〈R〉【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました! ~失われたギフト~   作:高見南純平

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第39話

「っは、ナイスだシットニン! 

 今度は、こっちの番だ!」

 

 ハライノスは戸惑いながらも、状況をすぐに理解した。そして、彼は袖下からあるものを取り出す。

 それは、鋭利に尖ったナイフだ。

 ハライノスは【短剣適性】のようなものは持っていない。なので、特にナイフの扱いに長けているわけではない。

 

 が、このナイフには毒が仕掛けられている。それも実際の物ではなく、スキル効果だ。これを受ければ、防御力関係なく継続的なダメージを入れることが出来る。

 それでも当たらなければ意味はないが、今は絶好の機会だ。

 足元に目を奪われるララク、その距離はナイフを突き刺せば直撃させることが出来るほどの近距離。

 

「っち!」

 

 普段なら、この程度の未熟な攻撃など避けるに値しない。が、今は出来るだけ攻撃を受けるわけにはいかない。何故なら、闇スキルと【ディスキル】によって、知らぬ間にどんどんと弱体化させられる危険性があるからだ。

 

 ララクはこの瞬間、冷静な判断を失った。

 このままハライノスに反撃する手もあったが、彼が優先したのは【潜伏する闇】の魔の手から脚を引きはがすことだった。

 

 それはある意味正解なのだが、このあとシットニンは追撃をする気はなかった。だから、このまま近距離を保つことが、ララクの有利を保てる可能性があった。

 

 しかし、ララクはシットニンの心情もよく知らなければ、この【潜伏する闇】に関しても無知だった。闇スキルは使用者がそこまで多くはない少しマイナーなスキルだからである。

 

「【フレイムライド】!」

 

 ララクの両足裏から、突如として燃え盛る炎が噴射される。このスキルは、足裏から炎を放出させ、それを推進力にして移動するスキルだ。

 

 これが発動した瞬間、【潜伏する闇】が設置されていた木の枝に、炎が引火。ぼっかりと穴が開くように燃えていく。闇で出来た小型の手にも炎はぶつかり合い、相殺しようと攻撃しあっている。

 

 そして【フレイムライド】を使用したララクの体は、上空目指して飛翔していく。しかし、この際に【潜伏する闇】の絡みつく腕が邪魔をして、指向性を欠き始める。

 

 炎の力によって枝を焼き、【潜伏する闇】も振り払ったが、ララクの体は自由が利かないまま、上空に放り出される。

 

「暴れんねぇ! でも、こうしたら、どうかな?」

 

 炎によって炎上したことにより、そこを起点として枝はぽっくりと折れ始める。そこに立っているハライノスは、すぐにそこから離れる。移った場所は、シットニンがいる樹木だった。

 その際、【フレイムライド】に対して【ディスキル】を発動した。

 

「っく、分かっていてもイラつくな」

 

 ララクの足裏から射出されていた炎は一気に消失していく。これにより、一時的に彼は空中を移動する手段を失う。無理やり脱出したため姿勢も安定せず、そのままの状態で地面に向かって落下していく。

 

 スキルが奪われることを前提として動いてはいるが、それでも矢継ぎ早に封印され続ければ、フラストレーションが溜まるというもの。

 さらに今は、ようやく詰めることのできた距離から、退く形になってしまった。自分のとっさの判断に対しても、納得がいっていない様子だった。

 

「仕方ない。【ウィンドライド】」

 

 ララクは先ほどの【フレイムライド】と類似した移動スキルを発動する。炎の代わりに風を巻き起こすことで、その力を利用して飛ぶことが出来る。スピードに特化しており、瞬時に目的の場所へと辿り着くことが可能。だが、その分操作は難しい。

 

 彼はこのままハライノスに近づくことも出来たが、まだ少し距離があり途中でスキルを中断される危険性があった。他にも移動系スキルはあるので行動は続けられる。が、問題は闇使いのシットニンだ。彼がどのような動きをするのか、ララクは掴み切れていない。その状態で特攻するのは危険と判断したのだ。

 なので、彼は近くの樹木へと避難していった。

 

「ふぅ、あっぶねぇ。けど、ちょっと魔力使いすぎたな」

 

 ハライノスは服についた埃を振り払い、仕込んでいた短剣を元の場所にしまう。

 

「俺もミスったよ。あのままぶん殴られれば良かったんだ」

 

 闇使いシットニンは、思わず【潜伏する闇】でサポートしてしまったことを深く後悔していた。

 

「おいおい一応仲間だろ。助け合うのは普通じゃねぇか」

 

「……っふん」

 

 闇使いシットニンは、ニタニタと笑顔を向けるハライノスの事を無視した。

 

「……まぁ、いいや。

 あいつの狙いが分かったことだしな」

 

 魔人ハライノスは、尖がった目をララクの方へと向ける。怒涛の攻防を繰り広げたことで、ララクが練っていた【ディスキル】対策の全貌が見えてきたのだ。

 

「君の魔力切れ?」

 

「それもあんだろうな。実際、どこまで持つかは分かんねぇ。でもそうなりゃ、逃げに徹すればいいだけ。

 問題は、その前にあいつの攻撃を喰らっちまう危険性があるってことだ。

 さっきみたいにな」

 

 闇使いはついさっきの、ララクが使用したスキルを思い出した。特にハライノスに接近してからの事だ。

 

「そっか、【ディスキル】が発動する前に、あっちのスキルが発動し終えればいいんだ。だから、肉弾戦を仕掛けた。攻撃自体は当たっていたもんね」

 

 炎の生成など、使用するエネルギーが全て魔力のスキルを、魔法と呼称することがある。超常的な力を生み出すことが出来るが、その分魔力を集合させる時間や、物体を作り出す時間がかかってしまう。

 その前に【ディスキル】されれば、ただ体内の魔力を外に放出しただけとなってしまう。

 

 しかしそれに対して、肉体や武器を起点とするスキルは、比較的魔力消費も少なく、発動スピードも速い。

 スキル発動前に事前動作をしていれば、さらにスキル発動までの時間を短縮できる。例えば、通常のパンチ→殴打系のスキルで加速、といった具合だ。

 

「やっぱ、これ以上深追いするのはやめるか。

 とりあえず、マベラ拾って退散しよう。

 これでもだいぶ【ディスキル】した。あっちから、解除してくれって頼み込んでくるかもしれないしな」

 

「はぁ、残念……」

 

 闇使いシットニンはひどく後悔していた。このまま戦闘を続けていれば、またさっきのようなチャンスが舞い込む可能性はある。あの少年ならば、なにかやってくれるのではないか、という期待もあった。

 

 ハライノスは、ララクが次の手を考え終える前に逃げ出そうとする。仲間であるマベラがいる方向へ移動しようと、その方角を見た時だった。

 かなり遠くの方から、チカチカと点滅する何かが目に入る。

 

 そしてすぐにその正体が、敵であるゼマの持つクリスタルロッドである事が判明する。

 

 

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