ポケットモンスター 遥かなるチャンピオンロード 作:メンマ46号
ジムリーダー最強を決める大会とか割と重要そうな情報出したのに触れる人ほとんどいない。
ちょっと最後ら辺雑かも。
side三人称
その日の晩、カナズミシティのポケモンセンターにてハルカはオレンジジュースを飲みながらボヤく。
「ホント、嫌な子だったわね。明日のバトルでもズルするんじゃないの?」
「確かにイーブイにした事も褒められた事じゃないからな。でも流石にズルはしないんじゃないか?」
話の内容は本日トレーナーズスクールで会ったタクトという少年についてだ。他者を見下す発言が目立ち、嫌がらせをしたり、ポケモンにも不誠実な対応をしたりとハルカから見てもあまり印象の良い相手ではなかった。
明日はそんなタクトを相手にマサトと兄イーブイが組んでバトルをする事になったのだ。やる前から不正を疑うハルカに対して一歩引いた視点を持つタケシはどうにか宥めようとする。
「ところで他のみんなはどこに行ったの?」
今更ながらにハルカは周りを見て不在のサトシ、ミテキ、マサトの行方が気になり出す。ここにいるのはハルカとタケシだけなのだ。
「サトシはジム戦に向けての特訓だ。ミテキとマサトは……どうしたんだろうな?」
サトシの動向は把握していたタケシだったがミテキとマサトについては何も聞いていない。だが大方の予想は付く。明日マサトはミテキのポケモンである兄イーブイを借りてバトルをするのだ。イーブイでバトルをするに当たって色々とミテキから教わっているのだろう。
(ミテキのイーブイは専用技を複数使えるようだしな。しかしミテキはイーブイ達にどうやって覚えさせたんだ?あの九つの専用技は習得もかなり難しいと聞くし、使い手も数える程しかいないと聞くが……)
それを二匹のイーブイに実戦レベルで覚えさせられている事からもミテキのトレーナーとしての技量の高さが伺える。少なくとも現段階での実力はサトシよりも上だろうとタケシは見ていた。
(悪の組織を壊滅させた経歴と言い、まるでカントーチャンピオンのレッドさんを見ているようだ……)
そんな事を考えているとポケモンセンターのロビーに宿泊棟の方からミテキがやって来た。そして何歩か遅れてもう一人が覚束ない足取りでやって来る。
それはノートと鉛筆を手にぐったりしたマサトの姿だった。
「マサト!?」
「なんか凄いぐったりしてないか!?」
栄養補給の為に野菜ジュースを注文し、ハルカは弟がこんな有様になっている理由を尋ねる。姉として流石に看過出来ない。
「ミテキ、マサトと何してたの?」
「何って……勉強だよ」
「べ、勉強……?」
帰ってきた答えは予想の斜め下を行くもの。ハルカ自身はあまり勉強が好きではないが、マサトはそうでもない為、むしろ何故勉強でこうなるのかが気になってきた。
「おう。イーブイの技とかバトルの理論とかを一気に叩き込んだ」
「なるほど……流石に一晩で詰め込むには情報量が多過ぎてパンクした訳か」
「授業形式で覚え切れないなら声に出してノートに何度も書き取りさせるのが暗記のコツな。そうやって二重に理解させる」
「まさかそれ全部何度もやらせたのか!?」
一晩でやらせるにはあまりにも苦行と言える勉強量だ。そりゃ勉強が得意な方であるマサトでも力尽きもする。
兄イーブイをマサトに貸すに当たってミテキはどうしても我慢ならない事があった。
それはマサトが初めてのポケモンバトルに舞い上がり、兄イーブイの事を考慮しない独り善がりなバトルをしてしまう可能性がある事だ。
というか以前、マサトが自分だったらガブリアスにカビゴン相手にりゅうせいぐんを使わせるなどという的外れな意見を言っていた事を思い出したミテキは兄イーブイとのバトルでも頓珍漢な指示を出すのではないかと思ったのだ。
故にこれ程までのスパルタ学習を強行した次第だ。
野菜ジュースを飲んで一息吐いたマサトに休憩は終わりだと言わんばかりにその首根っこを掴む。
「さ、イーブイの使える技とその効果は叩き込んだ。次はそれを踏まえた戦術パターンを教えてやる。なぁにポケモンの知識が豊富なお前ならすぐモノにしてスタンダードなバトルくらいなら組み立てられるさ。時間は有限だ。あのクソガキを引きこもりにするくらいには泣かすのがお前の義務だからそのつもりで」
マサトの首根っこを引っ張り、ミテキは外へと歩き出す。先程のスパルタ授業が今度は実習という形になる事を理解したマサトは真っ青になってハルカに助けを求めようと振り向くが時既に遅し。極自然な流れでマサトは既にポケモンセンターの外へと連れ出されていた。
連行されていくマサトからハルカはサッと視線を逸らした。ここでミテキを止めようとすれば良い機会だからと自分も勉強漬けにされるような気がしたのだ。同時に普段あれだけ自分に優しいミテキが本気で怒ったらこうなるのかと戦慄する。
(まぁ、普段生意気言ってるマサトには良い薬かも……多分ね)
「……ギンガ団が潰されたのも少し分かった気がするな。相当にミテキの怒りを買ったんだな。湖の爆破とかしたらしいし」
タケシの呟きがどういう意味を持っているのか、ハルカにはまだ分からなかった。
***
sideミテキ
一晩明けて、マサトのトレーナーズスクールでの一日体験入学が始まった。とはいえ、俺達は授業を見学する訳ではなく、あくまでマサトとあのクソガキのバトルを観るだけだ。
なので今は食堂で雑談している。授業参観する気はない。
「あれ?ハルカは何処に行った?」
「ああ、コンテストのクラスに行ったぞ。昨日からちゃんと見たがってたからな」
コーディネーターとしてポケモンコンテストに出る以上はコンテストの知識も必要だからな。それを学べる機会を逃したくはないだろうよ。
それから俺はサトシとジム戦について話したり、タケシからいわタイプやじめんタイプの育成方法なんかを教えて貰って時間を潰して、ツツジさんからの連絡に合わせて外のバトルフィールドに移動した。
「マサトの奴、ちょっとフラフラじゃないか?」
「昨日遅くまでイーブイでのバトルの仕方をミテキに叩き込まれてたからなぁ」
「俺が育てました」
トレーナー入門クラスのガキんちょ達と一緒に外に出てきたマサトだが、サトシの言う通りフラフラだ。寝不足で授業受ければこうもなるか。マサトに悪いとは微塵も思ってないけど。
それに昨日散々教え込んだからこそ、今のマサトは昨日までのマサトとは違う。……多分。これで負けたら二、三日はグチグチ言ってやるからな。
今回のバトル、マサトは俺が貸した兄イーブイを使うがクソガキ…というよりスクールの生徒達はこのトレーナーズスクールのポケモンを使う。なんでもこのスクールのポケモン達はどんな人の指示にも従うように訓練されているとか。
「さて、マサト君はスクールのポケモンではなく、ミテキさんのポケモンを使用するとの事でよろしかったでしょうか?」
「はい!ミテキにイーブイを貸して貰ったから大丈夫です!」
マサトは俺が朝貸した兄イーブイの入ったモンスターボールをツツジさんに見せる。失くしてたらはっ倒してた所だ。
レベルも昨日チェックして貰い、今回選ばれるポケモンと釣り合っている為、イーブイのバトルの許可も降りた。
「マサトは初めてのバトルか。どっちが勝つんだろうな!?」
「俺のポケモンを使う以上は勝って貰わなきゃ困る。これでもイーブイ兄妹は将来性も見据えて集中育成してるんだから」
特性が夢特性である事もそうだが、イーブイ兄妹の個体値は実は6Vだ。これには流石に驚いたわ。ポケモン図鑑に個体値を調べる機能なんてないけど、あまりに優秀なんで色々と計測して個体値を割り出してみたらまさかの6Vだぜ?流石血筋だと思ったね。
他のポケモンは個体値の計測なんてやってないが、何気にガブリアスもかなりの高個体値臭いんだよな。あいつも夢特性だし。
「だがいくらイーブイをしっかり育てられていても、マサトは初心者のスタートラインにも立っていない。少し求め過ぎじゃないか?」
「まーね。昨日キモリと兄イーブイで模擬戦をしてみたんだが、マサトの奴、変化技の理屈や使い所も理解せずに使って自分だけテンション上げる独りよがりなバトルを組み立てていたからな。まぁ酷いもんでな。叩き直してやった」
攻撃を受けても変化技でバフやデバフをかける事ばっかに夢中になってそれだけで一喜一憂して全く兄イーブイのダメージや状態を見ようとしない。まぁ見ててイライラしたね。
なんせ途中から兄イーブイもマサトの言う事聞かなくなったからな。確かにあのザマじゃ一人で戦った方がマシと思うだろうよ。流石に終わってから叱ったが。
そうこう話している内にクソガキもツツジさんの出した六つのモンスターボールから一つを選び、フィールド上でマサトと向かい合う。周りのガキ共はこぞってマサトを応援しており、ホームであるはずのトレーナーズスクールにおいてクソガキは完全アウェーだ。おーおー、普段の横暴振りから嫌われてるねー。
「それではポケモンバトルの実技を始めます!使用ポケモンは一体。どちらかが戦闘不能となった時点でバトルは終了と致します」
ツツジさんの説明を聞きながら睨み合うマサトとクソガキ。
「試合開始!」
「いっくぞー!」
「よーし、いけぇ!イーブイ!」
クソガキが投げたボールから出てきたのはブビィだ。これはお互いに単純な相性で優位には立てないな。
「ブビィか!」
「ノーマルタイプとほのおタイプ。相性はお互いに問題はないな」
「大丈夫だ。いくらトレーナーズスクールのポケモンと言えど、素人が使う状態に負ける程、ヤワな鍛え方はしていない」
「トレーナーが育成してるポケモンを使ってるからって勝てると思うなよ!バトルはテクニックだぜ!」
啖呵を切ったクソガキとそれに呼応するかのようにマサトが同時にポケモンに指示を出す。
「ブビィ、かえんほうしゃだ!」
「イーブイ、どばどばオーラ!」
早速教えたやり方を活かしているな。特殊攻撃を仕掛けつつ、向こうの特殊攻撃を半減するひかりのかべを追加で展開するどばどばオーラを即座にチョイスできたのは中々だ。
素早さは俺の兄イーブイの方が上なようで先にブビィにどばどばオーラが命中すると兄イーブイの周りにひかりのかべが現れる。遅れてブビィがはなったかえんほうしゃが兄イーブイを襲うも、ひかりのかべに阻まれて威力が低下して命中する。
「ブビィ、かえんほうしゃ!」
「でんこうせっかで躱すんだ!」
追撃をかけてくるブビィに対してでんこうせっかで躱して距離を詰めて突き飛ばす。良いぞ。でんこうせっかをただ攻撃に使うだけでなく、回避にも利用してそこから攻撃に繋げる。教えた内容を上手く活かしている。
突き飛ばされたブビィを見てクソガキは舌打ち。そしてブビィが起き上がると同時にまた指示を出す。
「ブビィ、かえんほうしゃ!」
馬鹿の一つ覚えみたいにかえんほうしゃしか使ってねーな。どの口でバトルはテクニックとか言ったんだ?お前の戦い方のどこにテクニックがあるんだ?他の技を上手く活用しろよ。スモッグなりあやしいひかりなり、あるだろうに。
「でんこうせっか!」
もう一度回避して攻撃。同じパターンだ。しかし、その瞬間、イーブイの表情が痛みで歪む。見れば今でんこうせっかでブビィにぶつかった箇所が赤く腫れている。やけど状態になったか。
ブビィの特性はほのおのからだ。物理技で接触した相手をやけど状態にする事がある。運悪くそれを引いたようだ。
クソガキもそれに気付いたのか、得意気な顔であからさまに喜ぶ。
「へへん!やけどになったな!これで…「リフレッシュ!」な、なんだ!?」
マサトはすぐに兄イーブイにリフレッシュを指示。やけど状態を回復して、継続ダメージも攻撃半減も解消した。良いぞ、スパルタ授業の成果が出ている。
「どばどばオーラ!」
困惑したクソガキの隙を突いて二度目のどばどばオーラ。ひかりのかべを常に維持する事を心掛けている。
やけど状態が治り、元気を取り戻した兄イーブイを見てまた舌打ちするクソガキ。何が何でも倒すと言わんばかりに苛立ちが隠し切れない怒声でブビィにまたもかえんほうしゃを指示する。お前それしか指示してないぞ。
「くそ!黒焦げにしてやるぜ!ブビィ、かえんほうしゃ!」
「攻撃と同時に回復だ!いきいきバブル!!」
「な、なんだその技は!?」
イーブイの相棒技の一つ、いきいきバブルはみずタイプの特殊攻撃技でありながら相手に与えたダメージの半分ほど体力を回復できる技だ。みずタイプ版ギガドレインと言っても良い。
そしてひかりのかべを張られている事で如何にタイプ一致と言えどかえんほうしゃの威力は削られており、いきいきバブルとぶつかっても押し負けるのは当然だった。ダメージもあるしな。
どばどばオーラとでんこうせっかを二回ずつ、いきいきバブルを一回喰らったブビィは倒れる寸前。特にいきいきバブルは効果抜群だからな。
「トドメのでんこうせっかだ!」
ここまで来たら一気に仕留めるべし。俺が叩き込んだスタンダードバトルを覚えていたマサトは容赦無くトドメを刺す。ぶっ飛ばされたブビィは目を回して仰向けに倒れた。
「ブビィ、戦闘不能!イーブイの勝ち!よって勝者、マサト君!」
「やったぁ!」
「ブイ!」
「そ、そんな馬鹿な!」
ざまぁ。所詮お前はこのトレーナーズスクール回限りの使い捨てのモブキャラなんだよ。てゆーかかえんほうしゃのゴリ押しの何処にテクニックがあった訳?
ツツジさんの判定が下り、スクールの生徒達の歓声が上がる。マサトの周りに子供達が集まって褒め称える。反対にクソガキは見向きもされない。日頃の行いがモロに出たな。
「ま、俺が育てたイーブイを使ったんだし、昨日夜遅くまで教えたんだから当然の結果だ」
「でも良いバトルだったよな!俺もバトルしたくなってきたぜ!」
「もしかしたら、マサトがトレーナーになった時にライバルになるのはあの子かもしれないな」
「おおっ!ライバルか!俺達にもシゲルがいたもんな!な、ピカチュウ」
「ピカピカ」
使い捨てのモブがそこまで出世するか?
「そう言えばミテキはライバルとかいないのか?」
「俺?……まぁ、いるにはいるけど」
サトシにそう聞かれてシンオウ地方での旅で出会ったあいつを思い出す。俺のライバルと言えば真っ先に思い浮かぶのはあいつだ。色々と対立はしたが、最後には肩を並べて一緒に戦うくらいの事はしたし、全力のバトルを通じて友達にもなれた。でも一番しっくり来る関係と言えばライバルだろう。
「どんな奴なんだ?」
「税金泥棒」
「どんな奴!?」
第一印象はアニポケなのにこいつはいるのかよ、だ。
「んー、役立たずの上司に苦労してる?」
「えー!?どんな奴なんだよ〜!?ちゃんと教えてくれよ〜!」
スズラン大会でも俺が勝ったし、今んとこは俺が勝ち越してるけど次に会った時はどれだけ強くなっているか予想できない。何か一つ掛け違えば負けていたのは俺の方だったかもしれない。
「……でも今何してんのかなぁ、あいつ」
かなり特殊な立場だし、行動が読めねえんだよな……。
****
side三人称
「ねぇねぇ今どんな気持ち?あれだけ自信満々に喧嘩売っといて、一日体験入学しただけの奴に負けてどんな気持ちー!?あとバトルはテクニックとか言ってたのに馬鹿の一つ覚えでかえんほうしゃしか使わなかったけど、どんなテクニックを披露するつもりだったのー?あっ……ごめん、まさか威力の高い技でゴリ押せば勝てるとかテクニックになるとか思って……」
「ブゥ〜イ〜」
「うがあぁぁぁぁぁっ!!!」
「タクト君、いい加減にしなさい!」
ここぞとばかりに煽り散らすミテキとわざと変顔をしてベロベロバーと馬鹿にするかのような仕草をする兄イーブイ。プライドを刺激され、神経を逆撫でされまくったタクトはキレて暴れ出すも、ツツジに抑えられる。
「煽るなぁ。本当にムカついてたんだなミテキの奴。昔のシゲルとは別の意味で厄介な感じがするなぁ」
「ピカァ…」
「初めて会った時はかなり我慢してたんだねミテキ……。一歩間違えてたら僕があんな目に遭ってたんだね……」
「まぁ、自分のポケモンを傷付ける奴を許せないのは当然の感情だしなぁ……。そろそろ止めてやるか」
自分の幼馴染の嫌味な時期を思い出すサトシ。初対面で煽り散らしてかなりの綱渡りをしていた事を漸く自覚したマサト。そろそろタクトが可哀想になってきたのでミテキを説得する事にしたタケシ。
「ま、これに懲りたら他の子への嫌がらせやマウント取りなんざやめるこった。んな事してるとポケモンにも信頼されずに言う事聞いて貰えなくなるぜ?」
「何が信頼だよくっだらねー!ポケモンバトルは強けりゃ勝つんだよ!」
「お前負けたじゃん」
ムキになってトレーナーとポケモンの関係を否定するような事を言うタクトの揚げ足を取ってケラケラ笑うミテキ。最早どっちが悪者か分からないレベルだ。
「ミテキ、その辺に……」
タケシがミテキを止めようとしたその瞬間、ジリリリリ!!と非常ベルの音が鳴り響いた。
そしてまるで狙ったかのタイミングで校長がツツジを頼りにこの場に走って来た。
「た、大変です!モンスターボールが盗まれましたーー!!」
校長の言うモンスターボールとはトレーナーズスクールで保管しているポケモン達の事だろう。その保管数はポケモンセンターに勝るとも劣らない。つまりその大量のポケモン達目当てのポケモン泥棒が出たという事だ。
「「「ナーッハッハッハッ!!!」」」
誰がそんな事を…と思った時には聞き慣れた馬鹿笑いが聞こえて来た。振り向けばそこには巨大なケムッソ型のメカがキャタピラを動かして迫って来ていた。見れば口元からモンスターボールが大量に入っている思われる袋をロープで吊るしている。
(つーかなんでこんなデカいもんがいきなり現れてんだよ……)
「な、なんだ!?」
「なんだかんだと聞かれたら!」
「答えてあげるが世の情け!」
「ロズレイド!マジカルリーフ!!」
「「「痛い!痛い!痛い!!」」」
最早お約束とも言える口上の最中での攻撃。ケムッソメカの他の部分のハッチを開いて顔を出していた犯人のロケット団達。必中技のマジカルリーフが身体中に突き刺さり、ついでにロープを切る事で奪ったモンスターボールを奪還され、涙目になってロケット団は抗議を始める。
「この間やっとまた口上が言えたと思ったら、またすぐこれか!」
「何回私らの邪魔したら気が済むのよ!そのモンスターボール返しなさいよ!」
「ニャんでいつもいつも折角奪ったポケモンを取り上げるのニャー!!」
「……もう突っ込むのも面倒臭くなってきたなぁ」
相変わらずの被害者面にうんざりし始めたミテキ。しかしそれでもミテキは隣にいるタクトに一言声をかけた。
「おいクソガキ」
「……なんだよ」
「見せてやるよ。お前が馬鹿にした信頼で生まれるパワーって奴をよ」
そう言ってモンスターボールを取り出し、ケムッソ型のメカに向かって歩くミテキの後ろ姿をタクトは黙って見ていた。
ミテキは妹イーブイを出して今まで妙に大人しくしていたサトシに呼びかける。
「サトシ、準備は完了したか!?」
「ああ!わるだくみ……だっけ?言われた通りピカチュウに三回使わせた!」
「よし!ならイーブイ、ピカチュウにてだすけだ!!」
「ブイ!」
「よーしピカチュウ!かみなりだ!!」
ピカチュウにバフをかけまくり、最高火力の特殊でんき技で仕留めにかかる。完全に鬼である…と言いたいが、ミテキ的には本当ならわるだくみとてだすけの間にピカチュウにじゅうでんを使わせたかったというのが本音らしい。流石にまだ覚えられていないので断念したようだが。
ロケット団も流石に今回のピカチュウのパワーがヤバいと理解したのか、すぐにハッチを閉めていつもの電撃対策で防御しようとした。
だがパワーアップしたピカチュウのかみなりは既に物理的な破壊力すら宿しており、ハッチを木っ端微塵にした上で電撃がロケット団に襲い掛かった。
痺れと同時にケムッソ型のメカは爆発。黒焦げになったロケット団は空の彼方へと吹き飛んで行った。
「「「やなかんじー!!!」」」
その様子を見届けてからミテキはハッとなって、街に着いたらロケット団を警察に突き出すつもりだった事を思い出す。
「……しまった。警察に突き出すの忘れてた」
そして一方、トレーナーズスクールの生徒達はピカチュウが出したかみなりの規格外の威力に呆然としていた。シロガネ大会でもサトシのピカチュウはここまでの電撃を出してはいなかった。
それに驚いているのはタクトも同じだ。
「あ、あんな凄いかみなり見た事ない……」
「てだすけ……味方の技の威力を高める技です。ミテキさんとイーブイがピカチュウをパワーアップさせたのです」
ツツジはタクトを始めとするスクールの生徒達にピカチュウのかみなりのパワーアップのカラクリを一部説明する。
「ミテキさんとサトシさん、そしてイーブイとピカチュウ。あの四人が友達として連携し、力を合わせたからこそ、あれだけのパワーを発揮できたのですよ」
実際にはピカチュウが積み技を使いまくったのが大きいのだが、タクトの意識を改める為にもツツジはこの場を利用して良い感じに纏める事にした。
「タクト君、それが今の貴方に足りていないものです。先程のバトルもそう。マサト君とイーブイにはそれができていた。ただかえんほうしゃしか使わなかった事だけが敗因ではありません」
「信頼、友達……」
ここまで言われてタクトは漸くこれまでの自分の行動や言動を振り返る。周りの子供達に横暴な態度を取り、時にはポケモンに危害を加えて事故を装って他の子を攻撃させたりした。
『ポケモンにも信頼されずに言う事聞いて貰えなくなるぜ?』
先程のおちょくられながら言われたミテキの言葉の意味がやっと少しだけ分かった気がした。
「ごめんなさい、ツツジ先生。俺、間違ってました……」
故にタクトは己の非を認めて頭を下げた。これに驚いたのはスクールの生徒達だ。ポケモンを怖がっている子に嫌がらせをするのは日常茶飯事だったあのタクトが頭を下げたのだ。
「タクト君、君が本当に謝らなきゃいけないのは誰?」
ツツジにそう言われ、昨日マサトにも同じ事を言われたのを思い出す。そして先程までバトルの相手をしていた兄イーブイの元まで歩き、しゃがんで視線を合わせて口を開く。
「イーブイ、昨日はごめんな……」
タクトは本当に申し訳なさそうに兄イーブイに昨日の出来事を謝った。
「……ブイ」
ニコッと笑う兄イーブイ。誰もが兄イーブイがタクトの謝罪を受け入れ、許したのだと思った。
次の瞬間、兄イーブイはタクトの腹目掛けて思い切りたいあたりをしてぶっとばした。
『『えぇーーーーっ!?』』
ぶっとばされたタクトは白目を剥いて仰向けに倒れ、ガクリ…と首を落として気絶するのであった。
兄イーブイはまだ結構怒っていた。
因みにミテキはぶっとばされて白目を剥いたタクトを見て指差して笑っていた。こいつもこいつで大概である。
「あースカッとした!さっすが俺のイーブイ」
「ブイ♪」
ご褒美に兄イーブイにポフィンをあげつつ、ミテキはサトシと共に明日のジム戦への意気込みを語る。
「サトシ、明日はいよいよ俺達のジム戦だな!」
「ああ!一緒に頑張ろうぜ!」
そんなミテキとサトシを見てイーブイ兄妹はシュン…とその両耳を垂れ下がらせた。まるで落ち込むかのように。
「「……ブイ」」
兄イーブイの心情としてはまず最初にトレーナーを馬鹿にして、妹の尻尾をわざと踏もうとして、自分も結局尻尾を踏まれた。謝ったところで報復の一つでもせんと気が治りません。
アニメと工程が大分違いますが、鼻っ柱をへし折られた上でミテキとサトシの友情パワー(ただの多重バフ)を目の当たりにした事で、伝説厨と同じ名前の子も他の子やポケモンへの態度や接し方、考えを改めていき、最終的にはアニメみたく丸く収まる……という流れでしょうが、書きません。
マサト:今回の件でちょっと勉強が嫌いになった。
ハルカ:ミテキにコンテストの事を少し教えて貰ったから筆記もできるかもと抜け出さずにテストを受けた。結果?……ははは。
もっと主人公の性格悪い部分を書きたいんだけど、なんかそれを挟む余地が確保できない……
前回の感想で直接攻撃だって書いた人がいましたが、今回のオチを完璧に当てて見事でした。