ポケットモンスター 遥かなるチャンピオンロード   作:メンマ46号

16 / 48
身も蓋もない話すればカラサリスかマユルドに進化した後の個体を捕まえるのが手っ取り早い。


ケムッソの分岐進化は完全ランダム

 sideミテキ

 

 カナズミシティを目指してもういくつ目なのか数えるのも億劫になる森の中、タケシ主導で俺達はお昼ご飯の準備をしていた。

 と言っても準備をしているのは俺とタケシだけ。タケシがメインの料理をして、俺は隣でじゃがいもを潰してポテトサラダを作っている。

 

 サトシはジム戦に向けてキモリとマリルの特訓、マサトはそれを見学。

 

 そしてカナズミドームでのポケモンコンテストを経てポケモンコーディネーターの道を進む事を決めたハルカは岩に腰掛け、ルンルン気分を隠さずに俺が貸したバトルレコーダーを観ている。

 俺が以前録画したシンオウ地方でのポケモンコンテストのコンテストバトルを視聴しているのだ。

 

「ニャルマーって綺麗かも!う〜ん!ニャルマーみたいなポケモンも欲しいかも!」

 

 安心しろ。その内エネコと巡り逢えるさ。肝心のニャルマーはあんまお勧めしない。ブニャットに進化したら動くの嫌がるからな。演技はしてくれなくなるぞ。

 

「ハルカの奴、すっかりコンテストに夢中だな」

 

「だな。カナズミシティに着いたらコンテストの開催される場所についても調べないとな」

 

 今でもアチャモやルリリならどんな演技ができるのかちょくちょく考えてるみたいだし。バトルレコーダーにはヒコザルを使った演技も録画してあるから参考にできる部分もあると思うぞ。

 

「ミテキ、そっちのトマトを…「きゃあああっ!?」な、なんだぁ!?」

 

 タケシと一緒に料理の続きをしていたら、突如ハルカの悲鳴が聞こえてそちらを見ると、ハルカは何かに驚いたのか尻餅を突いて木の枝からぶら下がっているポケモンを凝視していた。

 

「どしたのハルカ」

 

「い、今……ポケモンが目の前に……ほらそこよ」

 

 ハルカが指差した先でモゾモゾしていたのは赤い体表と赤、白、黄色のトゲトゲを持つむしポケモン。

 

「ケムッソじゃん」

 

 分かった。ハルカのケムッソゲット回だなこれ。コンテストでアゲハントを気に入って割とすぐだったんだな。

 サトシがポケモン図鑑でケムッソを検索し、マサトはケムッソとアゲハントの関係を言及した。

 

「ねぇ、アゲハントってケムッソから進化するんだよね」

 

「そうだよ」

 

「間にカラサリスを挟むし、マユルドやドクケイルの分岐進化もあるけどな」

 

 これハルカが捕まえた個体がアゲハントじゃなくてドクケイルに進化したらこの先どうなるんだろな。

 

「あの子がアゲハントに!?よく見たらかわいいかも!よーしゲットしちゃおっと!」

 

 そう言ってハルカはケムッソを追いかけていく。俺はエプロンを外してタケシに手渡してハルカの後を追う事にする。ちょっと心配だしな。

 

「わりタケシ、ちょっと様子見て来る」

 

「あまり世話を焼き過ぎないようにな。一人でポケモンゲットするのもハルカの為になるしな」

 

 タケシの言う通り、俺もただハルカがケムッソを捕まえるってだけなら着いて行く気は無かった。一人だけでゲットするのも経験だからな。俺がハルカに同行するのは他に理由があるからだ。

 

「それはそうなんだけど、こういう時に限ってロケット団がちょっかいかけて来んじゃねぇかな……と」

 

 そう。ロケット団のムサシも確かケムッソを捕まえてドクケイルに進化させる。ムサシはドクケイルを溺愛していたのをよく覚えている。ゲットの経緯は忘れたが。

 つまりはこの後ハルカとムサシがケムッソの取り合いになる可能性が高い。だがムサシにはアニメと違ってアーボックと何故かパルシェンがいる。パルシェンに関しては本気で意味が分からないが、アーボックがいる点は俺の影響だ。ハルカもルリリという追加戦力がいるとはいえ、放っておいたらコテンパンにやられるのが目に見えてる。下手すりゃアチャモとルリリも奪われるかもしれない。

 

 だから俺がロケット団を対処する。またロズレイドにはかいこうせんで吹き飛ばして貰えば良いだろ。最悪ムサシはドクケイルをゲットできなくても構わん。

 

 そんな訳でお昼ご飯の用意をタケシに丸投げして俺はハルカのケムッソゲットを手伝う事にした。

 

「あ〜ん!ケムッソ見失っちゃった〜」

 

「そんなに欲しいんだな」

 

 むしポケモンはNGとか言う女の子だって少なくない。蝶になってるアゲハントはOKでも芋虫段階のケムッソは無理なんて意見もある。ハルカみたいに進化前でも分け隔てなく愛情を注げるのは美点だ。

 

「だってケムッソを大事に育てたらアゲハントになるんでしょ?」

 

 ドクケイルになる可能性もあるけどな。

 ハルカはうっとりした表情でカナズミホールでのコンテストを思い出しているようだ。メグミさんのアゲハントの美しさが印象に残っているんだろう。

 

「綺麗だったなぁ。メグミさんのアゲハント……いつか私もアゲハントでコンテストに出てみたいかも!」

 

「コンテストと一緒によっぽどアゲハントが気に入ったんだな」

 

「うん!私もアゲハントでコンテストに出るつもり!そしていつかはリボンをゲットするわ!勿論アチャモもルリリもだけど……あ〜ん!バトルレコーダーで観た演技もアチャモ達とやってみたいかも〜!!」

 

 俺もシンオウ地方で捕まえたむしポケモンを思い出す。今あいつナナカマド研究所に預けてるけど、元気にしてるかな……。

 

「じゃあ今度ポフィンの作り方を教えるよ。ホウエンだとポロックが主流だけど、ポケモンセンターなんかで専用の機械が必要だから、極論言えば鍋と材料があれば作れるポフィンは役に立つはずだ」

 

「本当!?お願いね!」

 

 仕上げに冷やす必要があるけどそれこそ、こおり技が使えるポケモンがいれば良いしな。ポロックの機械は何処のポケモンセンターにも置いてる訳じゃないし。

 けど今はケムッソだ。ハルカがケムッソを捕まえないとこの話も意味が無い。

 

「ケムッソー!何処にいるのー!?ケムッソー!」

 

「仕方ない。木に甘いミツでも塗りたくって……」

 

 ソノオタウン名物の甘いミツでケムッソを誘き寄せる作戦で行こうとしたが、ハルカの視線が全く別の方へ向いている事に気付く。その視線の先にいたのは集団で踊るキレイハナ達。

 

『バナバナバーナ♪バナバナバーナ♪』

 

「見事なダンスね。なんだか見惚れちゃうかも!」

 

「キレイハナもコンテスト向きのポケモンかもな」

 

 文字通りの綺麗なポケモンだしな。進化前のクサイハナやラフレシアはその激臭からコンテストで運用するには一癖も二癖もあるし。その分コンテストに出られるまでに仕上げたら凄いとも思うけど。

 

 二人でキレイハナのダンスを観ていると左の方から逃げ回るかのような悲鳴が聞こえて来る。

 

「あれは……ロケット団!?」

 

「やっぱり来やがった」

 

 ロケット団の三人組が必死な形相でこちらに走って来た。読み通りハルカとムサシのケムッソの取り合いが始まる訳か。

 

「ちょっとー!邪魔邪魔ー!!」

 

「どいたどいたーー!!」

 

「怪我しても知らないニャー!!」

 

「えっ!?何々!?」

 

「……ん?げっ」

 

 だがロケット団はこちらの事など構う余裕はない感じだ。気になった俺はロケット団の後方を見てみるとスピアーの大軍がロケット団を追い回していた。なんかやらかしたなこいつら。

 遅れてハルカもスピアー達に気付いてギョッとする。

 ぶっちゃけロケット団をしびれごななんかで麻痺させて囮にすれば良いが、下手すればハルカまで麻痺する恐れがある。故に別の手を取る事にした。

 

「そらよっと!」

 

 先程使おうとした甘いミツを近くの木にぶちまける。一瞬にて甘い香りが一帯に広がり、スピアー達も動きを止めてミツをぶちまけた木に視線が集中する。俺はハルカの手を取り、走り出す。

 

「今のうち!」

 

「えっ、う、うん!」

 

 どうせロケット団がスピアー達を怒らせたんだろうし、撃退すんのも気が引ける。ならばスピアー達の注意を他に逸せば良い。

 誤算があるとすればスピアー達から逃げる事に成功したんだが、何故かロケット団が着いてきた事だ。

 

「「「助かった〜」」」

 

「なんで着いてくんだよ」

 

「うっさいわね!あのままあそこにいたら結局やられちゃうじゃない!」

 

「やられちまえ。どうせお前らが悪いんだろ」

 

 俺としては俺とハルカだけ逃げられてこいつらは結局スピアーの餌食になれば万々歳だったんだが、小賢しい事に俺に着いてくればスピアーを巻けると判断したらしい。

 

「なんですってこのジャリンコォー!!」

 

「ま、まぁまぁ落ち着けってムサシ……」

 

「丁度良いのニャ!ここでおミャーらのポケモンを全部頂くのニャ!!」

 

「速攻で恩を仇で返すんだなお前ら」

 

 別にこいつらを助けたつもりはないし、今後助けるつもりもないけどな。俺は無印でなんだかんだこいつらに食べ物や薬草を分けてやったカスミと違って悪党にかける情けは持ち合わせてはいないのだ。

 

「はいはい分かった分かった。取り敢えずいつものように空でも宇宙でも飛んで行けよ。そして二度と帰って来ちゃ駄目だぜ?」

 

「なんで聞き分けのない子供に言い聞かせるような口振りなんだ!」

 

 モンスターボールを構えて臨戦態勢に入る。また空の旅をプレゼントしてやるよ。

 

「あー!見つけたー!待って〜!ケムッソ〜!」

 

 しかしバトルに入る前にその辺を歩いていたケムッソを発見したハルカがそっちに走って行ってしまった。それにムサシが食い付いた。

 

「待ちなさいジャリガール!そのケムッソを捕まえるのは私よ!!」

 

 そう言って繰り出されたのはハブネーク。ハブネークが立ち塞がってハルカの進行を阻む。

 

「ちょっと待ってよ!あのケムッソは私が先に見つけたのよ!?」

 

「ふん!それがどうしたのかな!?」

 

「どうしたのかなって……ゲットする権利は私にあるでしょ!?」

 

「アンタの権利は私の権利!私の権利も私の権利なの!だから!そのケムッソを捕まえるのはこの私なの!!」

 

 なんというジャイアニズム。けどムサシの言い分はともかく、ハルカの主張は少し甘えが目立つかな。同じポケモンを捕まえたいトレーナー同士がこうして衝突するのなら、先にどっちが見つけたかなんてあんまり意味がない。結局はそのポケモンをゲットした方がポケモンを所有する権利を得るんだから。横取りが嫌ならされる前に捕まえろって話だ。

 

 とはいえ、新米トレーナーにそこまで言うのはまだ酷だし、元々ハルカのフォローの為に着いてきたんだ。ロケット団は俺が始末する。

 俺は妹イーブイを出してハブネークの前に立つ。どくタイプにはエスパー技だからな。

 

「ハルカ!ここは俺に任せてお前はケムッソを!!」

 

「ミテキ!ありがとう!」

 

「だから待ちなさいっつってんでしょうが!!ケムッソは私の物よ!進化させてアゲハントでコンテスト優勝しまくる為にもね!」

 

「え?お前はドクケイルが欲しいんじゃねーの?」

 

 思わず素で聞いてしまった。だってムサシと言えばドクケイルじゃん?詳細覚えてないし、最初からドクケイル狙いだと思うじゃん?

 

「ドクケイル?何よそれ」

 

「え〜と、ケムッソはまず最初にカラサリスとマユルドに進化して、それぞれアゲハントとドクケイルに進化するみたいだな」

 

 首を傾げるムサシの隣でコジロウがポケモンの写真が載ったカードを何枚か取り出して説明する。アレお菓子の付録カードだ。

 

「カラサリスとマユルド……何がどう違うのよこれ」

 

 コジロウが取り出したポケモンカードを見てもムサシはカラサリスとマユルドの違いが分からずチンプンカンプンらしい。色とか目付きとかあるだろうに……。

 

「で、そこからカラサリスがアゲハント、マユルドがドクケイルになるらしい」

 

「ふ〜ん、これがドクケイル……」

 

 コジロウのカードをジッと見たムサシは次の瞬間、目を見開いて固まる。そして目をキラキラさせて口を開いた。

 

「何よ!ドクケイルってとっても可愛いじゃないの!アゲハントなんて目じゃないわ!」

 

 ムサシの美的感覚は良く分からん。ビジュアル的にはアゲハントの方が一般受けするんだけどな。蝶と蛾だぞ。

 まぁ俺がアゲハントとドクケイルのどっちを使うかと言われたらドクケイルではあるけども。俺のバトルスタイルに合うのはドクケイルの方だろうし。

 

「ムサシの趣味はさっぱり分からんのニャ……」

 

「ま、まぁケムッソを捕まえる事に変わりはないみたいだし……」

 

「そーゆー訳で!そのケムッソは私が可愛い可愛いドクケイルに育てんのよ!そこ退きなさい!」

 

「何よ!このケムッソは私がゲットしてアゲハントにするの!」

 

 睨み合うハルカとムサシ。……言えない。ケムッソの分岐進化はトレーナーが介入できないランダム性とは言えない空気になってる。

 

「ま、そーゆー事だ!行けサボネア!……って、だから痛いって!!」

 

 いよいよコジロウも本格参戦してサボネアに抱き付かれる。ハルカも俺に丸投げするのは気が引けたのか、ムサシ相手にムキになっているのか分からないが、アチャモを出してタッグバトルになる。

 

「アチャモ、お願い!!」

 

「チャモー!」

 

 思えば本格的にハルカとタッグを組むのはこれが初めてだな。ハルカとアチャモが戦い易いようにフォローもした方が良いな。

 

「ハブネーク、ポイズンテール!」

 

「サボネア、ミサイルばりだ!!」

 

「イーブイ、まもる!」

 

「アチャモ、ひのこ!」

 

 ハブネークのポイズンテールをイーブイのまもるで凌ぎ、サボネアのミサイルばりはアチャモのひのこで正面から相殺。まずはここでアチャモにバフを与える。

 

「イーブイ、てだすけ!」

 

「アチャモ!もう一度ひのこよ!」

 

 ハルカの指示を先読みしててだすけでアチャモの技の威力を上げ、サボネアとハブネークのダメージを増やす。この世界では範囲技でなくても複数の相手に攻撃できる事もあるから、てだすけはより有効な技になっている。

 

「ハブネーク、かみつく攻撃よ!」

 

「すなかけ!」

 

 接近してきたハブネークにすなかけで目潰し。視界を奪ってかみつくを回避。大きな隙なのはハルカも分かったようで視界の悪いハブネークにつつくで追撃する。

 

「イーブイ、どばどばオーラ!」

 

 そこを妹イーブイのどばどばオーラでハブネークをノックアウト。続いてサボネアも再度てだすけのバフを受けたアチャモがひのこで仕留める。

 

「やったかも!」

 

「いや、ここからだ。ここで引き下がる程、まっすぐな性根はしてないぞこいつらは」

 

「そういう事!やっぱりハブネーク達はまだまだ育てが足りないようね……だったらいっけー!アーボック!パルシェン!」

 

「お前達もだマタドガスにウツボット!…だから俺を呑むなーー!!」

 

「頼むぞロズレイド!」

 

 奴らは数の暴力で勝つ事にしたのか、四体同時に出してくるので俺は妹イーブイを下げ、ロズレイドを出す。

 イーブイ兄妹もマリルリ、キモリ、キノココもこいつら四体を相手取れる程仕上がっていない。ならばロズレイドだけでやるしかない。無理に他のポケモン達を庇わせる方が不利になる。

 ハルカにもアチャモを戻すように言ってバトル開始。

 

「はなふぶき!」

 

 四対一だろうが、トレーナーとポケモンの実力が遥かに上ならば何も問題はない。相性の不利だろうが簡単に覆せる。それがレベル差の暴力というものだ。

 

「アーボック!どくばり攻撃!」

 

「ウツボット!はっぱカッターだ!」

 

 アーボックとウツボットが飛び道具でロズレイドに攻撃しようとするも、はなふぶきの花弁に阻まれてロズレイドには届かない。ついでに言えば花弁に視界を遮られてロズレイドの位置も掴めていないほぼヤケクソの攻撃だった。

 

「にほんばれ!からの連続ウェザーボール!」

 

 はなふぶきの範囲攻撃でダメージを与えつつ、視界を塞ぎ、その間ににほんばれ。晴れ天候の影響でほのお技になったウェザーボールをアーボック、マタドガス、ウツボットに撃ち込んで、最後にパルシェンにソーラービーム。あっという間に四体とも蹴散らしてやった。……よわっ。まさか全員はなふぶきの後の一撃だけで倒せるとは。

 

「やっぱりミテキとロズレイドって凄いかも!四対一で圧倒してるわ!!」

 

 ハルカからの褒め言葉に俺は格段に気分が良くなる。こういう時はロケット団も役に立つものだ。

 

「キィーッ!!いっつもいっつも邪魔ばっかしてあのジャリンコォー!!」

 

「いくらなんでもたった一体で四体を纏めて倒すなんて強過ぎじゃないか!?」

 

 逆だ。お前らが弱過ぎるの。アーボックもマタドガスもウツボットもパルシェンも良く育ってんのに、お前らが力を引き出せてないの。そもそもダブルバトルに慣れてもいないのに一辺にポケモン出したって意味がない。むしろそのせいで指示が全員に行き渡らずにゴチャゴチャ停滞してたのが一番の敗因だ。マタドガスとパルシェン、技出してねーぞ。

 まぁその辺を態々説明してやる義理はないのでそろそろトドメのやなかんじーと行くか。

 

「こうなったら、ニャース!アンタが戦いなさい!」

 

「ニャ!?」

 

「ほらほらすてみタックル!!」

 

「ニャーはそんな技使えないニャー!!」

 

 ヤケになったムサシが乱暴にニャースをこっちにぶん投げる。もはやあいつがなげつけるを使ってるレベルだ。まぁニャース如きが投げられても問題はないのでソーラービームで迎撃しようか。

 

「ヘラクロス!メガホーンだ!!」

 

 だが突如ヘラクロスが割り込んで投げつけられたニャースを角で跳ね返した。しかもアレ鳩尾に入ってね?急所に当たったって奴だ。痛そう。

 

「ニャアアアアアァァァッ!!?」

 

 ヘラクロスが来た方向を見れば俺達と同年代思われる少年が立っていた。

 

「なんだか知らないけど四対一の上、更にもう一体使うなんて卑怯じゃないか!」

 

「そうは言うけどやられてたのはどう見ても俺達じゃないか!!」

 

「それはそれでどうなんだ!?」

 

 四対一でかかってもズタボロにやられたお前らの弱さを物語ってるな。別にこのトレーナーがニャースを迎撃しなくてもソーラービームでぶちのめしたしな。

 

「うっさい!卑怯は私らのトレードマークなのよ!!」

 

「まぁなんだって良いさ!ロズレイド、ソーラービーム!!」

 

「ロォォォォズ!!」

 

 ムサシが少年にいちゃもんを付けようとしていたので即座にソーラービームをお見舞いしてやる。にほんばれの効果はまだ持続してるんだよ。

 

「「「やなかんじ〜!!」」」

 

 こうして今日もまたロケット団は空の彼方へ。あー無駄なバトルだった。

 

「ご苦労様、ロズレイド」

 

 ロズレイドを労い、ボールに戻す。すると乱入してきたトレーナーは少し気まずそうに話しかけてくる。

 

「もしかして余計なお世話だったかな?」

 

「ぜ〜んぜん。むしろスカッとした」

 

 ロケット団に正論を叩き付けた様は格好良かったぜ。あいつらがそれに聞く耳持つかは別として。

 改めて過剰防衛の礼を言うとハルカが困り果てながら大声を上げる。

 

「あれ!?ケムッソどこ行っちゃったの〜!?折角見つけたのに〜!!」

 

 ゲットしようと追っていたケムッソが姿を消していた。

 ロケット団とバトルしている間にどっか行ってしまったようだ。そらそうよな。

 すると乱入少年はそんなハルカの様子を見てまた助け船を出してくれた。

 

「君達、ケムッソを探しているの?」

 

****

 

 ヘラクロス使いの少年の名はタクマというらしい。なんでもこの森の管理をする家で生まれ育ったらしく、それ故この森の事に詳しく、同時にこの森の外の世界の事をほとんど知らないんだとか。

 旅に出る事自体に興味はあるそうなんだが、中々勇気が出ないのが実情らしい。

 

 う〜ん、この世界じゃ10歳になったら大半の子供はポケモントレーナーとして旅立つからそこまで勇気が要る事かな?勇気云々じゃなくてこの森が心配で決心が付かないってのが正確なんじゃないか?

 

 タクマの協力を得てケムッソの出現スポットに行き、発見。ハルカはルリリの時同様、アチャモでゲットに挑み、ダメージが足りなかったりして中々難航したが無事ゲットした。

 

「やったやった!ケムッソ、ゲットかも!」

 

 アゲハントに憧れる想いからゲットできたケムッソのボールを掲げて喜ぶハルカ。

 するとそんなハルカが掲げたモンスターボールに向かって妙な機械のアームが伸びて来た。ハルカがゲットしたケムッソを横取りしに来たか。絶対来ると思ったぜ。

 ロケット団の気球のアームをロズレイドのマジカルリーフで切断して邪魔したら、ムサシが逆ギレして来たので怒鳴っている途中ではかいこうせんでやなかんじーにしてやった。

 

 こうしてハルカがケムッソをゲットしたのでサトシ達の元に戻ると何故かタクマと瓜二つな少年がサトシ達と談笑していた。一瞬ドッペルゲンガーかなんかかと思ったが普通に双子だった。サトシ達と交流していたのが兄のタクマ・イチロウで俺達に協力してくれたのが弟のタクマ・ジロウだった。

 

「いやタクマって名前じゃなくて苗字なの?」

 

 思わず突っ込んだわ。

 日本じゃ読み方としちゃ有り得なくはないけど、タクマ・イチロウとタクマ・ジロウて。どんなネーミングだよアニメスタッフ。未だに今世の自分の苗字知らない俺が言うのもなんだけどさ。

 兄の方は今の今まで森の外へトレーナーとしての旅に出ており、丁度帰って来たので今度は弟の方が旅に出て兄が森を守るとかそんな話をしていた。親はどうしてんのとかは突っ込まないぞ。

 

 そうしてタクマ兄弟も誘って昼食となったのだが、ハルカのケムッソがタケシの作ったシチューも俺が作ったポテトサラダもポケモン達のポケモンフーズも全部瞬く間に食べ尽くしてしまった。

 

「おお、ガツガツ食ってんな」

 

「も、もしかしてこのケムッソ……」

 

「とんでもなく食いしん坊……?」

 

 ポケモンはトレーナーに似ると言うが、これは元々似た者同士か。

 お昼ご飯を独占された事に関して妹イーブイがケムッソになんか文句言ってるがケムッソは何処吹く風。そもそも怒られている事に気付いているかも怪しい。つーか妹イーブイがキレてんのにその場で寝るし。

 偶に何考えてんのか良く分からんポケモンっているよな。前にそういうポケモンに遭遇してサーナイトが会話が成立しないと頭を抑えていたのを思い出した。

 

****

 

 タクマ兄弟を交えた昼食を仕切り直して夕方、タクマ兄弟と別れ、スヤスヤ眠るケムッソを眺めてニコニコしているハルカを見て俺達は思わず頬が緩む。

 

「ハルカの奴、嬉しそうだな」

 

「なんせあんなにアゲハントが気に入ってたからな。進化前のケムッソも可愛くて仕方ないんだろ」

 

「アゲハントに進化するのが楽しみだよね」

 

 最後のマサトの言葉に俺はみんなには事前に言っておいた方が良いと思ってケムッソの進化について教える事にする。

 

「ハルカのケムッソがアゲハントになるかはまだ分からないけどな」

 

「「「え?」」」

 

 ハルカがゲットした個体がアニメの個体とは違った場合、マユルドに進化してドクケイルになる可能性だってある。この辺の原作とか覚えてないからハルカが捕まえた個体がアニメ通りの個体とは限らない。

 

「俺に当時ヒコザルだったゴウカザルをくれたナナカマド博士はポケモンの進化について研究してて、そのナナカマド博士が出した論文にケムッソの分岐進化について纏められたものがあったんだけど、その論文によるとアゲハント同士の間に生まれたケムッソがドクケイルに進化して、その逆のパターンも実例があるらしい。ケムッソのカラサリスとマユルドへの進化は完全にランダムってのが今の定説。少なくとも進化傾向は遺伝しないらしい」

 

 ゲームじゃ性格値の割った数がどうたらとかあったと思うけど、よく覚えていない上、それをゲーム中で知る方法は無いそうな。そもそもここはゲームじゃないからどの道トレーナーにケムッソの進化を左右する術はない。

 

「大半の分岐進化は外部から干渉して誘導できるけど、ケムッソの進化はケムッソ本人の意思すら無視される。本当に条件が何も分からない。生まれた時から決まってるんじゃないかとも言われてるけど、未だに解明されていない」

 

「じゃあ、お姉ちゃんのケムッソはもしかしたらマユルドとドクケイルに進化しちゃうかもしれないの?お姉ちゃん、あんなにアゲハントを気に入ってるのに……」

 

「その時なんて言葉を掛ければ良いんだろうな……」

 

 俺の説明にマサトとサトシの顔が少し暗くなる。もしケムッソがマユルドに進化してドクケイルになると知った時、ハルカがガッカリするんじゃないかと思ったんだろう。

 

「まぁそんなに心配する必要はないと思うぞ」

 

 こんな話題を振った俺が言うのもなんだが、ぶっちゃけアゲハントじゃなくてドクケイルになったからってなんだって話なんだよなこれ。

 

「例えアゲハントじゃなくてドクケイルになったとしても、ハルカなら大切に育てられるだろ」

 

 例えドクケイルになってもなんだかんだで一緒に笑ってコンテストに出るのは分かり切ってるからな。

 俺の結論を聞いて同じ事を思ったらしいサトシ達は顔を見合わせ、ケムッソを眺めるハルカを見て、笑って頷いた。

 

 ドクケイルに進化してもハルカの愛情は変わらない。

 

 だから進化先なんて細かく考えず、元気に育てよケムッソ。




実際には普通にアニメと同じ個体です。
ついでにはかいこうせんで吹き飛んだムサシの方もアニメの個体をゲットしてます。ただし、アニメよりズタボロな上、少々ゲットした時間は遅れているでしょうが。

次回からようやくカナズミシティに。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。