
再び緊急回避をしようとしたが、その前の耐性がわるかったので、思うように体が動かなかった。
彼の目の前まで泥が近付いてくる。
その時、ゲッキを助けるものが現れた。