ポケットモンスター 遥かなるチャンピオンロード   作:メンマ46号

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正直この話はスキップしようと思いましたが、ジムリーダー登場回だからカットしていきなりジム戦は不自然だし、ジム戦前に書きたい事もあったらその流れを組めるように書きました。


トレーナーズスクールはボタン連打でスルーしがち

 sideミテキ

 

 やっとカナズミシティに着いた。長かった。いやホントマジで。トウカシティを出てからもう何話経つだろう。

 

 観光も兼ねて来たカナズミタワーで街の景色を見下ろす。おお、絶景絶景。

 

「良い眺め!」

 

「だね!」

 

「ここんとこ森ばっかで流石に気が滅入ってたからなぁ」

 

「カナズミジムはあの辺りにあるはずだ」

 

 ハルカ達と一緒に展望台からの景色を眺めつつ、タケシがガイドブックを手にカナズミジムの位置を指差す。マリルリもキモリもキノココも順調だし、レベルも近い具合にまで揃えた。問題なくジム戦に挑める。

 

「みんなー!」

 

 ここで何故かはぐれていたサトシが後ろから声をかけて来たので、振り向くと俺達は全員ギョッとする。理由はサトシの格好だ。

 サトシの服装は妙な缶バッジをいくつも付けた変な法被を着て、ダッセェニット帽にダッセェヤシの葉の装飾のサングラス、カナズミタワーそのまんまの耳飾り、カナズミタワーのフラッグを手に持つと言うダサさ全開のアホな格好だったからだ。

 

「どうだこれ?中々カッコいいだろ?」

 

「サトシ…」

 

「ピカピ…」

 

「趣味悪いかも……」

 

「こいつこんなアホだっけ?」

 

「他人の振りしよ……」

 

 浮かれ過ぎてこんな格好をしたようだが、周りの視線が恥ずかしくて仕方ない。当然俺達は関わりたくないのでサトシから距離を置いて歩く。

 

「待ってくれよ〜」

 

「もうサイテー」

 

「何でだよ?」

 

「自分で考えるんだな」

 

「タケシ、サトシにそれができたらこんな有様になってねーよ」

 

「ミテキ、それどういう意味だよ!?」

 

 言葉のまんまだ。ピカチュウすらドン引きしてんじゃねーか。街に来たからか、ホウエンに来て初のジム戦だからなのかは分からないが、この浮かれ具合はヤバいだろ。

 しかもそんなもんに金使って……荷物も増えるし、こいつこれまでの旅もタケシとカスミがいなかったら、金欠になってロケット団の二番煎じの空腹状態で旅をする事になってたんじゃないか?

 

「「ん?」」

 

 そんなサトシに呆れながら歩いていると行く先のベンチの下で一匹のニョロモが不安そうに縮こまっていた。マサトもニョロモに気付いたのか真っ先に駆け寄る。

 

「ねぇ君、どうしたの?」

 

「ニョロ!?」

 

「もし困ってるなら僕が助けてあげるよ」

 

 困っているポケモンに迷わず手を差し伸べてあげられるのは良い事だ。人によっては問答無用で捕まえようとする奴もいるからな。

 マサトに悪意がない事が分かったニョロモは恐る恐るベンチの下から出て来た。マサトはニョロモを抱き上げて話を聞き始める。

 

「君もしかして迷子?あれ?なんだろコレ?」

 

 マサトが抱き上げたニョロモの尻尾にはモンスターボールの模様が刺繍された布が巻き付けられている。少なくとも一般トレーナーのポケモンじゃなさそうだけど。

 

「ニョロモ!」

 

 ニョロモの尻尾の布のマークが何なのか考えていると、俺達により少しだけ歳上っぽい女性が駆け寄って来て、ニョロモに声をかけた。ニョロモもその女性の顔を見るとマサトの腕から抜け出して女性に飛び付いた。

 

「良かった!ずっと探していましたのよ!?貴方達が見つけて下さったのですね?どうもありがとうございます!」

 

「あ、はい……」

 

「え〜と……状況が理解できないんですけど……」

 

 とりあえず説明を頼もうとしたタイミングで大谷ボイスの子供の声が聞こえて来た。でもピカチュウは俺達の足元にいる。

 

「先生ー!ニョロモ、見つかったんですね?」

 

「良かったわ〜」

 

 女性を先生と呼んでここに来たのはマサトと同年代くらいの子供達。そのほとんどが小さいポケモンを連れている。……なるほどね。このガキんちょ達……

 

「今度は逃すなよコウタ!お前のせいで授業が滅茶苦茶になったんだぞ!」

 

 ピカチュウボイスなガキが如何にも内気そうな子供を高圧的な言い方で責め立てる。いるよねこーゆークソガキ。周りにマウント取って威張り散らす俺の嫌いなタイプだ。

 案の定ポッポを抱えた女の子にそんな言い方はないだろうと口答えされている。ニョロモに逃げられた子はポケモンが怖くて触らないらしい。それを知っててあんな言い方をするのか。やっぱりクソガキだ。

 

「二人共。そこまでにしましょうね。ではコウタ君。あとは私が連れて参りますわね。泣く事はございません。ここまで良く頑張りましたわ。さぁ皆さん、トレーナーズスクールに戻りましょう」

 

「やっぱりトレーナーズスクールの子供達だったのか」

 

 予想通りトレーナーズスクールの生徒だったらしい。しかしポケモン怖いのにトレーナーズスクールに通ってんのかあのガキんちょ。

 

「トレーナーズスクール?」

 

「ポケモンについて学ぶ学校さ。カントーにもあるんじゃないか?」

 

 トレーナーズスクールかぁ。コトブキシティにもあったけど、基礎知識は旅に出る前に一通り身に付けたし、ゲームと違って絶対行かなきゃいけない訳じゃなかったからスルーして街の北側にスボミー捕まえに行って、その後普通にクロガネシティに向かったんだよな。

 

 え、ポケッチ?いらねーから持ってないよ。なんかピエロのおっさんが引換券を押し渡して来たけどその辺のゴミ箱に捨てて先を急いだ。実物を渡されても同じ事したと思う。実際ゲームでの孵化作業以外に価値あるか?あんなもん。

 

「この子達は私の担当しているポケモントレーナー入門クラスの生徒達ですの」

 

「実際通ってる奴なんて初めて見たわ」

 

 つーか10歳になればみんなトレーナーになれるから、自分で勉強するし、トレーナー知識は結構一般常識で通ってるから態々通う程のものでもない。

 

「良いなぁ〜僕もそのクラスに入りたいなぁ!ね、良いでしょお姉ちゃん!」

 

「そんなの急に言われても……」

 

 だがマサトはその入門クラスに心惹かれるものがあったらしく、ハルカに入学をおねだりしてる。それはセンリさんに頼む事だと思うけど。

 

「そうだよ、マサト。それよりまずはジム戦だぜ」

 

「サトシの言う通り。つーかお前はジムリーダーの子なんだからセンリさんに頼めばいくらでも教えて貰えんだろ」

 

 態々そんな学校に通わずとも現役のジムリーダーのセンリさんに教わった方がよっぽど為になると思うぞ。てかぶっちゃけトレーナーになる直前に詰め込みで覚えれば問題ないぞ。

 

「貴方達、ジム戦をしにいらしたの?」

 

「はい。俺とミテキはカナズミジムに挑戦しに来たんです!」

 

「それなら丁度良いですわ!カナズミジムはトレーナーズスクールの隣にありますの!ジムにいらっしゃる前にスクールを見学されたら如何かしら?」

 

 こうしてトレーナーズスクールの先生、ツツジさんの勧めで俺達はトレーナーズスクールの見学をする事になった。ぶっちゃけ毛ほども興味はなかったがどう考えてもマサトが駄々を捏ねるのが目に見えていたのと、タケシが乗り気だったので、俺達もその話に乗る事にした。

 

****

 

「それはそれは。お二人はトウカジムのお子さんなのですね。それにあのカントーのニビジムの元ジムリーダーさんまで!」

 

 ツツジさんの紹介でこのトレーナーズスクールに来た俺達は校長の案内の元、トレーナーズスクールの見学を開始した。

 

「あの、俺早くジム戦に行きたいんですけど……」

 

「まぁその前に自慢のスクールを見て下さい」

 

 そう言って案内された教室では明らかに俺達より歳上の人達が講義を受けていた。まるで大学のそれだ。

 

「ここはポケモンドクターを目指す生徒達のクラスです」

 

「なるほど」

 

 ポケモンドクターになるには専門の養成学校に通うのが一般的だが、どうやらこのトレーナーズスクールはその為の専門コースも用意しているらしい。これは知らなかったな。

 トレーナーズスクールはゲームの影響でバトルの初歩的な基礎知識を自慢気に語ってドヤ顔してるとかそんなイメージがあったが、むしろこういう専門的な学問がメインなのかもな。

 

「ポケモンドクターか」

 

「ジョーイさんなんかもこういうとこで資格を取ってる訳か」

 

「ジム戦…」

 

「入門クラス…」

 

 確かタケシは最終的にはポケモンドクターを目指す事になるし、ポケモンブリーダーとしてもこういうのには興味が湧くんだろう。

 次に案内されたのは体育館のような場所でトレーナーとポケモン達がマットの上で体操なんかをして動きを学んでいた。

 

「こちらはポケモンコンテスト専門クラス」

 

「ポケモンコンテスト!?」

 

 コンテストと聞いてハルカの目の色が変わってキラキラし始めた。かわえー。

 

 練習風景を見てみればボールから出たニューラが登場と同時に身を捻ってポージングと共に着地という正にコンテストの一次審査の動きを練習していた。他にも二次審査のコンテストバトルの練習をしている人達もいる。お、バタフリーとビビヨンか。

 

「素敵素敵〜!」

 

「ハルカは本当にコンテストが好きだなぁ」

 

 そういう所が本当に可愛い。

 

「ジム戦…」

 

「入門クラス…」

 

 うるせぇぞお前ら。

 

 最後に案内されたのはポケモンバトル専門クラス。と言ってもこれはほぼ俺達が普段やってるバトルと何も変わらない。ジム戦や地方リーグに出た事がある奴なら今更学ぶ事なんてない。

 

「バクフーン、かえんほうしゃ!」

 

「オーダイル、ハイドロポンプ!」

 

 使っているのはジョウト御三家のバクフーンとオーダイルだ。そこはホウエンの御三家じゃねぇのかよ。しかしオーダイルか。実物を目の前で見るのは初めてだ。ハートゴールドじゃワニノコを選んだからちょっと心惹かれる。

 

 しかしここでさっきから一番見学したいクラスを見せて貰えないでいるマサトの不満が爆発する。

 

「僕が見たいのはツツジ先生のトレーナー入門クラスなんだよ〜!」

 

「案内して貰っておいて駄々捏ねんな」

 

 流石に見学の順番にケチ付けんのは図々しいので注意したが、逆に校長が申し訳なさそうに入門クラスへ案内してくれる。こんなクソガキの為に態々すいません。

 

****

 

「さぁ、ここがツツジ君のクラスですよ」

 

『という訳じゃ!ポケモンには様々なタイプがあるという事が分かったかな?』

 

「「「はーい!」」」

 

 校長に案内されてやって来たツツジさんの担当クラスの扉を開けたら大画面でオーキド博士が子供向けのリモート授業をしていた。

 

「オーキド博士!?」

 

『おお〜!サトシ!それにタケシ、ミテキ君にハルカ君も!』

 

「お久しぶりです」

 

「どもっす」

 

「こんにちは!」

 

 まさかここでこの川柳爺さんと顔を合わせる事になるとは。わざわざ他の地方のガキんちょ達の為にリモート授業してんのか。研究で忙しいだろうに、そんな時間どうやって捻出してんのやら。

 

『それでは君がマサト君だね?』

 

「えと…その、あの……」

 

 まさかマサトもこんな形でオーキド博士に会えるとは思っていなかったのか、あまりの事に固まって言葉も出ないようだ。呆れたハルカに言われてどうにか挨拶している。

 

「トレーナーズスクールではTV電話でオーキド博士に講義をお願いしてますの」

 

「なんつー贅沢な」

 

 ツツジさんの説明に思わず呟く。川柳ばっか詠んでる為、俺の地元のフタバタウンじゃポケモン川柳の人としか認識してないアホまでいる始末だが、それでもポケモン研究の権威だ。それをトレーナーズスクールの講義に呼べるとか贅沢なんてもんじゃない。

 

『サトシ達がここにおるという事はジム戦は終わったのか?サトシもミテキ君もバッジはゲットできたのか?ツツジ君は強いからのぉ』

 

「いいえ、博士。ジム戦はこれからです」

 

「ツツジさんが強い……?って事はツツジさんがジムリーダー!?」

 

 あー…そういえばそうだった。ポケモンセンターでカナズミジムを調べた時、顔写真載ってたわ。そう言えば。すっかり忘れてた。だって最近森ばっかで本当に気が滅入ってたからなぁ。

 

「ツツジ君は我が校始まって以来の優秀な生徒でしてな。文句無しの推薦でジムリーダーに抜擢されたのです」

 

「ん?という事はこのトレーナーズスクールってもしかしてジムリーダー資格を取る為のカリキュラムも?」

 

「ええ。そういったポケモン関連の資格を取得する事こそがこのトレーナーズスクールの本分です」

 

 ……正直舐めてたわトレーナーズスクール。ポケモンドクターにジムリーダー。専門的な資格を取る為のカリキュラムを幾つも取り扱ってる。むしろゲームなんかで出たチュートリアルの方が完全にオマケじゃん。

 

「そうだったんですか……」

 

「サトシさん、ミテキさん。明日まではここの講義がありますので、ジム戦は明後日という事でよろしいでしょうか?」

 

「そういう事なら」

 

「俺も良いですよ!」

 

 俺もサトシもツツジさんの申し出を了承する。ここまで散々森ばっか歩いてお預け食らって来たんだ。二日くらい大した事はない。それに俺達はジムに挑戦させて貰う立場。向こうの都合にある程度合わせるのは当然だ。

 

『三人共、悔いのないバトルをな。ではみんなもいずれはポケモンゲットじゃぞ〜!』

 

 そう言ってオーキド博士は通信を切ろうとした。その時マサトが一歩前に出てオーキド博士に呼びかけた。

 

「お、オーキド博士!ぼ、僕博士の本全部持ってます!ラジオのポケモン講座も聞いてます!それで…それで……」

 

 そりゃ凄えな。何冊本出してんのか俺も知らねえぞ。オーキド博士の研究の数を考えれば出した本の数は10や20じゃきかないだろう。

 

「僕、オーキド博士を尊敬してます!」

 

『それは光栄じゃ。ありがとうマサト君!』

 

 そう言ってオーキド博士は今度こそ通信を切った。最後の笑顔が印象的だったな。子供から面と向かってああ言われる事は多分少ないんだろう。周りにいる子供だとサトシはこんなだし、孫二人も描写的にそんな事言わないだろうし、レッドに至っては碌に連絡寄越さないし。

 

「おい、お前オーキド博士の本持ってんなら、この問題に答えてみろ!」

 

 そんな事を考えていればさっきカナズミタワーで会った大谷ボイスのガキがマサトにマウント取ろうと絡んでいた。

 

「ひこうタイプのポケモンに有効な技はなんだ?」

 

「簡単だよ!でんきタイプやいわタイプ、こおりタイプの技さ!」

 

 笑顔で何でもないように当たり前の回答をしたマサトを見てマウント小僧はムッとした顔になる。

 次はあなをほるを使うポケモンへの有効な技は何かと問い、じしんやマグニチュード、じならしだと完璧に回答するマサト。マウントクソガキは更に面白くなさそうな顔をする。

 

「確かに知識だけはあるようだな…!」

 

「そこまでよタクト君。ここでのお勉強は勝ち負けを決める為にしている訳ではないのですよ」

 

「友達と共に学び、成長していく。これがトレーナーズスクールのモットーなのです」

 

 ツツジさんと校長にそう言われて黙り込む。ようやくうるさいのが黙った事で授業を再開する。丁度良い機会という事でツツジさんに頼まれて俺とサトシ、タケシは子供達の前に並び立つ。

 

「タケシさんはカントー地方の公認ジム、ニビジムの元ジムリーダー。サトシさんはジョウトリーグ・シロガネ大会ベスト8、ミテキさんはシンオウリーグ・スズラン大会準優勝の実力者なんですよ」

 

「なんだどっちも優勝してねーじゃん」

 

 あ?

 

 心底馬鹿にするかのように発言したのはさっきの伝説厨と同じ名前をしたマウント小僧だ。

 流石にムッと来たのか、サトシが少し強い口調で言い返す。

 

「あのなぁ、優勝してなくても決勝トーナメントでそこまで行くのは大変なんだぞ!」

 

「負けは負けだろうが!オメーらみてーのが初出場で準優勝なら、俺が出場したら優勝は頂きだぜ!」

 

「……ホンットやなやつ」

 

 近くの席にいた女の子が嫌そうに呟いた。あんな横暴さじゃ同じ名前でも伝説厨のようにはいかないと思うぞ。手持ちポケモンにすら嫌われて言う事聞いて貰えずに敗退するのが目に見えてる。

 

「タクト君、良い加減にしなさい!」

 

 ツツジさんがここで一喝。正直説教するのが遅い気がするが、流石に先生であるツツジさんに叱られては何も言えないのか、マウント小僧は大人しくなった。

 

「タケシさん、ミテキさん、サトシさん、ハルカさん。子供達に皆さんのポケモンを見せて頂けませんか?」

 

 サトシはピカチュウ、マリル、スバメ、キモリ。タケシはフォレトスとハスボー。ハルカはアチャモとルリリ、ケムッソを出した。

 俺はロズレイドとイーブイ兄妹を出す。すると子供達は一気にロズレイドの周りに集まって騒ぎ出した。

 

「ロズレイドだー!スズラン大会観てたよー!」

 

「シンオウチャンピオンと同じポケモンだー!」

 

「ミテキのロズレイドと言えば予選でのバトルが凄かったよね!」

 

「何言ってるの!ロズレイドのベストバウトは三回戦だよ!相性の悪いメタグロス相手にあそこまで戦えたんだし、マンムーを倒したのはデカいよ!」

 

「ねぇねぇゴウカザルはいないのー!?ガブリアスはー!?」

 

 ガキんちょ達がわらわらと俺にも群がって来る。おいやめろ。押すんじゃない。勝手に俺のモンスターボールに触るな。マリルリ達はジム戦前にツツジさんに見せる気は無いんだよ。

 

 その様子を見てサトシはガックリと肩を落としていた。俺のロズレイドばかりが注目を集めて自分達は見向きもされないからだろう。

 

「な、何だよこの扱いの差は……俺だってシロガネ大会で決勝トーナメントに出たんだぜ……」

 

「ピィカ……」

 

「まぁミテキはリーグ初出場で準優勝だからな……大会が始まった時からも注目度が段違いだったみたいだし」

 

「なんで?」

 

「なんでってそりゃミテキはシンオウの……」

 

 見向きもされないサトシと元ジムリーダーという点からそれなりに話しかけられているタケシをよそに、まーたあのマウント小僧がマサトに喧嘩をふっかけていた。

 

「おい!さっきの続きだ!シンオウリーグ・スズラン大会がアイツが出した超珍しいポケモンを答えてみろよ!」

 

「簡単さ!ミテキのポケモンで珍しいポケモントップ3は化石ポケモンのラムパルドとリージョンフォームの…」

 

 俺と俺のポケモンを使ってマウント取ってんじゃねぇよ。あとマサト、読者にネタバレしようとすんじゃねえ。俺のポケモンの紹介はあくまで直接登場する時だ。

 

「ツツジ先生ならあのグリーンだって倒しちゃうかもな!次のワールドジムリーダーズトーナメントの優勝はツツジ先生だぜ!」

 

「何言ってるのさ!次のワールドジムリーダーズトーナメントで優勝するのは僕のパパだよ!」

 

 何が飛躍してそんな話題になったのか。恐らく何かの拍子にマサトがジムリーダーの子供と知った事が原因なんだろうが、マサトとマウント小僧は次のワールドジムリーダーズトーナメントの優勝がセンリさんかツツジさんかで言い争ってる。俺は普通にグリーンだと思うぞ。

 

「ねぇミテキ」

 

「ん?どしたハルカ」

 

 言い争っているマサト達に目線を固定しながらチョンチョンと肩を突いてハルカが耳打ちしてくる。

 

「わーるどじむりーだーずとーなめんと…って何?」

 

『『えぇー!?』』

 

 まさかの発言に教室全体で驚愕の叫び声が響いた。勿論俺も叫んだ。いやいや流石に擁護できんわ。お前仮にもジムリーダーの子供だろう?

 仕方ないので俺がハルカに教えてあげる事にする。

 

「ジムリーダー世界最強を決める大会だよ。PWCSはどうしてもチャンピオン同士の戦いになるマスターズトーナメントに目が行きがちだからジムリーダーの本気のバトルが見られるほぼ唯一の機会と言ってもいい」

 

 とはいえ、普段ジムリーダーには地方リーグの為のジム戦という仕事があるから、開催は何年もかけて細かく日程を調整した上で行われる。ある意味PWCSよりも手間がかかっている。

 

 この説明を読んだ大半の人は予想が付いていると思うが、前回のワールドジムリーダーズトーナメントの優勝者はカントー地方・トキワジムのジムリーダー、グリーンだ。

 ジムリーダーでありながら数いるチャンピオン達を押しのけてマスターズエイトの上位に食い込んでいるんだから、ある意味当然だけど。

 

「前回の大会からの期間を考えれば……開催はもうそろそろか?今年の地方リーグが終わったら告知されるかもな」

 

「次は誰が優勝するんだろうな!?やっぱりグリーンさんが連覇するのかな!?」

 

 話題がワールドジムリーダーズトーナメントになった事でタケシとサトシも開催が近いのではないかという予想とグリーンの連覇の可能性を口にする。そこで当然マサトが突っかかる。

 

「何言ってるのさ!優勝するのは僕のパパだよ!」

 

 でも優勝候補筆頭はやっぱりグリーンだろう。優勝候補になるのは他にもいるが。ガラル地方・ナックルジムのキバナとか、ホウエンならルネジムのミクリやアダン、勿論四天王候補ともされるセンリさんだってその一人だろう。他に有力なのはイッシュ地方・ソウリュウジムのシャガ、ジョウト地方・フスベジムのイブキ、カロス地方・エイセツジムのウルップなんかじゃないかな。

 

「タケシは出ないのか?」

 

「いや、俺はもうブリーダーだし、自分が最強だなんて思うほどバトルに自信がある訳でもない。いつかは弟が出るかもしれないけどな」

 

 聞けばこれまでも弟妹達の世話もあってワールドジムリーダーズトーナメントに参加した事はないらしい。グリーンに勝てるとも思えなかったそうだ。

 もう教室の中の話題は完全にワールドジムリーダーズトーナメントだ。そこでツツジさんがパンパンと柏手を打って、場の空気をリセットした。授業進まないもんな。

 

「マサト君、明日は一日体験入学をしてこのスクールのポケモンを使って、ポケモンバトルをしてみませんか?」

 

「えっ!?良いのー!?」

 

 校長の提案にマサトは目を輝かせる。まぁどうせジム戦は明後日だし、明日一日マサトが体験入学しても問題はないだろう。

 そう思って明日はマリルリ達の最終調整にしようかと考えていた時、事は起こった。

 

「おっ!とっ!とおー!」

 

 さっきから鬱陶しいマウント小僧があまりにもわざとらしい声で大袈裟によろけて妹イーブイの尻尾を踏みにかかった。

 それに気付いた兄イーブイが妹イーブイを庇い、兄イーブイの尻尾が踏まれた。

 

「ブイィィッ!!」

 

「イーブイ!?大丈夫か!?」

 

 俺は傷薬を取り出して、踏みつけられた兄イーブイの尻尾を診る。サトシとタケシ、ハルカも慌てて駆け寄り、兄イーブイを心配してくれる。妹イーブイも兄が自分を庇って尻尾を踏まれた事でオロオロしてしまっている。

 

「すいません、うっかりそのイーブイの尻尾を……」

 

「うっかり!?今わざとやったんじゃない!」

 

「まさか。俺がそんな事する訳ないだろう?」

 

 白々しい棒読みで()()()()()()謝り、女の子の指摘も否定する。コイツ……!!

 流石に一言言ってやろうと思ったら、先にマサトがクソガキを睨みながら口を開いた。

 

「ねえ、謝る相手が違うんじゃないの?」

 

 マサトが指摘した通り、このガキ、いつまで経ってもイーブイ兄妹に謝らない。

 だかそれを言われても何か返す事なく、クソガキはマサトに向かって舌を出した。

 

「べ」

 

 このクソガキ、マサトに喧嘩売る為にやっぱりわざと妹イーブイの尻尾を踏もうとしがったな……!!

 

「あいつ……!」

 

「なんて子なの……!」

 

 サトシもハルカもクソガキを睨む。

 潰す。ガキだろうと知った事か。痛い目遭わせて泣かす。

 

 そう思って一歩を踏み出そうとしたら、被害に遭った兄イーブイが俺の前に出て、俺の足を止める。

 

「ブイ!ブイブブイ!」

 

「イーブイ……?」

 

 そしてすぐにマサトの隣に行き、前足でマサトの足をポンポンと軽く叩いた。

 

「イーブイ?どうしたの?」

 

「……まさか、お前が明日のバトルでマサトと組んであいつと戦うってのか?」

 

「ブイ!」

 

 こうしてなし崩し的にマサトと俺の兄イーブイのコンビでこのトレーナーズスクールのポケモンを使うマウントクソガキとバトルをする事に決まった。

 自分のポケモンを貸す以上、俺はマサトに言っておかなければならない事がある。

 

「マサト…お前のやるべき事は分かってるな?」

 

「うん!あいつをギャフンと言わせて、イーブイ達に謝らせるよ!」

 

 マサトの答えに俺は頷き、笑顔で続ける。

 

「そしてあのクソガキに泣く程の屈辱を与える事。約束な」

 

「え」

 

 徹底的に叩き潰せ。




ジム戦前にどうしてもやりたい話があるのでそれに繋げる為に伝説厨と同じ名前の子供の嫌なとこを敢えて際立たせました。
でもまぁ現実のこの位の歳の子供にはもっと性格悪いのがわんさかいるのでまだマシな方……なのかな。アニメでもわざとスクールのポケモンのニョロモの尻尾を踏んでニョロモには謝らなかったし。しかもそれは他の生徒への嫌がらせの為だし。

ロケット団への対応を見れば分かると思うけど、主人公は結構黒いよって話でもある……んだけど、最初は一言文句を言おうとしただけだし、これかなり穏便に済ませようとしている方なんだよなぁ。

オリジナル設定
【ワールドジムリーダーズトーナメント】
話の中で説明した通り、ジムリーダー世界最強を決める大会。前回の優勝者はグリーン。ジム戦と違い、レベル制限もジム毎のタイプ縛りもない、本気のフルバトルでのトーナメント。ジムリーダー資格を持っている事が出場条件。ただしジムリーダー資格があろうともチャンピオンや四天王は参加不可。
歴代優勝者の中にはロケット団首領、サカキも名を連ねている。
名前の元ネタはBW2のワールドリーダーズトーナメント。
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