〈R〉【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました! ~失われたギフト~   作:高見南純平

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第29話

 樹木生い茂る林の中を、2つの冒険者パーティーが走行中であった。全員、樹木の枝上を足場にして飛び移っている。

 

 先にいるのは、魔人ハライノス率いる「ニールダウン」。ハライノスと闇使いシットニンが先頭に立ち、離れた位置に女戦士マベラがいる。先頭の2人を守るように、ちらちらと後ろを警戒しながら走っていた。

 

 その視線の先にいるのは、少年ララクと戦闘医ゼマだった。冒険者パーティー・ハンドレッドの2人は、ニールダウンの様子を伺いながら追走している。

 

「体の調子はどう?」

 

 ゼマが本調子ではないララクの心配をする。彼は現在、多くのパッシブスキルを失っている。

 

「なん、とか。レベルのおかげですね」

 

 思った以上に動けることに、ララクは驚いていた。レベルアップにより肉体は遥かに向上している。このままの状態で同じレベルのモンスターと戦うのは危険だが、常人よりは優れた運動能力を有している。

 

「じゃあ、そろそろしかける?」

 

「そうですね。【ウェポンクリエイト】」

 

 ララクは慎重にスキルを発動していく。自由に武器を作り出せるこのスキルだが、魔力消費が激しい。品質の高い物を作ればそれだけコストがかかるのだ。

 

 今回ララクが作り出したのは何の変哲もない鉄の片手斧だった。

 それを装備した瞬間、ララクのうちに眠る力が解放されていく。

 僅かではあるが、体の軽さも取り戻しつつあった。

 

 これは【ディスキル】されなかったパッシブスキル【斧適性】によるものだ。これがあることにより、自然と斧が扱えるようになりその威力や速度も上昇する。

 

「いきます!」

 

 ララクはスピードを上げていく。狙うは後衛を務める女戦士のマベラだ。

 しっかりと足場を確認しながら跳び移り、マベラに向かって襲い掛かる。

 

「ふ~ん」

 

 女戦士マベラは余裕の表情で長双剣を抜く。木の上に立ち止まり、そして双剣をクロスさせて、ララクの斧攻撃を受けきる。

 

「【アックススラッシュ】!」

 

 ララクはさらに威力を上げるために斧専用のスキルを発動していく。腰と腕に力を入れて、攻撃をし続ける。

 

 が、それはたやすくはじき返されることになる。

 

「【クロススラッシュ】」

 

 冷ややかな声でマベラはスキルを発動した。双剣のような2つの斬撃系統の武器を装備している際に放てる技だ。

 全く同じ軌道で斬ることにより、一点に対する斬撃の威力を上げる。

 

 力負けしたララクは、後方へと弾き飛ばされる。彼は横目で足場を確認しながら、枝の上に着地する。

 

「はぁ、【ディスキル】されればこんなもんか」

 

 女戦士マベラは光を失った瞳で、ララクへと急襲する。適当に双剣を振っていく。

 

「っく、はぁっ。

(ダメだ。全然対応できない……)」

 

 ララクは防戦一方だった。双剣の良さは手数の多さ。それに加えて彼女の剣は比較的長くリーチもある。隙を見て踏み込んでも、辿り着く前に長双剣で斬りつけられるリスクが高い。

 

「君の全力、見てみたかったよ」

 

 やる気のないマベラは、特にスキルを使うことなく長双剣を高く振り上げる。このまま一気に戦いを終わらせる気だった。これをまともに食らえば、今のララクでは大惨事になるだろう。

 

 その時、余裕のあったマベラが何か危機を感じ取る。剣を振り下ろすのを中断して、クイッと首を横に向かせる。

 

 すると、マベラに向かって透明に輝く水晶が真っすぐ伸びてきたのだ。

 

「!?」

 

 マベラは上体を後ろに軽く下げて、その水晶で出来たロッドを難なく避ける。

 しかし、これにより彼女は姿勢を崩して、地面に引っ張られていく。落ちる際に姿勢を正し、着地は無事に成功した。

 全くダメージを受けてはいないが、マベラは「やられた」と少し口角をあげた。心なしか、目にも光が差し込んでいるように見える。

 

「よっこいしょっと」

 

 攻撃を仕掛けたのは、クリスタルロッドを所持したゼマだった。彼女はロッドを伸ばし終えると、すぐに【伸縮自在】の効果を解除する。この際、彼女はロッドの先に向かって、棒が縮むように設定した。

 これにより、ロッドが縮む際に、それを掴んでいる彼女の体も引っ張られていく。ロッドの先、つまりララクのいる位置に向かって、ゼマは瞬時に移動したのである。

 

「ゼマさん、ナイスタイミングです」

 

 軽く息の上がっているララクは、ゼマの行動に感謝をする。これは事前に彼が考えた作戦通りだ。

 

「早く行きな。そんで、さっさと力を取り戻してきなよ。

 私、あんたが強いから一緒にいるんだから」

 

 ゼマは下唇を少し出して、左手を何度か「しっし」と動かす。早くこの場から去れ、とジェスチャーしているのだ。

 

「もちろんです! ゼマさんもご無事で」

 

 少年ララクはお互いの健闘を祈ると、すぐにその場から離れた。先に進む魔人ハライノスたちを追いかけていくのだった。

 

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