ポケットモンスター 遥かなるチャンピオンロード   作:メンマ46号

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恐怖と恋のドキドキは紙一重

 sideミテキ

 

「まっさらな空」

 

「白い雲」

 

「穏やかで美しい海」

 

「それに気持ちの良い潮風」

 

「急にどうしたお前ら」

 

 昨日のロケット団襲撃から一夜明け、船乗りのハギさんにムロ島まで船を出して貰える事となり、船を出して貰って暫くするとサトシ達が急に口を揃えてこんな事言い出した。怖っ。

 

「ハギさん、ムロ島にはいつ着くんですか?」

 

「そうじゃの、このまま行けば夕方には着くじゃろう」

 

 夕方には着くのか。港の定期便でももっとかかるのにハギさんにこうして船を出して貰えたのは本当にラッキーだったな。

 

「夕方かぁ。じゃあ明日にはジム戦ができるな!」

 

「ムロジムは確かかくとうタイプのジムだったな……どのポケモンで挑もうか」

 

 タイプ相性だけで考えればひこう、エスパー、フェアリーで挑むのが定石だが、ここは敢えてかくとうタイプで真っ向勝負を挑むのもロマンがある。とはいえ、ゴウカザルもルカリオもトウカジムでバトルしたし、出番に飢えているポケモンは他にも沢山いる。さてどうしようか。

 ムクホークとサーナイトを呼ぶか?それとももうちょい待って……

 

「そうだ!アチャモ、ルリリ、ケムッソ!出ておいで!」

 

 急にハルカが手持ちのポケモン達をボールから出したのでそちらに目を向けると楽しそうにしながら俺達にもポケモンを出すように言ってくる。

 

「折角の船旅だもの!みんなで楽しみましょ!」

 

「そうだな!」

 

「ああ。良い考えだ」

 

「……そうだな。今は楽しむか!」

 

 サトシはマリルとスバメ、キモリ。タケシはフォレトスとハスボーを出す。

 みんなに続いて俺もポケモンを出していく。とは言っても一匹出せないのがいるけどな。重量級なので。

 ゴウカザル、マニューラ、イーブイ兄妹と続いて出したのはフローゼル。こいつもマリルリ達と入れ替えで呼び寄せたシンオウで仲間にしたポケモンだ。

 サトシとハルカは早速ポケモン図鑑でフローゼルを検索している。なんか恒例行事みたいになってんな。

 

「フロォー!!」

 

「わ!フローゼルだぁ!」

 

「マサト、フローゼルも知ってたのね」

 

「そりゃそうだよ。前にも言ったけどミテキがスズラン大会で出したポケモンは全部知ってるよ!マリルリがやってた氷のアクアジェットだって元々フローゼルがやってたんだよ!」

 

 本当の元ネタはサトシが後々捕まえるブイゼルだけどな。

 みずポケモンの中ではこいつが一番最初でなんだかんだ古株だし、こいつも昔は色々とブイブイ言ってたもんだ。だからこいつに氷のアクアジェットを仕込んだりした。

 

「ムロ島に着くまでのんびりするか!」

 

 潮風に吹かれながらポケモン達もそれぞれ羽を伸ばしている。黄昏ている奴もいれば寝ている奴もいる。マリルとハスボーのみずでっぽうによるシャワーを浴びてピカチュウとイーブイ兄妹、ルリリは喜んでいるが、アチャモは嫌がっている。

 

「ん〜!本当に良い気持ちね!」

 

「なんだか僕泳ぎたくなっちゃったよ!」

 

「そうだなぁ。俺も久々に海水浴でもしたい気分だ。泳ぐフローゼルの背中に乗ってさ、水面をジャンプしたりするとすっげー楽しいんだよ!」

 

「それ私も乗ってみたいかも!」

 

「僕も!」

 

 ゲームとかじゃ味わえないフローゼルのライドポケモンとしての醍醐味を教えてやるとハルカとマサトは興味津々。いやホントマジで楽しいからなぁ。

 するとこちらの会話を聞いていたらしいハギさんがある提案をしてくれる。

 

「海水浴なら最高の場所があるぞ。行ってみるか?」

 

「駄目だよ寄り道なんて!早くムロ島に行って次のジムに挑戦するんだから!」

 

 しかしこれまでジム戦を焦らされ続けてきたサトシは反対のようで、先を急ぎたがる。やれやれ。

 サトシはピカチュウに同意を求めるものの、肝心のピカチュウは他のポケモン達と一緒に眠りこけている。気持ち良さそうに寝ててかわいい。

 

「ピカチュウ達だって偶にはのんびりしたいのよ」

 

 てかレベル制限があるから、ピカチュウは今ジム戦出れないし割と他人事なんじゃないだろうか。

 

「ハルカの言う通りかもしれないな」

 

「でも……」

 

「まぁまぁ、サトシもフローゼルに乗せてあげるからさ」

 

 もう俺は海水浴の気分なのでサトシを説得する事にした。久しぶりにフローゼルの背中に乗って水面を飛び跳ねたいのだ。

 続けてマサトもサトシを説得しにかかる。

 

「大丈夫だよサトシ、カナズミシティでのジム戦だって勝ったじゃない。サトシは強いんだからもっと余裕を持たなきゃ!」

 

「「「うんうん」」」

 

「ま、まぁな…」

 

 乗せられやすいなコイツ。

 

「だからちょっとくらい寄り道したって何でもないしょ?」

 

「そ、そうだな……ハハハ!じゃあ、ちょっとだけ遊んで行くか!」

 

『やったー!』

 

 あっはっはっはっ。コイツチョロッ。

 

「話は纏まったようじゃな。では進路変更!取り舵一杯!」

 

 そうして船を進ませる事小一時間。ハギさんに連れて来て貰ったのは小さな孤島だ。地図にも乗っていない名前もない島らしく、昔時々こっそりここに来てはのんびり過ごしていたらしい。

 

「じゃんじゃじゃーん!」

 

 するといつの間にか船の中で着替えていたらしいハルカが出て来て新しい水着を披露してくれる。ピンクを基調とした水玉模様が可愛らしい水着だ。眼福です。

 

「お姉ちゃんいつの間にそんな水着を!?」

 

「えっへへ。こんな事もあろうかと、カナズミシティで買っといたのよ!それじゃあお先に!」

 

 そう言って真っ先に海へと飛び込むハルカ。準備運動くらいはしといた方が良いぞ。まぁ泳げるポケモンもいるから大丈夫だとは思うけど。

 続けてマサトも水着に速攻で着替えて海へ飛び込む。待って、マサトお前眼鏡かけたままで泳ぐの?海水なんだから眼鏡痛むぞ。

 

 しかし泳いでいる二人は楽しそうだ。

 

「俺達も行くか!」

 

「そうだな。みんなも一緒に泳ごうぜ!」

 

 サトシの呼びかけに対してアチャモはゴウカザルの足元に隠れて必死に首を横に振る。

 

「あ、そっか……」

 

「アチャモとゴウカザルはほのおタイプだから泳げないもんな」

 

 ……そう言えばアチャモってゴウカザルがいる時は大抵ゴウカザルの足元でウロチョロしてるよな。案外ゴウカザルに懐いてたりするのか?

 

 そんな事を考えつつ、まず俺は愛用のゴーグルを装着する。前にも言ったけど水の中では怖くて目が開けられません。

 

「さぁて、俺達も楽しむかフローゼル!」

 

「フロー!」

 

「あっ!そうだ俺もフローゼルに乗せてくれよ!楽しいんだろ?」

 

「分かってるって。でも順番な」

 

「「うわぁーーー!?」」

 

 俺達も水着に着替えて泳ぐ準備をしていると、突然海の方からハルカとマサトの悲鳴が聞こえてきた。

 

「どうした……ってええええっ!?」

 

 見ればハルカとマサトの周囲を数十匹ものサメハダーの群れが取り囲んでいた。マジで洒落にならねぇ!!ガチの鮫だったら完全に詰みじゃねえか!!いや、戦闘力的な意味じゃモノホンよりやべえ!!

 

「サメハダー!?何故こんな所に!?」

 

「「た、助けてーーー!!」」

 

「くそっ!サーナイトを連れて来るんだった!」

 

 ハギさんが空を飛べるピーコちゃんを派遣して、その足に掴まるように言うが、キャモメであるピーコちゃんにそれはかなりキツい。

 サーナイトならテレポートで二人を助ける事もできたのに。だが無い物ねだりをしても仕方ない。代わりにもう一つ残っていたモンスターボールを投げて助け船を出す。

 

「いっけえメタング!サイコキネシスでハルカとマサトを助けるんだ!!」

 

 俺はメタングを出してピーコちゃんのアシストをする。メタングはサイコキネシスで二人を浮かしてピーコちゃんの補助をすると同時に二人を守る事も兼ねてハルカとマサトの足場となってくれる。

 

 だがサメハダーは二人に…メタングに攻撃しようと水面を跳ねて近付こうとしてくる。サメハダーの特性、さめはだは接触した相手にダメージを与えるというものだ。触れただけでもハルカとマサトにはひとたまりもないだろう。

 

「ゴウカザル!はどうだんでサメハダーを撃ち落とせ!」

 

 だから俺はゴウカザルに特殊技でサメハダーを薙ぎ払って貰う。

 

「サトシ、ここは全体攻撃でサメハダーを足止めするんだ!!」

 

「分かった!ピカチュウ、ほうでんだ!!」

 

 タケシのアドバイスを受けてサトシもピカチュウにほうでんを指示。効果抜群のでんき技を受けてサメハダー達もかなりダメージを受けている。その間にピーコちゃんとメタングに救出されたハルカとマサトが船まで戻って来れた。

 

「二人共大丈夫か!?」

 

「は、はい……なんとか大丈夫……ああーっ!?」

 

「ぶっ!?」

 

 ハギさんに返事をしたハルカの水着がボロボロになっていた。恐らくサメハダーの攻撃と特性のせいで破かれたんだろう。俺はそれをモロに見てしまい、思わず視線を逸らす。ちょっとこれは刺激が強すぎです……。

 

「ちょっと!この水着すっごく気に入ってたのよ!絶対許さな……キャー!?」

 

 海のサメハダー達に文句を言うも、威嚇しながら飛び上がってくるサメハダーにビビって引っ込むハルカ。とりあえずその格好から早く着替えた方が良い。刺激が強すぎます。マジで。

 

 そんなになりながらも俺は良い傷薬を出してメタングを治療する。サメハダーの攻撃もさめはだもこいつが一番喰らってたからな。

 

「大丈夫か?メタング。二人を助けてくれてありがとうな」

 

「メタ……」

 

 メタングに守られてもさめはだを喰らっていたらしいマサトもタケシに治療して貰っている。

 

「まだヒリヒリするよ……」

 

「サメハダーの特性さめはだは接触した相手にダメージを与えるからな……。俺のメタングもこの通りだ」

 

「ミテキ詳しいね……」

 

「俺のガブリアスもさめはだの特性を持ってるからな……」

 

 すると今度はサメハダーの群れは俺達の乗っている船に集団でたいあたりを仕掛けて来た。このままでは危険だと判断した俺達はもう一度ピカチュウにほうでんを使って貰い、ゴウカザルやフローゼルの特殊技で前方のサメハダーを薙ぎ払い、島まで避難する事にした。

 

****

 

 それからハギさんに案内して貰った島に避難し、上陸した俺達だが、サメハダーの群れは沖に数匹ずつ駐在して、シフト制で俺達を見張り、包囲するという策を取って来た。

 

 これではどうする事もできないのでとりあえず今日はもうこの島で野宿する事になり、タケシがその料理の腕前を奮ってくれる。

 

「これは美味い!こんな所でこんなに美味い物が食べられるとは思わんかったわい!」

 

「タケシは料理の天才なんです!」

 

「ピーカチュ!」

 

 いや本当マジうめーな。この料理を旅に出た当初から食べているサトシが妬ましいくらいだ。こういう無人島でのキャンプもサメハダーの事さえなければ良いもんなんだが。

 俺はタケシ特製シチューを食べながらこの状況の打開策を考える。

 

「やっぱりジバコイルかサーナイトを連れて来るべきだったな……」

 

 特攻種族値の高いあいつらならほうでんなりマジカルシャインなりで一掃できただろうに。

 だが現実はあいつらはここにいない。ならば今の手持ちで考えるしかない。そもそも俺達があいつらのテリトリーに入ったのが原因だから、武力制圧するのもな。

 

「サメハダーって頭良いんだな……」

 

「ああ。だがあのサメハダー達は特別かもしれないぞ」

 

「特別?」

 

「サメハダーは普通単独で行動する。ああやって群れは作らないはずなんだ」

 

「儂もそこには驚いておる。昼間の様子からして奴等の結束もかなり固いようじゃしな」

 

 へぇ、それは俺も知らなかった。モノホンの鮫の生態も大して知らないからなぁ。

 

「だとしたら私達、もうこの島から出られないの?」

 

「なぁに、いざとなったらポケモンバトルで……」

 

「それはちょっと厳しいんじゃねぇかなぁ」

 

 サーナイトとジバコイルがいれば……なんて思ってはいたが、冷静に考えると数の暴力を前にしたら特攻種族値とか相性とか範囲攻撃とかあまり意味がない。

 

「ミテキの言う通りだよ。相手は物凄い数でこっちのポケモンはたった16体だもん。無理だよ」

 

 しかしここでタケシがサトシの意見を拾い上げる。

 

「いや、そうとも限らない。あのサメハダーの中に一体、凄く大きいのがいたんだ。きっとアレが群れのボスだと思う。あいつと一対一で勝負して勝てば、他のサメハダー達もみんな手出しはできなくなるんじゃないかな」

 

「なるほどな。一騎討ちか。ならピカチュウが適任だな」

 

 サメハダー達の親玉もそれなりにレベルが高いだろう。だが俺達の手持ちポケモンでレベルが拮抗、もしくは上回っているのはゴウカザル、マニューラ、フローゼル、ピカチュウくらいだろう。

 俺のポケモンは言わずもがな、サトシはピカチュウ以外はホウエンに来てから捕まえた面子だし、ハルカは新人、タケシはブリーダーという点から高レベルのポケモンは連れ歩いていない。

 

 ゴウカザルはみずとほのおという相性面で不利。かくとうとあくという意味では有利だが、そもそも水中で戦うのに適していない。マニューラは完全に物理型だからさめはだ相手は厳しいものがあり、フローゼルはみずタイプ同士。となると特殊攻撃もできて、相性の有利も取れる。なみのりが使える事から地の利も取られづらいピカチュウが適任だろう。

 

「確かに試してみる価値はありそうじゃな」

 

「よーしピカチュウ!頼むぜ!」

 

「ピカッ!!」

 

 こうしてピカチュウとサメハダーの一騎討ちという方針が決まり、その状況に持ち込む為の作戦会議が始まった。

 

****

 

 一晩明けて翌日、俺達は浜辺でボスのサメハダーの隔離作戦を行っていた。

 作戦は至ってシンプル。まずは俺がフローゼルに乗って海中を猛スピードで移動してサメハダー達の気を引く。後ろでどっしり構えるボス意外のサメハダーの集団を引き付けたら、夜中に島の木を集めて組み立てた折り畳み式のバリケードを向こう岸にいるハルカ、マサト、ハギさんが引っ張ってボスのサメハダーを閉じ込める。

 

 そしてそれが完了したら俺はメタングを出して空中に避難。フローゼルも引っ込めて浮遊しながらみんなと合流。

 

 タケシが他のポケモン達と一緒に周囲を警戒して、特殊技で牽制なんかして不穏分子を排除しつつサトシとピカチュウがサメハダーのボスに勝負を挑むという寸法だ。

 

 しかしサメハダーのボスの隔離の点で予想外の事態が起きた。

 

 バリケードを引っ張り終える前に隔離される事に気づいたサメハダーがロケットずつきでバリケードを壊しにかかり、それを引っ張っていたハルカが勢いに呑まれて海に落ちた。

 

「きゃああああっ!?」

 

『ハルカ!!』

 

 当然、俺達を襲う気満々のサメハダーはハルカを見逃さない。物凄い勢いでハルカに襲い掛かる。

 

「きゃあああっ!!」

 

「フローゼル、アクアジェット!!」

 

 バリケードが完全にサメハダーの隔離が出来ておらず、俺とフローゼルが通る隙間くらいはあった。だから俺は迷わずその空間を指差してフローゼルにアクアジェットを指示。そのまま超スピードでサメハダーとハルカの間に割り込んだ。

 

「サメェーー!!!」

 

 そしてハルカを回収してそのまま岸に……行く前に俺の左腕がサメハダーに噛み付かれた。

 

「があああっ!?」

 

「ミ、ミテキ!!」

 

「フローゼル、ハルカを岸まで連れてけ!!」

 

 俺が声を絞り出すとフローゼルは暫く動揺していたが、俺の指示に従ってハルカを先に避難させてくれる。

 め、滅茶苦茶痛い……!!このまま食い千切られるんじゃないか!?俺はメタングを出そうと残った右手でモンスターボールを掴む。

 

 だがメタングを出す前に強い怒りの叫びと共に飛び込んで来た奴がいた。

 

「マニュウゥゥッ!!」

 

 タケシと一緒にいたマニューラだ。

 

 俺が噛まれた事にキレたマニューラがサメハダーにシザークロスを叩き込んだ。さめはだでマニューラ自身も傷付くのだが、知った事かと言わんばかりだ。

 

「サメ…!!」

 

「ウキャアア!!」

 

 次に飛んで来たのははどうだんだ。シザークロスに続いで横っ面に叩き込まれた事でサメハダーも堪らず俺の左腕を口から離した。今のはゴウカザルか!!

 

 見ればイーブイ兄妹やフローゼルもキレており、それぞれが特殊技をサメハダーに放つ寸前だ。

 思わず俺はポケモン達に向かって叫ぶ。

 

「やめろお前達!それはバトルじゃなくてリンチになる!!」

 

 言ってる場合かと言われるかもしれないが、()()は駄目だ。どんなに怒るような事になっても、ポケモンとして超えちゃいけないラインがある。ポケモン同士でリンチなんてロケット団相手にしか認めないぞ。

 

「ミテキー!大丈夫か!!」

 

 ここでサトシが叫び、ハスボーの上にライドしたピカチュウが俺とサメハダーの間に割り込んでくれる。

 

「後は俺達に任せてくれ!フローゼル、ミテキを助けるんだ!!」

 

「フロ!」

 

 サトシの呼び掛けに応じてフローゼルがすぐに俺とマニューラを回収して岸まで運んでくれる。岸には既に救急箱を持ったタケシがスタンバイしており、すぐに治療を始めてくれた。

 

「これは酷い……かなり深々と噛まれたな。サトシ、ミテキの事は任せろ!お前とピカチュウはサメハダーを!!」

 

「ああ!行くぞピカチュウ!」

 

「ピィカ!!」

 

 だがここでサメハダーに異変が起きた。ピカチュウと睨み合う中、途端に糸が切れたかのように脱力して倒れてしまい、力なく海に浮かんでいる。

 

「もしかしてマニューラとゴウカザルの攻撃で……?」

 

「確かに効果は抜群だけどそんな簡単に行くの……?」

 

 急に倒れてしまったサメハダーの様子を不審に思い、どうにか浅瀬に引っ張り上げた俺達はタケシにサメハダーの容態を診て貰う。するとサメハダーは既に毒に犯されている事が分かった。

 

「海でどくタイプのポケモンと戦ったのかもしれないな」

 

「ドククラゲとか?」

 

「その辺りだろうな。とにかく毒を何とかしないと……」

 

 確か毒消しとモモンの実があったはずだ。

 このサメハダーは俺達を襲って来たが、それはあくまで俺達がこいつらのテリトリーを犯したからだ。自分達の縄張りを守ろうとしたこのサメハダーを放っておくなんて選択肢は最初から俺達には無い。噛まれた事だって俺は根に持ってなんかいないしな。

 

「咀嚼も難しい程に衰弱しているな。そこに効果抜群のシザークロスやはどうだんを受けたんだ。これは長引くぞ」

 

 ポケモンドクターならもっと良い薬を作ってやれるんだが……と溢すタケシは悔しそうだ。ポケモンブリーダーとしてはやっぱり苦しむポケモンは見ていて辛いだろう。

 

 島の脱出については一時保留とし、俺達は満場一致でサメハダーの看病をする事にした。俺が持っていた毒消しとモモンの実をどうにか摂取させてやれないかとタケシは苦心する。

 

 結局その日の残り時間は全てサメハダーの治療に当てる事になった。夜になってもタケシはサメハダーに付きっきりだ。

 

「なぁに、お前ほどの強い体を持っていればこんな毒、どうって事ないさ。なんたってお前はあんなに大きな群れのボスなんだからな。苦しいだろうが、頑張るんだ。毒になんか負けるんじゃないぞ」

 

 サトシ達と夕飯を食べながら、聞いていた言葉だが、タケシがサメハダーにかけた言葉を俺は一言一句忘れる事はないだろう。あれこそポケモンブリーダー…いや、ポケモントレーナーのあるべき姿だと心が訴えかけて来ている気がした。

 

 

 

 サメハダーに噛まれて傷付いた腕をタケシに消毒して貰い、包帯を巻いたがしばらく跡が残りそうだな。

 毒にやられたサメハダーの為に持っていたモモンの実を鉢ですり潰していると暗い顔をしたハルカが隣に座って来た。

 

「ミテキ、ごめんね……」

 

 ハルカは包帯を巻いた俺の腕を見てしょんぼりしながら謝ってくる。ハルカを庇って噛まれた事を気にしているんだろう。だがその謝罪は無用だ。

 

「謝る事ねえって。仲間を守るのは当たり前の事だろ?」

 

「でも……」

 

 これは俺がハルカを贔屓とかそういう話以前の当たり前の話。人間もポケモンも関係ない。友達がピンチになれば助けに入る。あそこで落ちたのがハルカじゃなくてサトシ達でも俺は同じ事をしたと胸を張って言える。

 

 

「だからハルカ、お前が無事ならそれで良い」

 

 

 それだけ言って俺はすり潰したモモンの実をタケシに届ける為に席を立つ。果物集めから戻って来たサトシとマサトと入れ替わる形でタケシの元へ向かう。

 ここまですり潰せばタケシならサメハダーに食べさせられるはずだ。

 

「うわっ!?」

 

 俺は砂浜に足を取られて、鉢を落としてしまう。だがそれが砂浜に落ちる前にゴウカザルが俺の前に来てキャッチしてくれた。中身も溢れてはいない。

 

「……ゴウカザル」

 

 ゴウカザル達はまだ厳しい目でサメハダーを睨んでいたが、それでもこのまま毒で苦しんで良いとは思わないようで、なんだかんだ手伝ってくれる。根は優しい子達に育ってくれて嬉し涙が出そうだ。

 

「サンキュ。ゴウカザル」

 

「……ウキャ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたのお姉ちゃん?顔真っ赤だよ?」

 

「ホントだ!オクタンみたいだ!」

 

****

 

 side三人称

 

 翌朝、タケシの懸命な看病の甲斐もあってサメハダーの体力はすっかり回復し、毒に苦しむ様子もなく落ち着いて眠っていた。

 タケシの心が伝わったのか、寄り添いながら眠るタケシをそのヒレで掴み、溺れないように固定もしている。

 

 真っ先に眠りから覚めたハスボーがその様子を見て笑った時、事は起きた。

 

 昨日作ったバリケードが破壊され、海中から巨大なコイキングのメカが浮上して来たのだ。

 

『!?』

 

 その大きな音で目を覚ます一同。しかし反応する暇も与えずにコイキングメカから網が発射され、サメハダーとピカチュウをそれぞれ捕える。

 

「ピカチュウ!」

 

「サメハダー!?」

 

「な、何事じゃ!?」

 

 あまりに突然の出来事に驚き、ハギが声を上げる。寝起きで上手くの頭の働いていないミテキは誰の仕業なのか見当は付いているものの、未だ行動に移していない。

 そんな割と運の良い状況でピカチュウとサメハダーの捕獲に乗り出せたロケット団がコイキングメカから顔を出す。

 

「な、何事じゃ!?と聞かれたら!」

 

「答えてあげるが世の情け!」

 

「マニュ!」

 

 ロケット団が名乗っている最中にマニューラがピカチュウとサメハダーを捕らえる網を切り裂いた。

 

「「「ああーーっ!!」」」

 

「ちょっとジャリボーイ4号!口上の最中に邪魔すんなっていつも言ってんでしょーが!!」

 

「いや今回俺何も指示してねーし」

 

 ムサシの抗議に呆れた様子のミテキ。

 今回はマニューラの独断である。まぁミテキが指示していれば今頃ロケット団はダイレクトアタックを喰らっているのだが。

 

「おミャーもニャー達の邪魔をするのは良い加減にやめるのニャー!!」

 

「マ〜ニュウ」

 

「にゃ、にゃんだとぉーーー!?でもおミャーの減らず口も今日までだニャー!!おミャーはロケット団で一生下働きに…「マニューラァ」……それすら生温いのニャァァァァ!!!」

 

 マニューラは昨日の鬱憤もあるのか、ニャースを煽りまくっていた。

 

「つーかお前ら本当空気読めよ。サメハダー弱り切ってたんだぞ」

 

「毒にやられていたんだ!まだ治療が終わっていない!」

 

 サメハダーの状態もお構いなしに捕まえようとしてきたロケット団を非難すると、ムサシが目を丸くして口を開く。

 

「あら、んじゃあの時のハブネークのポイズンテールとアーボックのどくばり攻撃ががっつり効いちゃってたって訳ね」

 

 その台詞に全員が怒りを覚える。つまりサメハダーが毒にやられていたのはロケット団の仕業だったのだ。

 

「アレはお前達がやったのか!」

 

「それがどうしたってのよ!」

 

「こっちはこっちでサメハダーの大軍に囲まれて大変だったんだぞ!」

 

「そうだニャ!!」

 

 ロケット団はロケット団でミテキたち同様、サメハダーに襲われていたらしいが、それが矛を収める理由にはならない。ロケット団を睨むピカチュウの電気袋がスパークし、互いに臨戦態勢に入る。

 

「よーし、ピカチュウ!10まん……いや、どうやら今回は俺達の出る幕は無さそうだな」

 

 ピカチュウに10まんボルトを指示しようとしたサトシだが、ある事に気付き、それをやめる、不審に思うロケット団だが、その答えはすぐ背後にあった。

 

 ロケット団の乗るコイキングメカの真後ろにサメハダーの群れが集まっていた。

 

「「「うええええっ!?」」」

 

「ご丁寧にバリケードを壊したから入って来れたみたいだな。つーかお前ら囲まれて大変だったのに……ぷっ」

 

 そう。ロケット団がミテキ達がサメハダーの分断に使用したバリケードを壊した事で他のサメハダー達がこの場に入って来れたのだ。彼らの存在を失念していたロケット団は当然何の対策も考えていなかった。

 

 そしてサメハダー達の連続ロケットずつきを喰らってロケット団は空高く飛んで行った。

 

「「「やなかんじ〜!!」」」

 

 

「よし、すっかり元気になったようだな」

 

 ロケット団をサメハダーの群れが撃退し、毒にやられていたサメハダーの様子を診てタケシはそう診断を下す。丸一日の必死の介護がサメハダーを回復させたのだろう。

 ふとここでマサトがあることに気付く。

 

「あれ?タケシ、さめはだは何ともないの?」

 

 そう。タケシはサメハダーに触れているにも関わらず、その特性のさめはだによるダメージを受けてはいなかった。さめはだという特性にちょっと詳しいミテキが解説を入れる。

 

「ポケモンの特性は任意発動の物もあるからな。さめはだは仲良くなった相手には効かなくする事もできるんだよ。ガブリアスもそうだった」

 

 試しに他のサメハダーに触れてみたが、誰もさめはだのダメージを受けない。サメハダー達が自分達に心を許してくれているという事だ。

 タケシを中心とした懸命な看病によって心を開いた結果と言えるだろう。

 

「なんだか不思議かも!」

 

「ポケモンってこういう所が面白いんだよな!」

 

「ありがとう。俺達はもう友達だな!」

 

 タケシの言葉に頷くサメハダー。

 

 こうして、サメハダーの群れとも和解した事で彼等の縄張りを通れる事となり、その日の夕方にはムロ島に到着する事ができた。

 

「さあ、ここがムロ島のムロタウンじゃ」

 

「ありがとうございました。ハギさん!」

 

「色々お世話になりました!」

 

 ムロ島に到着し、とうとうサメハダー達、そしてハギとピーコちゃんとの別れがやって来た。ハギはこれからカイナシティに向かい、再び世界中の海を船旅するつもりらしい。

 いつかまた何処かで会おうと再会の約束を交わし、ハギとピーコちゃんは去って行った。

 

 そして仲良くなったサメハダー達もまた、縄張りへと泳いで戻って行く。

 

「サメハダー!お前達も元気でなー!」

 

 ハギやサメハダー達を見送り、ミテキ達の船旅は終わった。大変な三日間だったが、こうして沢山の人やポケモンと仲良くなれたのは良かったとミテキは心から思う。カナズミシティの港で直通の便に乗っていたらこの出会いは無かったのだと。

 

「さて、サトシ。次はいよいよお待ちかねのジム戦だな!」

 

「ああ!絶対二つ目のバッジをゲットだぜ!」

 

 サトシと会話する中、ミテキはふと隣から熱っぽいような視線を感じたのでその方向を見れば顔を赤くしてポーッとした表情とトロンとした目でハルカがこちらを見ていた。

 

「……どしたのハルカ」

 

「……えっ!?う、ううん!なんでもないの!気にしないで!」

 

 熱でもあるのかと割と本気で心配したがハルカは大分怪しい雰囲気になりながらもどうにか誤魔化す。

 

(ど、どうしよ〜!!まともにミテキと目を合わせられないかも!!)

 

 咄嗟に後ろを向き、顔に両手を当ててその熱を直に感じ取る。

 あれからミテキを見る度に顔が真っ赤になって胸のドキドキが止まらない。

 

(こ、これってやっぱりそういう事よね……。私、ミテキの事……)

 

 引き金になったのは間違いなくあの一言だ。断じて吊り橋効果などではないとハルカは確信していた。

 

「……おやおや」

 

 そんなハルカをタケシは微笑ましそうに見ていた。タケシの目に映るその姿はかつての旅仲間に重なっていた。




正直タケシにサメハダーをゲットさせようかと思ったけど、陸上適正がないから、出番を保証できないので断念しました。

7.フローゼル(♂)
特性:すいすい
備考:ブイゼルの時、205番道路で捕獲。

22.メタング
特性:クリアボディ
備考:ダンバルの時、228番道路で捕獲。シンオウリーグ前の調整期間で捕まえたのでジム戦の経験はないが、スズラン大会ではそれなりに活躍した。
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