ポケットモンスター 遥かなるチャンピオンロード 作:メンマ46号
サトシの持ち味である型に嵌まらない奇策を思い付くバトルが描写できるか不安だったけど、書いてみれば案外書けた。次も上手くいくかは別かもしれないけど。
sideミテキ
「マリル!君に決めた!」
ツツジさんのイシツブテに対し、サトシはマリルを繰り出した。
「サトシの一番手はマリルで来たか!」
「いわ・じめんのイシツブテには四倍弱点でセオリー通りだな」
「でもイシツブテの硬い身体は凄い防御力だよ」
「とにかく強いって事よね……サトシもマリルも大丈夫かしら」
四倍弱点を取れるとはいえ、マリルは攻撃も特攻も種族値は低い。その上サトシのマリルの特性は夢特性のそうしょくだった。くさタイプの技を無効化し、自分の攻撃のランクを上げる特性。このいわタイプのジムではあまり役立たない。つまり速攻でケリを着ける事は難しい。
マリル系統はちからもちが強過ぎるから、夢特性にあまり旨味がないのもあるなぁ。
そんな事を考えているとまずはサトシから動きを見せる。
「マリル!バブルこうせんだ!」
マリルの特性がちからもちでない以上、無理に物理技を使う必要はない。元々いわタイプは防御が高く、特防が低い傾向にある。砂嵐状態でもない限り特殊技を使うのは理に適っている。
「イシツブテ、ロックカット!」
ツツジさんは早速ロックカットでイシツブテの素早さを上げて、マリルのバブルこうせんを紙一重で回避させる。だがそれだけでは終わらない。ロックカットで上昇した素早さを使って先に次の一手を打つ。
「じならし!」
タイプ一致技で攻撃すると同時にマリルの素早さを下げてきた。これで完全にスピードは逆転したな。
「だったら先制技だ!マリル、アクアジェット!!」
「どろかけ!」
「……上手いな。流石ジムリーダー」
先制技のアクアジェットで一撃入れようとするサトシだが、ツツジさんは発動前にどろかけを指示する事で今度は攻撃と同時に命中率を下げて来た。例え先制技でも動き出しに関しては元々速い方が先に動ける。先制技ってのはあくまで後出しでも先に攻撃を当てられるって技だからな。
目元にかかった泥と自分で纏った水が混ざって視界が悪くなったマリルは驚いてアクアジェットのコントロールを手放してしまい、岩に激突してしまった。
「今ので大分マリルの体力は削られてしまったぞ」
「いきなり大ピンチじゃない!」
「ああ。ここからサトシがどう巻き返すか……」
ここで四つ目の技ですなあらしが使われたら最悪だぞ。マリルは時間経過でダメージを負う上、いわタイプのイシツブテは特防が上がる。その上もしあのイシツブテの特性がすながくれだったら下げられた命中率は更に下がる。
「マリル、大丈夫か!?」
「リル!」
「サトシ君、技の選択が甘いですわね。いわタイプは素早さが低い関係上、相手に遅れを取りやすい。そこに対策を練るのは当然でしょう?」
その答えの一つがロックカットによる素早さ上昇とどろかけによる撹乱。サトシもかげぶんしんなんかで相手を撹乱する事はあるだろうが、やっぱり普段から変化技をあまり使わないからこそ、どんな変化技があって、どんな効果なのかを把握し切っていない。それがこうして良いように手玉に取られる事に繋がってしまっている。
だがそれを何度も潜り抜けて来たのがサトシだ。
「そう簡単に攻撃が当たらないなんて……ツツジさんのイシツブテ、強い……!!」
元々守りが固い上に相手に攻撃を当てさせない。確かに同じくらいのレベルのいわタイプの中では飛び抜けているかもしれないけど、付け入る隙がない訳じゃない。
サトシも何か妙案を思い付いたようで口元が少し緩んだ。
「マリル、とびはねるだ!」
「とびはねる!?なんでひこうタイプの技を!?」
サトシが指示したのはひこうタイプの技である飛び跳ねる。ターン制の技で飛び上がっている間はほとんどの攻撃が当たらない。だが、マサトの言う通りひこうタイプの物理技だ。防御の固いいわタイプにはまず通じない技だ。
驚くマサトをよそにツツジさんは不敵な笑みを浮かべてイシツブテに指示を出す。
「うちおとす!」
とびはねるを使っている最中のポケモンに当てられる文字通りの撃ち落とす技。石の弾丸を精製して発射する事でな。
だがここでサトシの眼光が鋭く光った。
「これを待ってたんだ!マリル、アクアテールで撃ち返すんだ!!」
「リル〜!!」
イシツブテが出した石の弾丸をマリルが水を纏った尻尾で打ち返した。まるで野球のように。正確にうちおとすを使ったイシツブテに跳ね返して命中させた。
「ラッシャイ!?」
「バブルこうせん!!」
打ち返した弾丸そのものは大したダメージにはならない。数値にしても10にも届かないだろう。けれどイシツブテを驚かせて思考停止させるには十分だったようで、その隙を突いてバブルこうせんを命中させた。相手が動かないなら、どろかけを一回喰らった程度なら十分当てられるしな。
勿論ツツジさんとイシツブテもやられっぱなしで終わる気はない。まずは追撃を防ごうとその場を動こうとする。……が、バブルこうせんを受けて周囲に残っていた泡に滑ってイシツブテが転んだ。
「今だマリル、アクアジェットだ!」
そして着地したマリルはそのまま転んだイシツブテ目掛けてアクアジェット。すっ転んだ所にまともにアクアジェットを受けては元々受けていたダメージも相まってイシツブテは力尽きた。
「イシツブテ、戦闘不能!マリルの勝ち!」
わざと大して通用しないとびはねるを使ってうちおとすを誘う。そして多分アレはツツジさんが乗ってこなくても上空からバブルこうせんを乱射して逃げ場のない範囲攻撃をするつもりだったな。そうなってはイシツブテもやられてしまう。ツツジさんは恐らく先にそっちの可能性を予見したからこそ、うちおとすを使った。
中々手強い二段構えだった訳だ。泡で滑って転んだのは少し出来過ぎだったろうけど。
もしマリルにピカチュウ同様、技マシンでなみのりを覚えさせていればそっちを使っただろうから、こんな事思い付かなかっただろうな。なみのりを覚えさせていなかったからこそ、生まれた発想だ。
「型に嵌まらない発想力……面白いバトルだ」
普通なら思い付かないような発想を元に新しいバトルを組み立てていく。アニメで観て知ってはいたけど本当にサトシのバトルは面白い。
ツツジさんもイシツブテをモンスターボールに戻しながら今のバトルを賞賛する。
「サトシ君、お見事でした。みずタイプを使ってくるトレーナーは数いれど、ひこうタイプの技を駆使してこのイシツブテを倒したトレーナーは初めてです」
だろうな。俺だっていわタイプ相手にひこうタイプの技を使うなら、エアスラッシュなんかで怯ませる為に使うだろう。わざと相手の技を誘う事はあっても、ここまで上手くやれるかどうか……。
「ですが、まだバトルはこれからです!ノズパス!」
ツツジさんの二番手はノズパス。ノズパスを初めて見るサトシとハルカはそれぞれポケモン図鑑でノズパスについて調べる。いわタイプにしては珍しくいわ単タイプのポケモンだ。俺のラムパルドと同じだ。
スズラン大会じゃ進化系のダイノーズを使って来たトレーナーもいた。中々強かったなあのダイノーズ。最終的にはムクホークで倒したけど。
アニメでは確かアイアンテールを覚えたピカチュウが倒していたと思うけど、そのピカチュウはこの世界ではレベル制限の都合で同格の仲間がいない以上、このジム戦には出られない。さてどう戦う?
「マリル!アクアジェットだ!!」
サトシは先手必勝とばかりにアクアジェットを指示。マリルがイシツブテとのバトルで受けたダメージは決して少なくない。だからスピードでノズパスにマリルを捉えさせないつもりか。素早さが下がっていてもアクアジェットを使えば出だし以外関係ないからな。
「ノズパス、スパークで迎え撃ちなさい!」
だがツツジさんは受けて立つと言わんばかりにノズパスにスパークでマリルへと突っ込ませる。そしてそのぶつかり合いに勝ったのはノズパスだ。
「何で!?みずタイプの技なのに!!」
「マリルは体力をかなり消耗しているし、ノズパスはいわタイプだからやはり防御力が高い。そしてスパークはでんきタイプの技でマリルには効果抜群だ。押し負けてもおかしくはない」
驚くマサトにタケシが説明する。じならしのせいでマリルの素早さが下がっていたからな。もし先手を取られてしまったらマリルが何もできずにやられてしまうかもしれないからこそ、サトシはアクアジェットをチョイスした。
でもその上でツツジさんとノズパスは正面突破を選んだ。それだけノズパスの耐久力に自信があったんだ。
バブルこうせんを選んでもノズパスにはでんじはなんかもあるから、結果はそう変わらなかっただろう。せめてアクアジェットを使ってぶつかり合う前にアクアテールに切り替えられていたら、もう少し結果は違ったかもしれないが、今のマリルにそこまで求めるのは酷だし、結局後からゴチャゴチャ言っても意味は無い。
「マリル、戦闘不能!ノズパスの勝ち!」
「戻れマリル!ゆっくり休んでてくれ」
戦闘不能になったマリルをボールに戻してサトシも二番手のポケモンを出す。当然、サトシが選んだのはこいつだ。
「キモリ、君に決めた!」
「キャモ…」
くさタイプのキモリ。他にいるのはいわタイプとは相性の悪いスバメだけだからな。必然的にキモリになる。
「キモリだ!キモリも相性は有利だよ!」
「だがサトシのキモリはこの間までくさ技を覚えていなかった。今日までそれがどこまで改善されているか……」
「一応俺のキモリやキノココと一緒に特訓したけど、あれこれ口出しすんのも違うかなと思ったから、技を見せるくらいしかやってないんだよな。それでちゃんと覚えられたのか……」
サトシのキモリのくさ技問題はタケシも懸念する所だったらしく、難しそうな表情だ。実際ロズレイドや俺のキモリのくさ技は何度か見せたけど、本格的に教えるような事はしていない。サトシのキモリは自分の鍛錬だけで技を掴みたいってのが伝わって来ていたからな。
そしてキモリとノズパスが睨み合い、バトル再開。
「よーし、キモリ!このはだ!」
サトシのキモリはこのカナズミシティに来る前に俺のキモリと一緒に特訓を積んだ結果、くさタイプの基本技、このはを覚えていたようだ。
このはがノズパスを襲うが、ノズパスは再度スパークを使って、このはを焼き払う。でんき技はくさタイプ本体には効果は今一つでも、技同士の相殺には十分使える。
「サトシ、このははくさタイプの技だが、物理技だ!そう簡単にはノズパスの防御は突破できないぞ!」
俺は思わずアドバイスを送ってしまう。サトシのバトルを見ているとつい応援したくなっちゃうなぁ。
「だったらでんこうせっかだ!スピードで撹乱して、このはの乱れ撃ちだ!」
サトシは今のアドバイスを受けてでんこうせっかで撹乱しながら、多方向からこのはで埋め尽くす事にしたらしい。スパークで焼き払うタイミングを掴ませないつもりだ。
「ロックブラスト!!」
だがツツジさんも一方的にやられるつもりはない。ロックブラストでキモリの進行方向に先に岩石を飛ばす事で行手を阻み、でんこうせっかを中断させにかかる。あわよくば命中させてダメージを与えようって腹か。
元々あれは連続して岩を相手に命中させる技だ。
次々と岩の弾丸が発射され、次第にキモリは撹乱どころかでんこうせっかを駆使して逃げ回るしかなくなってきた。でもこのデコボコしたフィールドでは足元を取られて上手く走り回れない。
案の定キモリはでんこうせっかで走り回っても途中で何度か減速してしまう。
遂にロックブラストが直撃。そこから二発目、三発目と連続して命中して倒れた所を更に追い討ち。
「でんじは!」
「不味い!まひ状態にされたぞ!」
倒れた瞬間を突かれてでんじはを喰らってしまった。
まひ状態になれば素早さが大幅に下がる上、身体が痺れて動けないとなれば大きな隙となる。痺れて動けないキモリにツツジさんとノズパスは一気に攻撃をしかけてくる。
「ボディプレス!!」
キモリの真上に飛んできたノズパスがその巨体でキモリを押し潰しにかかってきて、キモリはそれをまともに喰らった。
「ボディプレスは防御力を攻撃力に変換して攻撃する技だ。防御力の高いいわタイプにはもってこいの技だ!」
「そんな……」
「キモリーー!!」
サトシの叫びが響く。だが目を凝らして見ればノズパスの真下が少し揺れているように見える。
「キャモォォ……!!」
そこにはノズパスのボディプレスを正面から受け止めて持ち上げようとするキモリの姿が。
「ギリギリで耐えているぞ!!」
今俺が言ったように、キモリはノズパスのボディプレスを両腕で受け止め、押し潰されないようにギリギリで踏ん張って耐えている。どうにか押し返そうと足腰を力を込めて。だがそれを許すツツジさんではない。
「ノズパス、スパーク!」
ダメ押しのスパーク。キモリにでんき技は効果は今一つだが、押し潰されそうになっているのを必死で耐えている今のキモリにはひとたまりもないだろう。
サトシはそれでも踏ん張り続けているキモリに声援を飛ばす。
「頑張れ!キモリーー!!」
「キャモォーーーー!!!」
するとキモリの身体が緑色の光を放ち、それを浴びたノズパスからみるみるエネルギーを吸い取っていく。アレってもしかして……!
「アレは……メガドレインか!」
「……意外だな。サトシのキモリは相手の体力を奪うような技は使いたがらないと思ってたんだけど」
プライドの高さから、そういう技は主義に反するんだろう。
アニメでもくさ技はタネマシンガンとリーフブレードくらいしか使っていなかったと思う。他にも使っていたかもしれないが、少なくともドレイン系の技は一切使っていなかったはずだ。
「サトシの想いに応え、そのプライドの殻を打ち破ったんだろう。トレーナーと一緒に成長するのがポケモンだからな」
タケシの解説には俺も納得できる。
サトシを勝たせたい。その気持ちがキモリに余計なプライドを捨てさせ、こうして技として現れた。それがこのメガドレインだ。
「っ!ノズパス、一旦離れなさい!」
このままボディプレスで押し潰そうとしても体力を吸われ続けるだけだと判断したんだろう。ノズパスにメガドレインの効果範囲内からの離脱を指示する。だがそうして生まれる僅かな隙をサトシは見逃さなかった。
「今だキモリ、全力のこのはだ!!」
「キャモォォーー!!」
バックステップを取ろうとするノズパスに正面から全力このは。メガドレインで多くの体力を奪われていた以上はノズパスでもこれはキツいだろう。加えてキモリはまひ状態でも体力が回復した事で勢いが付いていた。ほんの僅かな時間の誤魔化しのようなものだが、今はそれが大きく作用していた。
反撃の暇もなく、大量の葉っぱに呑み込まれ、後ろ側の岩石まで突き飛ばされた。このはが散ればそこには目を回して倒れるノズパスの姿が。
「ノズパス、戦闘不能!キモリの勝ち!よって勝者、チャレンジャー、マサラタウンのサトシ!!」
「やったぜ!キモリ!お前のおかげで勝てたんだ!!」
「キャモ…」
キモリに駆け寄るサトシと、あくまでもクールに徹するキモリ。あんな態度取っても本当は内心嬉しいんだろうな。
「凄いやサトシ!」
「ああ。見事なバトルだった」
「マリルのバトルは予想外の奇策が嵌り、キモリは成長が鍵になった。サトシのバトルは見ていて本当に面白いな」
サトシがキモリに抱き付いているが、キモリは腕組みして目を瞑っている。あくまでもあのスタンスを崩す気はないらしい。
「キモリったら照れ臭いみたい」
「みたいだな」
クスクスと笑うハルカが可愛いです。
「サトシ君、マリルとキモリとのコンビネーション、実に素晴らしいものでした。その真剣さ、闘争心。生徒達にもきっと伝わる事でしょう。貴方はこのストーンバッジを持つのに相応しいトレーナーです」
そしてツツジさんからバッジを受け取るとサトシとピカチュウはお決まりのアレを披露してくれる。そういえばなんだかんだ生で見るの初めてだよな。
「ストーンバッジ、ゲットだぜ!」
「ピッピカチュウ!!」
おお、ちょっと感動。これからはこれを毎回生で見れるのか。
俺はモンスターボールを一つ取り出してツツジさん目掛けて宣言する。
「さーて、次は俺達の番だ!」
主人公のマリルリ、サトシのマリル、ハルカのルリリはそれぞれ違う活躍のさせ方をしたいので、特性をバラバラにしています。
主人公のマリルリはちからもち。
サトシのマリルはそうしょく。
ハルカのルリリはあついしぼう。
主人公は言うまでもなく、ハルカに関してはコンテストでなら、いくらか防御面で魅せる場面もありそうなので。サトシはぶっちゃけ余りで決めた。