〈R〉【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました! ~失われたギフト~   作:高見南純平

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第31話

 ゼマは、マベラの力強さが、同じ女性として信じられなかった。レベルアップシステムにより、身体能力や魔力などの性差はほとんどない。が、筋肉量などのパワーの部分は男性に軍配が上がる。ねんごろのトーマガイなどが良い例である。

 

 そんな力の差を跳ね返してしまうのが、スキルなのだ。

 

 マベラの強さの秘密は、彼女の持つ【腕力上昇】。さらに彼女は【剣適性】ではなく、【双剣適性】を所持している。これにより、【剣適性】よりも双剣装備時の威力が上昇しているのだ。

 それが、長双剣を扱える理由なのだ。だが、ただ扱えるようになるだけで、完璧に自分のものに出来るかどうかは、やはり本人の技量による。

 

「ありがとう!」

 

 女戦士マベラは、「馬鹿力」を褒め言葉だと受け取った。

 そして彼女は、そのままの態勢で、右足をあげた。

 マベラは右膝を使って、ゼマの腹に蹴りを入れる。ゼマはへその部分だけ素肌を出しており、そこにマベラの膝がクリーンヒットする。

 

「っうっ! っぐ……」

 

 腹に激痛が走り、息が苦しくなった。

 さらにそれだけではなく、一瞬意識がおろそかになり、ロッドを持っていた腕の力が弱まり、姿勢も崩してしまう。

 

 それをマベラが見逃すわけはなかった。

 

 マベラは一度双剣を自分の方に戻し構え直す。今度は双剣を横向きにして、勢いよく振り払った。

 狙うは、スペースの空いているゼマの腹だ。

 

 

 

 マベラの長双剣は、ゼマの体を容赦なく斬りつける。

 

「いったぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 ゼマの腹に、長双剣による斬傷がつけられる。そこから彼女の血液が流れ出し、双剣に大量に付着する。

 常人ならば、体を真っ二つにされているであろう威力の斬撃だ。レベルアップにより素の防御力が高まっているので、これで済んでいる。

 それでも、重傷と言わざるを得ない。

 

「さすがに薄着すぎないかい?」

 

 武術を使うというのに、ゼマの装備はあまりにも無防備だ。かなり改良したローブを羽織り、へそまでしかないシャツに、動きやすいズボン。なかなかトリッキーな格好をしている。

 

 そんな防具では、こうなっても仕方がないだろう、とマベラは嘲笑っているのだ。

 

「っくぅぅ! 服はわたしの力じゃ、治せないからね! 

【クイックヒーリング】!」

 

 ゼマは即座に回復スキルを発動する。すると、致命傷のはずだった傷が徐々に治療されていく。斬りつけられた肌が糸で縫合されていくかのようにくっつき始める。そこから血も流れ始めなくなっていく。

 医者がやれば長時間かかるような治療でも、ゼマならば一瞬で治すことが可能だ。

 

「ん? ヒーラー、だったのか」

 

 マベラはさらに喜んだ。さっきの攻撃で戦いが終わらずに済んだことを、良いことだと捉えているのだ。

 マベラはゼマの事を、棒術使い、つまり前衛の戦士だと思い込んでいた。それは間違いではないが、正確には戦闘、治療、どちらもこなす戦闘医なのだ。

 

「ご名答!」

 

 ゼマはすでに完治しているその体で、クリスタルロッドを横へと薙ぎ払う。一度、マベラとの距離を離すために、追い払おうとしたのだ。

 

「元気なことだ……、!?」

 

 マベラはその攻撃を簡単に避けることが出来ると判断した。しかし、ある事に気がつく。それはクリスタルロッドに魔力が流れ、徐々にその長さが変わっていることに。

 近距離で【伸縮自在】を使う意味は少ないように思えるが、実はそうでもない。

 

 マベラは即座に順応して、上空へと大きくジャンプする。すると、その足元をクリスタルロッドが通り過ぎていく。しかもかなり伸びているので、その後ろへも攻撃が届いている。これは、余裕ぶって後ろに避ければ、ロッドがヒットしていたことだろう。

 

 女戦士マベラは、再び樹林の上に立ち始める。地上にいるゼマに対して、彼女は恍惚とした、そして狂気に満ちた表情をしている。

 

「あんた、相当強いでしょ。たぶん、レベル50か60ぐらい。私よりも格上って感じがする。

 若いのに凄いね」

 

 ゼマとマベラの年齢は、マベラの方が数歳上なだけ。ゼマがあえてそのような表現をしたのは、基本的にレベルを上げるためには年月が必要だからだ。20代でレベル50~60ということは、積極的に高難易度のクエストをこなさないとまず不可能だろう。

 同じパーティーの仲間が上級者で、その人が倒したモンスターの経験値を分けてもらう、というレベルアップの仕方もある。

 が、性格的にそれはないだろう、とゼマは初対面ながらマベラの事をそう評価していた。

 

「昔はソロだった。その方がレベルがあがりやすいから。でも、1人に飽きてね。

 私はハライノス、あーさっきの魔人の事ね。あいつについて来て良かったって心の底から思っているよ。

 君みたいな、冒険者に会えたんだから」

 

 マベラはすでにゼマの事を相当気に入っていた。自分の斬撃に一歩も引かず、さらに反撃も仕掛けてきた。直感的に見えて、しっかりとクレバーな戦い方をする。そんなスタイルが、マベラには好評のようだ。

 

「っそ、似てるね。私はあのララクって子が面白いから、一緒にいるわけ。だから困るんだよな~。あの子の力、使えなくされちゃうと」

 

 軽く髪を掻きむしるゼマ。彼女のほうもマベラの事を興味深いと思っていたが、今はララクの力を取り戻すことしか考えていなかった。そのためには、まずマベラをぶっ倒して、サポートに駆け付ける必要がある。

 

「ハライノスの提案に乗れば解決さ。君と私、晴れて仲間さ。

 いつでも手合わせできる」

 

 裂けそうな大口で笑っているので、冗談のようにも聞こえる。が、ハライノスと一緒に辛苦を共にしているという事は、それは本心なのだろう。少なくともゼマは本気を感じ取っていた。

 だからこそ、はっきりと宣言できた。

 

「やだよ。あいつらタイプじゃないし。

 今はララクと2人で充分!」

 

「そうか。なら、命乞いするぐらいまで、君を切り刻むしかないね」

 

 女戦士マベラにとって、ゼマの答えはどちらでも良かった。いや、きっと断られることが、マベラの望んでいた答えなのだ。

 これで、ゼマと命のやり取りを出来るのだから。

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